彼等が犯罪組織パイク・シンジゲートと銃撃戦を繰り広げる中、ジェダイ・パダワン、アルト・エーベルヴァインは賞金稼ぎと共にオバ・ダイアの月に降り立った。
~惑星オバ・ダイア、パイク宮殿~
「一分隊、前へ」
「イエッサー。敵を掃討します」
銀河系のスパイス生産を独占し、薬物に加工して売り捌くことで巨万の富を得たスパイス商人の犯罪組織、パイク・シンジゲート。
彼等の本拠地であるパイク宮殿には退廃と享楽に満たされた空気に包まれていたが、突如として飛来した3隻の黒いコルベットによりそれは強制的に取り払われた。
黒いステルス塗料を纏ったCR-90コルベットはパイクのパトロール戦闘機をいとも容易く撃退し、黒い装甲服に身を包んだ数十人の歩兵を降下させる。
彼等は軍隊さながらの統率された動きと高い練度でパイクの私兵を苦しめながら、ある一点を目指して寡黙に進む。
「牢獄が破られました!」
「クソッ、何処の組織の差し金だ…………手の空いている奴は全員回せ!」
「ハッ―――うわっ!!」
「チッ…………今度は上からか…………休む暇もねぇ」
パイク・シンジゲートの指導者ロム・パイクは部下に謎の襲撃者への対処を命じるが、直後に強烈な揺れに襲われる。
上空に未だ布陣する敵コルベットからの艦砲射撃だ。
コルベットは着陸パットや通信タワーなどの宇宙港関連の施設を重点的に狙い、パイクの抵抗力を確実に削いでいく。
パイク側も自前の戦闘機やミサイルランチャー等で対抗するが、今度は敵が飛ばすZ-95ファイター等の戦闘機に蹴散らされ、思うような抵抗が出来ずにいた。
そうしているうちにも、宮殿内に侵入した襲撃者達は、我が物顔で手当たり次第に扉や壁を破壊して回り、遂には牢獄も破壊された。
「―――キャプテン、見つけました。この部屋です」
「分かった。外の警戒を頼む」
「イエッサー」
襲撃者―――銀河共和国第81独立戦闘カンパニー、"パージ・トルーパーズ"の指揮官、クローンキャプテン・ダスティは部下に見張りを任せ、目的の牢へと足を進める。
薄暗い岩窟の牢の中には、狂気に囚われた瞳を浮かべ、汚れきった服を纏う長髪の老人が一人。
地を這う虫を追い回し、明らかに正気でない彼に、ダスティが声を掛ける。
「―――シルマンだな」
「だ、誰だ……!?」
岩窟の奥から、掠れた声が反射する。
「共和国の特殊部隊です。貴方を助けに来ました」
「共和国? どうして今更!? 私は裏切られたんだ、大昔に……」
「落ち着いて下さい。我々が船まで案内します。さあ、どうぞこちらへ」
シルマンと呼ばれた男は血走った目で、大袈裟に手を広げながら駆け寄る。彼はまともに話し合えない精神状態だと判断したダスティは、彼の台詞を無視して事務的に伝えた。
「あ、あはは、あははははははは……な、なにか食べ物はないか!? 私のベイビー達が腹を空かせて怒ってるんだ」
「…………連れていけ」
「イエッサー。うげっ、なんだこの虫!?」
「ま、待ってくれ! 私は家を離れるわけには……」
「いいから、とっとと俺達と来い!」
意味不明な言葉を口走るシルマンに、業を煮やしたダスティは彼を強制的に連れ出すことにした。
連行を命じられたトルーパーはシルマンの身体にこびりついた虫を気味悪がって払いつつ、彼を牢から運び出す。
「―――大丈夫なんですか? アレ」
「さぁ、俺には分からん。将軍が言うには重要な参考人らしいがな」
明らかに狂ったシルマンを見て、トルーパーの一人がダスティに懸念を伝える。
彼等が実行中の"アドミラリティ・コード66"、それは、パイク・シンジゲートを襲撃し"敵"の陰謀を掴む上で重要な参考人を確保することを意味していた。しかし、その参考人が精神異常を来しているとなると、果たして意味があるのだろうかと疑念が生じる。
ダスティは、その疑念を脇に追いやり、自分達の上官に任せることにした。
「ああ、それと他の囚人も何人か連れていけ。目的を悟らせるな」
「イエッサー」
ダスティは、偽装工作としてシルマン以外の囚人も連れていくように指示する。あくまで、他の犯罪組織がパイクの力を削ぐためにやった破壊工作、という体に落ち着けるためだ。
目的を果たした彼等は、回収任務を帯びたG9リガー級軽貨物船に乗り込み、足早にパイク宮殿を後にしてコルベットと共に宇宙へと飛び去る。
彼等パージ・トルーパーズが暴れた後には、煙と硝煙に包まれたパイク宮殿だけが残された。
~オバ・ダイアの月、砂漠地帯~
一方、ジェダイ・パダワンのアルト・エーベルヴァインと賞金稼ぎのアシュタレト、ジェーンの3人は、アシュタレトの宇宙船、SS-54アサルト・シップ〈マアンナ〉に乗り込み、砂嵐の中サーチライトを照らしながら、オバ・ダイアの月の地表すれすれを飛行していた。
「ハァ、これじゃ何も見えないわね。…………あんたのマスター、本当にここに探し物があるって言ってたの?」
「ええ。ビジョンではっきり見えた、と。なのでこの砂漠の何処かに必ずあるはずです」
「それはいいんだけどさぁ…………本当にこれ、私達がやらなきゃいけないの? 賞金稼ぎに頼むにしては地味過ぎない?」
「えっと、その…………マスターは、秘密にしなきゃいけないと言ってたので。だから、軍やジェダイ・オーダーを動かす訳にはいかないんです」
一向に見つからない"探し物"に、徐々に苛立ちを露にするアシュタレト。
彼女の機嫌を何とかして宥めながら、アルトは金属探知機の反応を注視する。
「――――あ」
一瞬、微かな反応。
彼女はそれを見逃さなかった。
「どうしたのよ」
「金属探知機に反応です。アシュタレトさん、ここに向かってくれますか?」
アルトは既に消えてしまった反応の座標を指し、アシュタレトに船を向けるよう頼む。
「これ? 今はなんも映ってないみたいだけど…………まぁいっか。これで探し物が見つかるなら、こんな辛気臭い場所とはオサラバできるしね」
漸く掴んだ手掛かりらしき情報に縋り、船の舵を切るアシュタレト。
果たしてそこには、一機の墜落したシャトルの残骸が無造作に朽ち果てていた。
「―――本当にあったわね」
「ありがとうございます。私は機体を調べてきますので、船を着陸させて下さい」
「りょーかい。…………これが当たりだったらいいんだけどね」
アルトは〈マアンナ〉を下船し、砂避けのマスクとマントを身に付けてシャトルの残骸へと足を進める。
「―――マスターの言った通りだ。ジェダイ・シャトルがこんなところに墜ちてるなんて。製造番号は……775519かぁ」
機内の探索を進めるアルト。
どうやらこのシャトルは、ジェダイがよく任務で使っているT-6シャトルという機種であるらしい。
事前に製造番号をメモするよう命じられていた彼女は、コックピットを漁って機体情報を端末にダウンロードする。
「これは…………ライトセーバー?」
他に手掛かりがないか船内を探索していたアルトの目に、砂に埋もれた一本の金属棒が映る。
拾い上げるとそれは、紛れもなくライトセーバーの形をしていた。
光刃がまだ起動することを確認し、所有者が誰なのか分からないかとセーバーを観察する。
すると、柄の先端にオーラベッシュでなにかの言葉が掘られているのが見えた。
「文字? 名前かなぁ。えっと…………サイフォ=ディアス? ―――マスターの師匠の名前だ」
刻まれていた文字を、一字一句読み上げるアルト。
それは、既にこの世を去って久しい、彼女のマスターがパダワン時代に師事した師匠の名であった。
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「座標を確認しました。惑星地表上、ポイントX9951-7270。砂漠のど真ん中ですね」
「了解だ。お嬢さん方が飛び去ったら回収作業に移るぞ。お前達はそれまでに準備を頼む」
「イエッサー」
アルト達がオバ・ダイアの月でちょうどサイフォ=ディアスのシャトルを発見したその頃、軌道上から彼女達を監視する一つの目。
GS-100廃品回収船改工作艦〈メドゥーサ〉は、シャトルの残骸を回収するべく静かにオバ・ダイアの月に進路を向けた。