共和国の旗の下に   作:旭日提督

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新たな脅威

 ~コルサント・郊外~

 

「マスター、これを……」

 

 アルトから手渡されたのは、一本のライトセーバー。

 仄かに見覚えのあるそれを手にした私は、作戦の成功を確信した。

 

「――師匠のセーバーだ。よくやった、アルト。これでまた一歩、目的に近付くことができた」

 

「はい! お役に立てて光栄です、マスター!」

 

 セーバーを受け取り、アルトの頭を撫でる。

 彼女は忠犬のように嬉しそうだ。

 初めての任務を無事達成した彼女。弟子の成長を感じ、感慨に耽る。存外に、私にも師匠魂というものがあったらしい。

 

 アルトから証拠品を受け取った私が聖堂に戻ると、ジェダイ・ローブの人影に紛れた、場違いなカターン・アーマーの姿が見えた。

 装甲服の色からするに、デルタ分隊の面々だろう。

 

「これは、ブリュッヒャー将軍。お元気そうで何よりです」

 

「やぁ、ボス。こんなところで何の用だい?」

 

 私に気付いたボスと、再会の挨拶を交わす。

 久々に顔馴染みのトルーパーに会えたのは嬉しいが、彼等デルタ分隊がジェダイ聖堂にいるとは、何かの任務でない限りなさそうな展開だ。一体何の任務だろうか。

 

「任務です、将軍。全滅した惑星デヴァロンの基地を調査してきました」

 

「デヴァロン? あーっと、確かコロニーズの星だっけ」

 

「はい。基地は酷い有り様でした。まるで怪獣に荒らされたような散らかりようでしたよ」

 

 デヴァロン…………なんか引っ掛かるなぁ。"原作"でもあまり聞き覚えのない星だったが……

 

「―――それで、何か分かったことはあったのか?」

 

「はい。記録映像をジェダイ・オーダーに引き継ぎました。どうやら敵は、新たな"戦力"を得たようです」

 

 そう言いながらボスは、掌に一人のダソミリアン・ザブラクの男のホログラムを出した。

 

「これは?」

 

「デヴァロンを襲撃した敵の指揮官です、将軍」

 

「ジェダイ二人と一個中隊を一人で壊滅させる化け物ですよ、奴は」

 

 ボスとフィクサーが、ホログラムの人物を解説する。私は、その人物に見覚えがあった。

 

 ―――サヴァージ・オプレス。

 

 暗黒卿ダース・モールの弟で、クローン戦争で一、二を争う程の暴れ者の怪人だ。………もう、彼が歴史の表舞台に出るまでに時代は進んでしまったようだ。

 

「ほう………これは評議会も荒れそうな案件だ」

 

「しっかしまぁ、アサージ・ヴェントレスか脱落したかと思ったらこれだ。奴らには人材の宝箱でもあるんですかねぇ」

 

 同伴していたスコーチが、皮肉混じりに感想を洩らす。

 彼が指摘した通り、アサージ・ヴェントレスはつい先日生起したサラストの戦いで旗艦を撃沈され、行方不明だ。敵の手強い戦士が一人脱落したかと思うと、こうしてまたすぐに補充された。前線部隊から怨嗟の声が上がるのも無理はない。

 ちなみに、この戦いでアナキンは旗艦〈レゾリュート〉を沈められた。先日聖堂に帰ってきたアナキンに聞いて知ったことだ。

 

「ふーむ。これは一筋縄ではいかなそうですねぇシャルさん」

 

「げえっ、アンバー!?」

 

 ひょい、と私の背後から身を乗り出したアンバー先生の姿を見て、スコーチが悲鳴を上げる。―――そういえば彼、ナブーのブルー・シャドウ・ウイルス事件で……

 

「あらスコーチさん。"げえっ"とはなんですか。私は悲しいです、よよよ」

 

「あんたの注射、どんだけ痛かったと思ってるんだ!? もうあんなのはゴメンだぜ、俺は」

 

 やはり、スコーチはあのことを根に持っていたらしい。

 

「茶番はそこまでにしたらどうだアンバー。マスターも困っているぞ」

 

 呆れた表情でアンバーを視線で刺すのは、愛しのわが弟子アルト。すっかりオルタ声が地についてしまった。

 

「さ、マスター! 早く行きましょう。こんな女狐、構うだけ無駄です!」

 

「えっ、あ―――すまんボス、という訳だ。君達は任務に戻ってくれ」

 

「イエッサー。将軍もお元気で。艦隊の一同も待ちわびていますよ」

 

 アルトに背中をぐいぐいと押され、無理やり聖堂の中へと連行される。

 デルタとは久し振りの再会だったが、今日のところはこれで一旦終わりだ。私はボスに手を振って、彼等に別れを告げた。

 

 

 

 ~ジェダイ聖堂・最高評議会~

 

 

 いつもは最高評議会が開かれる尖塔の一室。私はそれが休みの今日を見計らって、マスターヨーダと接触を図った。

 用件は勿論、あのセーバーに関してだ。

 

「―――来たか、ブリュッヒャー。わざわざこんな時間に呼びつけるとは、どんな用件じゃ? ん?」

 

 小柄な緑色のグランド・マスターは、杖を指しながら私に問う。

 

 ―――私は毅然を意識して、一本のセーバーをマスターヨーダの眼前に翳した。

 

「"敵"の陰謀に関する進展です、マスター」

 

 マスターヨーダは、私が呈示したライトセーバーに視線を向ける。彼は見ただけでそれが誰のものか分からなかったのか、訝しむように首を傾げた。

 

「お忘れですか、マスターヨーダ。ジオノーシスの戦いの前に話したことです。オーダーに裏切り者がいると」

 

「…………まさか、一人で調べておったのか」

 

「ええ。他人の目を掻い潜るのは至難の業でしたがね。これは、私のマスター、サイフォ=ディアスが最後に使っていたセーバーです。発見場所は、オバ・ダイアの月。―――おかしいですね、マスターはフェルーシアで死んだことになっているのに」

 

「………………」

 

 マスターヨーダは、黙り込んで何も言わない。

 記録では、マスターサイフォ=ディアスはフェルーシアでの部族間交渉に失敗して死んだことになっている。その記録と食い違う遺品の発見場所。どんな馬鹿でも、そこに何かしらの陰謀があることを察するには充分だ。

 

「マスターの死の背後に何らかの陰謀があることは確実です。次は、クローンの発注者である"ティラナス"とやらの正体を突き止めてみせましょう。―――そうすれば、点と点が繋がって線になって見えてくる筈です」

 

「…………わかった、ブリュッヒャー。儂らもお前の仕事を手伝うとしよう。事態は思った以上に深刻なようじゃ」

 

「―――マスターヨーダ。それはご遠慮頂きたい」

 

「? 何故じゃ。一人では限界があろう。これはジェダイの問題でもある。其方一人だけに任せるわけにはいかん」

 

 マスターヨーダの申し出を、断る私。

 何故と彼は訝しむが、理由なんて簡単だ。

 

「言った筈ですよ、マスターヨーダ。私はオーダーの中に裏切り者がいると。ならば、ジェダイが組織として調べるのはあまりにも不味い。仮に、事がジェダイのみならず元老院や軍にまで及んでいれば、"ジェダイがサイフォ=ディアスを調べる"だけで致命的になりかねない」

 

「……確かに、其方の言うとおりじゃ、しかし、最高評議会のメンバーならば……」

 

「いえ、マスター。…………どうかこの件は、私一人に任せて頂きたい。くれぐれも元老院には洩らさぬように。無論、最高議長も含めてです」

 

 明白に、拒絶の意向を伝える。

 返答は聞かず、私は踵を帰して足早に最高評議会を後にした。

 

 ―――ジェダイに任せていては、後手後手に回るだけだ。それでは遅い。…………遅すぎるのですよ、マスター。

 

 

 

 

 

 ―――数日後、アンバー先生から退院許可を貰った私。そんな私に、早速任務が舞い込んだ。

 

 目的地は、惑星サーリッシュ。

 

 エクスパンション・リージョンに属するこの星では、オビ=ワン率いる第212突撃大隊が窮地に陥っているという。

 全く、人使いが荒いとはこのことか。せめて病み上がりだということに配慮して欲しかったのだが…………

 

 文句を言っても仕方ない。私はアルトとアンバー先生を伴って、懐かしの艦隊に帰還する。

 私は増強された艦隊を率い、急ぎサーリッシュへと舵を切った。

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