共和国の旗の下に   作:旭日提督

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 この回は、夭嘉様の『理想主義者(笑)の自由奔放記』とのコラボ企画になります。

https://syosetu.org/novel/245035/

 今回もまたIFストーリーになります。
 時系列は、表題の通り第二次ジオノーシスの戦い時になります。






【IF】第二次ジオノーシスの戦い

~アウター・リム・テリトリー アケニス宙域 ジオノーシス星系 衛星バーリン軌道上~

 

 

 ジオノーシス星系

 

 

 主星であるG型主系列星である恒星エアを中心に、幾多もの惑星を擁する惑星系。

 

 銀河平面座標R-16に位置するこの宙域では、今まさに銀河史に残る一大決戦が生起していた。

 

 ───第二次ジオノーシスの戦い。

 

 分離主義ドロイド軍の新たなドロイド工場を巡り、銀河共和国軍は再びクローン戦争始まりの地、ジオノーシスの大地を踏む。

 それを阻むべく布陣していた独立星系連合宇宙軍は共和国軍の攻勢の前に各個撃破の憂き目に遭うという醜態を曝し、今や風前の灯だ。

 

 その中の分艦隊の一つ、極寒の衛星バーリンの影に逃れた小艦隊の一つにも、共和国宇宙軍の追撃の手が伸びていた。

 

 

~独立星系連合宇宙軍 プロヴィデンス級キャリアー “ディスペアー ”~

 

【挿絵表示】

 

「ちぃっ! しつこいっての!!」

 

 またもや眼前に立ち阻む紅白の艦隊の姿を見て、思わず私は毒吐いた。

 

 ジオノーシスを防衛していた艦隊が総崩れに陥ったのが、つい一時間ほど前。充分な数を誂えたと思われていた艦隊は、憎たらしい共和国軍の奇策によって呆気なくズタボロに引き裂かれた。

 陽動とファイター隊との緻密な連携、一点集中砲火を駆使する共和国軍のキルゾーンにまんまと誘き出された主力部隊はあっという間に壊滅。コネで指揮官に成り上がったニモーディアンのクソ野郎には私自ら手を下してやりたい気分だが、生憎奴は既に宇宙の藻屑になってしまった。

 その隙を突いて、共和国軍の揚陸艦が次々と大気圏内に降下。クローン戦争始まりの光景がまたもや繰り返されることになった。

 

 あまりにも馬鹿馬鹿しくて私は残った艦隊を反転させたが、これに食い付いてくる奴が一人。

 

「…………ヴィンディケーター」

 

 艦橋の硝子越しに見る追撃部隊の旗艦を見て、思わずその名を口ずさむ。

 

 アナキンの旗艦〈レゾリュート〉と並んで、独立星系連合軍の間では今や最も有名なそのクルーザーを指揮する奴の名は、シャルロット・フォン・ブリュッヒャー。

 開戦以来、数々の連合軍艦を沈めてきた闘将で、つい先刻もジオノーシスの防衛艦隊を粉微塵にした張本人。

 

 そう、これでいい。

 

 これこそが、"私"の狙いだ。

 

「アー、クルーザー052沈没」

 

「如何ナサイマスカ? ()()()()

 

 私の乗る旗艦の隣で、随伴するミュニファスント級が吹き飛んだ。

 その惨状を見てか、隣に控える戦術ドロイドが指示を乞う。

 

「そろそろかな。ここは任せた!」

 

「ハイ……?」

 

 指揮官席を飛び降りて、ファイターの格納庫に向かう。

 

 目的地は、奴の旗艦。

 

 これも"主"の為だ。

 

 上手くいけば、いい駒を"主"に献上できる。

 その瞬間が堪らなく楽しみで、誉められる私の姿を夢想すると思わず口元が綻ぶ。

 

 期待と渇望を胸に抱いて、私はファイターのエンジンに火を入れた。

 

 

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~銀河共和国軍第3艦隊第51分艦隊旗艦 ヴェネターⅠ級艦 “ヴィンディケーター ”~

 

【挿絵表示】

 

「敵一隻、撃沈!」

 

「攻撃の手を緩めるな。グリッド5-γの敵艦に集中砲火だ。敵の出鼻を挫け」

 

「イエッサー!」

 

 ジオノーシス軌道上の艦隊戦で大勝を納め、残敵掃討に移行した我が艦隊。

 逃れる敵艦隊のうちの一隻に〈ディスペアー〉の姿を認めた私は、指揮下の全艦隊に追撃を命じた。

 アレは、エレノア・クラウドの旗艦。

 共和国を裏切り、シスの軍門に降った元ジェダイの艦だ。

 あれに奪われた命は数知れず、共和国軍に多大な損害をもたらす彼女は今や最高額クラスの賞金首だ。

 それが目の前に居るというのだから、共和国の軍人として、みすみす見逃すという訳にはいかない。

 

「しかし…………何が狙いだ」

 

 話に聞く限りでは、彼女は自己中心的、かつ刹那的な快楽主義者だという。ジェダイを裏切って以来本性を顕した彼女と戦った元マスターのキット・フィストーの言であるから、それなりに信憑性はある。

 だからこそ、彼女の艦隊が私の前で粘り強く抗戦する意図が分からない。

 

 彼女が噂通りの性格ならば、不利を悟れば呆気なく逃げる筈だ。その気質に似つかわしくない行動を見せる〈ディスペアー〉を前にして、私は艦隊戦の傍らで探索プローブを四方八方にばら撒かせた。

 

「将軍! 敵旗艦よりファイターです!」

 

「数は?」

 

「それが…………どうやら一機だけのようで」

 

「一機だと? ……ネモ艦長、ここを頼みます。私は暫し、敵を()()しなければいけないようなので」

 

「任された。何、全て沈めてしまっても構わないよね」

 

 単独で出撃した、敵のファイター。

 レーダー網に映ったその機影を見た私は、ネモ艦長に艦隊の指揮権を引き継いで格納庫へと向かった。

 

 なんだか、堪らなく()()()()()()()

 

 

* * * * * * *

 

 

「あははははっ!」

 

 一人、二人、三人───目の前に立ちはだかるトルーパーを、丁寧にズタズタに引き裂く。

 

 数機のヴァルチャー・ドロイドを囮にして〈ヴィンディケーター〉の格納庫に突入した私は、手始めに近くで呆気に取られていた整備兵からフォース・ドレインで生命エネルギーを奪い取った。

 

 その様子を見たクローン達が続々と寄ってきてブラスターを浴びせてきたが、そいつらも纏めて返り討ちにする。

 

「怯むな、撃て!」

 

「その程度? シス相手には全ッ然足りないね!」

 

 目の前で銃口を向けるクローンに向かって、左手を翳す。

 私の腕から放たれたフォースの鎖はトルーパーの身体に巻き付いて、その生命力を喰い尽くす。

 

 …………筈だった。

 

 バリンッ!! ────

 

 硝子が砕けるような音とともに、私のフォースが阻まれる。

 

「───断空(Luft Schneiden)

 

 か細い機械のような冷たい音が、鼓膜の一角に響いた気がした。

 まるで氷を思わせるその声の響いた方向を辿ると、幽鬼のように佇む影が一人。

 

「やっと来たね」

 

 彼女の姿を視界に収めて、私は歓喜に包まれた。

 

 ───これで、"主"の命令を完遂できる。

 

「将軍───!」

 

「下がれ、トルーパー。奴は私が引き受けます」

 

 無言で赤い剣を構える、私の標的。

 

 シャルロットが握るセーバーの色は、予想外にも私と同じ血の色だ。彼女の紅に染まった剣のことは衝撃的だけど、そのくすんだ灰金色の瞳には情熱も感情も無く、ただ斬るべき敵を見定めているようで────

 

 気に入らない。

 

「エレノア・クラウド。銀河共和国軍の名に於いて、貴女を斬る」

 

「あっはは! 共和国軍? ふぅ~ん、()()()()じゃなくて?」

 

 抑揚のない低い声で告げるシャルロットに対して、煽るように私はその一点を指摘した。

 

 ピクリ、と彼女の眉が僅かに動く。

 

 その瞬間を見逃すことなく、更に畳み掛けるべく唇を開く。

 

「態々()()()()を見せびらかすぐらいなんだもん。貴女も色々堪ってるんじゃないの? どう? 私の"主"についてみたら、きっと素敵な世界が見えるんじゃない?」

 

「黙れ。この色は───忠誠を誓ったわが祖国の色だ!」

 

 ───瞬間、冷徹な機械のような彼女に怒りの熱い色が仄かに灯る。

 

「そう! あんたはそれでいいんだ───よっ!!」

 

 視界から消えた彼女の剣を防ぐべく、真後ろに振り返って私も赤いセーバーを翳す。

 

 まるでジェダイには似つかわしくない、感情を載せた彼女の剣戟。

 熱情と怒りは、暗黒面への入り口だ。

 彼女がその境地の門に足を踏み入れたという事実に歓喜しつつも、私はその命を狙うことを忘れない。

 

 ───ついうっかり、殺しちゃっても別にいいよね。

 

 正直、"主"が私以外の女を見ているという点だけでも気に入らない。

 一番主に忠誠を尽くしているのは私。

 その自負が更なる怒りの感情を呼び起こし、暗黒面の秘めた力を引き出していく。

 

 だけど、彼女はそれを易々と受け流し、確実に心臓を狙ってくる。

 その華奢な見た目には似つかわしくないほどに不釣り合いな、荒削りで無駄のない殺人剣。

 

 始まりの号声とは打って変わって一向に踏み込まない彼女を相手に、更に苛立ちが募っていく。

 

「ああもう、何なのよあんた!」

 

 セーバーを交えて、彼女のフォースに乗せられた感情を知覚する。

 奥底では戦いを愉しみたい癖に、それに蓋をする彼女。

 血の色が堪らなく好きなのに、自ら定義した役割を演じ続ける彼女。

 暗黒面に身を置く私からしてみれば、おぞましい牢獄みたいだ。

 

 そんなに辛いなら、いっそ楽になればいいのに。

 

 軽蔑の籠った眼差しを向けながら、最後の一押しに取りかかる。

 

「気持ち悪。そんなもの、さっさと捨てちゃえばいいでしょ」

 

「───なに」

 

「アハハッ! 気付いてないの? あんたは誰よりも血に焦がれてるってこと。愉しいんでしょ? 人を斬るの。いい加減、認めたらどうなのさ……っ!」

 

「───面白いことを言うね。()()()()()()()? 感情など戦場には不要。私は共和国の軍人だ。軍人であるからには、常に戦場を俯瞰しなければならない。その私に向かって戦いを愉しめだと? ナンセンスにも程があるな」

 

「な…………っ! 正気なの!?」

 

「無論だ。戦場に在るのは生きるか、死ぬかの暴力のみ。ただひたすらに敵を斬る、それだけを考えていればいい。ましてや、個人的な欲求を戦場に持ち込むなど、三流以下の雑兵にも劣る愚行だ」

 

 セーバーを交えながらの問答。

 あと一押しで暗黒面を自覚させられると思ったのに、まさか開き直られるなんて! 

 こんなの、聞いてないっての! 

 

「思い知ったか、()()()()()()()。貴官が幾らフォースの扱いに長けていようと、戦争で私に勝つことはできない。貴官は些か───軍人としては未熟に過ぎる」

 

「っち! 言わせておけばこの!!」

 

 思いもよらない反撃に血が上って、怒りのままに刃を振り下ろす。

 言いたい放題貶されて、いい加減私の我慢も限界だ。

 しかし彼女はセーバーを構えるまでもなく、身体を捻ってそれを躱す。

 

 瞬間、彼女の袂から赤い閃光が斬り上げられた。

 

 

 …………………………………………………………

 

 

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 …………………………………………

 

 

「逃がしましたか」

 

 瓦礫だらけの、格納庫の一角。

 

 脱兎の如く逃げ出した敵指揮官の居た空間を眺めながら、何を思ったかその事実を口にする。

 仕留め切れなかったのは、痛恨の極みだ。後で、聖堂の連中になんと文句を言われることやら。

 奴が共和国に与えてきた損害を鑑みるならば、ここで捕縛なり無力化出来ていたら良かったのだが。

 

「───エレノア・クラウド」

 

 今は最早この場にいない、敵の名前を口遊む。

 シスに降ったということは、奴の走狗なのだろう。

 己は自由と解放を夢見ていたのではあろうが…………まこと、哀れよな。

 

 奴に使われる運命の先なんて、惨めな終幕しかないというのに。




 今回もコラボして下さりありがとうございます。この場を借りて夭嘉様に御礼申し上げます。ありがとうございます!
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