共和国の旗の下に   作:旭日提督

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 囚われのブリュッヒャー!

 ジェダイ聖堂に帰還するや否や、その身柄を拘束されたブリュッヒャー。彼女の監視役として、ジェダイナイト、ティーガ・ドラッヘが宛がわれた。

 その報せは共和国軍事作戦センターにも伝わり、彼女のパダワン、アルト・エーベルヴァインの精神を揺さぶっていた………


陰謀のジェットチョコ羊羹

 ~惑星コルサント ジェダイ聖堂~

 

 

「全く、いきなり拘束するなんて聞いてませんよほんと。上は一体何を考えてるんです?」

 

「私に言われましてもねぇ…………私、ただ指示に従っただけですので。そういう面倒なことを考えるのは苦手なのです」

 

 コルサントに帰って早々、聖堂地下の薄暗い牢に捕らわれた私。暇すぎるのでおそらく監視を命じられているであろうドラッヘ将軍に語りかけてはみたものの、これといった収穫はなし。それどころか酒が飲めない此方への挑発か、盃を傾けながら嗜むコイツには殺意すら抱く。

 

「……で、私の目の前で堂々と飲むなんて、嫌味もいいところですね。此方への当てつけですか」

 

「いえいえ、これは単なる趣味みたいなものです。酒はいいですよ。不愉快なことは何もかも流してくれる。マスター達はなかなか理解してくれないんですが」

 

「あ、それは同感ですね。いやぁ、できればもっと早くに知り合いたかったものです。さすれば貴女と盃を交わすこともできたでしょうに」

 

「おや、貴女もいける口ですか? ―――これは勿体ないことをした。ならどうです? ここで一杯やりますか」

 

「え? いいんですか?」

 

「どうぞどうぞ。折角出来た飲み友達です。遠慮せず、ささっと」

 

 思いの外、酒談義でドラッヘ将軍と盛り上がってしまった。見た目が見た目だけにそうだろうとは思っていたが、彼女もやはり大の酒好きのようだ。

 

 格子越しに盃を受け取った私は、彼女に促されるままに一気に飲み干す。…………これ、日本酒だ。強めのアルコールの刺激と澄んだ米の味が心地いい。少なくとも、安価な大量生産品ではあるまい。

 

「どうです? お気に召しましたか?」

 

「ええ。お心遣いありがとうございます。少し気が晴れました。しかしコレ―――中々の一品と見ましたが」

 

「おや、それに気付かれるとは流石ブリュッヒャー将軍。それはナブー産の米酒ですが、何でも1000年近く続く老舗の酒だとか。私もお気に入りの一品なんですよ」

 

「なるほど……それなら納得です。私はブランデー派なのですが、米酒もなかなか悪くない」

 

「でしょう? 今やすっかりソレの虜ですよ、私。弟子にも飲ませてみたんですが、どうやらアレはいけない口らしくてですね」

 

「なにやってんですかドラッヘ将軍」

 

 夜陰に紛れて盛り上がる格子越しの酒盛り。私も彼女も、オーダーに飲み友達がいなかったためか随分と長く続いてしまった。

 

 なお、監視任務をほっぽり出して酒盛りに興じていた彼女は、巡回に来たテンプルガードに引き摺られていった。南無三。

 

 

 ……………………………………………………

 

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 ……………………………………

 

 ~惑星コルサント 共和国軍事作戦センター~

 

 

「ええい! 離せアンバー!」

 

「駄目ですよアルトさん! シャルさんも乗り込んで来るなと言っていたんですよ!?」

 

「黙れ! マスターが捕らわれているのだ! これで大人しくできる訳がなかろう!!」

 

「今は大人しくして下さい―――! シャルロット様も、貴女が騒ぎを起こされることを望んでいません」

 

 一方、所変わって共和国軍事作戦センター内。共和国軍の大規模な司令部設備として建設されたこの建物内では、今にもジェダイ聖堂へ向けて突撃しそうな勢いのアルトを、アンバーとサファイア(翡翠ちゃん形態)が必死になって取り押さえていた。

 しかし思いの外アルトの暴れる力が強く、扱いに苦労するアンバーとサファイア。火事場の馬鹿力とはこのことか、アルトが二人を引き剥がそうとしたときだった。

 

「あっ、そこのトルーパーさん! ナイスタイミング! ちょっと手伝って下さいましー!」

 

 丁度いいタイミングで彼女達の近くを通りすがったコルサント・ガードのクローン・トルーパー、CC-1010"フォックス"と彼の同僚のコマンダー"ソーン"は、彼女達のただならぬ様子に事態の深刻さを察した。

 なので彼等二人は、アンバーへの加勢を決めて共にアルトを取り押さえにかかる。

 

「大人しくするんだ、嬢ちゃん」

 

「ぐう、っ…………!」

 

「怪我はありませんか? ……一体何があったのです」

 

 アンバーとサファイアの細腕ならともかく、屈強なコルサント・ガードのクローンコマンダー二人に取り押さえられてはぐうの音も出ないアルト。フォースを使って二人を吹き飛ばさなかったのは、まだ理性的な思考を有していたからだろう。

 フォックスとソーンは彼女達に怪我がないことを確認すると、三人に一体何があったのかと問い質す。

 

「えーっと、実はですね…………」

 

 彼等に対し、事の顛末を包み隠さず説明するアンバー。

 その事情を知った彼等は、アルトに憐憫の表情を向けた。

 

「ああ、あの事件か。軍の中でも噂になってるぜ。なんでも宇宙軍のアウター・リム第3艦隊とオープン・サークル第5艦隊がすかさず抗議してるだとか。まったく、ジェダイの考えることはよく分からないな」

 

「しかし、そのブリュッヒャー将軍の弟子だって? ……なるほど、そういう事か。嬢ちゃん、悪いことは言わん。今日は見逃してやるから、大人しくしているんだ」

 

「!? 何故です! マスターは濡れ衣を着せられたのだ! 黙っていられる訳がなかろう!」

 

 フォックスとソーンの二人は、アンバーから聞いた説明を元に事の次第を理解していた。わざわざブリュッヒャーが自らの弟子をこの共和国軍事作戦センターに置いてきたのも"余計な騒ぎ"を起こして彼女に害が及ぶのを防ぐためだろう。

 そう解釈した二人は、未だに剣幕を収めないアルトを諭す。

 

「いいかい、嬢ちゃん。あんたのマスターがわざわざ人目につくここに君を置いた理由、それをよく考えるんだ」

 

「軽率な行動は、君だけではなくブリュッヒャー将軍にも悪影響を及ぼす。だから、今回は我慢するんだ。軍隊も動いてる。だから、今は臥薪嘗胆と思ってくれ」

 

「うっ…………申し訳ない。わかりました、失礼します」

 

 彼等の説得を飲み込んだアルトは、苦虫を噛んだような表情を浮かべながら拳を納める。彼女は何も言わずに踵を返し、与えられた客間へと戻っていった。

 

「すみませんトルーパーさん。お目こぼししていただいて」

 

「いえ、お気になさらず。我々も思うところがあるのは事実です。幾らパダワンとはいえ彼女は多感な年頃。親代わりのブリュッヒャー将軍がああなっては取り乱すのも仕方ないでしょう」

 

「なので、今回は補導ということにしておきます。ただ、次はないと伝えておいて下さい」

 

 アンバーから礼を告げられたフォックスとソーンは、あくまで今回だけと強調する。彼等はコルサントの治安を預かるショック・トルーパーの一員なだけに、そう何度も特例措置とするわけにはいかないからだ。

 

「ありがとうございます。此方はちょっとしたお礼です。どうぞお受け取り下さいな」

 

 ちょうど持っていましたのでお二人でどうぞー、とアンバーが懐をがさごそとまさぐって取り出したのは、いつぞやにブリュッヒャーが試作を命じた"ジェットチョコ羊羹モドキ"、その量産試作品であった。

 

「…………なんか、青いですね」

 

「ああ。綺麗だが、―――食べ物なのか?」

 

「ささっ、どうぞどうぞ」

 

 ―――――アッハイ

 

 アンバーから差し出されたそれを怪訝な表情で見つめていたフォックスとソーン。だが、四の五の言わせないとばかりの彼女のオーラに気圧された彼等は、大人しくそれを受け取ることにした。彼等より一本線が多い彼女の階級章の存在も、断りずらい雰囲気を醸成する。

 軍医というのは、往々にして階級が高い幹部である。フォックスとソーンは二本線の中佐(コマンダー)、対してアンバーは三本線の大佐(カーネル)。幾らアンバーが朗らか家政婦さんのような雰囲気とはいえ、階級章の差は絶対なのだ。

 

 無論、そこはいつものマジカルアンバー。只の羊羮ではないのだが、彼等がそれを知る由はない。

 

(ふっふっふー。シャルさんのお部屋から拝借したバイオチップ。その抑制ナノドロイド入りの試作品です。どうぞ美味しく召し上がって下さいね、トルーパーさん♪)

 

 背後で微笑む悪魔に気付かず、その場を後にするフォックスとソーン。この出来事が、彼等の運命を大きく変えることになる――――

 




 ジェダイ聖堂に囚われたブリュッヒャー。彼女はザイゲリアでの爆撃を理由に一人、査問にかけられる身となった。
 彼女が宿す暗黒面。それを理由と看破したオーダーの審判とは………

 次回、第51話「査問会」
 銀河の歴史が、また1ページ……









 前書きがクローンウォーズ冒頭オマージュは説明の通りですが、今回から銀英伝風次回予告を入れてみました。
 ナノドロイドの効果は行動抑制チップをぐちゃぐちゃにするだけなので、人体に影響はありません。シャルっちがコマンダーグリーから抜き取ったチップをアンバー先生が勝手に拝借して作ってます。ちなみにコマンダーフォックスのその後は別の小説で書いています。
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