惑星ザイゲリアでの残虐行動の責任を追及されるシャルロット。ジェダイ・オーダーは彼女の暗黒面を理由に追及するが、シャルロットは法律論で自身の正当性を主張。
議論は、平行線を辿っていた………
ジェダイ最高評議会。
12人のジェダイ・マスターによって構成される、ジェダイ・オーダーの最高意思決定機関。
その会合が開かれる尖塔の一つ、その名も"最高評議会の塔"に呼び出された私。
目的は言わずもがな、査問会という名の裁判ごっこだろう。
「ジェダイ・ナイト、シャルロット・フォン・ブリュッヒャー。貴様が何故この場に呼び出されたか、分かるか」
「いえ、何も。言わせておきますが、私は軍の指揮系統に従ったまで。一体何か問題でも?」
査問会は、ジェダイ・マスター、メイス・ウィンドゥの詰問から始まった。
彼の最初の質問に対して、敢えて私は惚けてみせる。
「問題もなにも、幾ら奴隷商人とはいえ惑星全土を焼け野原にしたのはやりすぎではないか? ジェダイの道に反することは明らかだ」
続いて発言したのは、マスター、キー=アディ=ムンディ。ウィンドゥ同様、厳格なジェダイだ。
「お言葉ですがマスタームンディ。私はあのとき軍人として活動していました。ならば、軍の指揮系統に従うのは当然でしょう。それが違法な命令ならまだしも、命令自体は元老院の議決を経た正当かつ合法なものです。仮に逆らえと言うのなら、一体どのような法的根拠持ち出すつもりで?」
ジェダイの道とは言うが、軍人として動くなら軍の規範が優先されるのは自明の理だ。彼等にとって教義は確かに絶対なのかもしれないが、それと法律論は訳が違う。
ここぞとばかりに、私は自らの法的正当性を主張した。
「だがあのような残虐な行為は、暗黒面に繋がる道だ」
「命令を実行したまでです。そこには如何なる他意もありません」
マスター、キット・フィストーは暗黒面へ通じる危険を説くが、私にはその危険が感じられない。少なくとも、私は軍人として当然の行動をしたまでだ。奴隷商人共に思うところはあれど、それは任務とは何の関わりもない。
「…………彼女の言い分は、確かに法的には正しい」
ここで、思いがけない報告から援護射撃が飛んで来た。
オビ=ワンだ。
最高評議会は完全に私への弾劾一色だと思っていただけに、その意外さに面食らう。
「何を言う、マスターケノービ。あのような残虐行動、幾ら相手がザイゲリアとはいえ許されることではない。彼女は武器を持たぬ者を大勢殺したのだ」
「そうは言っても、彼女の言うこともまた事実です。軍人として動くなら、最終的な指揮権は最高評議会ではなく最高議長にある。法律論では彼女を責めることはできませんよ」
まさか、堅物だと思っていたオビ=ワンがここまで正解を言い当てられるとは。流石は主役格と言ったところか。うん、愛してるぅオビー。帰ったらパンシャンドラムをプレゼントしてあげよう。
―――いま、なんか悪寒が走った気がした。気のせいかな…………。
「いい加減認めたらどうです? オビ=ワンの方が賢明じゃないですか。少なくとも、民主主義国の軍人として、主権者たる国民が選んだ元老院議会の議決を経た命令を、何の根拠もなしに破ることはできない。ジェダイとしての任務でやらかしたのならともかく、法律論で私にあーだこーだ言うのは筋違いだと思いますけど?」
友軍と連携しての、鮮やかな一転攻勢の如く畳みかける。堅物なマスター達にも、法律論では私が正解だと理解させなければ、ジェダイと軍の間には大きな禍根が残ることになる。今後の戦争遂行のためにもそれは避けたい。
「それに、元はと言えば碌に法整備もせず軍の将官佐官としての立場を受け入れたオーダーの側の怠慢も原因ではありませんか? 何故ソーラ・バルクを始めとする多くのジェダイがオーダーを抜けたか、真剣に考えてはいなかったのですか?」
何人かのマスター達の顔が一気に曇った。
それもその筈、私が不手際を指摘したことは、オーダーが理解しながら半ば無視してきたことだからだ。
クローン戦争が開戦するにあたってジェダイは共和国側に立って参戦したが、それはオーダーが長らく守り続けてきた中立的な調停者としての立場を捨てたに等しい。
ならばいっそそれに合わせて組織を適合させるために改革するのが筋なのだが、あろうことかオーダーはそれを怠り、旧来のしきたりをそのままにしてきた。
そのツケの一端を、私は払わされているというわけだ。
全くもって、下らない。
「それは確かに、我々の不手際だろう」
「はえ?」
と、ここで予想外の反応をしたのはマスターウィンドゥ。ありりー、予想ならこの人、今のジェダイ万歳な感じだと思っていたんだけどなー。これは意外だ。
だが、彼の視線は未だに糾弾の色を薄めない。
「だが―――これはどういうことだ」
ブォーン。
…………会場に、沈黙が満ちる。
彼が起動したのは、私の赤いライトセーバーだ。
マスター達の私を見る目は、忽ち糾弾の色を強くしていく。
「あー、私のセーバーのことですか。素敵でしょう? ヴェネター級の甲板の色ですよ?」
「とぼけるなっ!! …………これは暗黒面、シスの色だろう。クリスタルが血を流しているのが何よりの証拠だ」
「確かに、赤は古来よりシスの色。…………ブリュッヒャー、其方のフォースは、確実に暗黒面に寄っている」
ここで、沈黙を保っていたマスターヨーダが遂に口を開く。…………流石に、庇いきれないと思ったのだろう。サイフォ=ディアスの死の真相をめぐる密かな協力関係があっただけに、残念といえば残念だ。
「いやいや、マスター達こそ早とちりではありませんか? 何も赤=シスなんて単なる俗説ではありませんか。色の価値なんて人それぞれでしょう」
「だが、貴様を放っておくことはできん。赤いセーバーを振るい、暗黒面に寄った貴様はシスの手先の恐れがある。共和国の安全のためにも、シスを野放しにすることはできない」
「その通りだ。思えば貴様は、奉仕や清廉といったライトサイドとは昔から程遠い問題児だったではないか。シスに流れるのも自明ではないか?」
「左様。シスはオーダーと共和国の敵。そして裏からこの大戦を仕組んだ極悪人だ。貴様のダークサイドは、それと通じている可能性を否定できん」
私をシスだと言って憚らないのはマスターウィンドゥを始めとする多くのマスター達。…………なんだか、無性に腹が立つ。
つい堪えきれず、頭に血が上ったまま抗議の言葉を吐き出した。
「―――お言葉ですが」
場の空気が、一気に冷え込んだ。
シャルロットが発する静かな怒り。それはマスター達にもひしひしと感じられた。
ダークサイド、と確かに呼んでいいかもしれない。実際、彼女の心には帳かかかり、先程までとは違って読みにくい。
「私は物心がついて以来、共和国の旗に忠を立てて生きてきました。それは今でも変わりません。ですが何です? セーバーの色だけで外患罪予備軍ですか。冗談も程々にして頂きたい」
まるで決壊したダムのように、シャルロットの口からは抗議と糾弾の言葉が溢れ出る。それは確かに、彼女が語らずにいた本心に違いなかった。
「大体、赤が悪という根拠も何もないでしょう。確かにブリーディングでクリスタルは赤くなるかもしれませんが、人工クリスタルは勝手に赤くなるでしょう? それに、共和国の栄誉を授かった外交船は例外なくその全身を赤く染めます。言ってしまえば、わがセーバーの色は共和国の色だ。断じて敵の色などではない。その一点については、不肖ながらも全力で抗議させていただきます」
怒涛の言葉の津波を前に、呆気にとられるマスター達。
彼女が語ったその言葉はどれも、嘘偽りのないことだ。十歩譲ってダークサイダーだとしても、彼女が共和国に向ける忠節は本物そのもの。いわば、彼女の核心部分とも言える。
それを知らずとはいえ易々と踏み抜いてしまったという事実を悟った一部のマスターは、自らの行いを内心で省みた。
―――結果、彼女のザイゲリアでの行動は不問とされた。
しかし、シャルロット・フォン・ブリュッヒャーの名はジェダイ・オーダーから除名処分とされ、ジェダイとしての地位及び共和軍における如何なる特権をも剥奪という処分が評議会によって下された。
だが、これに待ったをかけた存在がいる。
共和国宇宙軍だ。
兼ねてからこの問題について抗議していた宇宙軍は、これを好機にとシャルロットの軍籍を剥奪せず、正式に宇宙軍所属とした上で大将位に任命。従来通りの地位を約束した。
ここに、ジェダイ・ナイトとしてのシャルロットは永久に消え失せ、ブリュッヒャー宇宙軍大将とした彼女は新たな道を歩むことになった。
追伸:第46話「ローラ・サユーの戦い」にてヴィクトリー級スター・デストロイヤーの挿絵を追加しました。
次回予告
ジェダイ・オーダーを追放されたシャルロット。しかし、クローン戦争はまだ続く。
オーダーの友人達との気まずい空気に苦労しながらも、軍人として正式にスタートを切ったシャルロット。彼女の元に、新たな任務が与えられた。
次回、第52話「我が征くは星の海原」
銀河の歴史が、また1ページ……