共和国の旗の下に   作:旭日提督

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 分離主義者の輸送船団を襲撃したブリュッヒャー。
 敵の重要な戦略物資を鹵獲すべく輸送船の拿捕を図る彼女達が目にしたものの正体は、予想外のものだった。


エコーの呼ぶ声

 

 ~アクラメーターⅡ級ミディアム・フリゲート ”イストリア ”~

 

 

「敵の護衛艦を排除します。全艦、撃ち方始めです!」

 

 目の前の分離主義者の艦隊が、射程に入った。

 マスターがいないときは今まで何度もあった。緊張することはない。ただ、私は戦場を俯瞰して命じるだけでいい。

 

 既にマスターが率いるステルスコルベット部隊は展開を終えた。私の役割は、敵艦隊から護衛艦を引き剥がすこと。

 

「敵艦隊、増速!」

 

 クローンのオペレーターが、敵艦隊の変化を報告する。

 敵艦隊はミュニファスント級を前面に立て、その隙に輸送艦を逃がすつもりのようだ。

 半球を2つ横に繋げたような形の分離主義者の輸送船―――DH全能支援船は、鈍重な動きながら転進を図っている。

 

「方針に変更なしです。アグラヴェイン艦長、中央の敵フリゲートを狙って下さい」

 

「了解した。――――敵フリゲート1番艦に砲火を集中しろ。沈めるぞ」

 

「イエッサー。照準を敵1番艦に合わせます」

 

 〈イストリア〉のクワッド・ターボレーザー・キャノンと震盪魚雷発射管の矛先が、敵艦隊の先頭に位置するミュニファスント級に向けられる。

 ミュニファスントも負けじとツイン・ターボレーザやライト・ターボレーザー・タレットを向けて撃ち返す。その度に〈イストリア〉のシールドが揺られ、艦内に振動が響く。

 だが、最終的に撃ち合いを制したのは〈イストリア〉だ。

 此方は僚艦〈エンフォーサー・ワン〉とのデータリンク射撃により、敵フリゲートには効果的にダメージを与えることができたが、一方敵の主力であるミュニファスント級は単艦での能力こそアクラメーターⅡ級に勝るものの、此方の数が多いために砲火が分散している。

 

「敵1番艦撃沈!」

 

「ぬか喜びするには早いぞ。次の目標に照準を合わせろ」

 

 アグラヴェイン艦長は、すかさず敵の2番艦に砲を向けるように指示する。既に2番艦は〈ヴィンディケーター〉の砲撃で中破状態にあり、討ち取るのは容易そうに見えた。

 更に、此方のファイター隊が敵艦隊の上空に取り付き始めた。有力な空母を持たず、ファイターが乏しい分離主義者の航空戦力など、空母機動部隊を自認する私達からすれば鎧袖一触に等しい。

 

「敵2番艦、撃沈!」

 

「残敵掃討です。第二次攻撃隊発進!! こっちに向かっているコルベットを始末してください」

 

「了解。インディゴ中隊発進」

 

 敵の護衛艦隊は此方のデストロイヤーとファイターの攻撃により既にぼろぼろだ。

 ファイター戦力に余裕ができたので、待機していた予備戦力のファイター隊には、特攻じみた突撃を行う敵のDP20コルベットへの攻撃を命じる。

 そのコルベットもファイターと主力艦の攻撃により忽ちずたぼろになった。

 しかし、敵の輸送艦は2隻のCR90コルベットを伴って戦場から離脱してしまった。

 だが、その方向はマスター達が待ち構えている方角。まんまとかかりましたね。

 

「ふぅ。とりあえず、こっちは何とかなりましたね。ファイター隊を収容次第、追撃戦に移ります。各自、休息を忘れないように。駆逐艦部隊はパイロットの救出をお願いします」

 

 今回は艦艇の喪失無しでいけたものの、やはりファイター隊はどうしても損耗してしまう。

 なので駆逐艦に撃墜されたパイロットの救出を任せます。主力はもちろん、マスターの助太刀へ。無論、兵達に休息を取らせるのも忘れません。

 余裕を持って優雅たれ、とはマスターの教えです。充分な休息はヒューマンエラーを防ぐための有効な手段。押してるときほど慎重に。

 やっぱり誰でも、戦闘なんて疲れることしたら休みたいですからね。

 

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 ~ノーチラス級ステルス・コルベット ”ノーチラス ”~

 

 

「―――来ましたね。ネモ艦長」

 

「ああ。魚雷発射管一番から四番まで開け。敵コルベットを先にやる」

 

「イエッサー。魚雷発射管装填完了。いつでも行けます」

 

 アルト達に護衛艦隊を引き剥がされた敵輸送艦は、のこのこと我々が待ち受ける宙域に足を踏み入れたようだ。

 本来ならここで一気に仕留めてしまいたいが、任務は任務だ。護衛艦の排除を優先する。

 それに―――これはステルス・コルベットの隠密任務への適正を評価するのにいい機会だ。

 

 ネモ艦長の指示を受けて、コマンダー・ブラックアウトが攻撃準備を進めさせる。彼は今や珍しくなったフェーズⅠ仕様の特殊作戦部隊クローン・トルーパー・アーマーに身を包んだ隊員で、以前にもアナキンの下でステルス・シップを運用したことがある。

 彼が〈ノーチラス〉の戦術班長を任されているのも、この経歴によるものだ。

 

「潜望鏡を上げろ。照準を合わせる」

 

 潜望鏡を覗き込み、敵艦を直視するキャプテン。うん、やっぱり様になるなぁ。

 彼から伝えられた諸元をトルーパー達が魚雷にプログラムし、雷撃準備が整う。

 

「全魚雷、発射準備完了」

 

「よし、発射だ」

 

 ゴツン、と鈍い音が響く。

 

 魚雷の発射音だ。

 

 〈ノーチラス〉から発射された4本の誘導魚雷はその全てが敵コルベットに命中し炸裂した。おそらく、訳もわからぬまま沈んだことだろう。

 もう一隻のコルベットも、〈ロメオ〉が仕留めたようだ。

 

「敵コルベット撃沈」

 

「もう一隻は〈ロメオ〉が沈めたか。スパークめ、将軍にいいとこ見せようってか」

 

 僚艦の〈ロメオ〉を指揮するクローン・キャプテン、スパークを指して、ブラックアウトが独り言ちる。そういえば、彼は元々ブラックアウトの部下だったっけ。上官として、部下の成長を喜ばしく思っているのだろう。

 

「敵輸送艦に取り付くぞ、ネモ艦長。クローキング装置はそのままにしておけ。万が一ファイターに襲われたらたまらん」

 

「了解、ブリュッヒャー将軍。進路敵艦。接近する」

 

 護衛艦を排除したわが艦隊は、敵に見つからないようクローキング装置を起動させたまま目標の輸送艦に接近する。もう少しで作戦達成だ。

 

「さて、もう少しで出番ですよーアナキン。準備はいいですか」

 

「あ、ああ。―――大丈夫だ」

 

 ふむ? 少しアナキンの声色がおかしいいなぁ。これはどうしたものか。

 

「どうかしたんです? 調子悪そうですけど」

 

「いや…………何でもない。思った以上に、貴女が普通だったもので、つい」

 

「あーそのことですかー。私は別に何も思っていませんし、あの時言った通り今生の別れって訳でもない。前と同じでいいですよ」

 

「おう、…………わかった」

 

 どうも、話を聞く限りでは私と顔を合わせづらい、かぁ。別に気にすることでもないんだけどなぁ。彼、破天荒に見えて変に律儀で真面目だから、そんなとこまで気を使ってしまうのだろう。

 

「―――それでは、敵艦の制圧は任せましたよ。貴方の大隊が頼りなんですから」

 

「わかった。なに、輸送艦の一隻や二隻、僕の大隊にかかればあっという間さ」

 

 気分を切り替えて、作戦に集中する。

 既に〈ノーチラス〉は敵艦の近くまで進出した。後は艦内に乗り込み、艦を拿捕するだけだ。

 無論私という戦力も有効活用する予定ではあるのだが、当然私だけで巨大船を占拠するには人数が足りない。そこでアナキン達501大隊の出番だ。

 しかし、それなら別に私の師団でも良かったんじゃない? とは思う。わざわざアナキンを引っ張ってくる意味があるのだろうか。上の考えることは分からんなぁ。

 

「敵艦に接舷します」

 

 遂に敵艦に気付かれること無く接近に成功した〈ノーチラス〉は、敵艦のエアロックをハッキングしてドッキングポートに強制接舷。これで乗り込む準備は完了した。

 

「さてアナキン、デルタ分隊、準備はいいですか? では行きますよ。…………総員、続けぇ!! 

 

「イエッサー。ブリュッヒャー将軍に続け!」

 

 いの一番、エアロックに向けて切り込みだ。セーバーを抜き、赤を滾らせ立ち塞がるブリキ野郎共を片っ端から斬り捨てる。

 連れてきたデルタ分隊も順調に進んでいるようだ。よし、ならば一気にブリッジまで制圧してしまおう。

 

「―――将軍。人変わってませんか? アレ」

 

「ああ。話には聞いていたが、まさかここまでとは」

 

「面白そうじゃないか。レックス、出撃準備はできてるぞ」

 

「――だ、そうです。行きますか、将軍」

 

「ああ。全員、彼女に続け!」

 

 ブリュッヒャーがクローン・コマンドーを従え瞬く間に戦線を押し上げていく様を、レックスとアナキンが呆然と見守る。何せ、白兵戦時のブリュッヒャーを見るのは初めてなのだ、仕方ない。

 彼女の変わりように呆気に取られていた彼らだったが、同僚のARCトルーパー、ファイヴスの催促により自らの本分を思い出し、遅れて敵艦内への進撃を始めた。

 

 

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「ふぅ。ブリキ野郎は粗方片付きましたね。どうですアナキン。重要物資とやらは見つかりましたか?」

 

「いや、それらしいものは見てないな」

 

「そうですかぁ。いやー、敵の指揮官を斬ったのは不味かったですかね。降伏しないものだから、つい」

 

 敵艦内の掃討を粗方終えて、アナキンと合流した私。ブリッジはデルタ分隊に任せたものの、ハッキングしてもそれらしい情報は無かったとのこと。―――ガセネタだったか? 

 それとも、敵の艦長を斬るのは性急に過ぎたか。所詮ドロイドだから尋問できないしなぁと思って壊してしまった。うーん、少し反省だ。

 

「…………R2、艦内の見取図をスキャンできるか?」

 

 と、アナキンが連れてきたR2にハッキングを命じる。地味に彼を直接見たのは初めてだなぁ。

 あれ、でもハッキング自体はデルタ分隊がもうやっている筈なんだけど…………

 R2からデータを受け取ったアナキンは、なにやら考え込むような仕草を見せる。

 

「…………ここか。R2が言うには、この部屋だけ不自然にデータが改竄された形跡があるらしい。恐らく、敵の重要物資が隠されているとしたらここだろう」

 

「流石ですアナキン! さてさて、そうと決まったら突撃あるのみ。ささ、善は急げです! その部屋に向かいますよー!」

 

「あ、おい待て!」

 

 いやぁ、流石はR2と言うべきか。あのデルタ分隊でさえ見破れなかったというのに、それをいとも容易く解析してしまうとは。アナキンに撫でられて誉められている彼は、嬉しそうに揺れている。

 しかし、そこまでして隠そうとするとは只事ではありませんね。私のセンサーがびんびんします。

 

 という訳で、その部屋に向けて突撃です! さぁアナキン、私を案内するのです。

 

 ……………………………………………………

 

「ここですか」

 

「ああ。見取図ではな」

 

 正面には、分厚い扉。

 ライトセーバーで焼ききるにしても時間がかかりそうな厳重な造りだ。

 

「R2、やれるか」

 

 アナキンがR2にハッキングを指示し、彼は扉の操作用コンソールに近付く。

 程無くして、扉はいとも呆気なく開かれた。

 

 さぁて、重要物資とやらのツラを拝んで――――

 

「…………なんですか、アレ」

 

 扉の先にあったもの。

 

 それは、幾重ものケーブルやチューブに繋がれた、痩せ細った一人のクローン兵だった。

 

 一目見ただけで、彼がまともな扱いを受けていないことなど一目瞭然だ。そのあまりに非人道的な扱いに、吐き気さえ覚えてしまう。

 

「――――エコー?」

 

「…………なのか?」

 

 木霊する、二人のクローン兵の声。

 

 それは、アナキンが連れてきた501大隊の士官、レックスとファイヴスのものだった。




 次回予告

 分離主義者の魔の手からエコーを救い出したシャルロットとアナキン率いる第501大隊。彼等の手により、分離主義者の非道な人体実験の数々が白日の下に晒された。

 次回、第55話「恐るべき陰謀」
 銀河の歴史が、また1ページ……
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