共和国の旗の下に   作:旭日提督

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 分離主義者からエコーを助け出したシャルロット。
 しかし、彼の肉体は非道な人体実験の数々により大いに変貌していた。
 彼等の非人道性に絶句する共和国。戦場では降伏が躊躇われ、戦いはより一層激しさと悲惨さを増していった………


恐るべき陰謀

 ~惑星コルサント 共和国軍事作戦センター~

 

 

 分離主義者の魔の手から救出されたクローン・トルーパー、エコー。彼はただちに共和国軍事作戦センターに併設された医療センターに搬送され、治療と数々の検査を受けた。

 その結果判明したのは、分離主義者による恐るべき陰謀。いまやその陰謀は共和国軍に激震を与え、戦場の様相にまで余波が響き渡っている。

 

「…………つまり、何だ。分離主義者は我々の脳味噌から直接情報を"ダウンロード"していたという事か」

 

「はい。彼等はこれを"アルゴリズム"というコードネームで呼んでいたようです。これでは幾ら拷問に耐えたところで意味がありません。捕虜となったわが軍の高級将校に対してこの改造を施せば、本人の意思とは無関係に情報を引き出せてしまう」

 

「エコーはそのための実験台、ってところか。くそっ! 汚い奴等め」

 

 倫理を無視した人体実験の事実を前に、アナキンが拳を震わせながら毒吐いた。

 彼の同僚であっただろう501大隊の面々も、表情を強張らせながら俯いている。

 

「―――将軍。エコーの搬送準備が整いました」

 

「わかった。すぐに出発してくれ。レックス、ファイヴスと一緒に付いていくんだ。途中で敵がエコーを奪い返そうとするかもしれない」

 

「イエッサー。直ちに」

 

 現状報告に訪れたレックスは要件を追えると踵を返し、司令部を後にする。彼も平静を装ってはいるものの、響くフォースは今にも爆発しそうなほどぴりついている。直属の上官であっただけに、他の兄弟達に比べて怒りの度合いもまた違うのだろう。

 

「アナキン、ここからカミーノまでは遠い。シャトルだけでは心許ない。援軍を出そう」

 

「ブリュッヒャー? すまない、恩に着る」

 

「そういう訳だ。―――オリヴァー艦長、頼めるか?」

 

「ふぇっ!? わ、私ですか……?」

 

 と、司令室の片隅で此方に聞き耳を立てていたオリヴァー艦長を指名する。

 ここで話が自分に飛んでくるとは予想だにしなかったのだろう彼女は、間の抜けた声を上げて驚いている。

 

「君の再建第13戦隊は私の艦隊に加わるのだろう? それに、新造艦の公試運転も既に済んでいると聞いた。なら長距離航海演習も兼ねて彼の護衛を任せようと思ったのだが―――なにか不満だったかな? 」

 

「い、いえ!? この不肖エリン・オリヴァー、任務承諾致しました!」

 

「よろしい。ではオリヴァー大佐、〈レゾリュート〉の出港準備を急がせろ。明朝0500には出発だ」

 

「はいっ! 直ちに!」

 

 びしっ、と見事な敬礼を決めるオリヴァー大佐。こうして見ると、彼女の半身に付いた大火傷の後は女性としては致命的かもしれないが、軍人としてはむしろ勲章のようにすら見えてしまう。―――不謹慎だか、軍隊とはそういう気風もあるのだ。

 

「〈レゾリュート〉? …………あれはサラストで沈んだ筈じゃないか」

 

 と、ある意味予想通りなアナキンの反応。先代のレゾリュートは彼の旗艦だったのだから、驚くのも無理はない。

 

「名を継いだ二代目ですよ、スカイウォーカー将軍。貴方の名声はそれほど共和国に勇気を与えているんです。それを任されるなんて、私も鼻が高いですね」

 

「あ、ああ…………そういうものなのか」

 

 ここぞとばかりに自慢気に話すオリヴァー大佐は、普段よりも若々しく、子供らしい雰囲気だ。対してアナキンは真っ直ぐな称賛には慣れないのか、満更でもなさそうだが表情はどこかぎこちない。ふふっ、シャイなやつめ。意外とかわいいじゃないか。

 

「では、私はこれにて失礼します。出港準備がありますので」

 

 と言い残し、オリヴァー大佐は司令室を後にした。

 再建第13戦隊―――ヴェネターⅡ級艦〈レゾリュート(Ⅱ)〉、〈レディーマー(Ⅱ)〉、〈レナウン(Ⅱ)〉からなる3隻の戦隊。実力はまだまだ未知数だが、場数を踏めば必ずや優秀な部隊に育ってくれることだろう。オリヴァー大佐もああ見えてユラーレン提督の薫陶を直に受けて育った生粋の船乗りだ。ここは任せてみようじゃないか。

 

「さて…………エコーについては大丈夫でしょう。問題は…………」

 

「今回の件で、分離派の陰謀が明らかになったことだな」

 

 入れ替わりに現れたのはオビ=ワンだ。彼は組んでいた腕を離すや司令部のデスクに手を置いて語り始める。

 

「捕虜となれば、敵に情報を抜き取られる恐れが出る。現実に、これが明らかになってからは前線での玉砕が増えた。中には降伏を禁止する部隊も出るほどだ」

 

「不味いですね。……これでは戦争は余計泥沼だ。部隊の被害も増えるだろうし、なにより巻き込まれた民間への被害も計り知れない」

 

 陰謀を明らかにしたのはいいが、それが原因で戦争は更に悲惨さを増した。銀河各地では旧日本軍のような玉砕が相次ぎ、クローンの死者も増えている。

 

「しかし、分離主義者もまたダメージを負いました、マスター。彼等の中には自らの軍の非人道性を批判する動きもある。議会と軍とで、足並みが揃わなくなった」

 

 だがアナキンが指摘するように、今回の陰謀は分離主義派のソフト・パワーを大きく傷付ける結果になった。軍隊こそドゥークーにグリーヴァスと暗黒面全開の悪党(ヴィラン)共が雁首揃えているものの、分離主義を支持した市民の多くは我々と同じ、真っ当な良心を併せ持った普通の人々だ。彼等の目に今回の陰謀がどう映ったのかは想像に難くない。

 だがまぁ、我々のクローン軍も非人道的と言われてしまえば言い返せないのだがなぁ…………

 

 少なくとも言えることは、今回の件で戦争は新たなステージに進んだということだ。

 敵指揮官とジェダイ将軍、どちらも理性を持った指揮官同士だ。今までは真っ当な話し合いができれば停戦や降伏に至った例も少なくない。しかし、今後は最後の一兵まで戦う絶滅戦争、最終的にそこに行き着く戦場が増えるだろう。特に、重要な情報を握るジェダイこそ余計に降伏できなくなる。

 クローン戦争も、本来の歴史なら既に折り返しを迎えてあの"悲劇"に突き進んでいる頃だが…………これは流石に私も先が読めない。

 

 と、思考の海に沈んでいるときだった。

 扉のロックが開放され、一人のクローン・コマンダーが私の傍らに控える。

 ―――CT-01/425、ルキア。私の副官だ。

 

「将軍、通信が入っています」

 

「通信? 誰からだ」

 

 ルキアからコムリンクを受け取り、差出人の欄を見る。

 

「ハッ、最高議長府からです」

 

 差出人欄に書かれたその名前を認識したタイミングと、ルキアの報告の声が重なる。

 

 ―――――絶句。

 

 そこには、こう書かれていた。

 

 "元老院最高議長、シーヴ・パルパティーン"




 バッド・バッヂ公開記念として、今話と前話の間をエコー視点から見た番外編を公開しました。
 ちなみにこちらは弊作「夢幻航路」とのクロス企画になります。気になる方は「夢幻航路」のページからどうぞ。若干のネタバレがありますのでご容赦を。






 次回予告

 共和国元老院最高議長シーヴ・パルパティーン。
 共和国軍存続の最大の障害と認識する彼に呼び出されたシャルロットは、ある構想の実現を直々に託されることになる。
 パルパティーン最高議長が提唱した軍事改革。果たして、その真意とは。

 次回、第56話「新設!共和国軍統合作戦本部」
 銀河の歴史が、また1ページ……
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