パルパティーン最高議長から統合作戦本部設立の依頼を受けたシャルロット。
しかし、共和国軍事作戦センターに着くや否や、予想外の事態が連発する!
証人殺害容疑で収監されていたアナキン・スカイウォーカーのパダワン、アソーカ・タノの脱獄は、センター内の空気を一変させた。
シャルロットもこの脱獄劇を止めるべく、ショック・トルーパーを率いて動き始めるのであった………
~惑星コルサント 共和国軍事作戦センター~
「あれー? 居ないですねぇ、ターキーさん」
「ターキンですよ、先生。ですが妙ですね。部屋はここで合っている筈ですが」
にっくきパルパルの下を離れ、事前に通告されていた部屋に入る。
話によるとターキンが待っている筈なのだが、彼の姿はどこにもない。
「そこのトルーパー、何か知りません?」
適当にそこら辺を歩いていたショック・トルーパーを呼び止めて、事情を聞く。彼がいないのでは話が始まらない。
「ああ、ターキン提督ですか? 彼なら臨時の取り調べがあるとか。いつ戻るかは分かりませんが、留置区画にいる筈です」
とは、ショック・トルーパーAの弁。なるほど、それならここで待っていよう。
ターキンの不在を知った私は、彼はしばらく戻らないだろうと踏んで、この殺風景な広い会議室で彼を待つことにした。
だが━━━━━
ヴーッ! ヴーッ!
「警報!? 一体何が…………」
突如として、警報が鳴り響く。
《監房ブロックより囚人が逃走! 繰り返す、監房ブロックより囚人が逃走! 各員警戒態勢!》
けたたましく流れるアラームと、緊迫したアナウンス。…………なるほど。只事ではなさそうだな。軍の収容施設から逃げ出すなんて、一体何処の阿呆だろうか。
と思いながら情報端末を開いた私の目に、衝撃の名前が入り込む。
━━━アソーカ・タノ。
囚人とは、彼女のことだ。
…………あっちゃー。
そういえば、こんな事件もあったっけ。
何分クローンウォーズを最後に観たのは10年以上も前の話だ。大筋は記憶していても、細かい事件までは流石に覚えきれてない。
確か……アソーカが冤罪を吹っ掛けられる話だっけ。
だけどねぇ、ちょっと、軽率なんじゃないかな。
幾ら冤罪とはいえ、脱獄なんてしたら疑いが強まるだろうに。
それに…………軍人としても、見過ごす訳にはいかないからなぁ。
「アルト。コルサント・ガードの部隊に協力してアソーカを見つけるんだ。発見次第、足止めを頼む」
「了解です、マスター!」
アルトには足止めを命じ、アソーカ探索に向かわせる。
「アンバー先生」
「はい、シャルさん」
続いて私は先生を呼んで、とある装備を手配させた。
まだ試作品だけど、上手く使えば彼女の動きを封じられるかもしれない。
そうして準備を整えた私達は、足早に会議室を後にした。
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「やあああっ!」
「ぐっ……こいつ…………!」
ライトセーバーの光刃を受け止め、後方へ跳躍する。
共和国宇宙軍の軍服を纏い、青いセーバーの光を滾らせる女の子は、真っ直ぐに私に向かって斬りかかる。
「大人しく捕まってください、アソーカさん!」
「誰が! 捕まるなんて私はごめんよ」
二撃を受け止め、フォースプッシュで距離をとる。
その間にも後方から迫るクローン・トルーパーがひっきりなしにスタン・モードのブラスターを連射するので、セーバーで弾いて防御する。
「我がマスターのためにも、貴女には捕まっていただきます。覚悟しろー!」
「あんたのマスター? ってあのナイトシャルロット? 道理で何処かで見た顔だと!!」
体勢を立て直した女の子が再び私に斬りかかる。
鍔競り合いの最中に放たれた台詞から、私は目の前の女の子がナイトシャルロットのパダワン、アルト・エーベルヴァインだと確信した。
マスターと共にオーダーを去った彼女だが、左のもみあげには未だに三つ編みを下げている。
「ふーん、ジェダイはもうやめた癖に、まだそれ下げてるんだ」
「私は未だ、マスターから卒業したわけではありませんので。それより――大人しく捕まりなさい!!」
上段からの振り下ろし。
力に任せて放たれたそれをセーバーの刃を傾けて受け流し、すかさず右に向かって跳躍。
直後、先程まで私がいた空間をブラスターの光弾が駆け抜け、それは見事にアルトに命中してしまった。
「きゅ~ん……」
「ああっ、コマンダーエーベルヴァインが!?」
「馬鹿野郎! だからよく狙えと言っただろう!?」
射撃を誤射したクローン達の喧騒が聞こえる。
だが、これで時間は稼いだ筈だ。
私は右往左往するクローンを後に、再びパイプラインの上を駆け出して逃走を再開した。
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共和国軍事作戦センターの一角から、双眼鏡でアルトとアソーカの戦いを観察する。
結果は…………どうやらアソーカが機転を効かせて勝ったらしい。哀れアルトはショック・トルーパーの
「アルトさん、やられちゃったみたいです」
「流石に一人では厳しかったですか…………私も、彼女を見くびっていたようです」
幾らアソーカといえど、立場はまだパダワンの身。ならばアルトでも御せるかと期待したが、結果は裏目に出たようだ。まぁ、彼女にはいい訓練になっただろう。私の下にいたら、大体は模擬戦と艦隊戦ばかりだったからね。アソーカが彼女を斬ることはないと確信があったが故に、セーバーデュエルの実践機会としてもいい経験になった筈だ。
「ですが…………脱獄は脱獄です。有罪無罪は関係ない。物事には手続きというものがあると、彼女は学ぶべきだ。アンバー先生」
「はいシャルさん。アレですね」
だが、今回のアソーカの行動は褒められたものではない。切欠は無罪だろうが、脱獄という行為それ自体が犯罪なのだ。身の潔白を証明するのは、裁判の場であるべきだ。こと民主主義社会において、手続きは重要だ。幾ら正しかろうと、誰もが手続を無視すれば行き着く先は自力救済の世紀末。彼女には、それが分かっていない。
アンバー先生から弓形の機械を受け取り、右腕に装着。
矢につがえるは、失敗作の人造クリスタルを搭載したセーバー。これを至近で爆発させ、爆風で彼女の身動きを封じる。
本来は白兵戦用・兼不良在庫の失敗人造クリスタルの処分用として造ったなんちゃって"
無論、怪我のないように爆発位置は調整する。
背を向けた彼女を照準に捉え、発射。
「───ブレイク」
彼女が振り向くと同時にクリスタルを起爆。爆発規模は最低限に設定。
同時に私は床を蹴り、爆風でバランスを崩した彼女との距離を一気に詰める。
「コマンダー・ソーン、アソーカは私が追い詰める。その間に包囲を」
《イエッサー、直ちに》
コムリンクでショック・トルーパー部隊の指揮官を呼び出し、包囲網を形成させる。
私はそのままアソーカのいる方向に直進し、彼女の足止めを図った。
……………………………………………………
「!? っ」
右後方から、接近する物体が一つ。
セーバーを翻し、猛速で近付くそれを弾き返した。
「━━━え?」
ライトセーバーだ。
しかも、シスのように赤い光刃を滾らせた。
何故ライトセーバーだけが飛んで来るのか。何故暗黒面の象徴である赤を纏っているのか、疑念は尽きない。
だが、その思考は一瞬で中断された。
────ブレイク。
そう、微かな声が耳に届く。
直後━━━━━セーバーは盛大に爆発した。
「うわっ!?」
爆風で身体の制御が崩れ、地面が目前に迫る。
幸い身体に大した傷ができたわけではなかったので、硬いアスファルトに打ち付けられまいと受け身を取って仕切り直しを図る。
だが、四方八方からは忙しなく軍靴の甲高い足音が響く。━━━包囲された。
「武器を捨てろ! 両手を上げて膝をつくんだ」
私を包囲するショック・トルーパーが叫ぶ。
彼等は一様にスタン・モードのブラスターの銃口を向けながら、じりじりと摺り足で包囲の輪を縮めていく。
「わっ! 眩し、っ…………」
私を追いかけていたガンシップも追い付いたのか、眩いサーチライトの灯りが私を照らした。
━━━万事休す、かぁ…………
包囲網が完成され、隙が次々と埋められていく。黙っていれば、やがて
ここで捕まっては、私を罠に嵌めたやつの思う壺だ。ここまで事が大きくなった以上、何としてでも逃げ出して真実を白日の下に晒してやるのだ。
そのためにはまず、この難局を切り抜けなければならない。
「投降しろ、アソーカ・タノ」
ガンシップの目前に、スタっと滑らかに降りる灰色の影。
共和国の軍服の上に見慣れない黒い羽織を着た彼女━━━シャルロットは、機械的に宣告した。
マスターとはそれなりに仲が良かったみたいだけど、オーダーから暗黒面を理由に除名されたという彼女。
だが、氷のように凪いだ彼女のフォースからは、光明面どころか暗黒面すら感じない。
「誰が投降なんてするんですって! そんなの御免よ」
たまらず私は、強気に威勢を貼って言い返す。
あれは━━━━恐ろしいものだ。
身体がそう、直感している。
ヴェントレスやグリーヴァス。恐ろしい分離主義者の戦士とは腐るほど対峙していた私でも、一歩後退りするほどのプレッシャー。
━━━只者じゃ、ない。
軍人としては優秀と聞いていたけど、いつも聖堂では発明に興じるか酒を煽っていた彼女とは、到底同一人物とは思えない。
「………いいかいアソーカ、物事には順序というものがある。例え君が無実であろうと、弁明は手続に則って行われるべきだ。誰も彼もが自力救済に走ってしまえば、瞬く間に秩序は崩壊するだろう。───可能な限り、私も協力を惜しまない。だから、今は戻りなさい」
「ふーん、あんたもマスターと同じこと言うんだ。………嫌よ、私は。捕まるなんてまっぴらゴメン!」
さっきも言ったとおり、私に捕まる気なんて全くない。シャルロットはプレッシャーを弱め、諭すような口調で私の説得を試みていた。
だけど、やってもいないことで捕まるなんて馬鹿げたことなんて嫌に決まっているじゃない。だから私は戻らない。
どうせ誰も私の話を聞いてなんてくれないんだから、自分の無実は自分で勝ち取らなければならないんだ。
「───そうか。なら、仕方ありませんね」
チャキ…………
金属の、擦れる音。
腰のセーバーを抜いた彼女は、その紅く染まった光刃を私の喉元に突きつける。
「赤いセーバー…………! やっぱりアン───」
!?
咄嗟に、セーバーを上段で横凪ぎに振るう。
弾かれた赤い光刃は、再び私の喉元に向けられる。
「───ソーン、撃て」
「イエッサー!射撃開始、気絶させろ!」
それと時を同じくして、ショック・トルーパーの一斉射撃が始まる。
シャルロットの攻撃で崩れたバランスを狙ったその射撃はいやらしくて、何発かはスレスレなところを駆けていった。
だけど、初撃さえ凌げばこっちのもの!
セーバーで光弾を弾きながらバランスを整えた私はパイプラインに向けてフォースで跳躍! 一気に包囲から抜け出すことに成功した。
「ふぅ、危ない危ない…………」
配管をセーバーの熱で切り裂き、そこに身を滑らせて逃避行を再開する。
流石にクローンやシャルロットとて、この複雑な配管を隅々まで把握するけとはできない筈だ。故に、私はこの中を駆けて逃げる。
しっかし、危なかったなぁ。
まさか、あんなに怖い人だったなんて。
彼女━━━シャルロットと直接斬り結んだのは一度だけだが、あの冷たさは、暗黒面というよりむしろ機械だ。マスターと笑いあっていた彼女とはとても思えない。冷血な機械軍人、それが今の印象だ。
今回は捕縛が目的だったからいいものの、もし敵として対峙したらと思うとぞっとする。
アレは、必要があればなんだって斬ることを厭わない、人斬りだ。
何の感情も宿さない、フォースすら切り裂くような鉄の金色。恐らく"やるべきこと"しか映していないあの金色に、私はおろか、仲間すら映っていない。
━━━━今は、ここから少しでも逃げないと。
私はとにかく少しでも早く、彼女のあの金色の眼から逃れたかった。
次回予告
アソーカ・タノの殺人容疑。
この事件をめぐり、シャルロットとターキンは早くも対立を露にする。
あくまでもアソーカ有罪に拘るターキンに対し、シャルロットは別の角度からこの事件の問題点を指摘する。
次回、第58話「警備態勢課題アリ」
銀河の歴史が、また1ページ……