アソーカ・タノに掛けられた殺人疑惑は晴れて無罪放免となった。しかし、ジェダイを信じることができなくなった彼女はオーダーを去ってしまう。
一方、共和国軍事作戦センターでは統合作戦本部の開設に向け、昼夜問わず仕事に邁進するシャルロットの姿があった、
アソーカの件も一段落し、統合作戦本部の本格的な運用も秒読み段階に入った。
必要な人材を身繕い、各関係機関との折衝を進める。
そうしているうちに時はあっという間に過ぎ、今は深夜。
いわゆる、残業というやつである。
幹部といえど、忙しい職種は忙しいのだ。
「あー、ねむい…………とりあえず、今日はこの書類を片付けて…………」
私、シャルロット・フォン・ブリュッヒャーは、共和国の未来のため、共和国軍の勝利のため、今日も今日とて残業浸け。そろそろアンバー先生の補給がないとコフっつしまうかもしれません。
そんなお仕事のデスマーチの最中、脳裏を駆ける予感が一つ。
────アンバー先生?
一瞬見えたのは、アンバー先生がクローン・トルーパーに襲われるビジョン。
────不味いっ!?
眠気なんて、一瞬にして吹き飛んだ。
アンバー先生の身が危ない。それだけの理由で、全身が躍動する。
直後、気付いたら私は駆け出していた。
アンバー先生の居室までは所要がおおよそ10分ほど。微妙に遠いその距離が、今はひたすらもどかしい。
間に合えっ! 、頼む、間に合ってくれよ……!
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~共和国軍事作戦センター・居住区~
夜も深まり、静寂が支配する共和国軍事作戦センター。
コルサントにありながらネオンの喧騒とはかけ離れたこの場所に、蠢く白い影が複数。
彼等は瞬く間に音すら立てず歩哨のショック・トルーパーを殺害すると、居住区のとある一室を目指す。
彼等はとある部屋の前に辿り着くと、入口のロックを解除、就寝中と思われるターゲットに音もなく近付く。
しかし、彼等が突き刺した布団は既にもぬけの殻、直後、ロッカーの扉が盛大に吹き飛ぶ。
そして布団を突き刺していた白い影は、返礼とばかりに今度は自身がライトセーバーの光刃に貫かれていた。
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「あらあら、こんな夜分遅くに乙女の部屋へ押し掛けるなんて、とんだ礼儀知らずさん達ですねぇ」
白いセーバーで襲撃者を突き刺し、一刀両断して斬り捨てる。
サファイアちゃんが敵襲を察知してくれなかったら、このわたしでも危ないところでした。
日々の日課である研究も終わり、そろそろ就寝しようと思っていた矢先、
何かと思えば
セーバーを本来の形態ーーー
しかし敵は此方の動きを予測していたのか、廊下にも大勢のトルーパー。
「これはこれは、団体様のお通りですか。少々、きついかもしれませんねぇ」
《───解析完了です、姉さん。敵は通常のクローン・トルーパーとは違うようです。あの腕の刃には毒があります。恐らく暗殺専門の特殊部隊かと》
「ナイスサファイアちゃん、解析感謝です。ですが、となると不味いですねぇ。今のわたしは本来の形態に戻れません。生身でソレを受けたら終わりです。なので皆殺しにしちゃいましょう♪」
《了解です━━━━魔力収束、
狭い廊下という特徴を生かすべく、トルーパーの一団に向け極太の魔力砲撃を見舞う。
これでトルーパー数人は始末できたが、後方の連中は仲間を盾にしてまだ生きている。ざっと10人以上は残っているだろうか。
と、次は廊下の反対側からもう片方のトルーパーの一団が襲い来る。
敵は刃を剥き出しにしながら勢いを乗せて突撃する。
その攻撃をステッキで受けるが、思った以上に力が強い。
幾ら自己改造したこの体とて、一度バラバラにされてから造り直した間に合わせの身。やはり地力で劣る乙女の身体では腕力で男に対抗するのは難しい。
「っ、これは…………なかなか厳しいですねぇ」
しかし一人倒したところでまた別のトルーパーが死角から襲い掛かり、此方の疲弊を誘う。
加えてトルーパーの動きも室内での暗殺に特化したものなのか、狭い廊下で戦っているのにやたらとちょこまか動き回る。これでは対処が難しい。
「サファイアちゃん!」
《はい、姉さん!》
敵の動きを鈍らせるべく、サファイアの怪電波をトルーパーに向け照射する。が、これといって効果はなく、敵はまだぴんぴんとしている。
「洗脳電波は効果なし、ですか」
《カードを使いますか?》
「いいえサファイアちゃん。"敵"がどこで見ているかわかりません。なのでできるだけ使わない方が──」
恐らく、このトルーパー軍団をけしかけたのは敵の親玉に違いない。そんな状況で此方の手札を見せることは躊躇われる。
しかし、地力での突破が難しそうなのもまた事実。
さて、どうしたものか━━━━と考えていたときだった。
「!? しまっ─────」
背後を、取られた。
トルーパーの腕に取り付けられた刃が、真っ直ぐに喉元へ迫る。
咄嗟にサファイアを構えて防御するが、間に合わない。
そのときだった。
右手の紋章が燦々と輝き、視界には一面の灰色が広がる。
「───ご無事ですか、アンバー先生」
灰色の影は血のように紅い光刃を振り下ろし、白いトルーパーを両断する。
「…………シャル、さん?」
───誤発動。
咄嗟にその三文字が脳裏を過る。
だけど、そんなものはどうでもよかった。
灰色の軍服を纏った彼女は、原型さながらの機械じみた動きで瞬く間にトルーパーを斬殺し、油断なく敵に向けて刃を構える。
「お怪我はありませんか、
「は、はい───」
反り血を浴びても凛とした佇まい、人形のように生気のない冷徹な瞳。
綺麗───
初めて、人間を綺麗だと感じた。
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さて、まずは状況を整理しよう。
フォースの直感でアンバー先生の危機を感じたときは焦ったが、何とか間に合ったようだ。
だが、トルーパー1人を緊急事態とはいえ殺したのは悔やまれる。見たところ彼等はクローン。これが裏切りだとするならば、本来なら先ずは原隊復帰を呼び掛けるのが正当な手続だ。
「投降しろ! 貴官らの行いは共和国軍に対する反逆である! 刃を収めるというのなら、法の下で然るべき処分を受ける権利を保障───」
━━━━斬撃。
トルーパーからの回答は、言葉ではなく行動によって示された。
「───よろしい。ならば貴官らは逆賊だ。死ね!!」
手首を捻り、セーバーを一回転させてトルーパーを斬り殺す。
私が誰なのか、共和国軍人なら知らない者はいない。軍の管理施設内における殺人どころか、上官である私の警告を無視し、あろうことか斬りかかる。これは共和国に対する明白な反逆だ。
「コマンダーフォックス、緊急事態だ! センターを直ちに閉鎖しろ!」
《イエッサー。──何があったのですか、将軍》
───斬る
「裏切り者のクローン・トルーパーが侵入した。現在位置は東部53Eブロック。敵兵の装甲服は白と紫色の二色、両腕にバイブロブレードを装備している。見つけ次第射殺しろ」
コムリンクを通し、センターの警備を預かるコマンダーフォックスに通信。敵をこの中に閉じ込めて手配する。
その間にも敵トルーパーは絶え間なく襲い来る。
それを片手間で斬り殺しつつ、常にアンバー先生の傍に控える。
───斬る。
今度は二人纏めて横薙ぎに。
恐らく、下手人はパルパティーンだ。
彼女が私にとってどんな存在か、理解した上での行動だろう。
全くもって、腹立たしい。
だが、今は私の怒りなどどうでもいい。
裏切り者のクローン・トルーパーを如何にして排除するか、それが一番だ。
───斬る。
敵をひたすらに蹂躙し、その武芸もろとも叩き斬る。
焼けたアーマーと、肉の匂いが心地好い。
ただ殺すだけでは足りない。何人かは生かした上で、分離主義者のスパイとして公の場で処刑するべきだ。パルパティーンと分離主義者を牽制するためには、奴等を白日の下に晒すことは必須だろう。
───八人。
今まで殺したトルーパーの数だ。
少し、殺しすぎたか。
意図して軍人に徹しているとはいえ、こうも斬り心地がいいと思わず剣が進んでしまう。
残りは五人。そろそろ、どれを生かすか考えなくては。ただ殺すだけでいい段階は過ぎ去った。
「アンバー先生、最低でも一人は捕らえたい。何かあります?」
「それが、洗脳電波も通じないみたいで。……達磨にするしかありませんね」
「承知。それで行きましょう」
先生に背中を預け、先ずは眼前の二人を切り裂く。
敵の間合いをギリギリで回避し、左手のブラスターで確実に心臓を撃ち抜く。
続いてもう一人の刃は光刃で受け、セーバーに仕込んだブラスターでヘッドショット。
後方からは敵トルーパー3人が接近中。
前方の敵を排除した私は後方の敵目掛けてセーバーを投擲、敵はそれを避けるため回避軌道を取り壁伝いに移動する。
「───ブレイク」
丁度セーバーがトルーパーの真横に達したタイミングでそれを起爆。
射出装置でクリスタルを調節していないので爆発は小規模だが、至近で受けては生きてはいられまい。
私の足元に、コロコロと2つのヘルメットが転がる。
爆風が晴れた先には、胴体がひしゃげたトルーパーが二人。そして、微かに動いているトルーパーが一人。
「…………」
その動いているトルーパーの下に歩み寄り、手足をセーバーで両断する。
無論、傷口は焼いて止血。これは重要な証拠だ。生かしておかなくては。
「フォックス、敵兵一人を捕らえた。直ちに衛生兵と危険物処理班を回せ」
《イエッサー》
コムリンクを閉じ、付近を警戒━━━敵の全滅を確認。
「ふぅ、何とか終わりましたか。それより、大丈夫ですかアンバー先生。いきなり暗殺されかけるなんて、何したんです」
「いやいやシャルさん!? わたしはまだ何もしてないですからね! 計画の漏洩という線ではなさそうですが……」
「となると、純粋な襲撃目的ですか」
やはり、パルパティーンの揺さぶりと考えるべきか。余計なことしやがって。
しかし━━━━やはりと言うべきか、"後からくる"なぁ。戦闘の最中は意図して私の意識を無視していた分、いまになって敵兵を斬った感覚を思い返す。
肉を断つあの感覚…………なんとも言えない高揚感があったのは事実だ。今まで殆どドロイドの相手ばかりで一度に多人数を斬ったのは初めてだからか、昂りが収まらない。
仮に、あのとき衝動に身を任せて斬ることができたなら何と心地好かったことか。皮肉だが、マスター達が言ったように"私が暗黒面に呑まれている"こと自体は事実らしい。
ああ、邪魔くさい。
やれ好き勝手に力を振るえだの、五月蝿く喚くフォースがやかましいことこの上ない。
私は軍の司令官だぞ? そんなもの、雑念以外の何者でもない。
───今更になって気付いたか。それが私の本質。血と殺戮に快感を見出だす異常者だと自覚しろ。
うるさい、黙れ。軍人には不要な感情だ。
私は大将という銀河共和国軍の歯車の一つ。それ以外の何者でもない。
「…………参ったなぁ。余計なお荷物じゃないか」
「どうかされましたか? シャルさん」
「いいえ、此方の話です。なんでもありません」
私が急に不機嫌になったからか、それを悟ったのかアンバー先生が訝しむ表情で私を覗く。
何ともないとは答えたものの、まさか、自分にそっちの気があったとは、少々ショックではあるな。破壊と硝煙を直に感じる地上戦のときだけ妙に昂るあたり、そういう気があるとは薄々勘づいてはいたが…………
「ご無事ですか、ブリュッヒャー本部長?」
「また随分と派手なことで…………これを全部、本部長が?」
「ええ。多少厄介な敵でしたが、まぁ何とかなりましたよ。トルーパー、そこの生きた敵兵を連れていけ。治療させろ」
「イエッサー」
「オードナンスは敵の装備品を調べてくれ。クリアなものから証拠品として回収する」
「了解です、直ちに取り掛かります」
程なくして、数人のショック・トルーパーとオードナンスが現場に駆けつける。
ショック・トルーパーには敵兵の回収、オードナンスには敵の装備品の調査をそれぞれ任せて。私はアンバー先生と現場を離れた。
軍服仕様のシャルロットの設定画です。
ベースのデザインは銀河共和国軍のものと共通ですが、オリジナルにはない飾緒と肩章、襟元の階級章と赤線を追加しています。
また、オリジナルの軍服より着丈が長く、コートのように長いタイプになっています。
【挿絵表示】
次回予告
クローン・アサシンの一団を撃退したシャルロット。
彼等の扱いをめぐり、彼女はターキンと激しく衝突する。
次回、第60話「公開は隠匿に勝る」
銀河の歴史が、また1ページ……