リシ・メイズの探索を任されたシャルロットの私兵、パージ・トルーパーズの一団。
彼等はここで、銀河史のプロローグを飾る偉大なる先駆者、ラカタン無限帝国の残滓に遭遇する。
~矮小銀河リシ・メイズ ティアマト星系~
銀河系の果て、ワイルド・スペースのさらに向こう側に位置する小さな渦状銀河であるリシ・メイズ。
銀河系から続くハイパースペースレーンの終着点に位置する南部象限こそ惑星カミーノ等を有する共和国の重要策源地であるものの、それ以外の領域は未だ前人未踏の未知領域が広がるフロンティア。それがこのリシ・メイズという銀河だ。
故に、未だ知られていない領域や惑星には、時として銀河系を追われた流れ者や密輸業者が拠点を築き上げることもある。
しかし、元より外界との接触を絶たれた辺境が故に、その多くは人知れずに消えていった。
ここティアマト星系においても、知らず知らずに立ち入った哀れな密輸業者の船団が、その命を散らす時を待っていた。
「トラクタービーム固定。敵艦を捉えました。如何致しますか」
「砲撃開始だ。この拠点はまだ誰にも知られてはならない。ブリュッヒャー将軍の命令だ」
「イエッサー。全艦、データリンク完了。各砲射撃開始」
密輸業者のオーロラ級、ドラコンボート級輸送船を包囲するように展開したCR90コルベットとスランタ級コルベットの集団から、絶え間なく青色レーザーの煌きが繰り出される。
当然所詮は奴隷輸送船に過ぎない密輸業者の輸送船は瞬く間にシールドを喪い、焼け爛れたデブリ片へと姿を変える。
「目標の沈黙を確認しました」
「よし、各員持ち場に戻れ。作業を再開するぞ」
「イエッサー」
密輸業者を焼き払ったコルベットの艦隊は一斉に踵を返し、彼等の拠点───ガス巨星レグニッツァに設置された軍事要塞オービタル・ステーションへの帰路についた。
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「コマンダー、探索隊より興味深い報告が上がっています」
オービタル・ステーションへ帰還した司令官、クローンコマンダー・ガラハドの下に、部下のクローン・トルーパーが駆けつける。
「何事だ」
「ハッ、探索隊より"コルサントに類似した惑星を発見した"との報告がありました。映像データは司令室に保存しております」
「…………わかった。詳しい話はそこで聞こう」
彼は部下に促されるまま、オービタル・ステーションの最奥に位置する司令室に足を運ぶ。
そこで再生された映像は、確かに銀河共和国の首都星コルサントを思わせる、黄金の光が溢れるエキュメノポリス*1であった。
「確かに、エキュメノポリスで間違いないな。ということは、このリシ・メイズに人知れず未知の星間文明が存在していたと?」
「いえ、どうやら違うようです。惑星全土をスキャンしましたが、生命反応はありません。しかし、調査船が惑星大気圏に降下したところ複数の小型ドローンから攻撃を受けています。恐らくですが、AIと防衛機構は生きているのかと」
「無主となっても命令を実行し続ける哀れな機械、か。惑星に立ち入らない限り実害はなさそうだな」
「如何なされますか、コマンダー」
「当然、将軍には報告する。防衛機構は厄介だが、開拓に成功すれば我々はより強力な軍事拠点を得られることになる。惑星の防衛機構に対する戦力調査と侵攻計画の作成が必要だな。キャプテン、調査船には惑星のより詳細な探査を命じろ」
「イエッサー」
今や無主となったエキュメノポリス。その存在を聞かされたコマンダー・ガラハドは内心小躍りする思いであった。
伴銀河といっても銀河は銀河、広大な領域を地道に探査するも得られる成果はそう多くはなく、大半は資源に乏しい赤色矮星を中心にした小さな惑星系ばかり。拠点として優れた惑星系や、ましてや居住可能惑星の存在は大粒の宝石に勝るとも劣らない。
それを遥かに上回るような大発見を前に、指揮官たる彼のヘルメットに隠された頬は否応なく弛んでいた。
「それとコマンダー、まだ報告には続きが」
「なんだ、まだあるのか」
「ハッ。そのエキュメノポリスの衛星ですが、どうやら人間の居住に適した環境であるらしい、との報告です。宇宙空間からの観測結果を見る限り、手付かずの原野が惑星地表の大半を占めています」
続いて部下のキャプテンは、先程までのエキュメノポリスとは別の惑星のホログラム映像を表示する。
その惑星は大半を緑に覆われ、翠緑に輝いていた。
「ほう、衛星までもが資源の宝庫とは……どうやら、今日の我々はとんでもなく"ついている"ようだな」
「はい。さらに、良い知らせがもう一点。この惑星系にはどうやら巨大な宇宙ステーションが設置されているらしく、惑星とは別の人工天体の様子も確認されています。その映像がこちらです」
ホログラムが切り替わり、映像は惑星から明らかな人工物を撮したものへと移る。
球形のユニットを中心に、三枚の縦長な板のようなブロックが接続されたその宇宙ステーションは、惑星と比べても充分に巨大であり、遠方からの映像でもその姿が明白に見て取れた。
「これは…………まさか、スター・フォージか?」
「スター・フォージ…………それは何ですか、コマンダー」
しかし、コマンダーとして銀河史に関する詳細な教育を受けていたガラハドは、一目でその宇宙ステーションの正体を見抜いた。
「銀河史に登場する超兵器の一つだ。記録によれば、今から3万年以上前に先駆種族のラカタによって建設された自動兵器工場らしい。銀河系にあったそれは凡そ4000年前にあった再建シス帝国との戦争で喪われた筈だが、まさか別個体が存在したとはな」
ガラハドはライブラリー内の歴史資料にアクセスし、スター・フォージの写真を撮影された宇宙ステーションの隣に表示する。
確かに、両者の姿は瓜二つといっても過言ではないほど酷似していた。
「自動兵器工場!? だとしたら、我々はとんでもなく強力な兵器を手に入れたも同然ではありませんか、コマンダー? 将軍もさぞお喜びになるでしょうな」
「いや、そう簡単な話じゃない。記録上では、このスター・フォージはジェダイが言うところのダークサイドエネルギーを帯びていたらしい。そのエネルギーがラカタの精神に悪影響を及ぼし、最終的にはラカタン無限帝国を滅亡に追いやったという。安易に使うには危険すぎる。キャプテン、このステーションには将軍の指示があるまで触れないように探査隊に命令しろ」
「イエッサー。まさか、あれがそんな危険な代物だとは……」
ガラハドが語る歴史に戦慄を覚えたキャプテン。彼は粛々と命令通り、探索隊にガラハドの指示内容を送信した。
───だが、あれだけの容積を持ったステーションだ。スター・フォージを起動しなくとも、純粋な宇宙要塞や造船所として活用するだけでも極めて強力かつ重要な軍事拠点に成り得るか。将軍に上申してみるのも良いかもな。
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~惑星コルサント・共和国軍事作戦センター~
「シャルさんシャルさーん! お知らせですよー!」
「うん、ああ…………アンバー先生ですか。どうしたんです? こんな夜分に」
執務室で遅くまでの残業。ついうとうとしていた私の下に、勢いよくドアを開けたハイテンションなアンバー先生が駆け寄ってくる。
「パージ・トルーパーズからの作戦計画書です。どうやら重大な発見があったみたいですねー」
アンバー先生から手渡された、一枚のデータプレート。
その表題には「アーコロジー計画」と記されていた。
───発見されたエキュメノポリスへの侵攻と活用、極めつけにはスター・フォージの残骸を転用した宇宙要塞、だと…………
「くっ、あ、アハハハハッ────」
「し、シャル、さん…………?」
そこに記されていた壮大な計画の数々に、思わず腹の底から笑いが込み上げてくる。
これだけの戦略資源。これがあれば、帝国との正面対決だって夢じゃない。
正に、天の賜物と言っても過言ではないだろう。
この計画がもし完遂されれば、我々はリシ・メイズに強力な軍事帝国を築くことができる。総力ではこれから生まれるであろう銀河帝国の足下にも及ばないだろうが、地域国家として見れば大国もいいところだ。これで、磐石な生存圏の確保へ向けた道は飛躍的に短縮された。
「ふふっ、これが笑わずにいられるか。先生、どうやら天は、私達に味方しているそうですよ」
クローンコマンダー・ガラハドの名前の由来はFGO民は御存知かと思われる円卓の騎士ギャラハッド…………ではなく英海軍補助艦隊ラウンドテーブル型支援揚陸艦〈サー・ガラハド(RFA Sir Galahad,L3005)〉 になります。なので表記が異なります。
本作のヒロインその2マジカルアンバー先生の立ち絵です。普段は獣耳と尻尾を隠しているので、見てくれだけは完全に琥珀さんです。
飾緒はシャルっちとは異なり銀色。肩章の階級章は三ツ星に三本線。絶対領域です(重要)
【挿絵表示】
次回予告
いよいよ本格運用が始まった統合作戦本部。本部長のブリュッヒャーは手始めに惑星リンゴ・ヴィンダの攻略作戦を発令。作戦の総指揮を取ることになる
その最中、先鋒を務めるスカイウォーカーの部隊より、奇妙な報告が寄せられた。
次回、第62話「未知の症状」
銀河の歴史が、また1ページ……