唐突だが、私、シャルロット・フォン・ブリュッヒャーは、この世界の人間ではない。
かつては何処にでもいるような、単なる小市民に過ぎなかった私は、目が覚めたら光輝くビームサーベルを振り回していた。
―――いや、何これ。
それが、私が抱いた第一印象。
身の回りを探してみたら、以前持っていた服から何やら、娯楽品まで全てが消え去っている。
―――なんでさ。
G○○gleもtwitt○rも無く、プ◯イステーションもないこの世界、何を楽しみに生きていけば良いのだろうか。
私は一瞬で絶望した。
これが夢である可能性に期待して頬をつねってみたものの、それで目が覚める気配はない。
いや、そもそもこれが夢だとしたら、自分が死神になろうが幻想少女のお友達になろうが、それを夢だとは知覚できない。少なくとも、今までの非現実的な夢はそうだった。
唯一よかった点といえば、容姿がセ◯バー顔だったことかな? いや、髪の色薄いし、髪型もどちらかというと沖田さん寄りと言った方がいいのかも。
さて勝手知らぬこの世界、どうやって生きたものか―――なんて考えてると、その答えはあっさりと見つかった。
闊歩する着物じみた服の集団、明らかに人間ではないエイリアン、極めつけには、緑色のグランドマスター。
―――あ、ここスターウォーズの世界なんだ。
そう私が悟るのに、時間はかからなかった。
―――スターウォーズでセ◯バー顔。………ってことは、もしやセ◯バーウォーズでもやれと!?
リリィもXも見当たらないが、非現実の連続でオーバーヒートしかけていた頭はそんな頓珍漢な回答まで導き出す。
いやいや幾ら容姿が沖田さん寄りだからと言って、いきなりユニヴァースはないでしょう!
―――沖田さんなら、ウォーズじゃなくてもしやジェット!?
…………とにかく、今は気持ちを切り替えよう。
雑念を切り捨てる。先ずは何より現状把握だ。フォースを感じ、精神を落ち着かせるのだ、私。
…………うん。フォースを使って、少しはジェダイらしいことができたかも。
この世界はスターウォーズの世界。そして私はどうやらジェダイの騎士らしい。
―――詰んでる…………
絶望した。
今が何年かは分からないが、このまま行けばオーダー66で確実にあぼーん。絶望だ。
確かにスターウォーズの宇宙船とか格好いいし、クローンウォーズのファンだった私はアナキンとかアソーカとか、レックスとか好きだけどさ!
幾らなんでも、これはない。
オーダー66前に隠居したって、帝国はオーダーを離れた連中まで狩り出すキ◯◯イだ。
逃げ回る生活もそれはそれでスリルがあって楽しいかもしれないが、それはあくまで今までは傍観者だった私の感想。これからは、当事者として向き合っていかないといけない。
「―――何とかしないと、死ぬ……!」
こんな訳の分からない現状に付き合わされて、訳が分からないままモブとして死ねだって? 冗談!! こうなったらとことんまでやってやろうじゃない。
ここは愉悦部の脚本の上ではない、現実だ。なら未来は自分で切り開いていくしかないんだ。
先ずはともかく、生存圏の確保である。かの有名なかっかしてる総統閣下だって、生存圏の確保は神聖な権利だって言ってた…………気がする。
生存圏の確保の為には、軍事力が必要だ。
なんでさ! だって? 当たり前じゃない、これからできる銀河帝国とやり合うんだから。あいつら頑固だし、ジェダイの生き残りなんて絶対に認めないだろう。
そもそも、オーダー66自体、私個人はあまり好きじゃない。クローン兵だって人間なんだ。それはクローンウォーズのファンなら誰だって知ってることだ。
そのクローン達の忠誠を手玉に取ったシス卿に、一泡吹かせてやったとしたら爽快なんだろうなぁ。
…………あの議長相手に心理戦なんて、できそうにないけどね。
とにかく、帝国と相対するための準備は必要不可欠だ。それに、このまま映画通りの歴史を辿ってしまったら、銀河は混沌に叩き落とされる。ファーストなんとかやファイナルなんとかの台頭を防がないと、この銀河はめちゃくちゃだ。そんな状態で今やレジェンズの存在になったユージャンヴォングなんかに襲われたら……考えるだけで背筋が凍る。
そんな諸々の事情があるから、軍事力の整備は必要不可欠なのだ。平和主義は結構だが、非武装主義なんて論外だ。少なくとも、私は無抵抗で殺されるような聖人君子ではないんだし。
一度方針を定めたら、後はとにかくがむしゃらだった。
軍事力に必要なのは、知識と人脈と金。私はまず、知識から手を付けた。
ジェダイの少ない給金から何とか工面して、宇宙船や武器の資料を買い漁り勉強した。―――これは、意外と簡単に終わってしまった。
考えてみたら、まだ子供だったアナキンが独学でドロイドを組み立てれるような世界だ、私が考えていたものより、ずっと分かりやすかった。
―――ふふふっ、これであんなフネやこんなフネ………色々設計し放題ね!
ある程度知識をマスターした私は、手始めに小型船の基本設計を始めてみた。
記念すべき第一号は、「無限航路」のバーゼル級駆逐艦をベースにした200メートル級のフリゲート。
設計図を完成させた私は、ジェダイの任務を通して造船会社の重役と顔を合わせ、相手の興味を引き付けた。ただしクワット、てめーは駄目だ。
将来的に帝国とべったりになるクワットに近付くのは、あまりに危険過ぎる。恐らくパルパルのシンパだってうじゃうじゃいる。そんな場所にコネ作りになんて行けば、私はマスターリック=ディアスさんの二の舞だ。…………あ、間違えた、ごめんなさい、マスターサイフォ=ディアス。
そうして私はコレリアン・エンジニアリング社と顔見知りになり、バーゼル級の基本設計を密かに提供した。表向きはコレリア社の開発、ということにして。
彼等と一定の関係を築いた私は、コレリア社から1隻のCR70コルベットと、私が基礎設計を担当したバーゼル級の試作艦を受け取った。
〈シャスティフォル〉と名付けたコルベットと、バーゼル級駆逐艦〈カルデア〉、そして私が任務で鹵獲したゴザンティ級クルーザー〈スタリオン〉の3隻で、第一艦隊を編成!
艦隊を組む瞬間って、一番興奮する時だよね!
この艦隊をドロイドに任せ、未知領域の探索をさせる傍らで、唯一手元に残した〈スタリオン〉を、私は足として使っていた。
将来的には銀英伝さながらの大艦隊を目指したいが、まだまだ道程は遠い。今はまだ、バレないようにコツコツと、戦力の増強に努める。
ちなみに、パダワン時代のマスターはそのサイフォ=ディアスだったんだけど、転生してすぐ試験やら何やらで忙しく、思い出らしい思い出は、"私"が経験していない知識の中にしか残っていない。
加えて、クローン軍団創設の相談を持ちかけられたことすらない。―――彼からしたら、関係ないパダワンを巻き込みたくない、という心理だったのかもしれないが、私からすれば切っ掛けもなければ介入もできないし、介入したって、たかだか10代のパダワンにできることなんて知れている。
…………だから、私は歯痒い思いを抱きながらも、彼を救うことはできなかった。
「ナブーへ行くそうだな、シャル。…………君はもう一人前だ。立派に任務を果たして帰るのを待っているぞ」
「はい、マスター。…………マスターも、お気をつけて」
私がナブーへ発つ直前、T6シャトルでフェルーシアに赴くマスターと交わした言葉。…………多分、これが最後だ。
気をつけて、なんて言葉一つで運命なんて変わらないだろうけど、少しだけ、期待していた私がいた。
「…………はぁ。マスター、元気かなぁ」
多分、マスターは還らない。
タイミング的に、これからマスターは殺される。
「…………嫌だなぁ」
これだから、陰謀なんてものは大嫌いだ。エンタメならともかく、当事者からしたら冗談じゃない。
「…………あ、無くなった」
どうやら、手元に置いていた紅茶を、いつの間にか飲み干していたみたい。
かの高名な名将ヤン・ウェンリーにあやかって自作したブランデー入りの紅茶は、前世からの好物だ。
これを飲んでいると、何となく心が落ち着く。
…………瞑想でもしよっか。
紅茶入りブランデーも切れたことだし、目的地までは長い。
私はゴザンティのブリッジを後にして、ジェダイらしく久々の瞑想に興じることにした。
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「〈ジオノーシス〉を前へ、カターヴォに対する軌道爆撃を開始する。――――奴隷帝国など、滅んでしまえばいい」
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「オーダー66? そんな命令は知らん! 今すぐこの"暴動"を止めさせろッ!!」
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「君は私の作戦参謀ではないのかね? そしてこれは私の命令なのだ。―――この艦隊の司令官が誰なのか、分かった上での発言か? トルーパー」
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「クローン・パイロットCT-5862。貴官はわが軍のクルーザー〈ガーララ〉のブリッジを破壊し、ジェダイ将軍1名とクローン・コマンダー1名、〈ガーララ〉のブリッジクルー32名を殺害した。これは共和国に対する明確な敵対行為である。よって、当軍法会議は貴官に対し、共和国軍基本法第63条に基づき、死刑を宣告する」
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「全艦、戦闘開始!
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「敵の旗艦さえ落とせばこのバカ騒ぎは収まる。艦隊の進路をビィスに向けろ。狙うは敵旗艦ただ一隻だ」
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「―――ファースト・オーダーに対する報復核攻撃を実施する。惑星間弾道弾一番から三番まで発射用意。攻撃目標は―――イラム!」
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「―――なんだ、今のは」
ヴィジョン、というものだろうか。
夢にしては、明瞭すぎる。
転生してこの方、ヴィジョンなんてめったに見なかったんだけど………………
―――今は、考えても仕方ないか。
やはり、普通の夢なのだろうか。
あれほど明瞭だったヴィジョンが、急速に霞んでいく。
―――うん、今は、いいか…………。
目的地のタトゥイーンまであと少し。
それまで、紅茶でも飲んで休むとしよう。
―――タトゥイーンかぁ…………。あまり、行きたくない星なんだけどなぁ。