共和国の旗の下に   作:旭日提督

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「セカンドオピニオンの恩恵」

 計画に支障あり!

 クローン・トルーパーのタップが、激しい戦いの最中、上官であるジェダイ・マスター、ティプラーを撃ち殺してしまう。
 分離主義者の陰謀の可能性があるため、アナキン・スカイウォーカーと艦隊司令ショーン・キリアンはタップを精密な検査のため惑星カミーノに戻すことにした。
 その矢先、タップを乗せた医療シャトルが分離主義者に襲撃される。
 同じく分離主義者の関与を疑うシャルロットも、急ぎカミーノへと飛び立った………


陰謀

~ミッド・リム ユーサー宙域 惑星リンゴ・ヴィンダ軌道上 リンゴ・ヴィンダ宇宙ステーション近傍 ノーチラス級ステルス・コルベット ”ノーチラス ”~

 

 

「…………一番、二番発射管解放。撃て!」

 

「イエッサー。魚雷一番から二番、発射!」

 

 光学迷彩が解除されたその直後、艦首の魚雷発射管から二発の対艦プロトン魚雷が射出される。

 ステルス・シップ〈ノーチラス〉は、ある分離主義者の輸送船の追跡に駆り出されていた。

 

 事の発端は数時間前。問題行動を起こしたクローン・トルーパー、タップをカミーノに搬送するべく飛び立った医療シャトルが分離主義者に襲撃された件にあった。

 このクローン・トルーパーは戦場で上官のジェダイを射殺するも、本人の意識が混濁していたために軍部は分離主義者による何らかの攻撃の一端と判断し、カミーノでの精密検査を決めた。

 その矢先に起こったこのクローン・トルーパーの奪取は、共和国軍に更なる疑念を植え付けるには充分過ぎた。

 

 艦隊総司令官ショーン・キリアン宇宙軍中将は第3艦隊司令官ネモ少将にクローン・トルーパー、タップの奪還を命令。彼はステルス・シップ〈ノーチラス〉に乗り込み、アナキン・スカイウォーカーや501大隊と共にタップの奪還を目指していた。

 

「エンジンの破壊を確認。敵輸送艦の行き足が止まりました」

 

「よし、僕らの出番はここまでだ。後は任せた、スカイウォーカー将軍」

 

「言われなくても。さぁ行くぞ! 僕に続け!」

 

「「「イエッサー!!」」」

 

 分離主義者のゴザンティ級輸送艦のエンジンを破壊し、ステルス・モードを解除して強制接舷する〈ノーチラス〉。

 そこに繋がれたドッキングベイ目掛け、アナキンを先頭にレックス、ファイヴス等501大隊の面々が続いた。

 

「分隊に別れてタップを探すんだ。僕の分隊はブリッジに向かう。レックスは貨物室、ファイヴスは艦尾方向に向かえ」

 

「イエッサー。よし野郎共続け!」

 

「了解です、将軍!」

 

 ゴザンティに雪崩れ込んだ501大隊は船体の隅々まで散開し、ドロイドを蹴散らしながら進んでいく。途中ドロイド・コマンドー数体などの強力な敵にも遭遇したが、アナキンやレックス達熟練兵の敵ではなく全て返り討ちにされた。

 程なくしてアナキン達は奪われたタップを救出。〈ノーチラス〉へ凱旋を果たす。

 

 キリアン中将は分離主義者による再度の襲撃を警戒し、ネモ少将の旗艦であるヴェネターⅠ級艦〈ヴィンディケーター〉にタップの輸送を担当させる決定を下した。

 

 

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~矮小銀河リシ・メイズ 惑星カミーノ 首都ティポカシティ~

 

 

 着陸パットに降り立ったニュー級シャトルから降り立ち、ティポカシティの堅いリノリウムに靴を下ろす。

 無論、今回のクローン・トルーパーによるジェダイ射殺事件の調査のためだ。

 これが本人の怨恨によるものであれば事は単純で済んだのだが、事情が事情なだけにそうはいかない。

 分離主義者による工作の疑いがある以上、軍隊として本格的に動かなければならない事態だ、これは。

 

 件のクローン・トルーパーは既にカミーノアンの手による検査が為されているというが、さて。

 

 ───奴さん、どう出るかな。

 

 調査なんて、ただの名目。答え合わせ。背後関係などもう察しがついている。

 言わずもがな、"オーダー66"だ。

 クローンの生産に関与している時点で、程度の差はあれど連中、カミーノアンは"黒"。下手な動きをして"黒幕"に悟られては不味い。しかし、奴等の目論見を白日の下に晒すためには、クローンの起源に迫る必要がある。

 

 全くもって、面倒なこと極まりない。

 

 さて、何のために始めたかすら最早おぼつかないこの計画。しかし、共和国の軍人ならば黙って見過ごす訳にはいかない。戦争犯罪人に軍事法廷の裁きを下すためには、フォース等という不確定要素に頼る訳にはいかないのだ。確実な物証が必要だ。

 

「久し振りだね、大将閣下」

 

「ネモ艦長も、壮健そうで何よりです。して、問題のトルーパーは?」

 

「カミーノアンの検査が少し前に終わったところだ。はい、これが資料」

 

 先に現地入りを果たしていたネモ艦長から、報告書が封入されたデータプレートを受けとる。

 本部勤務になって以来ネモ艦長と会うのも久し振りな気がするが、今は状況が状況だ。そう暢気に挨拶しているような暇はない。

 彼もそれを察したのか、手早く此方の期待に応えてくれた。

 

 ───ふむ。カミーノアンの連中、飲料水の寄生虫を言い訳にしてきたか。

 

 歩きながらざっと資料に目を通してみたが、どうやら奴さんらはかなり無理筋な隠蔽工作に出たらしい。原作では共和国軍上層部はパルパルが牛耳っているようなものだから露見せずに済んだものの、その程度の稚拙な工作で私の目を誤魔化せるとは十年早い。いや、三年遅いかな。

 

「───お待ちしておりました、ブリュッヒャー本部長」

 

 施設の奥から、迎えらしきカミーノアンの姿が見えた。声からして、女だろう。───あの顔には見覚えがある。確か、主任医療科学者のナラ・セだったか。カリーダ・ショールズ医療センターに立ち寄った時に顔を合わせたことがあったかな。

 数多の衛兵のクローンに混じって共にいるのは、ジェダイ・マスターのシャアク・ティだ。カミーノに駐在している彼女は独特的な頭が特徴的なトグルータ族の出身で、遠目にも分かりやすい。

 

「貴女は、確か主任医療科学者の……」

 

「はい、ナラ・セです。資料にはもう目を通されたと思いますが」

 

「今回の事件の原因はリンゴ・ヴィンダに棲息する寄生虫が原因だと。ええ、既に話は聞いています」

 

「なら…………」

 

 貴女がすることは何もない筈だ、と。彼女は言外にそう告げていた。

 しかし、だからはいそうですかと軽々しく引き下がる訳にはいかない。あの報告書、恐らくナラ・セが個人的に作ったものだ。他の専門家による批判を経ていない怪文書紛いの作文を、軍が無批判に受け入れるだけでも体面が悪すぎる。

 それに───ここまで来たのだ。情報の一つや二つ、持って帰らないと意味がない。カミーノにまで乗り込んで手持ち無沙汰なんて、きっとアンバー先生に笑われる。

 

 今も先生は私の傍らに控えているが、秘書官らしく、無言で半歩後ろに佇んでいる。

 彼女の可憐ながらも妖しい瞳は「お手並み拝見ですよ、シャルさん」と、無言の圧をかけているように見えた。

 

「ならば、その寄生虫のサンプル、過去の症例、治療薬、対症療法の有無、加えて、今回の件が"分離主義者によるものではない"と断定した理由。諸々全部聞かせて貰いたいものですね」

 

「それは…………」

 

「何か問題でも? 貴女ほどの医療従事者がそう結論付けたのだ。その程度の資料、既に準備しているものだと思いましたが。それとも、すぐに提出できない理由でもありましたか?」

 

 私が資料の提出を求めた途端、あからさまに狼狽した態度を示すナラ・セ。契約やら何やらで言えないだろうとは予想していたが、ここまで分かりやすく反応するとは、ある意味拍子抜けだ。本来は、嘘が苦手で誠実な人なのかもしれない。

 だが、そんなものはここでは無意味だ。

 

「…………こればかりは、ブリュッヒャー本部長に同意します。貴女は些か、結果を急ぎすぎている。そのように感じます」

 

 ここで私に援護射撃を繰り出したのは、ナラ・セと共にいたジェダイ・マスター、シャアク・ティだ。

 

「マスターシャアク・ティ、貴女もそう思われますか」

 

「ええ。幾度か再検査を進言しましたが、悉く却下されましたので」

 

 同じく、彼女もナラ・セを疑惑の目で見ていたらしい。幾らフォースである程度人より他者の感情の機微が読み取れるジェダイとて、医療については素人もいいところ。その彼女が疑問を抱いているというのだから、ナラ・セの偽装工作がいかに稚拙かというのが窺える。

 

 ────ウーゥ、ウーゥ! 

 

 鳴り響く、警報。

 これは想定外であっただけに、少々面食らう。

 

「何事です」

 

「わかりません。原因を調査します。本部長は貴賓室でお待ちを」

 

 どうやら、なにやら厄介事らしく。

 ならば私も…………と言う前に、私は彼女達の手により個室に閉じ込められてしまった。

 

 う~ん、参ったなぁ。

 

 外には警備がわんさか出てくるし、これでは動きようがないじゃないか。

 

 

 

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 ……………………………………

 

 

「ええ、事情は大体分かりました。しかし…………人事権はあくまで我々軍のものだ。貴女のそれは越権行為に当たる」

 

「しかし、安全のためには必要です」

 

 警報が鳴り止み、事態の真相が明らかになる。

 どうやら、あるクローンが暴れたことが原因だと言うが、その理由は501大隊のクローン、ファイヴスが記憶を消去されるという処置に激昂したためだ。そもそも彼が暴れるに至った原因も、ナラ・セらカミーノアンが彼の戦友であるタップを杜撰に扱ったせいだ。故に、これはクローンの人間性を歯牙にもかけない彼等の傲慢さが招いた結果とも言える。

 

「これは軍の問題だ。彼の処遇は此方で決める。貴女達の手出しは無用だ」

 

「しかし、ここはカミーノ。そして、クローンは我々の財産です」

 

 それに、ファイヴスの身柄をカミーノアン共が好きにしようという傲慢さも気に食わない。あれは軍人だ。したがって彼の処遇は軍隊で決めるものだ。彼が共和国の軍人となった時点で、既にカミーノアンの手を離れている。人事権はこちらにあるのだ。それをカミーノアンが勝手に異動させるだと? 不愉快だ。越権行為も甚だしい。軍の長として、看破するわけにはいかない。

 

「共和国が製造代を支払った以上、彼等の身柄の所有権は我々にある。彼の罪については軍法会議で処断するし、その後の処遇についても軍の人事によって定める」

 

「幾ら本部長といえど、それはいささか暴論では?」

 

「私は一般的な法解釈を述べているに過ぎない。───それとも、君達にはCT-5555の記憶をわざわざ消去しなければならない理由でもあるのかな」

 

「それは…………今回の件とは」

 

「いいや、関係ある。バレバレなんですよ、貴女。彼が"腫瘍"の存在を明らかにしてから、貴女達はその隠蔽に最も力を入れている。私にはそうとしか見えない」

 

 ここで、私はファイヴスがタップから除去したという"腫瘍"の存在に触れた。

 それこそがオーダー66の核心、制御チップなのだが、ここでそれを明かす必要はない。

 "カミーノアンが謎の腫瘍を隠蔽しようとしている"その事実だけで事足りる。

 

「場合によっては、貴女も憲兵隊の"お世話"になることになるかもしれませんが…………それでも良いというのであれば、腫瘍を好きにするが良いでしょう。マスターシャアク・ティ」

 

「ええ。腫瘍はジェダイ・オーダーと軍が検査します。これは既定事項です。それに、ファイヴスの身柄は軍に任せるように」

 

「…………分かりました。貴女達に従います」

 

 失意の表情を浮かべたまま、ナラ・セは貴賓室を去っていく。恐らく、上司のラマ・スー首相に会いに行ったか。対応を協議するためだろう。

 

「しかし…………カミーノアンの行動は解せませんね。あれは何かを隠している」

 

「奇遇ですね。私も同じことを考えていましたよ、マスターシャアク」

 

 ナラ・セが去ったのを見届けて、マスターシャアク・ティと意見交換に浸る。

 隠してますと言わんばかりのあの態度、考えるのは誰だって同じことだ。

 

「まさか、貴女と意見が合う日が来るなんて。思ってもいませんでした」

 

「あはは…………私はオーダーでは鼻つまみ者でしたからね。仕方ありませんよ」

 

「いえ、そう謙遜なさらず。評判に反して、理性的で聡明だと」

 

「私が? 聡明? ふふっ、マスターも冗談がお上手で。私はそんな出来た人間ではありませんよ」

 

 まさか、マスターシャアク・ティからそんな言葉が飛び出してくるとは。まぁ、私の前評判を考えたら意外に思われてもおかしくないとはいえ。

 あの一件からジェダイとは険悪な関係であるのだが、マスターが温厚で理性的な方だからこそ共同戦線でナラ・セを追い詰めることができた。いやぁ、本当にありがたい。

 

「では、私は一度船に戻ります。何か異常があれば、すぐに連絡を」

 

「わかりました。それではお気をつけて」

 

 マスターシャアク・ティと別れ、私はティポカシティ近海に停泊する〈ヴィンディケーター〉へと戻る。

 

「どうだった? ブリュッヒャー大将閣下?」

 

「糸口は掴めそう、といった所ですね。いやいや、カミーノアンの石頭っぷりには思わず感服してしまいそうでした」

 

「もうシャルさんったら、本当に容赦ないんですから。ネモさんも聞きます? シャルさんの武勇伝!」

 

「いや…………僕はいい」

 

 旗艦に戻るや否や、借りてきた猫のように大人しかったアンバー先生が本性を発揮し出す。こらそこ、ネモ艦長が困っているだろう。程々にしてくれ、お願いだから。

 

「ところで、ネモ艦長」

 

「うん、何だい?」

 

「このあと、少し時間いいですか。折り入って話したいことがありまして…………」

 

 ───さて、もうあまり時間がないのもまた事実。

 ここで、第3艦隊を完全に我が物にする。

 そのためにはネモ艦長…………貴方の力が我々には是非とも必要なのですよ。




 次回予告

 タップから摘出された"腫瘍"をコルサントに送り届けるべく、カミーノを後にするシャルロット。
 しかし、同行を願い出たカミーノアンは虎視眈々と秘密の保持を狙っている。ファイヴスを議長暗殺犯に仕立て、秘密の抹消を狙う彼等。
 そんなカミーノアンに対抗するべく、シャルロットは知己のコルサント・ガードの部隊長、コマンダー・フォックスと接触を図っていた。

 次回、第64話「命令」
 銀河の歴史が、また1ページ……
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