共和国の旗の下に   作:旭日提督

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「多くの人が信じる事が正しいとは限らない」

 クローンの危機!

 友人タップが謎の死を遂げたことで、501大隊のARCトルーパー、ファイヴスは独自に調査を開始。謎のバイオチップの存在を突き止めた。
 カミーノアンの科学者ナラ・セは、チップは攻撃性を抑制するためのものであると説明するが、ファイヴスはジェダイマスター、シャアク・ティに調査の結果を報告。パルパティーン最高議長に直接この結果を報告することになった。
 一方、オーダー66の隠蔽工作を防がんと暗躍するシャルロットは、クローンコマンダー・フォックスにある命令を下した………


命令

~コア・ワールド アズア宙域 アクサム星系 惑星アナクセス軌道上 ヴェネターⅠ級スター・デストロイヤー ”ヴィンディケーター ”~

 

 

 異常を来したクローン・トルーパー、タップの脳内から摘出したバイオ・チップをコルサントの医療施設で研究するべく、その輸送任務に従事するヴェネター級艦〈ヴィンディケーター〉。

 現在この艦はコルサントの至近に位置する惑星アナクセスの付近を航行しており、ブリッジに務める当直士官達の顔には若干の気の緩みが滲んでいた。

 そのブリッジの奥深く、司令官や艦長といった高級士官にのみ与えられた専用の個室内で密談する統合作戦本部長シャルロット・フォン・ブリュッヒャー上級大将と艦隊司令官ネモ少将の表情は、ブリッジクルーとは極端なまでに対照的だ。

 

 それもその筈。ブリュッヒャー上級大将は自らの握る最高議長の陰謀に関する情報の全てをこの童顔の司令官に打ち明けて、彼の協力を求めていたのだ。

 

 

「…………あの話、本当なのかい」

 

「ええ、勿論。わざわざ私が嘘を言う必要がありますか」

 

 音響遮断フィールドを張り、ネモ艦長の問いに答える。

 私達の"計画"については半信半疑だった彼であったが、最終的には我々への協力を約束してくれた。

 

「確かに、貴女の人柄ならそれは無いと思う。だけど、どうやって対抗するつもりだい? 話を聞く限り、敵はあまりにも強大だ」

 

「抑制チップの効力を制御するナノドロイドを開発しました。既に実地試験も済んでいます。あとはこれが入った食品を、給糧艦に載せて各地のトルーパーに届けます。貴方にはその給糧艦の手配をお願いしたい」

 

「うん、わかった。了解だ」

 

「給糧艦のスタッフはこちらで選ぶ。後は………なに? ナラ・セが? それは本当か」

 

 ネモ艦長と今後の計画について打ち合わせていた矢先、コムリンクにアンバー先生からの秘匿回線で入電する。

 内容は、医務室にいるナラ・セがファイヴスに謎の薬品を投与したらしい、というものだ。

 

「先生、その薬品の中身は?」

 

《わかりません。何分あのエイリアンが四六時中見張っているもので。近付こうにもわたしではちょっと厳しいです》

 

「わかった。可能なら、隙を見てその薬品を回収して欲しいのですが、無理は言いません。ここは堅実に行きましょう。彼等が下艦したタイミングで、連中の荷物を漁る」

 

《了解しました~。ではでは、これにて失礼》

 

 ───奴が動いたか。

 不味いな。遅効性の毒なら此方がファイヴスを確保する前に手遅れになるかもしれない。この後彼はナラ・セやマスターシャアク・ティと一緒にパルパティーン最高議長に面会する予定だ。それが終わった頃を狙うか……。

 

 

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~コア・ワールド コルスカ宙域 惑星コルサント 共和国軍事作戦センター~

 

 

「なんだと!? ファイヴスが?」

 

 無事にコルサントへ戻り、雑務の処理に精を出していた最中、コルサント・ガードの司令部から報告が入電する。

 

 曰く、ファイヴスが議長を撃ち殺そうとした、らしい。

 

 ───嵌めたな! 

 

 くそっ、幾ら原作を知っていたとはいえ、もう十年以上も昔のことだ。細かいエピソードの流れなんで覚えてないっての! こんなことになるぐらいなら、メモか何かでも残しておくんだった! 

 

 あのファイヴスが議長を撃ったということは、ナラ・セが打った薬の影響か、あるいは"真相"を聞かされたか、はたまたその両方か…………どちらにせよ、彼は何らかの保護がなければ確実に殺される状態に追いやられたということは間違いない。

 そう考えると、彼は真相を聞かされたと考えた方が自然か。───急がなくては。手遅れになる前に。

 

「して、ファイヴスは何処に行った!?」

 

《ハッ、医療センターを逃亡した後の行く先は不明です》

 

「わかった。できるだけ早く掴まえてくれ。───ところで、コマンダーフォックス」

 

《はい、何でしょう》

 

「そこに政治家はいるか?」

 

《いえ、議長を含めて、誰も。ここには私の部下しかいません》

 

 ふと思い付いたことを実行するため、通信を本部長専用の秘匿回線に切り替える。既に安全なことは確認した回線だ。情報漏洩の恐れは低い。

 

「わかった。───もしファイヴスを撃つことになったら、お前が撃て。ただし、殺してはならん。殺したように見せかけるんだ」

 

《これはまた、難しい注文ですね。何故です》

 

「我々は分離主義者による関与の可能性を否定していない。できれば彼の身柄は此方で秘密裏に確保したい。そのためには、ファイヴスが死んだと見せかけることが肝心だ。ジェダイと、政治家の中にいるかもしれない売国奴を欺くために」

 

《イエッサー。そのためなら、小官も尽力を惜しみません。難しい任務ですが、何とかやってみせましょう》

 

 佇まいを正して敬礼を披露して、フォックスのホログラムは消失する。

 これで、上手くいけばファイヴスは確保できる。後は、死の偽装を完璧に近付けなくては。彼が死んだとなれば、必ず遺体は検死に回される。その検死用の偽の死体も作らなくては、この作戦は破綻してしまう。

 

「…………アンバー先生」

 

「はいはい、何ですかシャルさん。まぁ、言いたいことは何となく分かってますけど」

 

「話が早くて助かります。クローン・トルーパーの偽の死体を一個、用意して欲しい。ファイヴスのシリアルコードの偽装は済んでますか」

 

「ええ、もうバッチリですよー。後は引き渡すだけで済みます」

 

 傍らに控えていたアンバー先生が、黒い微笑みを浮かべながら耳打ちする。

 全く、この人にはいつも助けられてばかりだ。

 

「では、そのように。ああそうだ、引き渡す前に、ちゃんと撃たれた箇所と同じところに傷をつけておいて下さいね」

 

「大丈夫ですよシャルさん。それぐらいのこと、忘れてなんていませんから」

 

「ふっ、…………貴女に限って、心配は無用でしたね」

 

「わたしを誰だと思っているんですか。好謀善断なんのその、貴女のマジカルアンバーちゃんですよ。大丈夫、わたしがぜーんぶ上手く処理してあげますから。ですのでシャルさんは、どーんと構えていて下さいましね」

 

 

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「…………う、っ…………こ、こは」

 

 瞼の奥に、眩しい白色が燦々と差し込む。

 

「あっ、やっとお目覚めになりましたか」

 

 俺は、俺は…………そうだ。もう、あの悪夢は終わったんだ。唯一の心残りは、レックスに全てを伝えきれなかったこと。あのままでは、あいつは、きっと将軍を殺してしまう。俺は、それを止めるために…………

 

 クソッ。

 

 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い

 

 

───憎い

 

 

 ───俺達を騙したカミーノアンも、計画を仕組んだパルパティーン最高議長や、政治家共が。

 俺達の、兄弟の絆と命を、散々こけにしやがって。

 

「おーい、大丈夫ですかー」

 

 ───脳裏に響く、やけに間延びした暢気な声。

 俺の心証とは正反対なその声が、無性に腹立たしく感じる。

 

「だ、誰……だ…………ッ!?」

 

 目に映ったのは、統合作戦本部長の階級章をつけた、見た目だけは少女じみた一人の女。

 その薄暗い金色の眼は、まるで全てを見透かしているようで───

 

「あんたもかっ!? 議長がグルなら、本部長のあんたもグルなんだろう!? 俺をどうする気だ! 何が目的なんだ!!」

 

 咄嗟に、思考を全て目前の女に叩きつける。

 もう、何もかもが信じられない。

 俺は…………俺は……………………っ! 

 

「───君の気持ちはよく分かる。大丈夫、私は味方だ。さぁ、知っていることを話してくれ」

 

「嘘だ!! どいつもこいつも、俺を嵌めようとする! 俺は騙されないぞ! 騙されるものか!!」

 

 あの時の議長と、同じような言い回し。胡散臭い、ああ、胡散臭い。こいつもきっと同類に違いない!! 

 

「────落ち着いて。"私は味方だ"、ファイヴス。だから、大丈夫」

 

「あ、あ…………し、将……軍?」

 

 きっと、目の前の女も敵の一味に違いない。俺は改めて、明確に拒絶の意思を明らかにした。

 だが、本部長の眼差しは変わらなかった。

 彼女は身体を大きく乗り出し、拘束された俺に覆い被さるように抱きついて、耳元で優しく囁いた。

 

 その一言だけで、全身に滾っていた不信と怒りが、弛緩されたようにほぐされていく。

 

 ───この人なら、信用…………できる。

 

 俺は、議長から聞いた内容。おぞましい計画の数々、そして、"オーダー66"。────その全ての中身を、余すこと無くこの人に打ち明けた。

 

「…………ありがとう。よく頑張った。君は優秀な兵士だよ、ファイヴス。だから───今はゆっくり休むんだ。時が来たら、君には一働きしてもらうことになる。それまで、ゆっくり身体を休めておくれ」

 

 彼女の労いの言葉の数々。そのどれもが、伽藍の身体を浸していくようで、不健康な浮遊感のように心地良い。

 

 ────もしかしたら、この人なら。あの悪夢を、オーダー66を…………




 ヒロインその1、アルトちゃんの挿絵が完成しましたので公開します。


【挿絵表示】


 服装については2臨ベース、上衣のみ共和国軍服に置き換わっています。表題のとおり此方はペンドラゴン辺境伯としての姿になりますので、現時点(19 BBY)においては通常の共和国宇宙軍の軍服です。
 ちなみに階級章は一部リボンに隠れていますが、デザインは帝国のグランドモフのものと同一です。




 次回予告

 コルサントの元老院議会では、共和国の反逆者として知られる男爵、ラッシュ・クローヴィスを惑星スキピオの現銀行グループの不正を暴いた功績により銀行グループのトップに任命する議決が下った。
 しかし、彼を疑惑の目で見ていた共和国軍統合作戦本部長、シャルロット・フォン・ブリュッヒャーは、密かにネモ少将麾下のステルス・シップ艦隊を惑星スキピオへと派遣する。

 次回、EPISODE Ⅲ フォール・オブ・ザ・リパブリック 第65話「クローヴィスの台頭」
 銀河の歴史が、また1ページ……
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