共和国、分離主義者とも公正な取引を行う銀行グループ。彼等の存在は、双方にとってなくてはならない存在だ。
しかし、共和国に対する融資の滞りが発生。
パルパティーン最高議長の代理人として銀行グループの金庫惑星スキピオを訪れたパドメ・アミダラは、そこで分離主義者に寝返った旧知の議員ラッシュ・クローヴィスと再会する。
銀行グループの経営者コア5の不正を疑うクローヴィスは彼女と共に彼等の犯罪行為を突き止め、その功績を讃えて晴れて銀行グループの代表として認められる。
だが、それを疑惑の目で見ていた者達がいた………
クローヴィスの台頭
~コア・ワールド コルスカ宙域 惑星コルサント 共和国軍事作戦センター~
仕事が一息ついた束の間の休息。
業務に忙殺される私にとって、唯一と言って良い安らぎの時間だ。
アンバー先生といつものことを終えて、何紙ものホロネット・ニュースに一緒に目を通していく。
仕事柄仕方ないとはいえ政治にはあまり関わりたくないのだが、政治情勢すら知らずに戦争を戦うなんて馬鹿な真似はできない。戦争は政治の延長、とある地球の偉人が言ったように、敵味方の政治情勢を知っておくのは軍令のトップたる私の努めだ。
「…………ふむ。ラッシュ・クローヴィスを銀行グループの代表に、ですか。よく支持されましたね、こんな議決」
「この方確か分離主義者のドロイド工場に出資してませんでした? それで元老院を追放されたと記憶していたのですが」
「先生の言うとおりですね。奴は分離主義者だ。この件には裏があると見ていいだろう。…………何を仕掛けるつもりだ」
彼は銀行グループの不正を暴き、現トップであったコア5と呼ばれる5人の経営者を横領の罪で告発したという。しかし、問題はその情報の出所だ。共和国に対する融資が滞った直後にこの事件。匂わない訳がない。
「先生はどう見ます? この件」
「う~ん、わたしには政治のことは分かりかねます。ですが、分離主義者が情報源であるなら辻褄は合うかと。現トップを失脚させて自分達の都合のいいリーダーを据える。古今東西どこでも使い古された手法ですし」
「それは分かるのですが…………参りましたね。確たる証拠がない以上、軍としては動きようがない、か───。先生、第3艦隊に通信を。秘匿回線で頼みます」
流石にアンバー先生の慧眼を持ってしても、憶測以上のことは出てこない、か。だけど、分離主義者が銀行を我が物にしようとしている。それだけで充分に脅威的だ。仮にそれが事実上であったのなら、共和国に対する融資が滞るどころの話ではない。
───何とかして解決しないと。
ふと、思い浮かんだ対処方法。それを実行に移すために、愛弟子宛の秘匿回線のチャンネルを開く。
《はい、マスター! なんでしょうか》
元気いっぱいな敬礼を披露するかわいい愛弟子のホログラムが、オフィスの机上に映し出される。
「やあアルト。突然で済まないがちょっと頼みたいことができてね」
《ええ、私は何でも大丈夫です。──階級で呼ばないってことは、今回は正式な命令ではないんですね》
「ああ、個人的なお願いだ。確か、君の艦隊にはステルス・シップが配属されていたな」
《はい。つい先日受領したばかりです。まだピカピカのシャイニーですよ》
私がいつもの口調なことで察したのか、アルトも普段のような柔らかい態度で通信に応じている。
軍人という職業柄、どうしてもギスギスしてしまうときもあるからね。
「それは結構。では我が弟子に質問だ。──今回のスキピオの件、君はどう見る?」
《スキピオですか? あの、銀行グループの件ですよね》
「その通り。偉いじゃないか。ちゃんとニュースにも目を通しているね」
《もちろん。マスターの教育の賜物ですとも》
うん、えらい子えらい子。私の教えたことをしっかり守ってくれて本当に素直でいい子だ。
かわいい。
「じゃあ、君の私見を聞かせてくれるかな」
《はい、えっと…………クローヴィスは確か分離主義者でしたよね。元老院では"銀行を正常に~"とか夢みたいな威勢のいいこと言ってましたけど、本当はどうだか》
「やっぱり君もそう思うかい。実はね、私もなんだ。───そこで、君にはステルス・シップを用いてスキピオを"偵察"して欲しいんだ」
私の"お願い"を聞いた途端に、"まただよ……"みたいな呆れ顔を披露するわが弟子。うん、そういう表情もかわいいね。本当に表情がころころ変わってわかりやすい。
《うわぁ……マスター、それけっこう危ないんじゃないですか? まがりなりにもスキピオは中立地帯ですし…………》
「勿論、それは分かっているとも。だが、分離主義者が仕掛けるのならクローヴィスが代表に就いた直後だ。奴は分離主義者にとって恐らくは捨て駒に過ぎない。事を進めるときは一気に進めて、既成事実化を推し進めるだろう。そうなってしまっては手遅れだ。今回ばかりは、慎重さだけでは事を仕損じる。だから、君にはそれを防いでもらいたい」
《そういうことなら、がんばります! マスターのお願いとあらば、断るわけにはいきませんし》
「ありがとう、アルト。法律関係の諸々はこっちで何とかする。だから君は好きなだけ暴れてくれ。ああ、勿論"分離主義者が手を出した後に"だぞ?」
《分かっていますとも。お任せください》
最後にもきっちりと溌剌に敬礼して、ホログラムから去るアルト。
さて、こっちも一仕事といきますかね。
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「あれ、アナキンじゃないですかー。こんな時間にどうしたんです?」
夜もだいぶいい時間になってきた頃、衛兵からアナキンが面会に来ていると聞いて彼を通したのだが…………いつも以上に暗いな、彼。
───だ~いぶ呑まれてますねぇ、彼。
アナキンから漂う、強い暗黒面の匂い。
フォースを無視しているとはいえ、感じるものは感じてしまう。
「……だいぶ元気がないみたいですが、どうかしました?」
「あ、ああ…………貴女は、クローヴィスをどう思いますか?」
「クローヴィス? あー、あのいけすかない分離主義者の野郎ですね? 勿論疑ってますとも。奴の所業を忘れたわけじゃありませんからね」
…………ははーん。さてはアミダラ議員と揉めたな。
確か、彼女は最高議長の命令でクローヴィスと一緒にこの件の調査に関わっていた筈。嫉妬かぁーアナキン。男の嫉妬は見苦しいぞー?
「…………それは良かった。実は、僕は彼をあまり信用してなくてね。何か事が起こる前に貴女に相談しようと思ったんだが、どうやら杞憂だったみたいだ」
「わざわざそれを伝えに、いやいや、殊勝な心掛けなこと。ありがとうございます、アナキン。君の助言は心強い」
「どうも。…………話を聞いてもらっただけで、僕も随分と心が晴れたよ」
その言葉の通り、アナキンのフォースは来る前と比べたら幾ばくかは落ち着いている。───彼女との件は誰にも明かしていないからね。それを指摘するのは藪蛇ってやつか。下手に突っ込んであらぬ疑惑を与えない方が本人のため、か。
「どうも。少しは役に立てたようで何よりだ。それと───冷静さを忘れないようにな。親しい友人が分離主義者と共に居るのは不安だろう。君の懸念も分かる。しかし、そういうときこそ冷静でいなきゃならん。そうでなきゃ、助けられるものまで失ってしまうことになるからね」
「…………分かった。肝に命じるよ」
彼が去る前に一つだけ忠告を、と思って発した言葉を、噛み締めるように聞いているアナキン。…………だいぶぼかしたから大丈夫だとは思うが。
それでもやはり思うところはあったのだろうか。苦い表情が彼の顔から離れない。
「それでは、失礼。有意義な話をありがとう」
「こちらこそ。困ったらいつでも来るといい。そういう時こそ、先輩を頼るんだぞ」
席を立ち、私のオフィスを後にするアナキン。
………………少しはマシになってくれるといいんだがなぁ。これだけでは、土台無理な話か。
今話からエピソード3になります。時系列としては、CWS6の中盤から原作EP3の時間軸になります。
章の名前はスターウォーズのRTSとして有名なゲーム「エンパイア・アット・ウォー」の非公式拡張パックの一つが由来です。
次回予告
ラッシュ・クローヴィスと分離主義者の陰謀を疑うシャルロット。彼女は密かに、弟子のアルト・エーベルヴァインに頼み込んで銀行グループの惑星スキピオの偵察を依頼する。
一方その頃スキピオでは、アミダラ議員と分離主義政府の議員ベック・ラワイズの監視の下でラッシュ・クローヴィスによる引き継ぎ業務が行われていた………
次回、第66話「スキピオの戦い」
銀河の歴史が、また1ページ……