共和国の旗の下に   作:旭日提督

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「貪欲な人間は欺瞞を武器にする」

 銀行グループの不正を告発し、新たな代表に就任したラッシュ・クローヴィス。彼は元老院議員パドメ・アミダラと分離主義議会議員ベック・ラワイズの監視の下引き継ぎ業務を進めていた。
 しかしコア5の失脚にあたりクローヴィスと裏取引をしていたドゥークー伯爵は、彼に要求を呑むよう執拗に迫る。
 一方共和国宇宙軍大佐アルト・エーベルヴァインは、新型空母セキューター級とステルス・シップを引き連れてスキピオに軍を進めつつあった………


スキピオの戦い

~アウター・リム・テリトリー アルバリオ星系 惑星スキピオ軌道上 ノーチラス級ステルス・コルベット ”ビクター ”~

 

 

「独立星系連合軍です。規模は───プロヴィデンス級1、ミュニファスント級4、DH全能支援船2、DP20コルベット12です」

 

「侵攻艦隊だな。本部長の読みが当たったか。エーベルヴァイン代将とコマンダー・ソーンに連絡しろ」

 

「イエッサー」

 

 共和国宇宙軍第3艦隊に所属する、ノーチラス級ステルス・シップ〈ビクター〉。

 哨戒任務中であったこの艦は中立地帯である惑星スキピオに侵攻する分離主義者の艦隊を遠望で確認すると、クローキング装置を起動して密かにその艦隊の追尾を始めた。

 同艦の艦長を務める特殊作戦部隊のクローン・コマンダー、ブラックアウトは星系外縁部に待機していた共和国宇宙軍第3艦隊に連絡するとともに、スキピオ地表に滞在していた共和国軍に警戒を促した。

 

 このときスキピオではラッシュ・クローヴィスによる銀行グループ代表への就任引き継ぎを監督するためにアミダラ議員が派遣されていたのだが、その護衛としてコマンダー・ソーン率いるショック・トルーパーの一個中隊が追随していたのだ。

 中立地帯に入れない彼等は施設外の着陸パッドで待機を命じられていたのだが、このままでは敵のいい的になってしまう。

 

「敵艦隊はハイエナ級ボマーを中核とした爆撃編隊をスキピオに送り込んでいます。我々の存在には感付いていないようです」

 

「流石はステルス・シップ様々だな。このまま監視を続ける。敵艦隊の正確な座標位置を把握しておかんと、第3艦隊の連中が背後を取れん」

 

「イエッサー。ステルスモードのまま待機します」

 

航海士を務めるクローン航法士官は、艦長であるコマンダー・ブラックアウトの命令に従って艦をステルスモードのまま待機させる。

 

 惑星地表へ向けて侵攻する分散主義者の艦隊を、深く静かに尾行する〈ビクター〉。その数分後、独立星系連合軍の背後には無数の紅白のスターシップが現れた。

 

 

~アクラメーターⅡ級ミディアム・フリゲート ”イストリア ”~

 

 

「敵艦隊捕捉! 分離主義者の艦隊です」

 

「撃てぇ! 撃って撃って撃ちまくれ! 絶対に逃がすんじゃないぞー!!」

 

「サーイエッサー!!」

 

 旗艦〈イストリア〉を先頭に、独立星系連合艦隊へ向けて果敢に突撃するアルト・エーベルヴァイン代将麾下の第3艦隊。

 

 この艦隊の出現は、惑星スキピオへの攻撃に集中していた独立星系連合艦隊とってまさに青天の霹靂となった。

 エーベルヴァイン率いる分艦隊は火力を全て前方に集中できる形で布陣しているのに対し、独立星系連合艦隊は背後を取られたせいで全火力を集中できず、本来は性能面で格下である筈のアクラメーター級相手に苦戦していた。

 

「まさか、本当に分離主義者がスキピオを攻撃するとは。流石は本部長の慧眼ですな」

 

「えっへん。私のマスターですからね。こと戦いに関してなら、あの人の読みはだいたいいつも当たるんです。───それ以外はずぼらですけど

 

「ふむ。だが、敵が先に仕掛けてくれたお陰で此方も大義名分が立ちました。これで堂々と敵を撃てる」

 

「"最初の一撃は敵に撃たせろ"って、マスターは口を酸っぱくして言ってましたけど、このことだったんですねー。勉強になりました」

 

 優勢な状況で戦いを始めたアルトには精神的にいつも以上の余裕綽々な様子で指揮を執り、片手間でアグラヴェイン艦隊と他愛もない雑談を交わす。

 戦力的にはアクラメーター級〈イストリア〉、セキューター級艦〈プレジデント・ベルーケン〉〈ターサス・ヴァローラム〉の3隻を有する第3艦隊エーベルヴァイン分艦隊は敵艦隊と良くて互角といったところだが、既に敵フリゲート2隻を脱落させ戦力差は大きく開いていた。

 加えてヴェネター級艦を上回る圧倒的な積載量を誇る新型空母セキューター級の存在は大きく、敵から制空権を奪取しつつあるばかりかスキピオ地表に取り残されたショック・トルーパー部隊の救出にも成功しつつあった。

 

 加えてアルト達は知る由も無かったのだが、このときの独立星系連合艦隊の指揮官はドゥークー伯爵であった。彼はある陰謀を達成するためスキピオに軍を進めていたのだが、それが仇となり人生で最大級の危機を迎えていたのである。

 

 

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~プロヴィデンス級ドレッドノート ”インコンパラブル

 

 

 惑星スキピオの銀行グループを「計画」のため我が物にしようと企み軍を進めたドゥークー伯爵。彼は新たに銀行グループの代表に就任したラッシュ・クローヴィスを策略に嵌め、彼の立場を危うくすることには成功した。

 そしてこの攻撃は、本来クローヴィスと分離主義者が"仲間である"ことを演出するためだけのもので、目標が達成されたら速やかに転進する手筈だった。でなければ、わざわざドゥークーという重要人物は前線には現れない。

 しかし彼の目論見とは裏腹に、独立星系連合艦隊は戦域からの離脱に苦戦していた。

 

 ───言うまでもなく、アルト・エーベルヴァイン共和国宇宙軍代将麾下の第3艦隊の手によるものだ。

 

 スキピオへの攻撃を開始した直後、艦隊の背後に現れた1隻のミディアム・フリゲートと2隻のバトルクルーザーの存在は、ドゥークーの目算を狂わせるには充分過ぎるほどに暴力的な存在だったのだ。

 

「バトルクルーザー45、通信途絶」

 

「ア~、バトルクルーザー98、撃破サレマシタ」

 

「コルベット4002轟沈」

 

 ドゥークーの旗艦、大型プロヴィデンス級艦〈インコンパラブル〉の艦橋内では、バトルドロイドによる間の抜けた損害報告が積み重なる。しかし、受けた損害は緊張感のないバトルドロイドとは対照的にドゥークーの臓物を凍えさせるには充分なほどに甚大だった。

 

「ええい! 何故こんなところに共和国軍が展開しているのだ! キャプテン、緊急ジャンプの準備はまだかね」

 

「エー、アト2分ハカカリマス」

 

 ドゥークーは予想よりも遥かに早い共和国軍の攻撃に驚いていたものの、目的自体は果たしたためまだ幾ばくかの余裕があった。しかし、その余裕も最後のミュニファスント級が粉砕されたことで次第に焦りに変わりつつある。

 

 セキューター級艦の放つ圧倒的な艦載機の群れに遂に自艦が取り囲まれたときにはいよいよ自分一人で脱出しようと考え始めた彼であったが、それに水を差す存在がいた。

 

 ───ホログラムが起動し、彼の目の前にローブを羽織った背の高い老人の映像が現れる。

 

「!? ───マスター」

 

《随分と苦労しているようだな、ドゥークー》

 

「ははっ……滅相もございません」

 

 自らのマスターにあたる絶対的な存在、ダース・シディアスの出現に、頭を垂れて跪くドゥークー。

 シディアスの不興を買えば自分の命はないと悟った彼は、何とかこの場を納めようと焦りが止まらない頭をフルに回転させる。

 

《スキピオへの攻撃、失敗すれば、どうなるかは分かっておるだろうな》

 

「勿論ですマスター。スキピオへの攻撃自体は成功しました。アミダラ議員の目には、クローヴィスはさぞ狡猾な分離主義者として映ったでしょう」

 

《それは結構。だが、お前が撃退されてはそのインパクトも揺らぐというもの。必ず勝利せよ》

 

「仰せのままに…………」

 

 シディアスからの新たな要求を前にして、そのあまりの無理難題さに内心頭を抱えながら平伏するドゥークー。

 恐らく勝利は無理であろうが、この後に待ち受ける折檻の熾烈さを少しでも和らげるべく、彼はある推論を披露した。

 

「マスター。この戦い、恐らくはあの女の差し金かと」

 

《あの女?》

 

「はっ。元ジェダイのシャルロット・フォン・ブリュッヒャーです。あやつはジェダイに居た頃から、異様に政治感覚が鋭い奴でした。そして今は……」

 

《統合作戦本部長、か。なるほど。クローヴィスは奴に随分と疑われていたのだな》

 

「その通りかと。そうでなければ、これだけ早い増援艦隊の到着はあり得ますまい」

 

 彼の推論を耳にしながら、シディアスは顎に手を当て考え込む仕草を見せる。

 "あの女"がいよいよ計画の邪魔になるか、と。

 

《ふむ。───あれは優秀な軍人なのだが、且方の言うとおり、過ぎたるは脅威となるやもしれんな》

 

「ええ。あの女には注意を払う必要があるでしょう。あの女狐にいつ取り込まれるやもしれません」

 

《アレがもたらした情報は極めて有意義であったのだがな。我等に反旗を翻すというのであれば、処分も已む無しか》

 

「左様にございます」

 

《ではその一件は且方に任せよう。くれぐれも、余を失望させるでないぞ》

 

 外界が爆音に包まれる中、通信を終えられないドゥークー。彼の内心を知ってか知らぬか、シディアスは飄々と唐突にホログラムを切る。

 何とかマスターであるシディアスを撒けたことに安堵を覚えるドゥークーであったが、直後に訪れた衝撃で無理矢理思考は目の前の戦闘に回帰させられた。

 

 ───さて、どうしたものかな。

 

 シディアスという最大のプレッシャーは去ったものの、眼前には未だ充分な余力を残している共和国軍艦隊。まずは彼等の猛攻を退けなければ、生き残ることすらままならない状況だった。

 




今話のステラリス風イメージ画像です(笑)


【挿絵表示】



■艦艇解説

〈プレジデント・ベルーケン〉

 共和国宇宙軍エーベルヴァイン分艦隊に配属されたセキューター級艦。ヴェネター級を上回る積載量を誇る。
 艦名は大銀河戦争時に最高議長を務めたモン・カラ族の男性ベルーケンに由来。
◎登場エピソード
本作オリジナル


〈ターサス・ヴァローラム〉

 エーベルヴァイン分艦隊に属するセキューター級艦。
 艦名は1000 BBY頃にルーサンの改革を断行した最高議長ターサス・ヴァローラムに由来。
◎登場エピソード
本作オリジナル


 次回予告

 銀行グループを手中に収めた共和国は、その記念として大々的な政治パーティーを開催。分離主義者に対し、その余裕を演出していた。
 嫌々ながらその政治パーティーに出席していた統合作戦本部長シャルロット・フォン・ブリュッヒャーは、バルコニーに片隅に佇む元老院議員パドメ・アミダラの姿を見た。

 次回、第67話「砂上の楼閣」
 銀河の歴史が、また1ページ……
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