共和国の旗の下に   作:旭日提督

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「愛情は時として大樹でもあり、硝子でもある」

 銀行グループを手中に納めたパルパティーン最高議長。彼は分離主義派に自国の余裕を演出するべく、大体的なパーティーを開く。
 その席に呼ばれた共和国軍統合作戦本部長シャルロット・フォン・ブリュッヒャーは、肌に合わない場の空気に悶々とした鬱憤を抱かずにはいられなかった。
 そんな中、彼女はナブー選出の元老院議員パドメ・アミダラの姿を見る。


砂上の楼閣

~惑星コルサント ギャラクティック・シティ レベル12地区~

 

 

「駄目ですよーシャルさん。膨れっ面ばかりしていたら誰も寄ってこないじゃないですか」

 

「…………そのためですよ。ああ全く気に食わない。大体なんで私がこんな下らない政治パーティーに出席せにゃならんのですか」

 

「ここは一つ、人脈を深める好機かと」

 

「欲に目が眩んだ政治家共の利権人脈なんて深めようと思えませんね」

 

「───ほんとに筋金入りですねぇ、シャルさんってば。あはは……」

 

 コルサントの一角にあるとある高級ホテル。私達はいまそこにいる。

 あのパルパルめから政治パーティーの招待状が来たものだから嫌々出席してはいるが、なんで私に送りつけやがるのか、あの老人め。私が政治家嫌いなことを知っての嫌がらせか、とも考えたくなる。

 せめてものの抵抗にガッチガチの軍装で固めて勲章もジャラジャラ付けてやって、日和見の政治家共が近寄りにくい雰囲気を作ってやった。それでも不愉快さは消えそうになく、鬱憤は腸の中で燻り続ける。

 

「…………で、アンバー先生のそれは何なんですか。そもそも軍人のドレスコードは軍服の筈ですよね」

 

「あらぁ? もしかしてシャルさん妬いちゃってます? わたしに視線が集まっていたの♪」

 

「ぐっ、この…………」

 

 加えて先生のその格好は何なんですか。チャイナドレスみたいな大胆な服なんて着て。周りの男共の視線が腹立たしいほどに不愉快です。ああ、今すぐ軍服に着替えろと命令したいぐらいだ。

 

「っ…………、大体、アンバー先生の服装は色香が強すぎる。変な奴が引っ掛かったらどうするんです」

 

「きゃー☆シャルさんったらひょっとして、もしかしなくても独占欲強すぎます?」

 

「全く貴女という人は、他人(ひと)の心配を……」

 

「でも、情報収集には便利ですよ? ついさっきなんて、頼んでもいないのにあんな情報やこんな情報も───うふふふ、議員の先生方に"お願い"するにはまたとない奇貨になるかと! まぁ、出所の精査は必要ですが」

 

「…………つくづく、貴女が味方で本当に良かったと思いますよ」

 

 ───うん、ハニトラかな? 

 確かにアンバー先生は"見た目"だけなら可憐な美少女、と言えるぐらいにはかわいい。彼女の腹の中の黒さとは実に対照的だ。

 

「ではでは、わたしはまだまだ情報収集のお仕事がありますので♪ シャルさんはどうせ"政治家連中とは付き合いたくない~"の一点張りでしょうから、どこか人気のない場所でどうかゆっくり羽根を伸ばして下さいまし」

 

「わかりました、恩に着ます」

 

 そそくさと喧騒の中へと混ざっていくアンバー先生。彼女は巧みな話術であっという間に輪の中に入り込み、上品な作り笑いを浮かべながら談笑に耽っている。

 

 …………さて、ここは彼女の厚意に甘えるとするか。慣れない場所に長時間居たせいか、どうも気分が悪い。

 

 

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 パーティーの喧騒から離れ、一人バルコニーに腰を預けてワイングラスを片手で揺らす。

 こんな場所で供されている酒だ、これ自体はさぞ上質で高名な一品なのだろう。だけど、不思議と旨いとは感じられない。まだ不愉快さが消えないからか、酒の味に集中できていない証だ。

 

「…………ハァ。酒も不味い、人も醜い。全く、つまらないにも程がある」

 

 わざわざ着飾ってこんな気分を味わうぐらいなら、執務室で書類漬けになっていた方がまだ有意義だ。社会的には必要な行事の一つなのかもしれないが、私の目にこのパーティーはただの金持ちの道楽以上の感想を抱けない。

 

 いっそぐちゃぐちゃに出来たらなぁ、なんて大人げない感情が起き上がるが、そっと胸の内にしまい込む。餓鬼じゃあるまいし、そんなことをしても有害なだけだ。

 

「あら、貴女は?」

 

 ───ひどく懐かしい、聞き覚えのある声。

 

「…………ああ、失礼。アミダラ議員でしたか。議員先生が何故こんなところに?」

 

 顔を上げて、声の主の姿を見て確信する。

 彼女は元老院の惑星ナブー選出議員のパドメ・アミダラ議員だ。

 真○様ボイスに瓜二つな声、私としては、どちらかというとオルレアンの聖女を想起する彼女とそっくりな声。道理で、聞き覚えのある声に似ている筈だ。

 

「ちょっと外の空気を吸いたくなりまして。貴女も同じ気分なのでは?」

 

「あはは、奇遇ですね。その通りですよ。申し遅れました、共和国軍統合作戦本部長のブリュッヒャーです。どうか今後ともお見知り置きを」

 

「やはり貴女が…………アナキ、ごほん、スカイウォーカー将軍からお話は伺っていました」

 

「アナキンから? ああ、確か彼とは友人でしたね。私もよく貴女の話を聞きましたよ。元老院では有数の、勇気と誇りを持った素晴らしい方だと」

 

「そんなことはありませんわ。私はただ、必要なことをしているだけです」

 

「ご謙遜なさらず。私も貴女のことは尊敬していますよ。ホロネット・ニュースでも貴女の活躍は目に止めています」

 

 どうやら、アミダラ議員も私と同じ口か…………最近会ったアナキンの様子からすると、擦れ違いでもあったのかな。彼女も彼女で、晴れない気分が燻り続けているように見える。

 

 そういえば、アミダラ議員とは初対面だったなぁ。ナブーのウイルスラボを制圧したときは忙しかったし、謝礼は文面しか見なかったしなぁ。

 

「貴女こそ、私の故郷を救ってくださったことは感謝してもしきれません。ブルー・シャドウ・ウイルスの件、どうもありがとうございます」

 

「いえいえ、私はただ任務を果たしたまでです。当時は一介の将に過ぎない私にまで手紙を下さったお気遣い、今でも覚えていますとも」

 

「ナブーをウイルスの危機から救ってくださったのです。それぐらいは当然ですわ」

 

「ありがとうございます、勿体ないお言葉です。…………しかし、貴女という方が何故この私めに? 反戦団体にはいいように罵られてる私ですよ?」

 

 品行方正にして高潔、正にかつて抱いた彼女のイメージ通りだ。

 久しぶりに感動を覚えながらも、私はふと思い立った疑問を口にした。

 思想的に、彼女は反戦派の筈。ホロネットで反戦団体からの罵詈雑言を書かれる通り、殲滅や軌道爆撃を躊躇わない私は毛嫌いされているものかと思ったのだが…………

 

「それは仕事上の話ですわ。スカイウォーカー将軍のご友人ですもの。貴女自身が悪い人だとは思いません」

 

「これは、何と言っていいものか……気に留めていただいたこと、感謝します。これも何かの縁です。今はゆっくり飲むとしますか」

 

 私、そこまで善良ではないんだけどなぁ…………と浮かび上がる感想をそっと沈める。うん、ここは理性的にいこう。

 私の本心なんて知ったら、きっととんでもない事になるだろうしな。

 

「ええ、そうしましょう」

 

 彼女は私の左隣に並び、バルコニーに腰を預けてワイングラスに口を付ける。

 私と違って、仕草の一挙一動が透き通っていて美しい。伊達に女王を務めた訳ではないということか。彼女に施された英才教育の一端が垣間見える。

 

「…………ところで、スカイウォーカー将軍とは最近何かありました? 彼、少し落ち込んでいるようでしたが」

 

「アナキ、…………スカイウォーカー将軍、ですか。ええ。彼、私がクローヴィスと仕事をすると聞いてひどく心配なさって…………そのとき、少しばかり喧嘩を」

 

「なるほど。情に篤い彼らしい。議員の危険を見過ごせなかったのでしょう。良いところでもあり、欠点でもありますね」

 

「全くです。少しは私を信頼してくれてもいいのに、スカイウォーカー将軍ときたら……」

 

「ご安心を。彼にはそれとなく忠言しておきましたので。暫くすれば元に戻るでしょう」

 

 話題の大半は、共通の友人であるアナキンの事について。どちらも彼とは面識があるだけに、彼に関する話題は弾む。

 …………彼との破局は最大の悲劇だからなぁ。物語はバッドエンドでも美味しいが、現実はハッピーエンドの方が断絶良い。願わくは、二人には何事もなく過ごしてほしいものなのだがなぁ…………運命(Fate)とは斯くも残酷なもの、私風情が多少忠言をしたところでは、定めの手が彼等を手放すことは決してない。それが分かっているだけに、良心の片隅がぎすりと軋む。

 …………正に、砂上の楼閣、か。

 絆は深いように見えて、それでいて吹けば飛ぶほどに脆い。この二人を見ていたら、ふとそんな感想を抱く。

 

 ───やはり、酒の味は不味いままだ。

 

 傾けた杯を嗜みながら、感慨に耽る。

 全く以て、最後の最後まで不愉快極まりない席だ。

 

 

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 パーティーが終わりを迎え、軍事作戦センターの居室に帰る。当然、アンバー先生は目の毒なチャイナドレス(風)衣装のままだ。

 

「いやはや、今日は有意義な一日でした。新造戦艦の建造状況から表には出せない黒い話まで。楽しい玩具がいっぱいです」

 

「感謝します。情報収集において貴女の力は頼もしい」

 

 終始不機嫌だった私とは対照的に、アンバー先生はご機嫌だ。無論、彼女が良く働いてくれたことは頭では理解している。しているの、だが…………

 

「…………だが、貴女は少々、目の毒に過ぎる」

 

「は、え───!?」

 

 アンバー先生の両肩を掴み、力に任せてそのまま寝床へと押し倒す。

 

「貴女は周りを誘惑し過ぎです。何度、悶々とさせられたことか。心配するこっちの身にもなれ」

 

 腕を彼女の身体に回し、襟首に手を掛ける。

 

 …………吐息が近い。

 

 吹きかかるそれが余計に、私の支配欲を刺激する。

 呆気にとられていた彼女の瞳は、もう余裕綽々な妖しい光を浮かべていた。…………その事実が余計に、私の嗜虐心を駆り立てる。

 

「大体、貴女は私のものだ。それを周りの野郎共が腐った目で見るのだから、鬱憤も溜まるというもの。貴女が誰のものなのか、今日はその身にたっぷりと刻み込んであげます」

 

「あはは。アレは必要に駆られてといいますか…………やっぱりシャルさん、独占欲の塊じゃないですか。どうぞ存分にわたしを貪って下さいまし。さぞ溜まっていたんでしょう? シ・ャ・ル・さ・ん♪」

 

「───後で泣き言言っても聞きませんよ。…………今日は、とても我慢できそうにない」

 

 強引に、かつ繊細に。

 ドレスを傷付けないように手早く胸元を肌蹴させ、顕になる白い素肌に牙を立てる。

 

 啜り上げる、魔力(フォース)に満ちた命の味。

 

 あの酒とは嫌味かと思えるほど対照的に、彼女の血液は甘美だった。




 両義さん家の式さんと吹替パドメの中の人が同じ人なんて聞いただけでは到底思えないですよね( )

 マジカルアンバー先生の服装はメルブラ琥珀さんのニューチャイナ。加えて白の長手袋とガーター、レースのニーソ付きです。誘惑指数が高過ぎますね。






 次回予告

 遂に発動されたアウター・リム包囲作戦。統合作戦本部の設立目的とも言えるこの戦いの趨勢は、クローン戦争全体の戦局を左右する正に決戦と言っても過言ではない戦いであった。
 しかしその最中、共和国軍の隙を突いてコルサント上空には分離主義者の艦隊が大挙して押し寄せ、パルパティーン最高議長はグリーヴァス将軍の手により誘拐されてしまう。

 次回、第68話「コルサントの戦い」
 銀河の歴史が、また1ページ……
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