統合作戦本部長シャルロットによって共和国軍事作戦センターに集められた数人の提督たち。
彼等はここで、思いがけない祖国の真実を知ることになる。
~コア・ワールド コルスカ宙域 惑星コルサント 共和国軍事作戦センター~
「…………集まったか」
共和国軍を統べる統合作戦本部が位置する軍事作戦センタービルの一角。そこに備え付けられた数多ある会議室の一つには、数名の宇宙軍提督達の姿があった。
第3艦隊司令官ネモ宇宙軍少将
第5艦隊第104分艦隊司令官コバーン宇宙軍准将
第5艦隊第121分艦隊司令官ゴルドロフ・ムジーク宇宙軍少将
第11艦隊司令官ショーン・キリアン宇宙軍中将
統合作戦本部戦略司令室室長ミーバー・ガスコン宇宙軍准将
以上5名が、この会議室の席に座る共和国宇宙軍の将官だ。
センターに集まった彼等の姿を一瞥すると、統合作戦本部長シャルロット・フォン・ブリュッヒャー大将は重苦しい沈黙を破るかのように告げる。
「今回諸君らにご足労頂いたのは他でもない、”ある計画”について賛同していただきたいためだ。まずは、この資料を見ていただきたい」
シャルロットは自身の秘書官であるアンバー大佐に目配りすると、彼女は予め用意していた紙媒体の資料を出席者一人一人に配っていく。
「共和国元老院における内通者の可能性……? これは本当なのかな、本部長」
「左様。順を追って説明しますので」
資料の中に書かれていた表題を目にしたゴルドロフ少将が、疑問の声を発する。
それに応えるべくシャルロットは、詳細の説明へと移った。
「まずは3頁をご覧頂きたい。これはコルサントから発信された秘匿回線による通信の量と方角を表している。その中でも特に注目して欲しいのが、この旧工業地帯の廃墟付近から発信されたものだ」
会議室のホログラムにコルサントの全景を映した立体画像が投影され、そのうちの一点がシャルロットの言葉に合わせてクローズアップされる。
「この通信は高度にスクランブル化されており解読は極めて困難だったが、これはどうやら敵である独立星系連合の首都ラクサスに向かって送信されているらしいことが分かった」
ラクサス、という言葉に眉を上げる提督達。表情は変わらずとも、刹那に見開かれた微かな瞳の蠢きが彼等の心情を代弁していた。
「ラクサスだと?」
「ええ。知っての通り、ラクサスは独立星系連合の首都。敵の本拠地だ」
提督達の動揺も当然だ。
末法の星々が広がるアウター・リムの中にあって数少ない文明と繁栄を享受した星の一つ、緑溢れる地殻惑星ラクサス。
この星こそ銀河共和国の大敵にしてクローン戦争の交戦国、独立星系連合の元老院議院が置かれた首都にして、かつて彼等を率いた首魁、ドゥークー伯爵が治めていた領地なのだ。
その星に向けた通信とは即ち、”敵”に向けたものに違いない。
そう思わせるだけの価値が、この惑星にはあった。
「だが、肝心の内容が明らかでなければ証拠とは言えまい。本部長、それは理解しているのかな」
しかし、幾ら敵国首都への通信があったとて、内容と送信元が分からないことには売国奴として糾弾することすらできない。
歴戦の老提督の風格漂うショーン・キリアン宇宙軍中将は、情報の不確かさという問題点を指摘する。
それに対し、シャルロットは不敵に微笑んで返した。
「ええ、勿論。そんなこと、端から分かっていますとも。マガツ少佐、映像を再生しろ」
「了解です」
彼女の言葉を受けて、一人の青年士官───統合作戦本部宣伝室長のマガツ少佐がホログラム装置を操作する。
程なくして現れたのは、ローブに身を包んだいかにも怪しげな老人の映像だった。
「これは…………」
映像を一目見て、息を飲む参列者。
顔こそ影になってよく見えないものの、その老人の背格好は彼等がよく知る人物によく似ていた。
その最悪の可能性に思い至ったジルキン種族のガスコン准将は、思わず呟きを漏らす。
《”計画”の進捗はどうなっておる、ティラナス卿》
《ははっ、一切の遅れなく進んでおります》
老人のホログラムに続いて現れたのは、今は亡き敵国の指導者、ドゥークー伯爵。
彼が聞きなれない名で呼ばれていたことに幾人かの参列者は眉を顰めるが、通信は粛々と続いていく。
《よかろう。あの兵器───DS-1機動バトルステーションは余の治世に必要不可欠なものだ。必ずやスケジュール通りに事を進めよ。共和国にも、分離主義者にも悟られてはならんぞ》
《仰せの通りに》
通信はそこで雑音が混ざり、途切れる。
通信が終わるとともに、悲痛な沈黙が会議室を包み込んだ。
何故なら、老人の声は彼等がよく知る重要人物のそれと瓜二つだったのだから。
───元老院最高議長シーヴ・パルパティーン
他ならぬ彼等共和国宇宙軍の最高指揮官。その彼が、件の声の主だった。
「ま、まさか…………最高議長が?」
「──確かに。映像にあった此奴の口元は最高議長のそれと一致している。信じられないが…………」
ホログラムの中で唯一明確に映り込んでいた老人の口元を、パルパティーン最高議長のそれと合成してみたガスコン准将は、シャルロットの言葉が真であると確信した。
それを見た他の提督達も、既にこれを知っていたネモの一人を除いて徐々に最高議長への猜疑心を抱いてゆく。
「ふむ…………これが事実だとすると、パルパティーン最高議長はドゥークーと裏で繋がっていたと。しかし解せぬな、通信の内容では、単純に議長がドゥークーに内通しているわけではなさそうだ。彼が”ティラナス”と呼ばれていたのも気になる」
「むしろ、ドゥークーの方が服従していたようにも見えるな。しかし、目的は何だ?」
明かされた情報を元に、議論を重ねるコバーン准将とムジーク少将。
そこに、シャルロットは更なる”爆弾”を投下した。
「その件について、証言してもらいたい人物がいる。入れ」
彼女の声とともに開く会議室の扉。
そこから現れた一人のクローンは、カツ、カツと確かな足取りで室内に歩みを進めた。
額の右側にオーラベッシュで”5”と彫り込んだトルーパー…………CT-5555 ファイヴスは、居並ぶ高級将校達の階級章にも怯まずに堂々と発言する。
「───これは、私が直接奴の口から聞いた言葉です」
* * * * * * * *
「茶番だったというのか、我々の戦いは」
「だとしたら、喪ったものにどう顔向けすれば……」
ファイヴスの報告を耳にして、崩れ落ちるように慟哭の言葉を流す提督達。
辛うじて戦場で培った鋼の精神で平静を保っているものの、祖国への信頼と忠義は明らかに揺らいでいる。
一人のトルーパーが語ったパルパティーンの計画の真実。
それは、銀河を舞台とした大戦争を引き起こすことによりジェダイを消耗させて粛清し、銀河のインフラを司る大企業を手中に治めて自身の独裁体制を確立することにあった。
加えてパルパティーンは約1000年前に滅んだ欲望と暴力を是とするフォースのダークサイドを信奉する邪教”シス”の信徒であり、志を同じくするドゥークーとともにシスの悲願である銀河シス帝国の再興を目指していることも、彼等の知るところとなった。
「パルパティーンがいかに我々を欺き、共和国の旗に背いてきたか。最早諸君らの疑うところではないだろう。そこで、私は一つ提案したい」
祖国の最高指導者、そして自らが敬愛する最高指揮官。その知られざる真実を前に揺れ動く彼等に追い討ちを掛けるが如く、シャルロットの言葉は続く。
「奴の企みを砕き、この戦争で散った兵の命に報いるために。私はここに、共和国に巣食う腐敗とシス・カルトの影を撲滅するべく救国軍事会議の設立を宣言する。諸君らには、その力となってもらいたい」
───救国軍事会議。
共和国を内側から崩すことを目論む獅子身中の虫たるシス・カルト。それを暴力で打ち倒すことを目的としたその性質は、救国という結成理念を持ってしても野蛮な本質を包み隠せるものではない。
彼女のその提案は、民主主義国の軍隊と護国護民の使命に誇りを持った提督達の葛藤を呼び起こした。
しかし出席した全ての提督は遂にそれへの参加を決め、パルパティーンという強大なシス・カルトを討つべく共に志を新たにした。
次回予告
終わりの光明が見えつつあるクローン戦争。
新たに分離主義者の指導者となったグリーヴァスを捕らえるべくオビ=ワン・ケノービ将軍率いるオープン・サークル艦隊主力がコルサントの空を飛び立つ中、シャルロットは密かに古巣であるジェダイ・オーダーの最高評議会との接触を図る。
次回、第73話「前夜」
銀河の歴史が、また1ページ……
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「オーダー66? そんな命令は知らん! 今すぐこの"暴動"を止めさせろッ!!」
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「軍を引け、スカイウォーカー将軍。貴官の大隊に移動命令は出ていない」
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「お言葉ですが、違法な命令には従えません。正当であると仰るなら、その法的根拠を明らかにして頂きたい、パルパティーン最高議長閣下」
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「敵、超巨大構造物に高エネルギー反応!一等惑星級……いえ、恒星級です!!」
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「巡航艦〈オーロラ〉抜錨!メリュジーヌ分艦隊、出るぞ!!」
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「おまえが、貴女が………私のモノにならないから、ッ──!!」
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