共和国の旗の下に   作:旭日提督

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 決起の刻迫る!

 シスの暗黒郷ダース・シディアスの策略を独り追っていた銀河共和国軍統合作戦本部長シャルロット・フォン・ブリュッヒャー上級大将は、信頼の置ける数人の宇宙軍提督に”真実”を打ち明け、共和国からのシス・カルト一掃を目指す救国軍事会議を打ち立てた。
 傍受したパルパティーン最高議長の秘密回線内での通信、そしてクローン・トルーパー、ファイヴスの証言が彼等を突き動かしたのだ。

 更にドゥークーの隠されたもう一つの名、そして正気を取り戻した前最高議長フィニス・ヴァローラムの秘書シルマンの証言。これらの情報は彼等シスの野望を救国軍事会議の面々の下に晒すのに充分過ぎる衝撃を備えていた。

”ドゥークーがクローン軍を発注した可能性”

 この厄介過ぎる”爆弾”をジェダイ・オーダーの上層部と共有するべく、シャルロットは久方ぶりに古巣のジェダイ・テンプルに舞い戻った……




前夜

~コア・ワールド コルスカ宙域 惑星コルサント ジェダイ・テンプル~

 

 

 澄み渡るコルサントの青空。

 

 つい数週間前にはグリーヴァス将軍率いる独立星系連合による猛攻があったとは信じられないほどに穏やかな雲海を、蒼白の尾を引きながら押し進むヴェネター級艦の影。

 

 その影の下を潜りながら、長い石造りの階段を越える。

 

 ───ジェダイ・テンプル。

 

 ホールに並んだ巨大な立像はそのどれもが仰々しく天を睨み、禍々しい威圧感を与えている。

 

 ああ、やっぱりここは慣れないな。

 

 元はここを追い出された身の私だ、正門から入ったとはいえ、この聖堂そのものは私を快く迎え入れる気など毛頭ないのだろう。

 一歩堅い大理石の素材を踏み締める度に、全身にいいようのない緊縛感を錯覚する。

 

「来たか、シャルロット」

 

「ええ。本日はよろしくお願いいたしますね、マスターウィンドゥ」

 

 眼前に立ち塞がるは、眉間にきつく皺を寄せた黒い肌の長身のジェダイ・マスター、メイス・ウィンドゥ。惑星ハルウン・コル出身の彼は非常に卓越した剣技を持つジェダイ騎士団最強の剣士として知られ、その勇名を銀河中に轟かす英雄といっても過言ではない。

 マスターヨーダが分離主義者の侵略軍を討つべく密林惑星キャッシークに出立している今、彼はこの聖堂を一手に引き受けている事実上のジェダイのトップでもある。

 

 彼はさも不機嫌だと言わんばかりの岩のような表情を変えることなく、「ふん」と私を一瞥するだけで後に続くように身振りで促す。

 

 不愉快なのは確かだが、ここで布石を打つことは絶対に外せない一手だ。

 私は彼に促されるがままに、聖堂の奥へと歩を進めた。

 

 

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「成る程、これが…………確かに受け取った。此方でも対応を検討しよう。衝撃的な内容だが、偽りではないようだしな」

 

「よろしくお願いします。ただ、一点だけお願いが」

 

「…………何だ?」

 

 シャルロットから、彼女が調べたパルパティーンとクローン・トルーパーに関する事実が詰め込まれたデータプレートを受け取ったウィンドゥ。その内容は簡単な口頭説明でしか聞いていないものの、確かに信用に値するものだと彼のフォースは直感していた。

 

 この少女同然な元ジェダイの宇宙軍大将は確かにフォースの光明面(ライトサイド)やジェダイの戒律といったものを軽んじていたものの、こと共和国そのものに関わる事項についてはジェダイ時代から真剣に取り組んでいたのだ。個人に対する感情と、客観的な評価は切り分けて考えるべきだろうとウィンドゥは判断した。

 

 だからこそ、彼はこの気に食わない年齢詐称じみた外観の女の声に耳を傾けることにした。

 

「直接パルパティーンに対して実力を行使する際は、必ず”法的根拠”を明らかにした上でやって欲しいのです。それを物証として持ち出してもらっても構いません。何せ相手は絶大な支持を集める最高議長だ。法的正当性すら担保されない実力行使では、成功したとしても議会は絶対に認めないでしょうから」

 

「確かにそうだな。共和国は曲がりなりにも民主主義の国家…………最高議長を排除するとなれば元老院への説明は必須か。その助言に感謝しよう。誠に痛み入る内容だ」

 

 シャルロットが提示した条件。

 ”原作”の失敗を踏まえた彼女は、あくまで法の範囲内で対処するようにウィンドゥに求めた。

 彼女が軍を動かし、独自の部隊を使って集めた情報と証拠は、全てシーヴ・パルパティーンによるオーダー66を違法なものとするためのもの、いわば虎の子のカードだ。

 ウィンドゥは典型的なジェダイの価値観に嵌まった堅物ではあるものの、実直で誠実な彼ならばこのカードを想定通りに切ってくれるだろう。

 

 ───後は、彼等が勝とうが負けようが此方の知ったことではない。

 

 共和国内において決起の正当性を確保する。それさえ出来れば良いのだから。

 

「いえ、こちらこそ。何せ相手は強大です。打てる布石は全て打つべきですからね。単なる暴力だけで挑んで勝てる相手ではありませんし」

 

「貴女の言うとおりだな。……わかった。これは私が預かろう。最高評議会の他のメンバーには私から必ず伝える。無論、マスターヨーダにも」

 

「ええ、よろしくお願いします」

 

 密会は、簡潔に終わった。

 

 お互い何ら情を持ち合わせない、仕事だけの付き合いだ。用が済めばそれで終わる。

 シャルロットはそそくさと、不愉快極まりないこの建物に満ちた空気から逃げ出すように聖堂を後にした。

 

 

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「……ル、シャル、起きろ」

 

「んっ、う…………」

 

 ひどく、懐かしい声が聞こえた気がする。

 

 身体は連日の疲労が嘘のように軽く、不愉快なまでに外は眩しい。

 

 瞼の裏まで届く陽光に急かされて、不自然に軽い身体を起こした。

 

「何を寝惚けている、シャルロット。今日は鍛練だと言っていただろう」

 

「は、え…………」

 

 目の前には、もう既に亡き私のマスター、サイフォ=ディアスの姿。

 何故───との問いは刹那で消えた。

 

 ───ああ、夢か。

 

 死んだ筈の彼が居るなど、夢幻以外にはあり得ない。

 辺りを見ればここは私が大嫌いな聖堂で、私の格好も当時のパダワン時代のものじゃないか。

 

 全く、よく出来た夢だ。

 

「今更、なんで…………」

 

「何かな。私の顔に何かついていたか」

 

「いえ。ただ───何故、今になって出てきた」

 

 マスターが、立ち止まる。

 

 夢であるなら、尚更解せない。

 10年も前に死んでいながら、どうしてこのタイミングで現れたのだ、我がマスターは。

 これが只の夢であるなら目覚めれば全ては泡沫。だけどこれは───フォースが介在しているのか? 

 ジェダイを辞めて久しいが、未だに奴等は私をフォースの導きとやらから離すつもりはないらしい。皮肉なことに、それをひしひしと感じられるのは私が元ジェダイだったからか。

 

「思い悩む弟子の力になりたいと願うのは、師として当然のことだろう。さぁ、私の後についてきなさい。そうすれば、君が望む答えが全て得られる」

 

 振り返り、手を差し伸べるマスター。

 その柔らかな声色とは対照的な()()()()()()()()()()が、私を見つめてにたりと嗤った。

 

「答えも、力も、全てが得られるのだ。()()()()は心地好いぞ」

 

 気味が悪いぐらいに嗤うこの人の形をしたナニカは、それで私が応じるとでも思っているのだろうか。その表情はあまりにも滑稽だ。

 

「お言葉ですが───」

 

 冷水を浴びせるように。

 身の程を弁えないこの人形に、明白な拒絶を。

 

「貴方の助けなど要りません。私が信頼するのは確かな証拠と鉄の暴力、それだけです」

 

 私が信じるのはただ一つ、我が旗の下に集う鋼の艨艟。即ち軍事力だけだ。

 もう私はジェダイじゃない。事を成すには、フォースなどという曖昧なものには頼れない。

 

「泡沫に消えるフォースなどは───」

 

 腰に下げたセーバーを抜く。

 紅い光刃が迸るその瞬間が、気の遠くなるほど緩やかだ。

 

「刹那の花と消えるがいい」

 

 縮地。

 

 奴の身体をすり抜けるその一瞬で、胴に踏み込む。

 斬ったという確かな感触とセーバーが焼き切る焦げた音が、人形の絶命を何よりも如実に物語る。

 上と下が泣き別れと崩れ落ちる人形は、最期まで気味の悪い微笑みを浮かべていた。

 

「…………一つだけ言うとすれば」

 

 セーバーの光刃を収め、腰に戻す。

 人形は灰になって霧散して、最早跡形もなく消え去っていく。

 しかし、手向けがないのは哀れだろう。

 せめて、一つぐらいは誉めてやらんとわざわざ出てきたコイツも浮かばれないだろうしな。

 

「──良い斬り心地でした、()()()()

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