共和国の旗の下に   作:旭日提督

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 オーダー66、発令!

 最高議長シーヴ・パルパティーンはメイス・ウィンドゥらによるオフィス襲撃を口実に、これをジェダイによるクーデターだと公言。ジェダイを根絶やしにするべくオーダー66を命令しアナキン・スカイウォーカー改めダース・ベイダーにジェダイ聖堂襲撃を指示。
 その一方で、ジェダイの逮捕行為の正当性を崩すべく政治工作に打って出ていた。

 一方、オーダー66による各戦区の混乱に忙殺される統合作戦本部では、これに対抗するべくシャルロット・フォン・ブリュッヒャー宇宙軍上級大将による次なる一手が打たれようとしていた………


共和国グランド・アーミー有事対応命令

~コア・ワールド コルスカ宙域 惑星コルサント 共和国軍事作戦センター~

 

 ディスプレイは真っ赤に染まり、各戦線の異常を知らせるアラートが鳴り響く。

 

 そして繰り返し再生されているのは、共和国最高議長(パルパティーン)の声でナニカを囁くフードを被った老人のホログラム。

 

「第501大隊、応答せよ! 繰り返す、第501大隊、応答せよ!! 貴官らに移動命令は出ていない!」

 

「マイギートーの第21新星兵団が潰走! 司令官のムンディ将軍は一部兵士の裏切りに遭い戦死との報です。マイギートー戦線各地で混乱が続いています」

 

「本部長!各戦区宛に最高議長を騙る謎のホログラム通信が……!! "オーダー66"なる命令を実行せよと繰り返しています!」

 

 この日の統合作戦本部は異常なまでの喧騒に包まれていた。作戦指揮の際は大なり小なり指示や報告の声が飛び交うのは日常だったが、混乱や疑心を含んだ今日のそれはいつになく浮き足立って聞こえる。

 オペレーター達から各戦区の緊急事態を告げる報告が私の脳内に一気に入り込んできて、ただでさえ苛立っている頭が割れそうなぐらいにズキズキと痛む。

 

「オーダー66? そんな命令は知らん! 今すぐこの"暴動"を止めさせろッ!!」

 

 ガンッッ!! 

 

 苛立ちに堪えかねて、思わずデスクを叩いて怒号してしまう。

 事態は一刻を争うというのに、私は頭はいざという時には役に立たないどころか足手まといにしかならない。

 余計な事は考えるな、シャルロット。今は軍人として成すべきを成す刻。ここで私がしゃんとしないと、私と先生の計画が台無しだ。

 

「ですが将軍。この命令が"共和国グランド・アーミー有事対応命令第66号"を示しているとしたらむしろ我々が従うべきなのでは」

 

 ───ああ、うるさい。

 

「そうならそうで正規の手続を踏めばいいだけだろう。第一、こんな怪しさ満点のホログラムで"命令"なんて言い張る時点で偽物だ。これは暴動として処断する。異論は許さないぞコマンダールキア!」

 

「し、しかし…………あまりに性急に過ぎるのでは。一度議長府に問い合わせてからでも…………」

 

 アンバー先生がいないからと、参謀役として隣に置いていたCT-01/425 コマンダールキア。開戦以来私の副官を努めてきた彼のことは信頼してはいるのだが、この場でそう言われては折角収まりかけていた苛立ちも沸き立つというもの。

 

 ───だからなのか。らしくなく、払うように問い詰めてしまう。

 

「君は私の作戦参謀ではないのかね? そしてこれは私の命令なのだ。―――ここの司令官が誰なのか、分かった上での発言か? ()()()()()

 

「…………イエッサー」

 

 わかっている。こんなものは八つ当たりだ。下らないことにかまけている場合なんかじゃないのに。いい加減、切り替えろ。

 

「───マイギートー戦区に命ずる。第21新星兵団を後退させ速やかに惑星地表から退避。オリヴァー准将の第16戦隊を増援として急行させろ」

 

「了解!!」

 

「コルサントの軍の動きはどうなっている。501大隊以外に独断で行動する部隊はないか?」

 

 先ずは潰走する各戦区の再建が優先だ。

 前線で指揮官を失い混乱する各部隊を後退、再編させて戦線を建て直す。

 

「ハッ! 今のところ動きはありません」

 

「わかった。───私の権限において全軍に達する。各部隊は共和国グランド・アーミー有事対応命令第65号の2を実行せよ」

 

「しょ、将軍!? 正気ですか!!?」

 

「コマンダー。命令を直ちに実行せよ」

 

 ───共和国グランド・アーミー有事対応命令第65号。

 

 本来であれば、元老院が最高議長に軍の指揮能力なしと判断した場合に発動される命令だ。

 その内容は、必要に応じて最高議長を逮捕ないしやむを得ない場合は殺害するというもの。

 改正前の条文においてはこの命令を発令することができるのは共和国元老院又は保安評議会とされていたが、統合作戦本部の設立に伴い以下の条文が追加された。

 

────────────────────

 

 共和国グランド・アーミー有事対応命令第65号の2

 

 統合作戦本部長は、下記に掲げる事項のうち1つ以上の条件を満たした場合、前条の命令を実行できるものとする。

 ①最高議長が共和国の敵国と通謀し、尚且つその証拠に蓋然性があるとき。

 ②共和国元老院が前条の命令の審議中、敵国の攻撃その他の事情により壊滅したとき。

 ③保安評議会が前条の命令の審議中、敵国その他の事情により壊滅したとき。なお、共和国元老院が機能している場合は、その発令にあたっては総議員の3分の1以上の賛成を得なければならない。

 

────────────────────

 

 いまの状況に照らしてみると、①の条件が満たされているわけだ。

 即ち、法的正当性は我々の手の内にある。

 

「全軍に統合作戦本部緊急命令第1447号の開封を許可しろ。コマンダー、それで理由は分かる筈だ」

 

「はっ………………な、これは!?」

 

 私の指示に従って、ファイルを開封するコマンダールキア。

 そこにあるのは、長年かけて集めた最高議長と分離主義者の通謀を裏付ける証拠の数々。私がジェダイ・オーダーに渡したものと同一のデータだ。

 一定以上の階級又は特定の役職にある者しか開けないそれは、此方が用意した最も強力な切り札。ファイル自体は全て私の許可がなければ開封できないように仕組んだから、まだ誰にも知られていない筈だ。

 

 ───さて。これでどれだけの軍が味方になるか。

 

 悔やむべきは、アンバー先生が作ったバイオチップ無力化用のナノドロイドが一部にしか浸透していない点か。それでも、パルパティーンへの猜疑心を将校達に植え付けるには充分だろう。

 

「わかったか。なら命令を早く実行しろ」

 

「イエッサー! 直ちに全軍に伝達します!」

 

 コマンダールキアは即座に機器の操作パネルを開き、全共和国軍に私の命令を伝達する。

 その操作がちょうど終わった頃だった。

 

 バシュ───

 

 一条のブラスターの光が彼の装甲服を貫いて、呆気にとられたまま彼は床に倒れ伏した。

 

「が、はっ………」

 

 ドサリと倒れるコマンダールキアの身体。その向こう側から、ゆらりと陽炎のように蠢く人の気を察知する。

 

「───誰だ」

 

 発射炎の登る方向に身体を向ける。

 腰のセーバーに左手を添えて、いつでも抜刀できるように備えながら。

 

「困りますな、統合作戦本部長殿。貴女のその権限が誰によって与えられたものなのか、忘れたわけではないだろう」

 

 カツ、カツ、カツ…………

 

 静まり反った作戦本部に、リノリウムを踏む堅い靴音だけが響く。

 

「…………なにが目的ですか、ターキン副本部長」

 

 私はそこに現れた人影───ウィルハフ・ターキン宇宙軍大将を問い詰める。

 どうやら彼は些か気が早いようで、もう()()()()()()に袖を通していた。

 

「とぼけないで頂きたい、シャルロット・フォン・ブリュッヒャー上級大将閣下。───貴女を謀叛の疑いで逮捕する」

 

 

 

* * * * * *

 

 

 

~ミッド・リム ミタラノア宙域 惑星キャッシーク~

 

 ───キャッシーク

 銀河系の東部象限、平面座標P-9に属するこの密林惑星は、怪力で知られる知覚種族ウーキーの母星として有名な星だ。

 戦争とは無縁の日々を過ごしていたこの星だったが、クローン戦争最後の年、遂に独立星系連合ドロイド軍の侵略を受けることになる。

 これに対抗して銀河共和国軍とジェダイ最高評議会はウーキーの信頼が篤いグランドマスター・ヨーダ以下ジェダイマスター、ルミナーラ・アンドゥリやクインラン・ヴォスといった高位の実力を持つジェダイ将軍複数を派遣、更に彼等に率いられたCC-1004コマンダー・グリー率いる第41精鋭兵団が正面からウーキーの原住民達とともにドロイド軍を迎え撃っていた。

 指揮官のグリーはグランドマスター・ヨーダとともに現地住民から借り受けた樹上の家屋に司令部代わりの作戦室を設置し、迎撃状況を俯瞰する。

 

 ───オーダー 66 を実行せよ。

 

 その最中、彼の元に不可解な通信が届く。

 

 声こそは最高司令官たる共和国元老院最高議長シーヴ・パルパティーンのものだ。しかし、その顔は何故か深く被られたフードによって覆い隠されている。

 

(オーダー66? 有事対応命令第66号のことか? だが何故…………)

 

 グリーはそれを有事対応命令の実行を指示するものと判断したが、状況が不可解すぎる。

 マスターヨーダにそれが適用されるような兆候はなく、更に肝心の命令自体が不審だ。正規の手続を踏んで発動される命令ならば、わざわざこんな形で送る必要など無い筈。

 だが、その命令が最高議長府からの直接通信であることがグリーの混乱を加速させる。

 

(だが、発信元は最高議長府? なんだ、分離主義者の欺瞞工作なのか?)

 

 命令が本物ならば自分はそれを実行しなければならない。だが仮に分離主義者による謀略の一環だとしたら、これを実行した日には共和国軍に大損害を与えることになる。

 

 だが、逡巡するグリーをよそに、彼の隣にいたトルーパーは躊躇いなくマスターヨーダに銃を向け───そして首を切り落とされた。

 

「な…………っ!」

 

 慌ててブラスターを構えるグリー。

 まさか、命令は本物だったのかと後悔する彼だったが、最早後の祭りである。

 斬られた部下への追悼の意を鎮め、思考を戦闘に切り替える。

 

「待て、コマンダーグリー。…………暗黒面じゃ」

 

「は…………?」

 

 だが、ヨーダの反応は彼にとって予想外のものだった。

 グランドマスターの言葉の真意が理解できず、呆気にとられるグリー。

 しかし、その疑問も時を置かずして晴れることになる。

 

《───私の権限において全軍に達する。各部隊は統合作戦本部緊急命令第1447号を直ちに開封、然るのち共和国グランド・アーミー有事対応命令第65号の2を実行せよ。現在発令されている有事対応命令第66号は"分離主義者"による欺瞞工作である。尚も第66号を実行する者については、分離主義者と見做して処断する

 

 突如として流れた、統合作戦本部からの緊急通信。

 それは、グリーの疑問を氷解させるには充分なものだった。

 

「これは…………」

 

「暗黒面の野望が、儂等を窮地へと誘っている。ついてくるのだ、コマンダーグリー。此処にいては其方も危ない」

 

「……イエッサー」

 

 ヨーダの傍らに控えていた二人のウーキー達とともに、密かにキャッシークを脱出するべくシャトルへ急ぐコマンダーグリー。見通しがつかない今後への不安を押さえながら、彼の兵士としての思考は成すべきを演算する。

 

 ──優秀な兵士は命令に従う。最高議長が分離主義者だというのなら、俺は…………

 

 信じていたものに裏切られた衝撃、苦楽を共にしてきた部下を陰謀によって奪われた慟哭。

 それらの悲歎を懐に仕舞い込んで、彼は統合作戦本部の命令を遂行するべく全身を奮い起たせる。

 

 

 オーダー66による共和国軍の混乱は、まだ始まりに過ぎないのだ。

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