共和国の旗の下に   作:旭日提督

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 オーダー66による混乱が続く銀河共和国軍。

 或る惑星では全軍を挙げてのジェダイ狩りが行われ、また或る惑星では死地を共にした兄弟達による凄惨な同士討ちが展開される。

 その最中、共和国宇宙軍代将アルト・エーベルヴァイン麾下の銀河共和国宇宙軍第3艦隊エーベルヴァイン分艦隊は惑星マイギートから発せられる謎の救難信号をキャッチしていた………


終焉の狼煙

~アウター・リム サオルリープ宙域 サルーカマイ星系 アクラメーターⅡ級ミディアム・フリゲート”イストリア ”艦内~

 

 

 銀河系東部象限の外れ、ハット・スペースの直上に位置するサオルリープ宙域。

 その一角を占めるサルーカマイ星系、惑星サルーカマイの第1衛星カサーの軌道上には、銀河共和国宇宙軍第3艦隊エーベルヴァイン分艦隊が展開していた。

 

「なんだと、救難信号?」

 

 艦隊旗艦であるアクラメーターⅡ級ミディアム・フリゲート〈イストリア〉の壇上で、不可解な報告を聞いた司令官のアルト・エーベルヴァイン代将は怪訝な表情を部下に向けた。

 

「サルーカマイの分離主義者はもう一掃された筈なのでは?」

 

「ハッ、ですが、間違いなく友軍のものです。発信元は…………第91機動偵察兵団ですね」

 

「ふぅむ。ですが友軍が助けを求めているとあれば見過ごせません。詳細な場所は拾えますか?」

 

「信号が弱く通信が安定しませんが───よし、できました。ホログラムに投影します」

 

 参謀の一人が通信機器を片手にホログラムを操作すると、砂嵐のように乱れたノイズ混じりの歪な蒼白い立体映像が出現する。

 

《──ちら──1機動───ダー・ネーオだ。将軍が────裏切っ───誰か、応援を───》

 

 ブツン。

 

 唐突にホログラムが途切れ、CICは静寂に包まれる。

 通信内容は断片的で内容も不明瞭だが、何らかの緊急事態が発生していると判断できるほど切迫した様子だった。

 

「一体、何なのでしょう」

 

「これだけでは、何とも。ですが現地の友軍に危険が迫っていることは確かです。ポーチュン参謀長、出撃できる偵察ユニットをいくつか見繕って現地の様子を探らせてください」

 

「了解です」

 

 艦隊指揮官のアルトはこれを非常事態だと判断し、自らの部下に部隊の編成を一任する。

 

 ちょうど、その刻だった。

 

 ───オーダー 66 を 実行せよ

 

 ある一人のクローン・トルーパーのホログラムに謎の人影が突如現れたかと思うと、僅か数秒で消えてしまう。

 

 その直後───

 

「な──っ!?」

 

 ヒュンッ─────

 

 青く鮮明な一条の光。

 

 ブラスターの発射炎が、アルトの左頬を掠めて焦がす。

 クローンによる突然の発砲に理解が追い付かず混乱する彼女だが、すかさず態勢を建て直して思考を現実へと帰還させる。

 

「はぁっ!!」

 

 フォースを利用した加速によりクローン兵がブラスターの引き金に再度指を掛けるよりも早く、彼の懐に飛び込んだアルトはライトセーバーを一閃。ブラスターの銃身を切り裂いた。

 

「代将閣下! ご無事ですか!?」

 

「ええ、私はこの通りです。それよりもコマンダー・グラント、これは一体どういうことでしょう。クローン・トルーパーがいきなり発砲するなんて」

 

「それは何とも。こいつを医務室にぶち込めば何か分かるかもしれませんが……」

 

 彼女の身を案じ、その元に駆け寄る一人のクローン・コマンダー。件のトルーパーは既に他の兵士の手で取り押さえられているが、どうにも不可解な状況だった。

 

「優秀な兵士は、命令に従う…………優秀な兵士は、命令に従う…………優秀な兵士は───」

 

 ある決まった言葉だけを不気味なまでに繰り返し呟きながらばたばたと痙攣し暴れるそのトルーパーの姿は、尋常ならざるものの存在を疑わせるにはあまりにも充分過ぎた。

 

「確かに、これは”医務室送り”が正解ですね」

 

 件のトルーパーの扱いを衛兵に任せ、艦隊の指揮に戻らんとするアルト。

 

 だが、まるで良くないことは何度も続くと言わんばかりに、艦橋全体にけたたましいアラート音が響き渡った。

 

「こんどは何ですか!? 艦内でなにか異常でもありましたか? アグラヴェイン艦長」

 

「いえ、本艦の異常ではありませんな。銀河共和国軍全体に最高議長府を騙る謎の通信が送られています。内容を確認しますか」

 

「とにかく! こっちに回して! 今すぐ!」

 

 立て続けに起こる異常に痺れを切らしたのか、冷静にポーカーフェイスで応対する旗艦のアグラヴェイン艦長を急かすアルト。

 そうして送られてきたホログラム映像は、確かに不可解なものだった。

 ”パルパティーン最高議長”の声でしきりに同じ決まったフレーズを繰り返す、ローブを被った男の映像。

 このホログラムを見た瞬間、彼女は”計画の始動”を確信した。

 

 ───そっか。これが…………マスターが言っていた…………もう、始まるんだ…………

 

 ”オーダー66”

 

 その一言は、”敵”の陰謀の始まりを告げる鐘の音。

 

 予め彼女のマスターであるシャルロットから聞かされていたアルトは、遂に銀河共和国の崩壊を示す終焉の狼煙が上がったのだと直感する。

 

 直上、旗艦イストリアのブリッジにもう一つの通信音が木霊する。

 発信元は、銀河共和国軍統合作戦本部。

 その声を聞いた瞬間、アルトは自らの使命を確信した。

 

《───私の権限において全軍に達する。各部隊は統合作戦本部緊急命令第1447号を直ちに開封、然るのち共和国グランド・アーミー有事対応命令第65号の2を実行せよ。現在発令されている有事対応命令第66号は"分離主義者"による欺瞞工作である。尚も第66号を実行する者については、分離主義者と見做して処断する》

 

 ───マスター! 

 

 統合作戦本部長シャルロット・フォン・ブリュッヒャー上級大将による第一級緊急指令。

 自らの元に届けられたそれを耳にしたアルトは、隸下の全軍に向けて高らかに宣言する。

 

「…………我が艦隊は、此より統合作戦本部の指揮下に入る!! 全艦、第二種戦闘配備を継続しつつマイギートへ進路を取れ!」

 

 その凛と澄んだ声とともに、紅白を纏った巨艦の群がその身体を軋ませながら滑り行く。

 行く末に黄褐色と緑の縞に彩られた地殻惑星を捉えたエーベルヴァイン分艦隊は、程なくするとその腸から無数の小さな粒を続々と産み出した。

 ARF(上級偵察部隊)トルーパーの中隊やその装備を載せたLAAT/iガンシップの一個飛行連隊が、俄に騒ぎ始めたマイギートの地表に降り立つべく灼熱の大気圏に突入して身を焦がす。

 

「〈ベルーケン〉のメルディック艦長を呼び出して下さい」

 

「ハッ!」

 

 アルトの言に従って、参謀長ポーチュン宇宙軍中佐がセキューター級バトルキャリアー〈プレジデント・ベルーケン〉の艦長を務めるメルディック宇宙軍大佐の元へと通信を繋ぎ、その姿がホログラムに召喚された。

 

 突然呼び出されたメルディック大佐はやや困惑気味な表情を浮かべていたものの、司令官である代将閣下直々の指令と理解してからはすかさずその襟元を正す。

 

《お呼びでしょうか、エーベルヴァイン代将閣下》

 

「ええ。私は此より地表攻撃部隊の指揮を執ります。その間、艦隊は貴方に預けようかと。よろしいですか?」

 

《承知致しました。小官でよろしければ、微力ながら尽力いたす所存です》

 

「では任せましたよメルディック艦長。よし、コマンダー・グラント、レッドデイン、ブルーパーチズ、私に続け! 地表攻撃の時間だぁ!!」

 

「「「イエッサー!!」」」

 

 艦隊の指揮を次席指揮官に譲渡し、一人のクローン・コマンダーと二人のARCトルーパーを呼びつけて彼等と共に艦橋を駆け出し後にするアルト。

 先発隊のLAAT/iが全て発進した後の格納庫から飛び出すニュー級アタック・シャトルに飛び乗った彼女達は、一路救難信号の発信地点へと降下していった。

 

 

「……やれやれ、代将閣下のお転婆には参ったものだな。そう思わんかね? ポーチュン参謀長」

 

「同感ですな。幾ら軍人とはいえ年頃の娘。もう少し、慎みというのを持っていただきたく」

 

 後に残された艦橋内では、いつも彼女に振り回されている旗艦艦長のアグラヴェインと参謀長のポーチュン、二人の厳つい士官による雑談の声が小さく響いた。

 

 

 

 

~アウター・リム タラバ宙域 ウータパウ星系 惑星ウータパウ~

 

 

 銀河系の外縁部、未開の星々が広がるアウター・リム、平面座標N-19に位置する乾燥した縦穴惑星ウータパウ。

 この惑星では、つい先刻までドゥークーからその位を継いだ分離主義者の首魁、グリーヴァス将軍を討ち取るべく共和国による大攻勢が行われていた。

 グリーヴァスはジェダイ将軍オビ=ワン・ケノービにより激闘の末その命を散らし、共和国軍は残敵争闘に移っていた。

 その最中の出来事である。

 

「ああ将軍、これが必要でしょう?」

 

 グリーヴァスとの戦いの最中、オビ=ワンが落としたライトセーバー。

 それを回収していたコーディは、この惑星原住の大型トカゲ、ヴァラクティルに騎乗した自らの上官であるオビ=ワンが駆け寄るのを見ると、それを彼の元に返す。

 慣れ親しんだ武器がなれけば困るだろうという、長年このジェダイ・マスターと苦楽を共にしてきた彼なりの気遣いだ。

 

「ありがとうコーディ。さぁ行くぞ、一気にカタを付けるぞ」

 

「イエッサー!」

 

 未だに抵抗を続ける独立星系連合ドロイド軍を一掃するべく、手綱を打ちヴァラクティルを走らせるオビ=ワン。

 その姿を見送った直後、コーディのコムリンクがピリピリと鳴り響く。

 何事かと思いそれを取り出した彼の前に現れたのは、フードを被った謎の老人の姿。

 見覚えのない人物からの通信が、よりによって”最高議長府”から送られていることを怪訝に感じつつも応答を選択した彼の耳に届いたのは、確かに最高議長シーヴ・パルパティーンの声。

 その事実が、余計にコーディの混乱を呼び起こす。

 

《コマンダー・コーディ、その刻が来た。オーダー 66 を実行せよ》

 

「は───いや、誰だお前は。顔を見せろ」

 

 不審者から一方的に命令されることに不満を覚え、ホログラムの先に居る謎の老人に誰何するコーディ。

 だが、老人のホログラムは何も言わずに掻き消える。

 その直後───

 

ドゴォォォン!! 

 

「な……だ、誰だ! 将軍を撃ったのは!?」

 

 突如としてヘルメットに振動する轟音。

 友軍のAT-TEが、何故か部隊の最高指揮官である筈のオビ=ワンを砲撃したのだ。

 周囲に分離主義者の軍勢は居ないのだから、誤射である筈がない。

 その事実に憤慨したコーディは直ぐに砲撃を行った部隊を呼び出そうとするが、目前に広がる”異常”を前に呆然と立ち尽くす。

 

「…………ボイル! これは一体何だ……!?」

 

 敵である筈の分離主義者をよそに、至るところで”同士討ち”を始めた部下達の姿を前に、信頼する副官に尋ねるコーディ。

 その返答は、あって欲しくないと願う最悪のものだった。

 

「ハッ! 部隊の至るところで反乱が発生! 彼等は”ジェダイを殺さない者は共和国の敵だ”と叫びつつ手当たり次第に友軍を攻撃しています!」

 

「…………何が起こっているんだ」

 

 唐突な叛乱、地底に墜ちたまま上がってこない生死不明の信頼する将軍。

 あらゆる要素がコーディの頭に牙を剥き、彼の理性的な思考を奪い去らんと躍動する。

 

 ───だが、彼の軍人としての思考は、崩壊寸前で正常を取り戻す。

 

「───ボイル! 無事な部隊を集めろ。然るのちに〈ヴィジランス〉へ退却する!」

 

「イエッサー!!」

 

「ちっ……後は統合作戦本部の指示を仰ぐしかない、か…………」

 

 未だに統制を保っている部隊を集め、指揮系統の再構築を図るコーディ。

 彼の元に、統合作戦本部からの緊急通信が届けられたのはその直後のことだった。




 辛くも叛乱部隊の魔の手を退けたコーディ率いる第212突撃大隊。しかし、彼等の元に更なる追手が迫る。
 友軍を逃がすべく旗艦〈ヴィジランス〉に一人残り、宇宙(ソラ)に散るコーディだったが、彼が次に目を覚ました先は───

 次回、夢幻航路第0話「宇宙へ」
 銀河の歴史が、また1ページ……
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