共和国の旗の下に   作:旭日提督

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 統合作戦本部を襲撃し、包囲下に置くウィルハフ・ターキン。
 シャルロット・フォン・ブリュッヒャー上級大将は只一人脱出の機会を窺うが、そこへ更なる”帝国の手先”が現れる。


Fatal Battle_2

「シャルロット・フォン・ブリュッヒャー上級大将閣下。───貴女を謀叛の疑いで逮捕する」

 

 痩せこけた屍のような瞳を晒しながら、銃口を此方に向ける男。

 

 銀河帝国のナンバーツーとして君臨することを運命付けられた未来のグラントモフ、ウィルハフ・ターキン。

 

 彼はショック・トルーパーの一個大隊を伴って、司令部へと雪崩れ込んでくる彼等に次々と要員を捕縛させていく。

 

「貴女の抵抗もここまでだ。オーダー66は正式な命令、それに背く貴様こそ共和国の反逆者だと知れ」

 

「副本部長、何事にも正当性というものがある。命令は()()()()()()()でなければ命令として機能しないと士官学校で習わなかったのかな。忘れているというのであれば、アナクセスにでも紹介状を書いてやろうか?」

 

「貴様…………!」

 

 ガチャリ、と銃口が振動する。

 挑発が効いたのか、普段に比べると感情を隠そうともしない奴の滑稽な姿には笑いすら込み上げる。

 

「そもそも、ジェダイの逮捕行為に正当性を与えたのは私だ。貴官がいくら喚こうと、我々の法的正当性は揺るがない。それとも、偽造捏造なんでもあれの精神で裁判に臨むとでもいうのかな? だとすれば共和国軍人の片隅にも置けん木偶だな君は」

 

「言わせておけば好き勝手……いいだろう。貴女がそこまで我々を拒むというのなら、ここで共和国に殉じるがいい!」

 

 ブラスターの引き金に掛けられた、ターキンの指が微かに動く。

 

 ───抜刀。

 

 其方がそのつもりであるならば、手加減など不要。

 セーバーを即座に構え、縮地の踏込で一気に彼の懐へと駆け寄る。

 まるでこの戦争で流れた血のように赤い共和国の色を滾らせたセーバーは、一刀の元に彼のブラスターを両断するかに見えた。

 

 が…………

 

「───っ、!?」

 

 私のセーバーが、見知らぬ赤いセーバーに受け止められる。

 撤退。

 鍔迫り合いを回避し、間合いの確保を優先して飛び退く。

 新たな敵戦力の詳細──不明。脅威度産出──不詳。付近に友軍の姿無し。速やかなる離脱を推奨。敵戦力を制圧し、強行突破するためには───

 

「堕ちたものですね。やはり貴女は、ジェダイには相応しくなかった」

 

 唐突に、新たな敵戦力から音声が発せられる。

 全身を黒い装甲服で身を包み、生意気にも()()()()()を刻印したそのヘルメットのバイザーを上げた彼女は、挑発のつもりなのか、失望を隠そうともしない呆れた声で言い放つ。

 

 ──該当、一名。

 

 記憶の底から、目前の敵戦力に関する情報の照合に成功。脅威度を下方修正──仮にダークサイドのフォースで強化されていたとしても、充分に殲滅可能。

 

「…………君には言われたくない言葉だな、バリス・オフィー」

 

 バリス・オフィー

 

 ジェダイ聖堂を戦争への抗議と称して爆破し、その罪をアソーカに着せた共和国の反逆者。彼女は軍事法廷で裁かれ禁固の刑に処された筈だが、成程拘置所も腐敗が激しいらしい。恐らくはその経歴を買われてパルパティーンの手なり尋問官なりに登用されたのだろう。全く以て、嘆かわしいことだ。

 

「君の刑期は終わっていない筈だ。今すぐ拘置所に戻れ」

 

「貴女には言われたくないわ! この戦争狂……!! 私は議長が展望する未来を聞いた。彼の理想に賛同したから此処に居る!! 貴女にそれを壊されてなるものですか」

 

「哀れだな。悉く失せろ」

 

 議論に付き合う必要はない。

 如何なる信念を持っていようと、それがいかに尊いものであろうと、戦場では無意味だ。

 戦いに必要なのは暴力と戦術のみ。幾ら彼女がかつて戦争を憂う心優しいジェダイであったとしても、敵として立つならば斬る。

 

 そうだ、私は剣。ただ琥珀(あの人)(サーヴァント)であればいい。余計なことは考えず、ただひたすらに敵を斬る。戦いに感情を持ち込むな。さもなくば忽ち邪念(暗黒面)に呑まれるぞ。

 

「ぐっ……ううっ……!!」

 

 上段からの斬撃を、セーバーを交差させて受け止める敵戦力。

 勢いを殺さぬまま振り抜いて、左手をセーバーから離し敵に向ける。

 

白雷(Weiß Blitz)ッ!!」

 

 翳した左の指先から、一条の雷光を放つ。

 

 所謂、フォース・ライトニング。本来的にダークサイドに属するこの技を十全に扱うためには憎悪や憤怒といった余計なものを載せなければならないが、当然私の雷撃に()()()()()()()()()はない。戦場に事の善悪など無し、ましてや憎悪や憤怒など、判断力を狂わせる荷物に過ぎない。

 いわば牽制、私の白雷(ライトニング)にはその程度の威力しかない。だが、それで充分なのだ。

 

「ッ!? この…………!」

 

 敵は私が既に()()()()()()()()()()とでも思っているのか、憤慨の姿勢を見せた。

 

「やはり、貴女は生かしておけない戦争狂ね──!」

 

 ───斬撃が来る。

 

 単調で、見切りやすい素人の斬撃だ。

 折角のカーブドライトセーバーも、十全に使いこなしているとは言い難い。そもそも彼女のセーバーはヴェントレスのものだったか。ドゥークーの弟子でも何でもない彼女が、それを扱いきれるなどとは傲りも甚だしい。

 私はそれを適当にいなしながら、反撃の機会を伺う。

 

 しかし、トルーパーは厄介だな。

 

 司令室を制圧したショック・トルーパーからの銃撃が、時折此方に飛んでくる。成る程、間合いを取らさせずに仕切り直しが効かないように図っているな。

 

 ならば、それごと食い破って殲滅するのみ。

 

「───起きろ」

 

 セーバーの柄に左手を添えて、人造の欠けたクリスタルに言葉を注ぐ。

 

 カイバークリスタルは急速に不安定化し、セーバーの光は束となって太く眩く迸る。

 

「な、何ですかこれは……!」

 

 私のセーバーの変化に怯んだのか、バリスは剣を引いて私から飛び退く。

 様子見の為に間合いを取るつもりなのだろうが、それが命取りだとも知らずに。

 

「塵刹を穿て。我が光芒を以って、三千世界を悉く焼き尽くさん──」

 

 解号を紡ぎ、封じていたクリスタルの力を引き出す。

 此は以前試した自爆機能の、いわばその応用。

 剣を「平晴眼」に構え、左手を鋒に添える。

 銃口の先の、照星のように。

 

「絶刀、無明一閃」

 

 セーバーそのものを砲身にして、人造のクリスタルを燃やしながら砲撃を放つ。

 室内、それも大規模施設であることを考慮し威力は最小、友軍への誤射だけは防がなくてはならない。

 仮にこの一撃で彼女を始末できなくとも、撃破すればそれでよい。

 

「あ”あ”、ッ──!?」

 

 バリスは全身を紅いセーバーの砲撃に焼かれ、苦悶の呻き声を上げる。

 出力を絞ったからか殺害には至らないものの、装甲服の下まで熱線を浴びたのだ。全身火傷は免れまい。

 彼女の身体は灼かれながら司令室の外側まで吹き飛ばされるが、ターキンを巻き込めなかったのは残念だ。さては、無意識に彼が射線上から外れるように調整したか。

 

「っ、なん、で───」

 

 まだ立つか。

 想定が甘かったのか、砲撃で吹き飛ばされながらも瓦礫に縋りながら立ち上がるバリス。

 第二撃の必要を検討──却下。右手に軽度の火傷を認む。早急な修理を推奨。

 

「チッ、やはり只ではおかんか」

 

 やはりセーバーを砲身にするのは無理があったか、柄を握る私の右手も熱線に当てられたようだ。空気に触れる度に肌が焼かれるような感覚が通る。

 

「何故───ようやく、戦争が終わるというのに……貴女はここまで戦うのですか───!」

 

 端正だった顔立ちをボロボロに崩しながら、吼えるように叫ぶバリス。

 成る程、それが彼女の動機か。

 さてはパルパティーンに唆されて、”良き戦後”とやらの為に奴の軍門に下ったと見える。

 

「今更か。何度も言っている。私は軍人だ。共和国という国家の為だ。共和国を蛹にして孵ろうとするパルパティーンの帝国のことなど()()()()()()()()()

 

「ッ!? …………大勢の人が死ぬんですよ!!?」

 

 苛立ちが募る。

 優等生みたいな解を並べるバリスを前に、封じていた感情がマグマのように沸き上がる。

 

「そんなこと分かっているさ。承知の上だ!!」

 

 青二才の餓鬼か──!? 自ら陰謀に加担しておいて、どの口が言う──! 綺麗事ばかり並べて──!!

 ………いかん、抑えろシャルロット。私は共和国の軍人だ。私は共和国の軍人だ。私は共和国の軍人だ。私は共和国の軍人だ。私は共和国の、軍人……… 

 

「承知の上、ですって!?」

 

「そうだ。先に裏切ったのは貴様等だ! 共和国に忠誠を誓い、国の為に戦って散った兵士達の亡骸を苗床にして孵ろうとする国など、断じて認められるものか──!!」

 

 確かに、始まりは自分勝手な生存欲求だったのかもしれない。それこそ10年前の、能天気な自分なら。

 だけど、私はもう共和国の軍人なのだ。

 将として、多くの兵士に死ねと命じた。これが茶番だと知りながら。

 ならば、その責任を取らねばなるまい。

 共和国の為に散った全ての兵の忠誠を誇りを、私が継がなければならないのだ。

 例えそれが更なる戦乱の呼び水になろうと、彼等の死を裏切るような真似だけはできない。

 たった一人の野望のために数百万の兵士が茶番で死ぬだと!? そんな裏切り、決して許してやるものか──! 

 

「一つ教えてやろう、バリス・オフィー。戦いには二種類ある。命を護るための戦いと、誇りを護るための戦いだ。我々は、我々自身の誇りのために起つ!」

 

 いつか聞いた、誰かの受け売りでしかないけれど。

 私は、共にこの三年を駆けた戦友だけは裏切れない。

 これが全て茶番だというのなら、彼等の忠誠と誇りは、一体何処へ向かえばいい? 誰がそれを掬い取る? 

 

 ───ああ、そうだ。

 

 それこそが、私に課せられた役目なんだ。

 軍人としての、私の使命…………

 

 

 

()()だわ、貴女………」

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