復活の暗黒卿
犯罪者の星、タトゥイーン。
巨大犯罪カルテル、ハット・クランが支配するこの星は、共和国法の威光が届かぬ末法の地だ。
アウター・リムの中でも辺境に位置するこの星にはめぼしい産業や資源など無く、あるのはだだっ広い砂漠だけ。日々を生き抜くためには力こそが全てである故に、この地は無法者の楽園と化していた。
犯罪者、賞金稼ぎ、ゴロツキ諸々、銀河の膿共が我が物顔で闊歩し、地上では奴隷が引き摺り回される。
「…………ああ、気持ち悪い、気持ち悪過ぎる」
想像しただけで吐き気がする。
個人的に任務ですら訪れたくない星十選にランクインするこの星を前に、私は盛大に溜め息を吐いた。
―――何が好き好んで、こんな星に来なきゃならんのか。
肥大するイライラと億劫な感情を流し込むために、カップに残っていたブランデー入りの紅茶を一気に口内に流し込む。
―――ああ、だるい。だるすぎる。
消えない気怠さを押し込んで、船の舵をタトゥイーンに向ける。
ん? 紅茶入りブランデーは紳士淑女の嗜みだぞ。任務中だって? まぁいいじゃないか。船はどうせ自動操縦だし、ライトセーバーだって酔拳で強くなる。ヤン提督だってそう言ってる。
確かに、この星はアナキンの出身地で、スターウォーズの歴史では何度も出てくるメインステージの一つだ。
だけど…………元小市民の私にとって、犯罪者帝国なんて冗談もきつい。―――まぁ、コルサントも大概末法なんだけどね。EP1時点で民主主義が死んでるのはともかく、首都なのに治安最悪ってどうなってるのさ。
かのヤン提督が見たら、毒舌三昧になるのは想像に難くない。
―――ああ、日本の地が恋しい。
この世界で私を癒してくれるのは、ドロイドと宇宙戦艦しかいないのか。ああ、なんて悲しいのだろう。
任務なんて、さっさと終わらせてしまいたい。
「おっ、居た居た。早速接触といこうじゃないか。R3、着陸準備だ」
惑星の大気圏内に降下し、タトゥイーンの都市、モス・エスパ上空を通過する。
「えーっと、どれどれ? マスタークワイ=ガン達の船は~っと、あれか」
モス・エスパ周辺に停泊している宇宙船を調べ、マスター達を乗せたナブーの船がいないかを確認する。
件の船はあっさりと見つかり、町の郊外の砂漠に停泊しているのが確認できた。
「R3、あの船の隣に着陸して。慎重にね」
R3の機械音声が、ブリッジに響く。
映画では何を言ってるか分からないアストロメクだったけど、この世界の住人になってからは、不思議と彼等の言葉が分かる。
今の音声は、了解の合図だ。
「~~~!」
突如、慌てたような音が響いた。
「どうしたR3? ――何? 未確認飛行物体? 冗談は止しなさい、こんな僻地、飛んでる宇宙船なんてせいぜい―――」
…………やばっ。
R3が見せたホログラムを目にした瞬間、私は硬直した。
〈シミター〉だ。
重装型スター・クーリエとして知られるこの船は、原作ではシスの暗黒卿ダース・モールが使っていた宇宙船だ。ということは…………
「R3、直ちに回避運動! なに、ボロ船じゃきついって? いいからやって!!」
首をぐるぐる回して慌てるR3に、全力の回避運動を命令する。
嫌な予感が、ひしひしと背筋を伝う。
間違いなく、あれに乗ってるのはシスの暗黒卿。
加えてこちらのゴザンティには、武装らしい武装はない。唯一あった対デブリ用のレーザーも、パーツ不足で直ってない。
…………詰んだ。
モールの〈シミター〉が、眼前に迫る。
私の〈スタリオン〉はゆっくりと艦首を右へ傾け始めるが、輸送船では戦闘機には勝てなかった。
〈シミター〉のレーザーが〈スタリオン〉の中腹を貫き、左側のメインエンジンがズタズタに引き裂かれた。
「っ…………! R3、脱出するよ!!」
私は咄嗟に、フォースでブリッジの窓を破壊する。
割れた窓に勢いよく飛び込んで、空中で体勢を整えて着地する。
R3も脱出に成功したようで、スラスターを吹かしながら私の隣に着地した。
空を見上げると、まるで誇るかのように旋回する〈シミター〉は、マスタークワイ=ガン達のいる方向へ飛び去っていく。
そしてエンジンを破壊された私の〈スタリオン〉は、ぐるぐると周りながら墜落して、地面に激突した瞬間に大爆発を起こした。粉々だ。
「…………っ!」
ぐつぐつと、怒りが込み上げる。
怒りは暗黒面に繋がるというが、そんなもの、知ったことか。
「このっ、弁償しろ~~~ッ!!」
飛び去っていく〈シミター〉に向けて、負け犬のごとき遠吠え。
船を失った私には、それしかできなかった。
……………………………………………………
―――何だ、こいつは。
突如現れた襲撃者。
赤いライトセーバーを片手に、突然襲いかかってきた目の前の男の対処に、クワイ=ガンは追われていた。
一先ずパドメとアナキンを船に乗せ、自分も引き際を見定める。
しかし、目の前のダソミアン・サブラクは、そんな隙を与えないほど洗練された剣劇を繰り出し、クワイ=ガンを追い詰めていく。
このままでは埒が空かない、せめてアミダラ女王でも…………と、考えていた矢先だった。
「弁償しやがれっ、このヤローっ!?」
突如として、襲撃者が吹き飛ばされる。
サッ、とクワイ=ガンの前に降り立ったその人影は、黄色に迸るダブルブレード=ライトセーバーの光刃を、目の前の襲撃者に突きつけた。
「よくも…………よくも破壊してくれたなぁ! あの船にはっ、諸々のっ、研究成果が! 詰まって! いたんだぞっ!!」
ブォン、ザン、ビビッ、ヴォーン。
謎の人影は、襲撃者とライトセーバーの剣劇を交わしながら、一言一言、呪詛を吐くように襲撃者に向けて怒鳴る。
「そんなもの…………知ったことか!!」
襲撃者の、上段からの一撃。
それをセーバーで受けた人影は、あまりの力の差に打ち負けて、クワイ=ガンの下まで吹っ飛ばされた。
「なっ…………君は、シャルロット!? 何故ここに?」
人影の正体は、つい最近ナイトに昇格したばかりのジェダイ騎士、シャルロット・フォン・ブリュッヒャーだった。
オーダーの中ではある意味変人として知られる彼女がなんでこの星に居るのかなど、疑問は尽きない。
だが、今は目の前の襲撃者に対処することが先決だ。
「すまないシャルロット。何やらただならぬ様子だが、少々君の力を借りてもいいかな?」
「えっ、あ…………マスタークワイ=ガン!? え、ああ……はい。問題ありません。あいつをギッタンギッタンにしてやりましょう!」
砂埃を払いながら立ち上がったシャルロットは、ジェダイにあるまじき獰猛な形相で襲撃者を睨む。
―――彼女をここまで怒らせるなんて、こいつは一体何をしたんだ?
オーダーの中では寡黙で仏頂面の彼女が、ここまで感情を剥き出しにしているのは見たことがない。
そんな彼女の様子を訝しみながら、ライトセーバーを構えるクワイ=ガン。
果たして、宇宙船を破壊された腹いせだと知ったらどんな反応を見せるのだろうか。
「あまり熱くなるなよ、シャルロット。今は離脱することが先決だ。隙を見て、お前も船に乗れ」
「―――分かりました。適度に痛め付けて帰ります」
―――何をどうやったら、そう変換されるんだ。
クワイ=ガンは半ば呆れながらも、この若きジェダイ・ナイトと共に、謎の襲撃者へ挑むことにした。
シャルは少々短気です。普段は大人しいですが、大事な研究成果に危険が及ぶと一瞬で火がつきます。
彼女のセーバーはテンプルガードの物の改良型ですが、これは一年だけ彼女がガードを務めていたときに組み立てたものです。これとは別に普通のセーバーも持ってます。
ちなみにシャルロットのゴザンティは、EP1でタトゥイーン上空を飛んでいたやつです。