共和国の旗の下に   作:旭日提督

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 謎の戦士現る!

 〈ガーララ〉の救援に駆けつけた、アルト・エーベルヴァイン代将率いるCR90コルベット〈トネリコ〉は、友軍を帝国軍の魔の手から護るべく、ジャプレイル宙域にて帝国軍と相見える。
 艦に降り立ったアルト達の眼前に立ちはだかるは、赤いセーバーを振るう謎の黒いマスク姿の女戦士だった。


〈ガーララ〉の戦い

~ミッド・リム ジャプレイル宙域 オンダロン星系 ヴェネターⅡ級艦 “ガーララ ”~

 

 

「撃て! 撃て!!」

 

「ゴーゴーゴー!」

 

「怯むな、突撃だ!!」

 

共和国魂(Republic Spirits)を見せてやれ!」

 

 銀河共和国宇宙軍オープン・サークル艦隊に属するヴェネターⅡ級スター・デストロイヤー〈ガーララ〉。

 この艦の艦内では、至る所で強襲接舷で乗り込んできた銀河帝国軍の軍隊───ストーム・トルーパー兵団と名前を変えた帝国軍のクローン・トルーパーと、艦を守らんと奮闘する共和国軍のクローン・トルーパー達の間で激しい銃撃戦が繰り広げられていた。

 互いにフェイズⅡクローン・トルーパー・アーマーを使用するが故に度々誤射すら起こるこの戦場で、敵味方に分かたれた兄弟達は私情を全て押し殺し、容赦なく引き金に指を掛ける。

 

 そんな悲惨な戦場の一角、格納庫フライトデッキ内での攻防は特に苛烈を極めており、幾人ものトルーパー達が命を散らして道端に打ち捨てられる。

 この修羅ともいえる戦場の中で、赤いダブル=ブレード回転式ライトセーバーを手に大立ち回りを演じている黒い影の姿があった。

 全身を黒い装甲服に身を包み、マスクで素顔すら隠したその戦士の存在は守備隊にとってこの上ない強敵であると同時に、敵にとっては最も頼もしい破城槌でもあった。

 辛うじて装甲服の形状から敵は女であろうと察せるものの、そんな事実は艦の守備を預かるクローン・トルーパー達にとって何の気休めにもならない。

 

「チッ、あの敵さん、矢鱈と手強い!」

 

「増援はまだ来ないのか!!」

 

「ドラッヘ将軍は!?」

 

「駄目だ! 将軍は動力炉で敵の精鋭と交戦中らしい!」

 

「他を当たれ! 動ける部隊を探すんだ!!」

 

 プロペラの如く高速で回転するライトセーバーに悉くブラスターの弾は弾き返され、無謀にも接近戦を選んだ勇敢なトルーパーは瞬く間に微塵切りにされて息絶える。

 この強大な敵を前に攻めあぐねていた格納庫守備隊のトルーパー達であったが、彼等の元に一通の朗報が届けられた。

 

《…………ますか? ───聞こえますか? 此方はコルベット〈トネリコ〉! 〈ガーララ〉、上部デッキを開けて!》

 

「───何? なにをする気なんだ」

 

《こちら〈ガーララ〉、了解した! 一番ハッチを開けるぞ!》

 

 〈ガーララ〉の周囲を飛び回りながら、銀河帝国軍のファイター隊を次々と撃ち落とすCR90コルベット〈トネリコ〉。

 同艦に座乗するアルト・エーベルヴァイン代将からの通信は格納庫の守備隊一同を困惑させたが、彼等の命を預かる艦長代理のオイカン大尉は彼女の言葉を信じ、敵がたむろするフライトデッキのハッチを一部、豪快に解放させる。

 

「ハッチ解放確認、総員捕まれ!!」

 

《よーし! これで万端!! 突撃だー!!》

 

 

【挿絵表示】

 

 

 解放されたフライトデッキの隙間から舷側を覗かせる、紅白に彩られたCR90コルベット〈トネリコ〉。

 数多の敵兵が吸い出されていくそこに目掛けて、〈トネリコ〉の右舷下部から一機の脱出ポッドが撃ち出された。

 

「脱出ポットだと!?」

 

「こっちに来るぞ!!」

 

「逃げろー!?」

 

「伏せろ! 総員伏せろ!!」

 

 〈トネリコ〉から発射された脱出ポッドは一際大きな振動を立てながらバチバチと火花を散らし、幾人かのトルーパーの肝を冷やしながら豪胆に〈ガーララ〉の格納庫の床面を削っていく。

 

 フライトデッキが閉鎖されて脱出ポッドの行き足が止まるのとほぼ同時に、ポッドの天井が高熱で丸く切り裂かれた。

 

 ひゅん、とポッドに開けられた穴から飛び出した影は猫のようにしなやかな着地でストーム・トルーパー軍団の眼前に躍り出ると、蒼く煌めくライトセーバーの刃を翳して手当たり次第に敵兵を薙ぎ倒していく。

 

「みんな、突撃! 全火力を集中だー!!」

 

「「「Sir Yes sir!!」」」

 

 脱出ポッドからはライトセーバーを掲げた少女のような金髪の騎士───エーベルヴァイン代将その人に続いて、幾人ものARCトルーパー達が湧き出すようにその身を曝す。

 彼等は甲板に降り立つや否やZ-6ロータリー・ブラスター・キャノンを掲げて所構わず乱射して、バタバタと呆気に取られていたストーム・トルーパー達を次々と撃ち倒す。

 

「なんて無茶な…………」

 

 あまりに唐突な援軍の勇戦を目にした一人のクローン・トルーパーが、その光景を指して思わず漏らす。

 

「ボサッとするな! 今が好機だ、一気に畳み掛けるぞ!」

 

「い、イエッサー!」

 

 だが、戦場でいつまでも立ち尽くしていてはいい的だ。

 上官の叱咤で我を取り戻した彼は咄嗟に慣れ親しんだDC-15Aブラスターカービンを構えると、かつての兄弟達に向けて一瞬の逡巡を振り払って引き金に力を込めた。

 

「レッドデイン、右は任せた! ブルーパーチズは左よろしく!」

 

「イエッサー! お任せを」

 

「ですが将軍、あの敵が硬過ぎます!」

 

 所変わって格納庫の中心部では、敵陣に突入したエーベルヴァイン代将以下のトネリコ隊が果敢に勇戦を繰り広げる。

 彼女は自身の両脇と背後を戦友のARCトルーパー達に預け、正面から来るブラスターの光弾を弾き返しながら敵兵を切り結んで前線を押し上げていく。

 だが、ARCトルーパーの一人、ブルーパーチズが指した通り、回転式のライトセーバーを盾のように翳しながら次々と先行したARCトルーパーを切り付けている謎の黒いマスクの戦士は厄介な存在であった。

 

「ありったけのサーマル・デトネータをぶっ込んで! その隙に私が片を付けます!」

 

「了解!」

 

 彼女は最も障害となるこの謎の戦士を排除するべく、二人のARCトルーパーに援護を命じて駆け出した。

 その背中を追い越したサーマル・デトネータの群れが一斉に戦士の周りで起爆して、盛大に爆煙を撒き散らす。

 初めから、手榴弾ごときでダメージを与えられるとは思っていない。装甲服に傷が付けば御の字だが、最大の目的は一時的にでも敵の視界を奪う煙を発生させることにある。

 アルトはサーマル・デトネータが巻き上げた一時的な煙幕に突撃し、そのの最中に位置する戦士を一刀の下に切り伏せるべく跳躍する。

 彼女はそのまま、セーバーを大きく振りかぶりながらフォースを通じて感じ取った邪悪な気配へと向けて飛び掛かった。

 

「うぅあぁぁっ!!」

 

 上段から振り下ろされたそれを、ダブル=ブレード回転式ライトセーバーの片側の刃で受け止めるマスクの戦士。

 彼女はまるで邪魔者を振り払うかの如くセーバーを文字通り回転させて、アルトの青いライトセーバーの刃を受け流した。

 

「ちぃっ! …………なら!」

 

 身を捻り、下段に押し込まれるセーバーを赤く不気味に光るプロペラから引き抜いたアルトは、次なる攻撃を仕掛けるべく構えを取る。

 

「撃て、レッドデイン!」

 

「イエッサー!」

 

 部下に援護射撃を命じつつ、自身も突撃するアルト。

 マスクの戦士は射撃など何ら障害にもならないと言わんばかりにセーバーでそれを煩わしそうに撃ち返すが、その着弾に合わせて別角度から飛来するアルトのセーバーも同時に相手取るのは些か苦しい戦いのようだ。

 戦士の動きは今までのように余裕のある淡々としたものではなく、確かな集中と微かな怒りを感じる暴力的で剛胆なものに変化する。

 

「…………っ!!」

 

「ぐっ…………! まだまだ!」

 

「将軍!!」

 

 それに負けじとアルトも剣を這わせて斬り結ぶが、傍目からも彼女が相手の力に圧されつつあるのは見て取れた。

 淡々と、かつ豪快に赤いセーバーを振るう戦士を前に、援護射撃を以てしても隠し通せない劣勢。

 自分が逆に、徐々にではあるものの追い詰められつつあると手に取るように分かるからこそ、アルトは思考を八方に巡らせて勝利を手繰り寄さんと演算する。

 だが、次第に溜まる焦りが彼女の思考を曇らせて、フォースの予知は朧の中に包まれていく。

 

 敬愛する上官の窮地に思わず叫んだレッドデインのすぐ右脇で、白黒な一筋の影が跳ねるたのはその時だった。

 

「はあぁぁぁ……せりゃッ!!」

 

「!? ───」

 

 アルトの眼前で、交錯する赤と赤。

 

 赤いライトセーバー同士が斬り結ばれて、バチバチと閃光のようにオレンジ色の火花を散らす。

 

 突然の横槍に妨害されたマスクの戦士が、仕切り直しを図るように飛び退いていく。

 

「ドラッヘ将軍!?」

 

「申し訳ありません、遅れました。何分、強敵だったもので」

 

 アルトの前に降り立った白と黒に彩られた人影───ディーガ・ドラッヘ将軍は、赤いライトセーバーを眼前の戦士に向けて翳しながら遅参を侘びる。

 

「いえ、とんでもない。お陰で助かりました」

 

 だが、謎の戦士に追い詰められつつあったアルトからしてみれば心強い援軍であることに違いはない。彼女は素直に、この強力な援軍の参戦に礼を告げた。

 それはそれとして、彼女にはどうしても気になる点が一つ。

 

「ところで───その赤いライトセーバーはどうしたのですか」

 

 本来、ジェダイであればセーバーの色は青か緑である筈だ。ジェダイ時代の青いライトセーバーを引き続き使っている彼女からして見れば、ドラッヘの持つ赤いライトセーバーは些か不自然なものに映った。

 彼女のマスターであるシャルロットのセーバーも赤なのだが、それ以外に赤いセーバーを使うジェダイの存在なんぞ聞いたことがない故に、アルトの疑問は一層深まる。

 

「ああ、これですか? 先程殺した敵兵から奪いました。いやぁ、ぶんぶん回って面白いものですから、つい試したくなってですね」

 

「うわぁ…………」

 

 まるで新しい玩具を試すかのように、セーバーの柄を掴んで回転させるドラッヘの様子に引くアルト。よく見れば、円形のハンドガードが付いたそのダブルブレード式のセーバーの形状は、敵の黒いマスクの戦士が使っているものと同じ形ではないか。

 マスターもマスターで大概だが、こいつもジェダイとしてどうなんだろう、と一抹の不安を覚えられずにはいられない。

 

「では、そろそろ始めると致しましょうか」

 

「はい! よろしくお願いします!」

 

 獲物を見定める獣ように、姿勢を屈めて突撃の構えを取るドラッヘ。

 セーバーを構えて迎撃の構えを見せるマスクの戦士目掛けて一直線に踏み込んで、再び赤と赤が斬り結ばれる。

 

「ふっ、やっ! 吹き飛べ!!」

 

「ぐっ、───ぁあッ!!」

 

 アルトの細腕から繰り出されるそれよりも何倍も重く鋭い剣筋が、マスクの戦士を圧倒する。

 戦士は負けじとセーバーの刃を合わせて隙を探るが、剣圧に気圧されては次第に追い詰められて後退る。

 

「あははははは! どうした! その程度か!!」

 

「────!!」

 

 一転して防御の構えを取ってばかりの戦士相手に、挑発の言葉を投げるドラッヘ。その様子は最早どちらが悪役なのかまるで逆転しているかのように見えて、思わずアルトも謎の戦士に僅かばかりの同情を禁じ得ない。

 だがこれが好機であるのもまた事実。彼女も眼前の戦士に先程までの借りを返すべく、セーバーの刃を滾らせて突進する。

 

「やあああっ!」

 

「───ちっ!」

 

 ドラッヘと斬り結び、隙が見える左脇から戦士向かって斬りかかるアルト。

 その光刃は赤いセーバーに弾き返され突き放されるが、二対一となったことで敵はますます劣勢に陥った。

 

 確実に胴を狙うアルトの剣と嵐のように暴力的なドラッヘの剣、その二つを相手にするのは些か骨の折れる仕事らしい。

 

「はあっ!!」

 

 遂にドラッヘの赤い光刃がマスクの表面を掠めて焼き斬り、真っ二つに割れたマスクはガシャンと崩れるように落ちて砕ける。

 

 その素顔を目にしたアルトは思わず絶句し、行き足止めてしまう。

 

 

「え────私?」

 

 

 ───隠されたその素顔。

 

 そこにあるのは、アルトと寸分違わないまるで生き写しのような貌。

 憎悪を滾らせた翠緑の瞳はぎろりと彼女を睨み付けて、怒りに任せて赤いセーバーを一閃する。

 

「あ”ああッ!!」

 

「っち──! 、待て!!」

 

 セーバーを凪ぎ払い、フォース・プッシュで辺りの瓦礫を手当たり次第に投げつけては、偶然難を逃れていたファイターに飛び乗って急ぎ足の如く艦から飛び立って逃げる戦士。

 追撃を試みるドラッヘであるが、瓦礫に行く手を阻まれてみすみす取り逃がしてしまう。

 

 ────なに、あれ。

 

 未だに戦意溢れるドラッヘとは対照的に、呆気に取られて茫然とその場に立ち尽くすアルト。

 

 ガラン、と力の抜けた手からすり落ちた、彼女のセーバーが甲板を転がる。

 

「───軍」

 

「ご無事ですか!? 将軍」

 

「はっ! ───え、ええ。この通り、私は無事です」

 

 数度、脳裏に響く部下の声。

 その声を漸く認識したアルトの意識が、現実に引き戻される。

 格納庫ではキャプテン・フォードー率いるクローン・トルーパー部隊が残敵掃討に移っており、戦況は明らかに此方が有利に傾いていた。

 

「大丈夫ですか?」

 

「あはは……いえ、気にしなくて結構です。レッドデイン、残敵掃討お願いします」

 

「───イエッサー」

 

 心ここに非ずといった彼女を見かねたレッドデインが、アルトを案じて再び声を掛ける。

 自身の不調と動揺を見られまいと彼に敵部隊の追撃と掃討戦を命じて、普段通りの彼女を演じる。

 彼がこの場を離れた頃を見計らってか、ドラッヘがアルトに問い質した。

 

「あの顔───親類、という訳ではないだろう。何者だ」

 

「私にも…………わかりません。まさか、全く同じ顔だったなんて」

 

「だろうな。其方は敵と通ずるような不埒者ではない。恐らくは、其方を模したパルパティーンの回し者か」

 

 ドラッヘの詰問に、つい口籠るアルト。

 マスターは確かに自分とそれなりに似た顔だと思わなくもないが、親兄弟姉妹なんて全く見に覚えがない彼女からしてみれば、むしろ逆に聞きたいぐらいだ。

 思えば、斬り結んでいるときも敵の背丈は自分と同じぐらいに見えていたし、体格も似ていた。

 恐らくは、ドラッヘが推測した通り何らかの方法で産み出された自分のクローンなのだろう。

 今はそれぐらいしか推測できることはないが、知らず知らずに自分のクローンが作られていたという事実を前に、アルトは思わず戦慄する。

 

 ───マスター、私は…………どうしたら、よいのですか。

 

 心の中で、此所にはいない彼女のマスターに縋るアルト。

 当然の如くない返事を前に、フォースはいつになくますます曇っていくように感じられた。




【次回予告】

 アルト・エーベルヴァイン率いるARCトルーパー達が謎の帝国の戦士と交戦していたその頃。フォックス、エコー、ファイヴスの三人とデルタ分隊は、帝国軍のスター・デストロイヤー〈ハウンド〉の行き足を止めるべく、そのブリッジに強襲攻撃を仕掛けていた。
 辛くも攻撃は成功し、戦場からの離脱を図るその最中。再起したスター・デストロイヤーがフォックス達を付け狙う!

 次回、幕問/最後の501大隊
 銀河の歴史が、また1ページ……
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