共和国の旗の下に   作:旭日提督

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 アルト・エーベルヴァイン率いる〈トネリコ〉のARCトルーパー軍団が帝国の戦士と交戦していたその頃。フォックス、エコー、ファイヴスの三人とデルタ分隊は、帝国軍のスター・デストロイヤー〈ハウンド〉の行き足を止め〈ガーララ〉の脱出を援護するべく、そのブリッジに強襲攻撃を仕掛ける!
 作戦は成功し、残すは友軍のデストロイヤーに潜む帝国の残党を残すのみ。
 デルタ分隊を残敵掃討への援軍に差し向けたコマンダー・フォックスは、戦場からの脱出と友軍主力への合流を目指していたが………


幕問/最後の501軍団

~ミッド・リム ジャプレイル宙域 オンダロン星系 カンサラー級クルーザー/チャージャーc70改造艦 “アイアン・シージ ”~

 

 

【挿絵表示】

 

 

 ヒュン、ヒュッ、ガゴッ…………

 

 真空の宇宙空間に、ターボレーザーとシールドの禿げ上がる戦火の音色が木霊する。

 

 紅白を纏った小さな影は、灰色に身を包んだ巨大な戦艦から逃げ回るようにイオン・エンジンを全力で吹かして戦域からの離脱を試みる。

 

 しかし追手の巨大戦艦はそう簡単に諦めるような珠ではないらしく、攻撃の手を緩めない。

 

「クソッ! 奴等、まだ追ってきやがる!」

 

 小さな紅白の宇宙船───チャージャーc70型カンサラー級フリゲート〈アイアン・シージ〉の艦首に備え付けられた艦橋で、一人の男が灰色の戦艦を指して悪態を吐く。

 紅白に彩られたアーマーに身を包んだその男───クローン・コマンダー、フォックスは、しつこく追撃を続けるこの敵艦への苛立ちを募らせていた。

 この敵艦、銀河帝国軍のヴェネターⅡ級スター・デストロイヤー〈ハウンド〉の攻撃によって、自艦のハイパードライブが故障したのがつい数刻前。

 彼等が救援の任務を負っていた友軍艦のヴェネターⅡ級艦〈ガーララ〉は無事ジャンプで逃れることに成功したものの、ハイパースペース航行に入れないフォックスの〈アイアン・シージ〉は自然な流れで殿を勤めざるを得なくなってしまったのだ。

 当初はここにクローン・コマンドーであるデルタ分隊の3人も乗艦していたのだが、任務達成後に彼等は〈ガーララ〉における残敵掃討要員として供出していたために、この艦は一層の人材不足に陥っていた。

 その事実が効果的な反撃と操艦を困難なものとし、一層戦域離脱からの道程が遠退いていた。

 

 そんな中〈アイアン・シージ〉に残されたトルーパー達は果敢に戦場からの脱出を目指し、微かな希望を頼りに戦い続ける。

 

「ハイパードライブは直らないのか!?」

 

《今やっている! ドロイド共が修理を完了するまでもう少しだ。だからもう暫く耐えてくれ》

 

「さっきからそんな調子じゃねぇか! もう暫く、じゃない。具体的な時間を聞かせろ! シールドだってもう限界だ!」

 

《あと5分…………いや、3分で終わらせる。おいっ、ドロイド! 修理を急げ!!》

 

《~~~!? 》

 

 艦橋の火器管制担当官とレーダー管制官の席に座る、青いラインが施されたアーマーを身に纏った二人のARCトルーパー、エコーとファイヴスが艦の修理を担当する工兵のトルーパー、チョッパーに通信機で詰め寄る。

 ここ十数分の間に、幾度も見られた最早馴染みの光景だ。

 コムリンクの向こう側に映るアストロメク・ドロイドのホログラムは、首を振るかのように頭を回しながら普段よりも刺々しい機械音で応答して抗議の意思を顕にしている。修理担当のトルーパーはドロイド遣いが荒いようだが、事は一刻を争うのだ。そうモタモタしていられない。

 

───ガゴンッ!! 

 

「───っ!? 何だ!」

 

「畜生シールドが剥げた、クソッ!」

 

「チッ、もう余裕は無さそうだ! 飛ばしていくぞファイヴス!!」

 

「おいエコー、何する気だ!」

 

 砲手の席から空いていた操舵手の席へと飛び移るかのように鞍替えしたエコーは同僚の制止の声を振り切って、オートクルーズを解除する。

 この艦は〈ハウンド〉の攻撃で本来の操舵手を務めていたクローン・パイロットが負傷して以来操舵の席は空席となっていたのだが、直線的な飛行では敵の攻撃を振りきれないと直感したエコーが機転を利かせて舵を強引に奪ったのだ。

 

「回すぞ、捕まれ!!」

 

「うわっ!? 急に舵を回すなエコー!」

 

「今は敵のレーザーを躱すことが重要だ!」

 

 エコーは艦をぐるりと一回転ロールさせ、〈ハウンド〉から飛来する青い死の槍の雨を抜け出す。

 人工重力による慣性で艦内では非固定の器具が散乱し、垂れ下がった配線がヘルメットに直撃したフォックスはエコーに抗議の怒鳴り声を上げる。

 彼はそれを意に介することなく今度は逆側に舵を切り、間一髪のところでレーザーの洗礼から艦を逃すべく奮闘していた。

 

《おいっ、何だ今の機動は! お陰様でスパナが一個吹っ飛んだぞ!》

 

「うるさい! 死ぬよりかはマシだろう! で、修理は終わったのか!?」

 

《ああ───お陰様で30秒遅れた! もう少し待て!》

 

「チッ、できるだけ急いでくれよ…………!!」

 

 エコーが無理な回避機動を連発したお陰か、ハイパードライブの修理を担当していたトルーパーから抗議のホログラム通信が贈られる。

 

 しかしその間にも〈ハウンド〉は距離を詰めつつあり、遂にエコーが操る〈アイアン・シージ〉にも被弾を許してしまう。

 ターボレーザーの洗礼を受けて上下左右に揺さぶられる艦内で、エコーは敵に対する悪態をぶち撒けた。

 

「敵さんめ、中々どうして、諦めが悪い。しつこい奴は嫌われるぞ」

 

「エコー、回避に集中するんだ」

 

「分かってる!! ああ畜生、敵の砲火に抜け目がない。回避パターンを読まれたか」

 

 彼が察していた通り、操舵の癖を見抜いた〈ハウンド〉の砲撃手は優秀なクルーらしい。〈アイアン・シージ〉の行く先を予知するかのように撃ち込まれるターボレーザーは厭らしく回避しずらい場所目掛けて着弾し、エコー達の行く先の選択肢を狭めていった。

 

 通算何度目かの被弾が相次ぎ、遂に万事休すかと思われたその時。

 

 

 ───彼等の真正面に、一隻の黒い影が現れる。

 

 

「な、何だ!?」

 

「新手か!?」

 

 突如ハイパースペースから現れた、暗い灰色に身を包む一隻の巨体。

 

 優に全長1300mは越えようかという巨躯を誇るその戦艦は、悠然と〈ハウンド〉に向けてターボレーザーの雨霰を浴びせかける。

 突然の奇襲に怯んだ敵艦は遂にその行き足を止めて、エコー達へ向かうターボレーザーの洗礼も止んだ。

 

「…………どうやら、敵ではないようだな」

 

「これは好機だ。チョッパー、修理は済んだか?」

 

《イエッサー。万全とはいきませんが、一回分なら》

 

「よし。戦場を離脱する! 緊急ジャンプだ」

 

「了解、緊急ジャンプ!!」

 

 この隙に戦域からの脱出を試みようと、指揮官を務めるフォックスは操舵席に座るエコーにハイパースペース航法への移行を指示する。

 緊急時故に精密な計算はまだ未了だったが、一刻も早くこの非常事態から逃れるためには仕方ないことだと割りきってフォックスは緊急ジャンプの実行を決断した。

 

 ほんの数秒で、加速された星々の間を縫うように闇のハイパースペースへと身を沈めて現実空間から消滅する〈アイアン・シージ〉。

 虚空に消える紅白に包まれたその小さな体躯を、灰色の巨艦───カンドシイ型ドレッドノートの艦橋から一人の男が静かに見守る。

 

 青と白に彩られたフェイズⅡクローン・トルーパー・アーマーのヘルメットに共和国の国章を描いたその男は、蒼白い闇に旅立ったかつての同僚達の行く末を案じるかのようにその姿を確と黒いバイザーの奥深くに隠された双眸に焼き付ける。

 

「───またいつか、生きて会おう」

 

 〈ハウンド〉への牽制攻撃を終えたカンドシイ型ドレッドノートは、その巨体をゆっくりと旋回させつつ自らも戦場からの離脱を図らんとハイパースペース航行に入る。

 後に残されていたのは、獲物を喪ってただ一人暗闇の宇宙を漂う明灰色の巨体だけだった。

 

《…………〈サンダーリ〉よりシャーウッド。作戦完了だ。これより帰投する》

 

 

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 ………………………………………………

 

 

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~銀河帝国軍 ヴェネターⅡ級スター・デストロイヤー “ハウンド ”~

 

 

「───逃げられました。何だったんだ、あのドレッドノートは…………」

 

 獲物をあと僅かというところまで追い詰めておきながら、つい今しがた現れた謎の戦艦による妨害によりみすみすそれを取り逃がした銀河帝国軍所属のスター・デストロイヤー、〈ハウンド〉。

 荒れ果てたそのブリッジでは、将校や士官達が落胆を禁じ得ずに困惑と無念を吐露する。

 

 先刻まで追っていた共和国軍のカンサラー級クルーザーは、すれ違いざまにこの〈ハウンド〉のブリッジに3人のクローン・コマンドーと2人のARCトルーパーを送り込んだかと思うと瞬く間に彼等はブリッジを制圧し、数々の精密機器を破壊してはこの艦を制御不能な状態に追い込んだのだ。

 それだけに生き残ったクルー達は雪辱を晴らさんと躍起になって強引に艦を復旧させ、生意気にも戦場からの逃走を試みる小癪なカンサラー級クルーザーに引導を渡すべく奮闘していた。

 

 しかし最早それすらも叶わないと知った彼等からは覇気が抜け落ち、今や黙々と残された復旧作業に勤しんでいる。

 

「───逃したか」

 

 そこに現れたのは、黒いマントを翻して黒い装甲服とヘルメットに身を包んだ一人の巨漢。

 

 そのマスクから発せられる暗く重い合成音声は、佇まいを正した艦長を詰問するかのように締め付ける。

 

「は、ハッ! 申し訳ありません。あのドレッドノートさえいなければ…………」

 

 言い訳のように、汗を滲ませながら報告する艦長。

 そんな彼を僅かに一瞥した黒い巨漢は、まるで関心すら無いかのようにヘルメットの黒い双眸から覗く金の瞳を虚空に向ける。

 

「───如何なさいましたか? ()()()()()()

 

 黒い男───ヴェイダーと呼ばれた彼は機械の両足を響かせながら悠然と艦窓に歩み寄り、今や闇に消えたクルーザーの航跡を視線で追う。

 

 ───そこだ、ファイヴス!! 

 

 ───任せろ! これで仕上げだ! 

 

 脳裏に幾度も反芻される、青と白に彩られたアーマーを纏った二人のクローン・トルーパーの掛け合い。

 

 彼等の姿を僅かに視界の片隅に捉えたこの黒く塗り潰された冷徹な男は、何故か身体を動かすことができなかった。

 哀愁か、はたまた怒りが由縁か、もしくは単なる驚愕か。それは本人にすら分からない。

 

「よい。追跡は止めだ。次の任務に移るぞ、艦長」

 

「は、ハッ!」

 

 だが彼は、二人のトルーパーが消えた暗闇をいつまでも見つめていた。

 

 僅かな光すら消えた筈の彼が何を思ってそのトルーパーを()()()()のか。それは最早、彼にすら知り得ない………………




 緊急ジャンプで辛くも難を逃れたエコーらクルーザー〈アイアン・シージ〉の乗組員。しかし、彼等の眼前に未知の艦影が立ちはだかる。
 その最中、「0Gドック」を名乗る少女・霊夢率いる謎のヴェネター級スター・デストロイヤーに助けられたエコー達は、彼女の口から驚愕の事実を知ることになる。
 最早以前の自分達には戻れないと知った彼等が取った選択とは………

 次回、『夢幻航路』第7話「共和国の亡き宇宙で」
 銀河の歴史が、また1ページ……
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