大江戸騒動記~棟平屋の軌跡~   作:社畜だったきなこ餅

16 / 19
さいとう先生の鬼平犯科帳読んでたらネタが浮かんだので書きました。
久しぶりに大江戸なのですが、お付き合い下さると幸いです。

着想は漫画だけど、時代劇映像作品でもあるからセーフ理論で一つ。


求.火付け盗賊改方案件から生き延びる方法

 

 

天下泰平が最近死んだんじゃないかと疑っている江戸時代、いや何勝手に死んでるんだ蘇れ蘇れ。

年月が過ぎるのは早いモノでこの前長女であるおとよが新右衛門と結婚したかと思えば懐妊、そこからの初孫誕生大フィーバーでそりゃもう大変じゃったわ。

ちなみに初孫は女子であった、儂の遺伝子って女子ばかり生まれる特性でもついておるんかの? 漸く藤太郎以外にも妾が息子産んだりしてくれてはおるが、比率的に圧倒的に女子が多いし。

 

まぁそんな事はさておいて、最近儂には悩みがある。

 

 

「ふぅぅぅむ、傘下の店の周囲に明らかに堅気じゃない連中がうろついておる。と」

 

「はい、それも一軒のみならず複数の規模の店を、まるで下見するかのように見慣れぬ輩がうろついているとの事です」

 

 

儂の書斎にて、畳に広げた江戸の町簡易地図(門外不出品)とにらめっこしながら儂は現在進行形で三郎太……新右衛門が動けないときに傍付きとして便利に使っておる護衛から報告を受けておる。

何なのお江戸、上様や副将軍や仕事人や遠山の金さんがランダムエンカウントするような町なのに何で悪党が尽きないの?

石川や 浜の真砂は尽きるとも 世に盗人の種は尽きまじなの???

 

 

「ひっとらえて情報吐かせたりは?」

 

「何名か捕縛は出来ましたが、揃って端金で雇われたごろつきのようで情報と呼べるものは……ああいえ、一つだけ気になる情報がありました」

 

「ふむ?言うてみい」

 

 

地図から顔を上げて三郎太へ問いかければ特に情報も無し……と思いきや何やら情報がある様子。良いぞ良いぞ、そう言う細かい気付きが出来るのは藤兵衛ポイント高めじゃぞ。

ちなみに藤兵衛ポイントが一定数溜まると儂の独断と偏見でボーナスが出る。

 

 

「仕事を斡旋してきた輩の訛りに、上方言葉のような響きがあったと口にした輩が居りました」

 

「ふむ」

 

「ですがソレを口にしたのは一名だけな上、苦し紛れに言ったとしか思えませぬ故……」

 

「いや良い、よくぞ言うてくれた。新右衛門が後任として育てただけはあるのう」

 

 

俺の言葉にしきりに恐縮する未だ若者な三郎太に微笑ましさを感じつつ、顎に手をやって考える。

ぶっちゃけ儂、そして棟平屋は堺の連中と仲良しこよしじゃない。それどころかあの連中にとって美味しい江戸商売を邪魔しておる存在だから鬱陶しい存在なのは間違いなし。

その上、最近は爆発大当たりして儲けを叩き出す競馬……そりゃもう殺しても殺したりない目の敵、と言えなくもない。

 

だがしかし、ソレすらも逆手に取った情報通の悪党共が動いている可能性もあるもんだから始末が悪い。

上様にデーンデーンデーンされる心配が最近無くなって来たと思ったら、今度は上様がデーンデーンデーンする事件の被害者枠になるのは酷いと思うんじゃ儂。

 

 

「小癪な事に目撃情報が出ているのは本店であり屋敷と一体化しておるココとは、かなり離れた場所というのがのう」

 

 

傘下の店を守らせるために育成した護衛部隊を向けると、今度はこっちが手薄になる。

かと言ってこっちを手厚く守ってて傘下の店をやられると、店の看板に結構な傷が入る。

 

いやね、儂としては家族が一番スケベが二番なんじゃよ?

でもそれはそれとして、儂を頼って傘下に入ってくれた店を見捨てるというのは非常に寝覚めがよろしくない。

 

 

「銭で人手を大幅に雇うのは……」

 

「お言葉ですが危険かと、銭で雇えるモノ全てが危険とは言いたくありませぬが……」

 

「解っておる、はてさてどうしたものか……」

 

 

なんかもうこうやって悩んでる間に、上様とか副将軍様とかが悪党しばき倒して解決してくれんかのう。

 

思わずそんな事を考えて頭を抱えていると、スケベな乳房に定評がある女中のおいちが来客の報せを持ってくる。

はてさて、鬼が出るか蛇が出るか……。

 

 

 

 

 

 

「急な訪問、失礼する。火付改の長谷川平蔵宣以と申す」

 

「い、いえ、いえいえいえいえいえ!そんな貴方様のような方が一町人である儂に頭を下げるなどおやめください!!」

 

 

儂、確かに鬼が出るか蛇が出るかなんてカッコつけた事考えたよ?

じゃけど、野生の某松本さん……モノホンの悪党が裸足で逃げ出す鬼平こと長谷川平蔵が来ることなんてある?!

 

助けて三郎太……あ、アヤツ全力で気配を消して土壁と同化しておる!?藤兵衛ポイントマイナス案件じゃぞ?!?!

 

イカン落ち着け、長谷川様の様子的にしばきに来たわけではない。

むしろ不審がられて書斎の畳に広げたままの地図を見られるような事態の方がはるかにまずい!

 

 

「すぅ、はぁ……失礼、取り乱しました。何やらお困りのご様子、ご協力出来る事なら幾らでもお申し付けください」

 

「忝い」

 

 

テンパり倒す俺を不思議な生き物を見るかのような目で見てきていた長谷川様であるが、気を取り直して大店の大旦那モードに切り替えて話を始める。

そうすると、某狙撃手の作者に描かれそうな鋭い眼光を保ったまま此方へ目を伏せて礼を返す。

 

結論から言えば長谷川様、火付盗賊改方の方でも件の怪しい連中は捕捉しており捜査が進んでいるらしい。

ただ新たに齎された情報に儂は思わず表情が引き攣る程の衝撃を受ける。

 

 

「上方方面で暴れていた盗賊一家、ですか」

 

「左様、狡猾な上に残虐で有名な連中だ」

 

 

そんなのに目を付けられてたの?いや、悪党が狙う程度には確かに財産抱えてしまっとるけど……!

江戸で幾ら名声稼いで人の壁状態にしても、他所からやってくる悪党に関係ないっていう見本じゃないですかヤダー!!

 

いやまぁ名声作戦は間違ってはないんじゃけどね、最初に怪しい連中の事報せてくれたの江戸の町人じゃし。

 

 

「しかしそうなると、連中の狙いは……」

 

 

その先を言う事無く長谷川様へ視線を向ければ、長谷川様は否定する様子を見せずに頷いて見せた。

勘弁してくれよ……かと言って嫁に妾や子供達を避難させるってなると大事になって騒ぎになるし、そっちを狙われたらマジでどうしようもない。

 

屋敷の蔵は何か大工の人達がめたくそ張り切って頑丈かつ防火仕様にしてくれたから安心じゃが、そこで寝泊まりさせ続けるわけにも行かん。

せめて襲撃が来るタイミングだけでもコントロール出来れば……。

 

 

いや、待てよ?

 

 

「三郎太、新右衛門を呼んできておくれ。休暇を申し付けて居るがどうせやつの事じゃ、訓練場にでも居るじゃろ」

 

「承知しました!」

 

 

三郎太へ指示を出し、儂は長谷川様へ向き直って姿勢を正すと深く頭を下げて懇願の姿勢を取る。

 

 

「長谷川様、儂の命を預けます。どうか、悪党共を一網打尽する策の一環としてお使い下され」

 

「…………承知仕る」

 

 

賭け金は儂の命!勝てば悪党一網打尽からの当面の安全確保じゃい!

おう新右衛門すまんな!ちょっくら囮の大宴会今夜開くから、色々段取りしてくれい! 護衛部隊は全員傘下の店に分散配置な!

 

 

え? 某は何があっても大旦那様を守りまする? いや割と危険な策だし……え?若き日の大旦那様についていた日を思い出して血が騒ぐ?

 

 

 

 

 

月明りも朧雲に隠れる丑三つ時。

猫一匹もうろつく事は無い時刻に、ほっかむりを被った30人は下らない集団が足音を殺しながら一軒の大邸宅へ向かう。

 

 

「へへへ、報せ通りだ。すっかり寝入ってるようだな」

 

「子分の店に守りの連中を向かわせるなんて、随分お優しい仏の大旦那様だな」

 

「おい、噂の大旦那様は間違いなく屋敷にいるんだろうな?」

 

「へ、へい親分。屋敷の外へ出た様子は無いと間違いなく聞いておりやす」

 

 

男達は小声でしきりに愉快そうに言葉を交わしながら、門番すらいない大邸宅の様子にニタニタと笑みを浮かべる。

頭の中には邸宅の人間を全て皆殺しした上金品を掻っ攫う……即ち畜生働きの事しか最早頭に残ってはいなかった。

 

そして金品の在処を聞き出す為の重要な目標である大旦那、棟平藤兵衛が出かけていない事を親分と呼ばれた男は情報収集をさせていた小男に確認すると。

返って来た言葉に満足げに醜悪な笑みを浮かべ、自分達の仕事が滞りなく終わる事を確信する。

 

 

 

故にこそ、男達は今から襲撃をする自分達が逆に包囲されている事に気付く事は出来なかった。

 

 

「な、なんだぁ?!」

 

 

突如屋敷の門が開き、その中から御用と書かれた提灯を持った一団が現れて集団の中の一人が戸惑った叫びをあげる。

混乱する中集団の長、親分と呼ばれた男が周囲を見回してみればまるで自分達を取り囲むかのように夥しい人数の御用提灯を掲げた役人達が次々と現れてくる。

 

中には大恩ある大旦那を襲う集団と聞いて憤怒を顔に浮かべた、役人を匿っていた町人たちが手に何かしらの得物を持って現れる始末である。

 

 

「く、くそ!? 逃げ……」

 

「逃がしはせんぞ、大槌の門平」

 

 

混乱し右往左往する部下を尻目に、何とか自分だけでも逃げ出そうとした親分に沙汰を告げる鬼の言葉が投げかけられる。

冷や汗を滝のように流した男が声をした方向へ視線を向けると、そこには……。

 

 

「火付盗賊改方長官、長谷川平蔵である。神妙にお縄につくが良い」

 

 

地獄の鬼も逃げ出す悪党への応報者、鬼の平蔵が立っていた。

 

 

 

 

 

「いやー無事に済んでよかったのう」

 

「左様でございますな大旦那様」

 

「ところで新右衛門や」

 

「はい」

 

「なんで儂が簀巻きにされてんの?」

 

「奥方様とお妾様、そしてご息女様達が大変ご立腹にてそのようにするよう申し付けられました故」

 




媒体によって長谷川様って結構口調と言うか雰囲気変わるから、地味に難しかったです(小並感)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。