大江戸騒動記~棟平屋の軌跡~   作:社畜だったきなこ餅

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また続いちゃったぜ、引き続き時代考証は(略)
今回は話が長くなっちゃったので、前後編に分けてお届けいたします。


求.上様と副将軍に目をつけられた儂が仕事人の必殺から逃れる方法・前

 

 

 多分天下泰平の江戸時代、なんやかんやの末に先の副将軍からの成敗を逃れた儂こと棟平藤兵衛は今。

 正室として娶った恋女房が腕に抱いている、待ち望んだ愛息子と戯れておった。

 

 

「べろべろばー!」

 

「きゃっきゃっ!」

 

「うふふ、もう旦那様ったら」

 

 

 7つまでは仏の子だとか男親は厳格にとか言われとる世の中じゃが知ったこっちゃないわ。

 結果論的に高まった医術と財力でこの子の未来は何が何でも護ってみせるわい!

 

 ちなみに待ち望んだ長男の姉に当たる腹違いの娘らも勿論大事にしておるぞ、抜かりないわ。

 

 

「大旦那様、そろそろ出立の時間でございます」

 

「むぅ、もうそんな時間か……おさよ、藤太郎の事は頼んだぞ」

 

「ええ……貴方様もどうかお気をつけて」

 

 

 ひょっこりと現れたは新右衛門、またなんぞ騒ぎを……とかそんなではなく。

 ちょっとばかり、江戸南の方の越前後屋の元縄張り付近がきな臭くなってるらしく、そこらあたりを任せた店主から泣きのヘルプコールが入った為である。

 

 なんでも出どころ不明の阿片が出回るわ、火付けや盗みに殺しが横行で治安が大惨事。

 お役人も頑張ってはいるが、それ以上に相手が上手なのか思うようにいってないらしい。

 

 

 ……なんで儂が出張る必要あるんじゃろね!?

 

 

 そんなこんなでやってきたのは材木町、最近は新興宗教の一種である妙光寺の教えが広まってるとかなんとか。

 なんでも教えを聞いて守ったら家内安全商売繁盛だとか何とか、随分と眉唾案件じゃのー。

 ともあれ、町人らの頼りになっていると言う事は情報も集まってる事は火を見るより明らかなので、新右衛門をお供に顔を出す事にするのじゃ。

 

 

「これはこれは、弱きを助ける御仏の化身と名高い棟平屋の大旦那様……」

 

「いやいや、そんな拝まんでくれ。背筋がこそばゆいわい」

 

 

 そして開幕拝まれたわ、なんで信心深い町人やら僧侶の人みんな儂見ると手を合わせるの。

 しかし不思議な尼さんじゃわ、世情にも聡い事は会話の節々からわかるし……何というかこう、俗っぽくはあるが生活や欲望に根差した判断基準を持ってるように感じるのう。

 

 じゃけどこう、なんじゃろ。

 なーーーんか胡散臭いんじゃよなぁ、この尼さん。

 

 

「ふーむ、なるほど……何かあればうちの店からも人を出しましょう」

 

「かたじけのうございます」

 

 

 そんな具合に話を切り上げ、こっちの方へ店を出している支店へ向かう道中。

 いつもより5割ぐらい顔をしかめている新右衛門が、儂に耳打ちをしてきおった。

 

 

「……大旦那様、尾けられております」

 

「マジで? 数は?」

 

「4つほどでありますな……1人飛びぬけた手練れは居りますが、そちらはこちらを狙っておらぬ様子」

 

 

 その言葉を聞いた儂しばし考え、支店まではそこそこ距離があるし身内同然である支店に押し入られても面白くない。

 なればやる事は一つじゃの。

 

 と言うワケで儂と新右衛門は二人して狭い路地へ入り、敢えて袋小路へと行き着く。

 どう見ても追い込まれた儂ら二人、しかしこれは作戦なのである……なんせこれなら挟み撃ちの心配はないからの!

 とは言いつつも実はめっちゃビビってる儂、こんな鉄火場幾つも潜ってきたが何回潜っても慣れんものじゃ。

 新右衛門はどうじゃ? え?もう慣れた? お主ほんとすげーヤツじゃのう。

 

 

「棟平屋の主人、藤兵衛だな?」

 

 

 そして出現したのはステレオタイプなニンジャスタイルな恰好をした男3人、アホじゃなかろうか。

 だがしかしその目付きはぎらついておるわ、アイエェェェェェ。

 

 

「なんじゃお主ら、こんなまっ昼間からそんな目立つ装束着込みおって……まずはそっちから名を名乗れい」

 

「名乗る名などない、覚悟!」

 

 

 言うや否や儂らに襲い掛かってくるニンジャ3人、慌てて袋小路にあった大桶の影に隠れる儂。

 そして唸る新右衛門の剛腕、斬りかかって来た一人目のニンジャの腕を掴むと流れるような動作で地面へと叩き付け、ノータイムで震脚をニンジャの鎖骨へ叩き込んで踏み折る。

 

 

「っ貴様!手練れだな!」

 

「応じてやる義務はない」

 

 

 ざわめくニンジャ達、軽く指を曲げた手を前に半身に構えながら応じる新右衛門。相変わらず決まっておるのう。

 ちなみにアヤツには若いころから、思い付きのCQC的格闘術や環境を利用した戦闘術に棒術を仕込んでおる。なんかその結果エライ事になったが儂は責任取る気はない。 

 

 

「うげっ!?」

 

「どうやらそのナリは飾りでしかないようだな」

 

 

 そして流れる動作で二人目も新右衛門は鮮やかに沈黙させる、なんじゃろなんかとんでもないもん作ってしまった気がするぞ儂。

 3人のうち2人が瞬く間に沈黙させられたことに、ラストニンジャは焦りを見せるや否や身を翻し逃げ始める。さすがニンジャ逃げ足も速いんじゃのう。

 

 あ、逃げようとした先でお役人と思しき侍にぶちのめされて昏倒しおった。

 え、なんで新右衛門が構えて腰落としてるの、軽やかに動けないからて構えるの嫌ってたはずじゃろ?

 

「……大旦那様、まだ隠れててください。アヤツは手練れでございます」

 

「え、マジ?」

 

 

 ホッとして大桶の影から出ようとした儂を制止する新右衛門、あの新右衛門がそう言う人物と言う事実に儂戦慄。

 恐る恐るこちらへ近寄ってくるお役人の顔を見てみれば……。

 

 

「何やら怪しい連中がつけ狙ってたから心配して駆けつけてみたが、大丈夫みてぇだな」

 

 

 はぐれている純情派の刑事みたいな顔をした、定町廻り同心でした。

 い、いや落ち着け棟平藤兵衛……通りすがりで野生の藤田なまことさんかもしれない……!!

 

 

「昼行燈と評されている割に見事な身のこなしでしたな、中村様」

 

「いや偶然だぜ? 火事場の馬鹿力とは凄いもんだ」

 

 

 儂付きの護衛である町人の新右衛門すら昼行燈と知っている、中村と言う名前のお役人。

 どう見ても八丁堀の旦那です、本当にありがとうございました。

 

 

「ところで江戸中で評判の棟平屋の大旦那であるアンタが、何故こんなとこに?」

 

「はへぇ?! い、いえ……こっちの方を担当している支店の店主が、ここいらの治安やら騒動で悩んでると言う事で知恵を貸しにきたわけでして……」

 

 

 不審者小物150%な状態で、八丁堀の旦那の眼光にびびりながら答える儂。正直ちびらなかった事褒めてほしい。

 しばらく儂を不審そうな目付きで見てた八丁堀の旦那だったが、溜息を吐くと空気を軟化させた。

 

 

「……なぁ棟平の旦那、孤児の守護地蔵とまで言われてるあんたに頼みてぇ事があるんだが、いいか?」

 

「はい! なんでも御申しつけ下さい!!」

 

「大旦那様、そこまでへりくだられなくても……」

 

 

 秘密話なのか、八丁堀の旦那に手招きされほいほい近づく儂。

 新右衛門が複雑そうな顔をして呟いておったが聞こえないふりをする、必殺な仕置きされとうないんじゃい!!

 

 ともあれかくかくしかじかと聞いた八丁堀の旦那の話をかいつまみ要約すると……。

 連続で殺しが行われている中で、容疑者として連れていかれた『おきょう』という娘さんが匿っていた孤児たちがいる事。

 その子達をうちの店で引き取ってもらってやる事はできないか、という相談じゃった。

 

 

「……そのおきょう、という娘さんとやらは?」

 

「…………すまねぇ、言えねぇ」

 

 

 苦虫を噛み潰した様子の八丁堀の旦那の様子に、儂もまた察する。

 自害したならそうと言うだろうに、言えないと言う事はそう言う事なんじゃろうな。

 

 

「旦那は今からそこへ向かう腹積もりで」

 

「おう」

 

「ならば多少の寄り道してもいいでしょう、往くぞ新右衛門」

 

「承知仕りました」

 

 

 そうして、八丁堀の旦那……長いから中村様でいいかいい加減。

 中村様の先導の元、孤児たちが屯しているという材木町の先にある港町の川上の小屋へと儂ら3人は向かい。

 

 筵の上で荒い息を吐きながら横たわっている、齢6つごろの少年を必死に看病している同い年ぐらいの少女を目撃する事となった。

 

 

「お、おじちゃん達誰?!」

 

「落ち着きなお嬢ちゃん、俺達はおきょうの頼みで来たんだ」

 

 

 少年を背に庇いながら儂らに対して警戒心を強める少女、見知らぬ大人に対する態度というには少々物々しい様子を感じるのう。

 

 

「大旦那様、あちらの子供はすぐにでも医者に診せてやらねば危険かと存じます」

 

「ソレはいかんのう、中村様。近くのうちの支店へ急いで向かいましょう、店になら医者も常駐させております故」

 

「動かしちゃ危険だ、呼びに行こうぜ」

 

 

 子供の様子を見ていた中村様が儂の言葉に顔だけで振り返り、心配そうに言うので儂も失礼して片膝をついて子供の様態を確認させてもらう。

 着物が多少汚れるが大した問題じゃないわい、しかし、これは、ふーむ……。

 

 

「これなら動かしても大丈夫でしょう、むしろこの環境に長く置く方が危険じゃな」

 

「……そうなのか?」

 

「比較的綺麗に子供達も使ってはおったようですが、隙間風も入る場所ですしな。坊や、ちょっとだけ頑張っておくれよ」

 

 

 薄っすらと眼を開けて儂を見上げてくる子供の頭を優しく撫でてやり、負担がかからぬよう注意しながら慎重に負ぶってやる。

 しっかし軽いのう……これは医者に診せた後、消化が良くて栄養のあるものたんと食わせてやらんといかんのう。

 

 そんなこんなで、儂の言葉と様子に何やら考えておる中村様に一声かけて小屋から出……棟平屋の支店へと向かう儂ら一同。

 じゃがこの時、儂は欠片も思ってはおらなんだ。

 

 

 まさかこの一連の流れから、とある藩のお家騒動と外国船への人身売買、トドメとばかりの阿片密売の三つが絡んだ大騒動に巻き込まれてしまう事など……。

 

 




今回の仕事人勢の事件の元ネタは……。
バンブレストが昔出した、ファミコン版必殺仕事人のシナリオを流用してお届けしております。
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