大江戸騒動記~棟平屋の軌跡~   作:社畜だったきなこ餅

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日間ランキング一位、大変光栄でございます。
皆様本当にありがとうございました、こちらつまらないモノですが短編でございます。

感想等で割と町民からの評判的話題が多かったので、書いてみました。



江戸っ子から見た棟平藤兵衛という男

 

 

 時は大江戸天下泰平の時代。

 そして今より語られるは、助平で小心者な棟平屋の主人こと棟平藤兵衛が徳川幕府当代将軍吉宗公と、先の副将軍水戸光圀公に出会った少し後の話である。

 

 

「なぁ新右衛門や、風聞を一々気にするのはみみっちいとは儂も重々承知しておるんじゃが……ある日突然お偉方にバッサリいかれるような儂の風聞、世間に流れておらぬよな?」

 

「江戸の町にて大旦那様の事を知らぬ者は殆ど居らぬと言える以上、風聞や流言を気にされるのは当然かと」

 

「世辞は良い、で……実際どうなんよ?」

 

「助平である事と月の満ち欠けより妾の数が増えるほうが早いと笑い話の種になる事が常でございますが、大旦那様を悪く言う輩の事はそう聞こえてはきませぬ」

 

 

 立て込んだ仕事が一段落した解放感を味わいつつ縁側にて上品な甘さの羊羹を味わっていた藤兵衛、ふと最近の悪徳スレイヤーな人物たちに立て続けに遭遇した事もあり。

 となりでいつもの様に仏頂面を浮かべたまま座っている新右衛門へ問いかけてみれば、返って来た言葉に満更でもないニヤケ面を浮かべ慌てて自身の顔に手を当てて神妙な顔へと戻す。

 

 棟平藤兵衛、商売ではちょろくないが日常では割とちょろい男であった。

 

 

「なれば良いのじゃ……さて一息ついたことだし残った仕事も片付けてしまうとするかの」

 

 

 羊羹を味わいお茶を飲み干し、軽く手を叩いてボインな女中を呼んで流れるような仕草で着物の上からでもたわわに主張する豊満な果実に手を伸ばし。

 ついでに鼻の下も伸ばしながら藤兵衛は立ち上がると、女中にお盆を下げさせて仕事部屋へと戻っていく。

 

 そんないつもと変わらない主人の様子を見ながら、新右衛門は今日も平和ですななどと思いながら藤兵衛の後をついていくのであった。

 

 

 この時、藤兵衛は深く聞かなかったし新右衛門は聞かれなかった故に……巷の藤兵衛の評判を彼は知る事はなかった。

 しかし後に彼は遠い目をしながら呟く事となる。

 

 なんであの時、儂はもっと深く確認せんかったんじゃろう。と。

 

 

 

 

 

 

 ところと時間は変わり、江戸の町に夜の帳が降りた中。

 提灯をぶら下げた酒屋にて、一仕事を終えた町民たちは酒とアテを味わいながら思い思いに歓談をしていた。

 

 

「そういやぁ与作、仕事中ちらっと話してた『藤の一つ蔵』って何なんだ?」

 

「なんだよ田吾作、おめぇ知らねぇのか? 江戸っ子だって言うのに!」

 

「そんな無体な事言わねぇでくれよ、オラぁ最近信濃から出てきたばかりなんだぜ?」

 

 

 そいやぁそうだったな、などと既に良い具合に出来上がっている与作と呼ばれた男は御猪口の中の酒をぐいと飲み干すと。

 芝居がかった口調で、事のあらましを語り始める。

 

 

「あ、さて時は……ええと何年だ、ともあれアレだ。2年だか3年まえなんだけどよ」

 

 

 そして即座にいつもの口調へと戻った、どうやら歌舞伎役者のように大見得を切りたかったようだが難しかったらしい。

 

 

「結構な大火があってよ、ここらへんも含めてみーーんな燃えてなくなっちまったんだよ」

 

「だけどよう与作、その割にゃぁここらは綺麗だし立派な店も並んでるじゃねぇか」

 

「そこが藤の旦那の粋なところよ! 旦那は自分や店の蓄えをほとんど出して、着の身着のままで焼け出されちまった町民に手を差し伸べて下さったんでさぁ!」

 

 

 オイラのおっかあとおっとうも旦那が居なかったら冬を越せなかったんでぃ、と既に感極まって来たのか与作はずびびと鼻を啜り。

 ほへー、などと呑気に相槌を打っている仕事仲間を横目でにらみつつ話を続ける。 

 

 

「更に旦那は店の丁稚やら女中、はてはお抱えのお医者様まで鶴の一声で集めて。長屋の立て直しやら飯の煮炊きに怪我した相手の面倒まで老若男女関係なく見てくださった!」

 

「あっしのこの店も、藤の旦那のおかげで立て直せましたからなぁ」

 

「そうしてれば当然、銭も米も着物もなくなっちまう!なのに旦那は蔵の中身をどんどん出して……中身のある蔵は一つだけになっちまった」

 

「そんな旦那の男気、そして心意気そのものとして『藤の一つ蔵』って語り草になったのさぁ!」

 

 

 与作の語りに店の店主まで乗っかり、ありがたやありがたやなどと言いながら手を合わせる始末である。

 ついでに与作は自分の語りで男泣きを始めている、控え目にいって田吾作は置いてけぼりであったが立派な人物なんだなぁと言う事はとりあえず理解したらしい。

 

 ちなみに最後に残った棟平屋の蔵の中身は店の従業員に関する証文や手形に一月分の給金、それと自身の家族の分の生活費と助平活動用へそくりである。

 当の本人は経済活動は回してなんぼじゃし一月分あれば大丈夫じゃろ、という商売思想で動いただけに過ぎないのでここまで持ち上げられると、逆にビビること間違いなしであった。

 

 なお、蓄えはあればあるほど良いと考える大商人が多い事は言うまでもない。

 

 

「ご立派な方なんだなぁ」

 

「ずびっ、ああ……粋で懐の広いお方だぜ藤の旦那は。助平だし女の趣味がちょっと……アレだけど」

 

「そうなのか……」

 

 

 

 この酒うめーなぁ、などと呑気に考えながら呟いた田吾作の言葉に与作はしきりに頷きながら御猪口に手酌で酒を注ぎ、その中身を一気に呷る。

 余談であるが藤兵衛の性的趣味嗜好である……大きな瞳はギョロ目、胸に貧富の貴賤はなくあるのは尻の貧富の差、とまぁ藤兵衛が持つ現代の性嗜好と江戸の性嗜好は反比例するものが多いのだ。

 その性的趣味嗜好の差が、江戸の男達の間で醜女趣味と話題になるのは自明の理である事は言うまでもない。

 




この手のネタの引き出し、後は……
・医者視点
・正妻、妾視点
・店員、孤児視点
・上様視点
・先の副将軍視点
・仕事人勢視点
があるから、まだまだネタのストックは安心だな!(フラグ)
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