ガンダムビルドファイターズ 女神の詩   作:0606

10 / 11
修行とそれから…

 

 

「まだまだ甘いぞォ!少年!」

 

中尉はそう叫び、ありえない体勢から蹴りを放って来る。

それを間一髪で避けながら、俺は機体を前へと出す。

 

「っらあ!」

 

右手のビームサーベルを真横、やや上方に振り、相手にしゃがませる事を誘発、逆手に持った左手のビームサーベルで突き刺そうとする、が…

 

「その程度…ッ」

 

しゃがんだまま、中尉のフラッグはスラスターを全開、こちらへと体当たりをしてくる。

まともに食らった俺のアストレアは場外へと吹き飛んだ。

 

「ありがとうございました、中尉」

 

バトルシステムから光が消え、ガンプラが動かなくなる。それを確認した俺は中尉にそう礼をする。

やはり、まだまだ弱いんだ俺は。

宮樹が誰と俺を戦わせたいのかはわからない。だが、きっと今の俺じゃ勝てないんだ。

義理や恩義で強くなろうとしてるわけじゃない、いや、最初の頃はそうだったかもな…でも俺は、少なくとも今の俺はただ強くなりたい、誰にも負けないくらい強くなりたい。その一心で中尉に訓練をしてもらっている。

 

「……?……ねん! 少年!」

 

「は、はい!」

 

「どうした?心此処にあらずといった様子だったが」

 

急に声をかけられた俺は声を上ずらせながら返事をする。そこまで集中してたのか…気をつけないと。

 

「いえ、今後の事を思案しておりました」

 

「今後?」

 

「はい、私は、自分の為に強くなろうとしています。それは私の傲慢で、正義はあるのかと…」

 

そう言いながら俯く俺。

宮樹から授かった機体、アストレア。それは正義の女神を意味するという。

他人の為でなく自分のため。自己中心的な考えなのではないか。そんな不安が胸中を覆い尽くす。

 

「なに、気にする事はない」

 

中尉のその言葉に、俺は顔を上げる。

 

「結局皆、自分の為なのだ。人の為、世の為、何かを守りたい、幸せにしたい。それは全て己を満たす為だ。それらは全て、己の為なのだよ」

 

「しかし、それはエゴとも呼べます。私はそのエゴを認め、己の内に秘め、己が力にする事は…!!」

 

「少年」

 

熱くなっていたのだろう、自分の言葉が自分の物でないような感覚がした。意識をしてから発したのではなく、心が叫ぶ、そんな感覚。

 

「君は、何を思ってガンプラバトルを始めた?」

 

「それは…恩人に、恩を返したかったからです…」

 

「その恩返しを、その人が望んでいなかったとしたら?」

 

たしかにそうだ。

俺の一方的な押し付け、自己満足だったのではないか。

だが、あの時宮樹はこうも言ったはずだ、私の専属ガンプラファイターになってほしい、と。

 

「君は勘違いをしているのだ。エゴが間違い。その発想が間違っている。人はエゴの塊だ。己の欲を制し、聖人君子のように振る舞う者もいるのだろうが、私はそのような者に背中を預ける気にはなれないな。強くなりたい。それは間違いではないのだ」

 

宮樹が、俺に求めたのは、力。

俺が求めているのも力。

なら、これはいいのだろうか。

エゴではなく、いや、エゴだったとしても、俺自身が強くなりたいと思う意思は間違いでは、ないんだろうか。

 

「それに、私は我慢弱く、落ち着きがない。それは聖人君子とは程遠いだろうな」

 

「中尉…俺…その……ありがとうございます!」

 

「ふっ。やはり君に敬語は似合わんな」

 

「え?」

 

「何でもない。こちらの話だ。さあ、訓練を再開するぞ!」

 

「はい!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。