あれから数日。
どうしてこうなったんだと言わざるをえない状況となっていた。
「朝ごはん」
トンッ、と俺の前に置かれる焼き魚に味噌汁、ご飯。
無論置いたのは、宮樹だ。
「な、なあ宮樹、本当にいいのかよ?」
「なにが」
きょとん、と首を傾げる宮樹。
ほんの数日だが一緒にいてわかったのだが、この少女、宮樹は感情の起伏が少なく、人との距離感に疎い。
「なにが、じゃなくてさ。その、年頃の女の子が付き合ってもいない男と一つ屋根の下っつーのはどうなんだ」
自分で言ってて恥ずかしくなり、少し言葉がしりすぼみになる。しかし当の本人はどこ吹く風、まるで自分に言われたんじゃないよ、と言わんばかりの態度で朝食をとっている。
まあ、ああ言ったものの、実際問題は宮樹の家に居候させてもらい、非常にありがたい。なにせ俺はここらの地理を知らない。少し調べたところ、俺の元いた世界とも…違う。いや、少し急ぎすぎたか。
こうなった経緯を、まだ話してなかったな。
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話は、あの戦いの後に遡る。
ゲルググを操っていた男はいつの間にかいなくなっていた。俺は周りにいた見物客に囲まれ身動きが取れずにいた。
すると、不意に物凄い力で袖を引っ張られ、見物客の塊から無理矢理引っこ抜かれた。
「こっち」
宮樹と名乗った少女に袖を引っ張られ、案内されるがままに走る。とにかく走った。途中で辺りを見回したが。俺の住んでいた地域とはまったくと言っていいほど景色が違い、謎は深まるばかりだった。
しばらく走ると、少し広めの公園があった。
その中に入り、二人が余裕を持って座れるベンチに俺は腰を降ろす。
「つ、疲れた」
すると、すとん、とすぐ隣、肩と肩が触れ合う距離。離れようにももう横にずれることなど出来ない。
「貴方、何者?」
再び宮樹の口から紡がれる先程と同じ問い。
透き通ったその声は、答えることしか許さないという雰囲気を纏っている。
「な、名前ならさっきも言ったろ」
その不思議な雰囲気な気圧された俺は、少しビクつきながらも問いに答える。
「そうじゃない」
間髪入れずに紡がれる透明な声。
「貴方、操縦は初めてだった。なのにあの動き。まるでニュータイプ」
まさかこんな可愛らしい女の子からニュータイプだなんて言葉が聞けるなんてな。
ニュータイプというのは機動戦士ガンダムに出てきた用語だ。宇宙に進出した人類は新しい環境に適応した人物がニュータイプになれる、と言われている。誤解なく分かり合えるようになる、と言われていたその力は、時代が進むにつれエースパイロットと同義にされていくのだが、まあ、そんな話はいい。
「ガンダム、知ってんの?」
「好き」
不意に発せられたその言葉は、自分に向けられたものではないと知っていてもドキッとするほどの美しさを纏っていた。
まあ、しかし、素人の俺が見てもあのジムクゥエルはよく出来ていた。好きで当たり前か。
「じゃあ、本当のことを言うけど、信じないと思うぞ?」
「聞いてから判断する」
成り行きを話し、彼女の様子を伺うと、宮樹は少し、ほんの僅かにだが口角をあげた、気がした。
「貴方は」
少し間を置かれる。
「別の世界に飛ばされた」
唐突に、しかも真面目に告げられたその言葉に、俺の絶叫が木霊したのは言うまでもない。
あまりの声量だったのか宮樹が両耳を塞いでいた。その手を離し、続きを話し始める。
「ここは貴方のいた世界じゃない。つまり貴方は天涯孤独」
この少女、しれっととんでもない事言いやがる。
「貴方に、提案がある」
真っ直ぐに目を見られ、告げられた言葉に少し視線を外しながら答える。
「な、なんだよ」
「私が貴方に宿を提供する」
「まじで!?」
これは願ってもないことだ。宮樹の話の真偽は定かでないが泊まるところがないのは痛かった。
が、しかし問題がある。
「俺、無一文なんだけど…」
「無問題」
一瞬の返答に、あ、そう、としか出ない。
「ただ。条件が」
「条件?」
「ギブアンドテイク」
俺、宮樹に何が出来るんだ?
「私専属のガンプラファイターになって」
「は?」
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というのが数日、たしか4日前くらいの会話だ。
なぜか宮樹の家、一軒家だ。には宮樹一人しかおらず、ご両親の顔は見たことがない。ただ、何かあるんだろうと思い、聞くのはやめている。
「食べないなら片付ける」
思考の海に沈んでいたのか、宮樹は既に食べ終わっていた。急いで箸を取り、両手を合わせる。
宮樹は確かに基本的に無表情で、コミュニケーションが取りづらいのが傷だが、すごく評価したいところがある。
それは…
「うん、美味い」
料理が上手いのだ。