「出来た」
カタッ、と机の上に置かれたのはジムクゥエルファキオ。俺が宮樹に頼んで少し改修してもらったのだ。
この前新しく装備したシールドに砲門をつけてもらい、バルカンを撃てるようにしてもらった。これで幾分は戦闘が楽になるといいんだがな。
「さんきゅー、宮樹。助かるよ」
「別に」
相変わらず素っ気ないな。
もう宮樹の家に居候して半月くらいになるが、いまだに笑ってるところを見たことがない。
いや、今はそんなことはどうでもいい。
俺はうずうずしていた。改修されたジムクゥエルファキオを動かしてみたいのだ。
「なあ、宮樹」
そう声をかけると、
「わかった」
と一瞬で返ってきた。
お前こそニュータイプなんじゃねーのか?
「よっしゃあ!」
最近行きつけになってるホビーショップに二人で向かい、対戦をしている。今は二連勝目。バルカンとはいえ射撃が出来るのはかなりいい。牽制や相手を怯ませたりと接近戦を仕掛けやすくなる。
俺達が少し話していると、新たな挑戦者が出て来た。
「お手合わせ願えるかな?」
少し茶色の髪を揺らしながら微笑む様はまるでおとぎ話しに出てくる王子のような雰囲気を持っている。そう感じた青年からは強そうなイメージが持てない。
「やるか、宮樹」
「調整出来てる」
端的に会話を済ませ、ジムクゥエルファキオをバトルシステムの上に置く。
現れた操縦球を握り、気を引き締める。
「式野詩桜、ジムクゥエルファキオ!行きます!」
バックパックのスラスターと増加されたスラスター達が一斉に火を吹き、宙に躍り出る。
フィールドは、市街地か。
途端、遥か前方から殺気のようなものを感じ取り、機体を横にずらした。その刹那、一筋の深緑の光がさっきまでいた所を通り過ぎ、後ろのビルを破壊する。
「長距離狙撃!?」
分が悪い。そう判断する。
何せこちらには射撃武装が一つ、しかもバルカンしかないのだ。
なら、と思いスラスターを吹かし空へと上がる。
そこへすかさずビームが向かってくる。ギリギリでそれを回避し、またも飛来したビームを避ける。数度それを繰り返し、相手の位置を大まかに把握すると、一斉にスラスターを吹かして相手がいるであろう位置へと向かう。
すると、
「見えた!」
いたのは、形は少し違うものの、インパルスだった。黒を基調に灰色と青色が加えられている。
即座に見える武装を確認、狙撃ライフルに盾。狙撃型だ。
距離を詰めれば行ける。そう確信した俺はスピードを緩めることなく相手に突進していく。
「当たれ!」
まずはバルカンの牽制射。インパルスはそれをシールドで防御していく。
俺はスロットを切り替え、即座にバックパックのビームサーベルを引き抜き、右手に持つ光刃で斬りかかる。
「もらった!」
またもシールドで防御されるも左手の光刃で相手の脚部を狙う。
「な!?」
すると相手は防御していたサーベルをシールドで無理矢理押し返し、後ろへと逃げていく。
せっかく接近したんだ、逃げられるわけにはいかない。
「逃げられたか、くそ」
敵機を完全に見失い、またあの狙撃を掻い潜り接近しなければ行けないのかと思うと溜息が出る。
するとモニターが開き、横で機体の状況などをチェックしてる宮樹から通信が入る。
「おかしい」
「何がだ?」
「あのインパルス」
宮樹のその言葉に俺は疑問を覚える。何かおかしな所があっただろうか。たしかにサーベルを押し返したあの出力は高いだろうが、そこまでおかしな点ではない。
「前に一度見た。その時は…」
と、宮樹が言葉を言い終わらないうちに、接敵アラートが鳴り響いた。機体を屈ませると、すぐ上を実体剣が通り過ぎて行く。
「今のを避けるか」
そう相手が呟いた。
目視したインパルスは、先程の装備とは変わり、バックパックに実体剣、エクスカリバーを一本、背負っている。
換装したのか?戦場で?
初めての経験に頭が追いつかない。だが、考える暇はなさそうだ。
相手は後ろ腰にマウントされたライフルを引き抜き、こちらに銃口を向ける。
「くそ!」
即座に機体を動かし、横に回避、通り過ぎて行く光に肩の装甲が少し抉られていく。
負けてはいられない、こちらもバルカンを使い、相手になんとか接近していく。
スロットを選択、ナイフを引き抜き逆手に構えて斬りかかる。
「ほう」
涼しげにそう呟き、背中にマウントされたエクスカリバーで防がれる。
激しく散る火花。押し切られそうになった寸前にバックステップし、宙返りと共にナイフを二本共相手に投げる。
完全に意表をついたと思ったそれは、なんの苦もなく相手は弾く。この一瞬、そう感じ取ってサーベルを二本引き抜き相手に斬りかかる。
このスピードに少しは相手を怯んだのか、僅かに反応が遅れるが機体各部のバーニアで方向転換し、サーベルを避けられる。
「ちょこまか、すんなよ!」
「そちらこそ」
避けた先に射抜くつもりでサーベルを一本投げる。
相手は言葉を吐くと共にそれを回避し、互いに睨み合う。
「中々出来るようだね」
「そりゃどーも」
互いに言葉を交わし合いながらも睨み合いは続き、先程投げたサーベルが壊したビルが崩れたその刹那、俺は敵機に肉薄する。懐に入り込んでシールド先端についた打突用クローで相手の腹部を狙う。
だが、相手もそう簡単にはやらせてくれなかった。大型の対艦刀であるはずのエクスカリバーを器用に動かして、俺のクローを防ぎ、そのまま両腰にマウントされていた小型ブーメランを一個展開、こちらにその光刃を突きつけようとしてくる、それを残ったサーベルで必死に防ぎ距離を取る。離れ際にライフルで追撃され、すかさずこちらも残ったサーベルを投げてそのサーベルにバルカンを当て爆発を起こし、その間に距離を取る。
「宮樹、なんなんだよ、あいつ」
強い。
只々強い。
その感想しかない。
「前回」
「え?」
「前回ガンプラ世界選手権、ベストエイトに名を連ねたファイター」
ガンプラの世界大会なんてあんのかよ…ってか、ベストエイトって。凄すぎだろ。
「なんでそんなのがここにいんだよ…」
そう愚痴をこぼすと、宮樹は俺に向けて綺麗に澄んだ声で、
「がんばって」
と言った。
たったその一言が。
何気ないその一言が何故かとても嬉しくて、
ようやく少し近づけたような気がして。
「俄然やる気出てきたぜ」
奮起し、操縦球をきつく握り締めた。
「鬼ごっこはお終いかな」
敵機であるインパルスが姿を見せる。
黒く塗られたそれはこちらを真正面に捉え、エクスカリバーの切っ先をこちらに向けてきた。
対してこっちもシールドに格納されたサーベルをそのまま展開し、相手に向ける。
「一体何本あるんだか」
「生憎と手品が趣味でね」
憎まれ口を決して上手くない洒落で返す。
その間も互いの剣は互いに向けられたままだ。
形勢は圧倒的不利。
だが、負けるつもりは毛頭、ない!
「墜とす!」
「沈んでもらうよ!」
互いの機体がトップスピードで剣を振りかざし、ぶつかり合った。