コクピットを眩い光が支配する。
何も言えなかった。
激闘を演じ、その果ては、惨敗だった。
この戦闘に置いて、俺は何も出来なかった。
手も足も出なかったんだ。
バトルシステムから伸びていた光が消え、無残にもボロボロとなったジムクゥエルが落ちてくる。
「いい勝負だったよ、ありがとう」
対戦相手はそう言い、手を差し出してくる。
俺はその手を握り返さずに、振り払った。
「次は…負けねぇ」
「いい気迫だ。僕の名前は葉山裕一。次もよろしく」
言い残して走り去った俺の背中から、そんな声が聞こえた。
ただ、悔しかったんだ。この世界に来て、一度も負けなかった。驕ってたんだ。俺は誰にも負けないと。
そう、子どものように天狗になっていたんだ。
どれくらい走っただろうか。
気づけば俺が初めてこの世界に来た時にいた公園にいた。
背中から近寄ってくる足音が聞こえ、そちらに顔を向ける。
「ごめん。宮樹。負けちった」
そう言って、頭を下げる。
ふいに、頭に手を置かれる。それが宮樹の手であると判断するまでに時間がかかった。
「あのガンプラで、よくやった」
そう言いつつ、宮樹は俺に頭から手を離す。
あのガンプラ?
ジムクゥエルファキオのことだろうか?
「ジムクゥエルは、コンテスト用の機体。戦闘用の改造は施してない」
………は?
「だからあそこまで勝てると思わなかった」
いや、ちょっと待て、俺が今まで扱ってたのは、コンテスト用?つまり、コンテストに出場するために作ったガンプラ…。
「ごめん!そうとは知らずに、ボロボロにしちまった!」
罪悪感が込み上げてくる。
かなり苦労しただろう。素人目だが、あのジムクゥエルだったら上位に入れたかもしれないほどの出来栄えだったのだ。
「いい。貴方に渡した時からコンテストに出すつもりはなかった」
「そう、なのか?」
こくり、と宮樹が首を縦に、それも僅かに振る。
それを見届けた俺は全身の力が抜けきってしまい、近くのベンチに腰を下ろした。
「俺、悔しいんだ」
相変わらずすぐ隣に腰を下ろした宮樹にそう呟く。
宮樹は何も返事はしない。ただ、聞いていることはわかっていた。
「もう、負けたくねーんだ」
あんな悔しい思いをしたのは初めてだった。
元から、そんなにのめり込む事はなかった。何に関しても。勉学も運動も趣味も。狭く浅く。
平々凡々に生きてきた。
違うな。怖かったのかもしれない。
こうやって負けて悔しい思いをするのが。
俺は自分が弱い人間だって知ってるから、悔しい思いをしたら立ち上がれないと知ってたから。
「でも、今は違う」
不意に、自分が言ったのかと思った。
それ程までに、宮樹が紡いだこの言葉は、それこそ俺の心の中の独り言を読まないと発せない言葉だったのだ。
「次からは負けないように、新しいガンプラを作る」
俺の疑問を置いてけぼりにして、宮樹は話を進めていく。
「来て。貴方に選んでもらう」
そう言われ、宮樹に手を取られる。
「え、選ぶって何をだ?」
「貴方の新しいガンプラ」
俺の疑問は尽きなかった。
ただ、この手を、仄かな暖かさをいつまでも繋いでいれるようにと願っていた。
そんな幸せを前に、微かな疑問は吹き飛んでいた。
ーー模型店。
右を見ても、左を見ても、ガンプラガンプラガンプラ。
どこを見てもガンプラだ。
まあ、そういう店なのだから当たり前か。
「どれにするか選んで」
そう言い宮樹がこちらを見る、選んでって言われても、数が多すぎる。どれにするか大いに悩んでいると、店の奥から小柄な少年が出てきた。
「あ、いらっしゃいませ!」
元気に挨拶をされ、俺も軽く会釈する。
「あ、宮樹さん、また来てくれたんですね!」
その少年はどうやら宮樹を知っているようだった。
宮樹は少年のほうを向いて、頭を軽く、ほんの僅かに下げる。
「今日はどうしたんですか?」
「ガンプラ。この人に合う奴を」
宮樹のアイデンティティとなりつつある端的な会話を聞いた少年は目を輝かせ、俺の方を向いて急接近してきた。
「ガンプラですね!どのガンプラがいいですか!?」
な、なんだこの子…。
「バトル用ですか!?それでしたら、そうですね…えーと」
俺が何も話していないというのに話が進んでいく。
なんだ、なんで会うやつばかり話しを聞かないんだ。
「お客様のバトルスタイルを教えてもらってもいいですか?」
そう言われた俺は即座に返答する。
「格闘だな」
そう、得意なのはやはり格闘。
射撃はどうも苦手だ。撃つより近づいて斬ったほうが早い気がしてならない。
少年が考えながら言葉を発する。
「格闘ですか。なら運動性が高いほうがいいですね…そうだ!」
そう言って少年が手に取ったのは、
「GNY-001アストレア!機動戦士ガンダム00の外伝である機動戦士ガンダム00Pに登場する機体で第二世代と呼ばれています。第三世代機動戦士ガンダム00の主人公機であるエクシアの原型ともいえる機体で前身である0ガンダムのフレームを色濃く受け継いでいます。その特徴は複雑化されたフレームによる、より人間に近い動き、更に…」
「あー、もういい、わかった。わかったよ」
「あ、す、すみません!」
このままでは何時間と続きそうな話しを途中で切ると少年が顔を真っ赤にして頭を下げてくる。
「なあ、宮樹。これにしよう」
俺が選んだのは少年に進めてもらったアストレア。
「わかった」
宮樹もそう言い頷いた。
ガンプラをレジへと持って行き、会計を済ませる。
ここ最近は俺もバイトをしてる為、金も一応はある。
宮樹は宮樹で何個かガンプラを買っていた。
「ありがとうございました!またのお越しをお待ちしております!」
宮樹の会計も終わり、俺達は二人揃って店を出る、
店の中からそんな声が聞こえ、俺達は新しいガンプラを持って帰路へとついた。
今回はガンプラの紹介をしたいと思います。
RGM79-Q/F
ジムクゥエルファキオ
宮樹がコンテスト用にと作ったガンプラ。
コンセプトは近接戦闘を主眼に置いた高速近接戦闘機体。
メインであるジムライフルやビームライフルをオミット、更にバルカンとシールドをオミットし、両脚部にインパルスの武装であるフォールディングレイザー対装甲ナイフを二個格納し、バックパックにはサーベルを二本装備。武装はそれだけであり、後に追加されは陸戦型ガンダムのシールドをベースとしたシールドを追加する。このシールドはバルカンを備えており、有る程度牽制射が出来る。だが、威力は重視されておらず、あくまで牽制にしか使えない。そしてこのシールド最大の特徴がシールド裏に格納され、そのまま展開可能なサーベルである。尚、先端はクローとなっている。
機体の改修点としてバックパックのスラスターの大型化、両肩部、両肘、両脚部のスラスターの追加となっている。
各部にスラスターを追加した事により爆発的な推進力を得ており、また肩や足のスラスターを調整することで機体制御も完璧である。ただ、いかんせんピーキーな操作性となっている。