そのまま眠ってしまった宮樹に心の中で謝罪し、持ち上げる。想像していたよりかはほんの少し重かったが、十分軽いと言える体重だろう。
宮樹の部屋に入るのは気が引けるのでとりあえずは良くないのだろうがソファの上に横にゆっくりと下ろす。
さっきの会話…いや、やめておこう。余計な詮索をするのは居候の身として失礼だろうしな。
「少し出かけて来る。すぐ帰ってくるからな」
寝てる宮樹に一応そう声をかけ、俺は家を出た。
宮樹が作ってくれた新しい俺の愛機を持って。
ついたのはもはや馴染みのホビーショップ。顔馴染みになったいかついおっさん店員に声をかけ、バトルシステムを使わせてもらう。
GPベースと呼ばれる機械をバトルシステムにセット。ガンプラを置き、発進体勢を取る。
「式野詩桜、アストレアファキオ!行きます!」
決まり文句である言葉を口に出し、機体を一気に前へと出す。対戦相手はかなりの使い手であろうことが想像出来た。相手の機体は白く塗装されたガンダムデスサイズ。新機動戦記ガンダムWに出てくる隠密戦用のモビルスーツだ。高い運動性を持っている。一番の特性はハイパージャマーだと言えるだろう。妨害電波を発生させ、レーダー、カメラから自身の姿を消すのだ。
「どこから来る…」
持ち味であるハイパージャマーを使って接近してくるだろう事は想像出来る。
OZの兵士もこんな気分だったのか…。
不意に、本当に感ではあるが、一瞬何かが横切った気がした。一拍遅れて姿を現した白い死神が自身の武装であるビームサイズを振りかぶる。
機体が爆散する様が脳裏に浮かび、操縦球を前へと出す。
「なに!?」
そう。ショルダータックルをかましてやったのだ。
すかさず怯んだ相手に回し蹴りを放つ。脚の増加スラスターが火を吹き、威力を増大させる。
届くと思った直後に相手はシールドを構え、防御する。
このまま距離を離されて姿を消されたら厄介だ。そう思い負けじと追撃をかける。
左腕に装着されたプロトGNソードを展開、シールドごと相手を腕部を切り落とす。
そもそも何故プロトGNソードが左腕に装備されているのか。それは俺が左利きだからである。事前に宮樹に頼んでおいたのだ。
「こいつ!よくも相棒を!」
相手は腕を切り落とされ激昂する。ビームサイズのビーム発生器の角度を変え、槍状にしてこちらに突き出してくる。
それを軽々と避け、腰にマウントされているサーベルを一本抜き放ち、槍状になったビームサイズ目掛けて投げつける。狙い通りビーム発生器を貫いたサーベルは爆発と共に散ってゆく。
一気に接近、残ったサーベルを敵機の脚部目掛けて投げつける。相手はそれを躱したが、躱した先にはプロトGNソードの切っ先を迫っていた。
「く…っそがああ!」
ギリギリで避けられ、プロトGNソードは相手の頭上を掠めるだけに終わる。しかし、俺の武装はそれだけではなかった。ふくらはぎ部分に増設された薄い長方形の箱。それは一見スラスターに見えるが、お馴染みのあの武器が格納されていた。
三番目のスロットを選択し、ふくらはぎの箱から右手でナイフを取り出し、相手のメインカメラである頭へと突き刺す。
「な、なんだ…!なんだお前は…」
メインカメラを破壊し、そのままプロトGNソードで頭を切り飛ばす。次に胴体から下を切り落とす。
「なんなんだよお前は!」
「居候だ。終わりだな」
最後にそう言い残し、俺はコックピットにナイフを突き刺した。
バトル終了を伝えるアナウンスが流れ、光が消える。
勝利の余韻に浸りながらも俺は考えていた。
アストレアファキオ。強すぎる。ジムクゥエルも良かったが雲泥の差があると言っていい。
これが、宮樹がバトル用に作ったガンプラ。
しかし、俺がまだ扱えていない。
この性能があればもっと圧倒出来ても良かったのだ。
「まさか白衣の死神と呼ばれている彼を倒すとはな…見事!」
「うわっ!」
不意に後ろからそこそこ音量で声をかけられ、びっくりする。
おっかなびっくりしながらも後ろを振り返ると、
「どのような者がパイロットかと思ったが。ほう。中々どうして…」
そこには…すらりと背の高い金髪の男がいた。
「先程の戦闘、見事だった。好意を抱くよ」
何言ってんだこいつ。
「ついて来たまえ少年」
「は?なんであんたなんかに…そもそも誰だよ?」
「敢えて言わせてもらおう。グラハム・エーカーであると」
どこかで聞いたことがあるなんてレベルではない。機動戦士ガンダム00に出てくるグラハム・エーカーと一緒の名だ。いや、名前だけじゃない。容姿も、言動も瓜二つと言っていい。
「つ、ついてこいったって、どこに?」
「後ほど説明させて頂く」
「そんな訳のわからん理由で行けるかよ」
怪しい。正直怪しすぎる。
ついて行ったら危ない気がする。主に俺の貞操が。
「後ほど説明すると言った。私は我慢弱い。着いて来るのかこないのか。どちらかを選びたまえ。ただ…力が欲しいのではなかったのかね?」
こいつ!?
俺の中の不信感が一気に吹き飛ぶ。
目の前に吊り下げられた餌、強くなれるかもしれないと暗示するこの男の言葉に、俺は揺れていた。
「さあ、選ぶのは君だ。少年」
「わかった。あんたはよくわかんねーけど。とりあえずは信用してやる」
「素直ではないな。ついて来たまえ」
こうして俺はこの訳のわからん男。グラハム・エーカーの後をついて行くことと相成った。