和姫は、宇髄天元の4人の嫁の一人である。雛鶴、まきを、須磨、そして4人目の嫁として選ばれたのがこの和姫だった。
しのびの世界において次世代当主である宇髄天元の嫁は、彼の相性などを鑑みて忍びの当主が選ぶ。
天元の嫁になれるのは、とても凄腕のくのいちであり、さらに天元との相性が良くないと選ばれない。
だから、和姫が天元の嫁に選ばれたときは和姫自身信じられない気持ちでいっぱいだった。何故なら和姫は、くのいちとして最低の成績であったし、どじでのろま、さらに鈍くさいときている。顔もそんなに美人ではない。どれだけ美化し、良く見積もっても、天元の嫁になれるほどの実力は決して持っていなかった。
和姫は、いつも思うのであった。雛鶴姉さんのように機転が利き、みんなから頼られる人ではない。さらに、まきを姉さんのように忍耐力が強く、皆をひっぱっていけるような性格でもない。さらに、須磨ちゃんのように可愛い存在でもない。
和姫は、天元のことはとても好きだったが、皆より劣っていて、自分は役に立たない存在だと思わずにはいられなかった。
天元は、4人の嫁の事を平等に愛してくれた。
男より弱く、非力なくのいちにとって自分の命は、とても軽い存在だった。それなのに彼は、最初の初対面で自分たちの命を一番に考えろといった。
和姫達にとって、それは考えられない思考だったし、当然、天元を守るためなら、命を投げ出す覚悟も持っていた。しかし、天元はそれを否定し、身を持ってそのことを証明したのだ。
結婚してから、和姫達、天元は同じ家で住み始めた。しかし、それは一般的な新婚生活という訳ではない。天元は、次世代当主だったし、和姫達はその嫁である。天元としても、その嫁としてもそれにふさわしい実力が求められた。
天元は、毎度毎度、修行や任務で疲労して帰ってくる。天元は、その厳しすぎる訓練から兄弟を無くしている。もともと9人いた姉弟は、任務また厳しすぎる訓練のため、命を落とした。
天元は、和姫達に平気そうに振る舞っていたが、実はとても疲弊していることに和姫達は気づいていた。
天元の父親である当主に、見えない鎖で縛り付けられているように、天元は、この状況がおかしいとは思いながらも、次世代当主として逃げ出すことは出来なかった。何故なら、天元には、大事な嫁がいたし、また兄弟達がいた。
そして、それが当然だと教えられてきたのだ。天元にとって忍びという楔は、全く抜ける様子がないほど天元に食い込んでいた。
そんな天元にしてあげられることは、どんな事なのだろうか。和姫は、唯一の支えである自分が、天元を助けてあげなくてはと思っていた。しかし、天元は、心配をかけまいと和姫に気丈に振る舞った。天元にとっては、気を使った行動だったが、和姫にとっては、自分はなんてだめな奴なんだとさらに落ち込ませる結果になってしまった。
和姫は、他の嫁達は、自分とは違い天元のサポートとしてちゃんと支えていると感じていた。
まきを姉さんは、その勝ち気な性格から、気丈に振る舞う天元を、本音をこぼすほど追い詰め喋らした。
雛鶴姉さんは、そのお姉さんのような性格から、影で天元の相談相手になっていたことを和姫は知っている。
また、須磨ちゃんは、天元に笑顔になってもらおうと必死に計画していた。
和姫は、「それで私は?」と思う。自分は、天元の何の役に立っているのか。
また、和姫を苦しめていたのは、天元に素の姿で接しられていないこともある。本音で、素の姿でいられないのは、嫁4人、天元を含め和姫ひとりだった。
家族のように接する5人の中で、和姫ひとりだけ異物感を感じていた。
そして再度、和姫は、本当に自分が天元の嫁でいいのかということを悩むのであった。