もう1つ、「scene123.毒」の続きを予測する手掛かりとして、黒山の目指す作品には「あの役」というキーワードが出てくることに注目してみましょう。
黒山の言う「あの役」とは直接関係がないかもしれませんが、「各キャラが好きな作品」の中にぶっちぎりで目立つ「役」があります。
それは、「イルザ・ラント」役です。
■夜凪景
「ローマの休日」「カサブランカ」「風と共に去りぬ」「東京物語」
やはりというか、主人公である夜凪のプロフィールに入ってますね。
イルザ・ラントは、映画「カサブランカ」でイングリッド・バーグマンが演じたヒロインです。
この作品は制作段階での混乱が大きく、「撮影が始まっているのに結末が決まっていない」という状況でした。
よりによって、「カサブランカ」は三角関係の話なんですよ。
イングリッド・バーグマンは、2人の男性のどちらと結ばれるかが判らない状態で演技をしなければなりませんでした。
そこでイングリッド・バーグマンが繰り出した「大技」。
彼女は、両方の男性に対して「あなたが最終的に結ばれる相手よ」という演技で対応しました。
これは相当に難しいことです。
アカデミー賞を3度も受賞した実力の持ち主なだけあります。
実際、私が「カサブランカ」を鑑賞した際、イングリッド・バーグマンの態度や表情から結末を見抜くことは出来ませんでした。
私としては、黒山の言う「あの役」には「イルザ・ラント」の成分がいくらか入っている、と予想しておきたいところです。
「あの役」だけを追いかけても、「scene123.毒」の続きを予測する手掛かりとしては足りません。
黒山の人物像にも迫ってみます。
■夜凪景
「ローマの休日」「カサブランカ」「風と共に去りぬ」「東京物語」
■百城千世子
「晩春」「ローマの休日」「時をかける少女」「花とアリス」
ここに小津安二郎の作品が2つ入っています。
ヨーロッパで評価された映画監督という部分でも、黒山と小津は共通しています。
ただし、黒山(漫画の登場人物)と小津(実在した人物)では、キャラクターが全然違います。
なので、小津の位置付けは「黒山が影響を受けた監督」あるいは「黒山が尊敬する監督」といった感じになるかと思います。
小津は「小津組」と呼ばれた特定の役者たちを集めて映画作りを行いました。
黒山が「自分の映画に必要なピース集め」をしているあたりは、小津の方針に沿っていると言えます。
明確な手掛かりとしては、これくらいでしょうか。
予想材料としてはあまり多くはありませんが、私なりに頑張って続きを考えていきたいと思います。
では、「scene123.毒」の続きを書いてみます。
「方程式」という話になります。
「scene124.方程式」、ではなく「第1話 方程式」と記述します。