魔女兵器 〜Another Real〜   作:かにみそスープ

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第8節 〜费尽心机〜

「ギンさん……どうやってここに……?」

 

「クラウディアの『鏡』と『パン』を使ってのぉ。お前からの連絡が途絶えたから急遽追ってきたのじゃ」

 

「ってことは……」

 

「ああ、他のみんなも順次来ておるよ。あとギンさんって呼ぶな。その愛称は妙にこそばゆい」

 

 ——だとしたらまずい。バイジュウの脳裏にそれが過ぎった。

 

 何故なら麒麟が持つ『陰陽五行』は個人ではなく全体に影響を及ぼす異質物武器だ。故に麒麟相手には人数でどうにかなる相手ではない。むしろ増えれば増えるほど悪手になってしまう。『ミイラ取りがミイラになる』という格言が存在するように。

 

 そんなことを武器を扱う本人が理解してないはずがない。麒麟は不意の一撃で溢れた口内の出血を拭うと、無言と無音のまま異質物武器を棍のように扱ってギンへと振るった。

 

「あまり舐めるなよ、小娘ッ!」

 

 だがギンはいつもと変わらぬキレが輝く体術で麒麟の棒術へと対抗した。それにバイジュウは驚きを隠せなかった。

 ギンは『ドール』と『ヨグ=ソトース』などの異星の生命体以外には刀を振るうことは決してない。彼女の刃は鍛錬の末にその全てが一撃必殺。お遊び感覚でも人の命を奪う以上は刀など安易に握れるわけがない。

 

 だからといってギンは刀を握らなければ弱いという意味ではない。むしろその次に強いのが『素手』なのだ。

 一度ギンは教官という立場としてこう口にしたことがある。「素手は最初にして最後の武器だ。決して鍛錬を怠らぬように」と。その意味をエミリオやファビオラを筆頭に軍隊などの武力組織に所属したことのある者は理解した。

 

 戦闘というのは文字通り『戦い』であり『闘い』だ。正々堂々と準備万全に真正面から挑む『試合』とは違って、いつも万全な状態で戦えるというわけではない。銃が使えない、刀が使えない、能力が使えないという場面は大いにあるだろう。

 

 しかし、そんな中でも『素手』なら戦える。確かに得物を使う方が強く戦える場面が多い。だが不安定で極限の状況下になりやすい『戦闘』という只中では、自身の身体が機能するならこれほどまでに安定する武器はない。それをギンは『生前』から悟っていた。刀と共に拳も振るう鍛錬を続けていた。

 

 故にギンの根本的なフィジカルは超人の領域に達している。今は霧吟という少女の肉体であるため生前と比べれば非力にはなった。

 だが素手とは『剛』と『柔』の力がある。それさえ間違えなければ、ギンは例え少女の肉体でも超人相手に引けをとることはない。それをバイジュウはエミリオ共々素手の戦いで完敗したからこそ身を保って知っている。

 

 

 

 だというのに——ギンと麒麟は拮抗したのだ。それだけで麒麟の根本的なフィジカル面での実力が自分よりも遥かに上だということをバイジュウは肌身で感じたのだ。

 

 

 

「……お前もしかして効いてないのか?」

 

「きいてない? 何のことだ?」

 

「ギンさ……教官! 彼女が使う武器はその……一言で言えば体調不良を起こすんです! それも結構ヤバめの!」

 

「忙しいのは分かるが、お前にしては随分と頭悪い言い方だの……。とりあえず病気になるということじゃな」

 

 だって『五行』とか説明したところで長くなるだけだし、とバイジュウは内心思うが、それ以上に疑問に駆られる。いつもの知りたいという研究者としての一面を持つバイジュウの思考が加速する。

 

 何故ギンは麒麟が持つ異質物武器である『陰陽五行』の影響を受けていないのか。

 

「……なるほど。あなた、私と似たような面があるのですね」

 

「何言ってるんだ、お前? あまり舐めてるとそのご自慢の杖だがよく分からんのを壊してやろうかの?」

 

「敬意ですよ、惜しみのない。貴方相手には『陰陽五行』も役に立ちません。むしろ下手に扱ったら破壊されかません」

 

「ならばここは」と『陰陽五行』をバイジュウには届かぬ遠い床まで転がすと、息を整えて構えを取った。

 

「私も武術家の端くれ。同じ徒手空拳でお相手させていただきますよ」

 

 刹那——。二人の拳が混じり合った。

 超人でも目で追った時点で致命傷となる高速の肉弾戦。拳を振るう時には既に回避とカウンターの予備動作に移り、相手の呼吸と共に一撃必倒の攻撃を放つ。

 だがそれは両者共に意識するより以前に身体で覚えていること。直感なのか長年の戦闘経験とも言える勘なのか、二人ともほぼ無意識に近い状態で回避を行なっているのが『魂』を視認してるバイジュウだからこそ分かる。

 

 例えバイジュウが万全であろうとも手を出すことができない領域。その余りにも獰猛でありながら、一種の芸術にも等しい戦いには生唾一つ呑み込むことさえ許されないほどの緊張感が迸っていた。

 二人とも身体能力自体は『魔女』としての恩恵などないはずなのに、放つ一手は明らかにその道を行く達人の域へと軽々と踏み込んでいる。恐らくは人類としては最高水準の闘い。一つでも読み間違えれば一瞬で決着がつくであろう攻防。それほどまでに二人の実力は差がなかった。

 

 だからこそ——バイジュウは不安で仕方がなかった。

 何故なら不確定な要素が介入するだけでその均衡は崩れてしまうことを意味している。

 

 互角の勝負というものは、要は『運』が多大にして大きく絡む。小石を踏んだだの、髪が目に掠っただの、その程度の些細な原因が介入するだけで容易く戦況という天秤は傾く。

 

 麒麟が効かないとは口にしていたが、もしかしたらそれは油断を誘うための方便であり、この瞬間にでも『陰陽五行』の出力でも上げてギンの悪い影響を少しでも与えることがあるとすれば、それだけでギンは瞬きの後には倒れ伏すこともありうるほどに。

 

 だが逆にもあるということだ。少しでも些細な影響を麒麟に与えることができるのであれば、この均衡を崩してギンは麒麟を打倒することができる。

 

 

 

 だというのに——だというのに動けない。

 

 

 

「やるのぉ。その歳でこれほどとは……」

 

「貴方こそ。私と並ぶ武術の持ち主がいるとは……」

 

 五感が狂っていて動けないとか、そういう理由なのではない。『魂』の認識できるからこそバイジュウは二人が心中で何を激らせているかを分かっているからだ。

 

 楽しんでいる——。

 この拳と書いて真剣勝負と読むほどに徒手空拳での戦いを。

 

 だけど最高潮じゃない。二人の闘志はまだ煮えたぎってるだけで、沸騰はしてはいない。お互いに実力の底が見えていないからこそ、その底を知りたいという期待が満ち溢れているのだ。

 

「手加減はできそうにない。この身の未熟さを許せよ」

 

「こちらこそ。あなたほどの相手なら……私が最も得意とする武器を取り出せるというもの」

 

 それが合図となって二人はその手に武器を握った。

 ギンは愛刀となる『天羽々斬』を抜刀できるように構える。そして麒麟は『いったいどこから出てきたのか』と思うほどに長い棒状の武器——即ち『棍』とも言える華雲宮城では伝統的な武器を取り出した。

 

「『棍術』——というものか」

 

「ええ。しかしただの『棍術』では……ありませんがっ!」

 

 瞬間、麒麟が握る棍が『伸びた』——。まるでゴムのように限界など知らぬと言わんばかりに。

 それにギンは一瞬慄くが、それでも激る闘争心が驚きを脳で処理する前に突き動かす。右手を軸に棍の出鱈目な軌道に併せて身を逸らし、左手に持つ短刀で棍をなぞるように滑らせて麒麟本人を狙う。

 

 そうなれば必然、麒麟は深追いをすることはできずに余裕を持って回避行動を移そうとするが、それをギンは逃しはしない。

 瞬時にギンは右手を納刀してる刀の持ち手を握って抜刀の姿勢に移る。ギンにとっては呼吸など瞬きさえも必要ない。納刀と抜刀はギンにとっては同時に起こる神技だ。

 

「——遠かったか」

 

「やりますねぇ……この私が見誤るとは……っ!」

 

 だが僅かにギンの刃は届かなかった。麒麟は棍を伸ばし続け、抜刀の姿勢に移る瞬間の僅かな隙をついて致命傷の間合いから離脱していたのだ。

 しかし、それでも致命傷にならないだけで傷を負わせることはできる。麒麟の背中からは決して浅くはない切り傷がつけられ、そこから血が滲んで高貴である衣服が野蛮な色合いを見せていく。

 

 その攻防の結果は二人共にとって驚きの連続だった。

 

 ギンからすれば『間合い』から離れたことに驚きを隠せなかった。そもそも『抜刀術』というものは近代においては決して強力な戦術ではない。何せ攻撃が届く範囲が刀身の長さに、使用者の踏み込みによるプラス数十センチするくらいしかない。広く見積もっても精々1m半くらいが基本的な限界なのだ。

 だがギンの抜刀術だけは違う。本人の卓越した技術と超人的な身体能力の相乗により、その間合いは最低でも『5m』はあるのだ。それは約15畳の空間があるとすれば、その端から端まで届くという異様な間合い。普通ならそんな間合いから脱出するのは不可能に近いはずなのに、麒麟は傷を負ってでも離脱したのだ。

 

 逆に麒麟は刀も扱えるからこそギンの間合いに広さに驚いていた。ギン自身の技術力のことを考慮しても理性では広く見積もって3m以上離れれば大丈夫だと考えていた。

 だが本能が「例え隙になろうとももっと離れるべきだ」と警鐘を鳴らし、見事にそれが的中した。その認め難い現実に驚きを隠せずにいる。

 

 二人の間に常識で測るだけ無駄という緊張感が漂い、沈黙だけが会話となって呼応する。

 その沈黙そのものが空間の雰囲気に殺意が混じり、バイジュウは思わず呼吸を忘れて酸欠になりかけたところでもがく様に吐いた。

 

「あれが……噂に聞く華雲宮城が誇る国宝級の異質物『斉天大聖の棍棒』……」

 

 それは華雲宮城の異質物について調べれば出てくるSafe級異質物の一つだ。新豊州で『ロス・ゴールド』が消えた時にネットニュースになったように、基本的にSafe級は学園都市全体が既に研究並びに情報の共有を終えたものであり、公共でも閲覧できるものとしてあらゆる面での厳重警備の下に人々の前に姿を見せる。

 

 そのうちの一つが華雲宮城が管理する『斉天大聖の棍棒』だ。効果としてはアレンが奪取した『天命の矛』とは違ってたった一つしかなく『質量を変化させる』という極めてシンプルな物。

 だがそれ故に武器としては強力な一面もある。何故なら質量とは即ち大きさであり、質量を変化できるということは極めて小さくして耳の穴や口の中、あるいは爪の隙間などに保管して持ち歩くことができることを意味している。麒麟が『どこから出した』の謎もこの性質を利用した物だ。

 逆もまた然りであり、相手の体内に入れてから巨大化させることで内部から相手をズタズタにするということも可能だ。もちろん単純に重くして打撃の威力を向上させたり、先ほどの様に『伸ばす』という大きさを変化させる行為で予期せぬ奇襲を仕掛けることも。

 

 そんな変幻自在の棍棒——。そしてそれは『斉天大聖』の名の通り、その棍棒自体は皆がよく知る物でもあるのだ。

 

 

 

『斉天大聖』——それはかの有名な『西遊記』に出てくる『孫悟空』が名乗る地位や称号に近い名称。

 

 

 

 つまり麒麟が持つ『斉天大聖の棍棒』とは、その登場人物が持つ『如意金箍棒』こと『如意棒』のことなのだ——。

 

 

 

(間合いが刀にしては余りにも広い……。接近戦や掴みのほうが好みではあるんですが彼女相手には無謀すぎる……)

 

(あの棒は厄介じゃな……。打ち合いで引けを取ることはないが同時にこちら側も攻めあぐねる……)

 

(しかし間合いの外から如意棒を利用した特殊な棍術をしても、彼女相手には通じるかどうか……下手したら隙を見せることになる)

 

(だがそんなことはアイツなら分かってるはず……。お互いに決め手はあるが、同時にお互いに対応できるからこそ迂闊に踏み込むことができんと……)

 

 

 

 互いの思考が見えない刃となって鍔迫り合う。どうやって相手を出し抜こうかと頭の中で高速でシミュレーションを繰り返すが、不確定要素が両者共にあって攻略する術を具体的に映すことはできない。

 

 だから二人は先の徒手空拳での戦いの様に、得物を用いた戦いでも全力を出さず、しかし相手の出を探れるほどに攻撃を緩めずに振るいあった。

 

 しかしギンにとって大きな気掛かりが一つだけあった。それはバイジュウが口にしていた『陰陽五行』の性質についてだ。

 麒麟の不意をつく直前に、当人が直接口に出していた『陰陽』については実は少しだけ耳にしていた。肉体と精神をどうにかする云々の上辺ぐらいの情報は知っている。

 

 しかし『五行』については『病気』になるということくらいしか分からない。だが、それ自体の警戒をギンは決して怠っていない。怠ることなどできはしない。

 何故ならバイジュウ自身は気付いてないが、ギンからすればバイジュウの状態は骨の関節や脚部の粉砕骨折を見なくて痛々しい症状が顔に出ているのだ。

 まず肌の色がおかしくなってる。ただでさえ白肌で弱々しい印象を与えるというのに、全身の血でも抜かれた様に青ざめているし、呼吸音もさっきからか細くて穴から漏れてるように弱々しさだ。最も痛々しいのは『目』だ。目の白い部分である『結膜』と呼ばれる部分が『青く染まっていた』のだ。死神にでも取り憑かれたのように。

 

 これを目の当たりにしたら例え今現在ギン自身が『陰陽五行』の影響を受けていないといっても、何かをキッカケに感染したらそれだけで終わりだ。ギンはバイジュウと違って五感を頼りに動いてるのだから。

 

 だからカラクリを解きたいのがギンの本音だった。あのバイジュウをここまで満身創痍にする『陰陽五行』のカラクリ——。どういう条件下で『五感を狂わせる』のか——。

 その糸口が分からない限り、ギンは不意打ちや明確な隙以外では抜刀に移せない直中にいた。

 

『ちょっとギン爺さ〜ん? 一つ伺いたいことがあるんだけど〜〜?』

 

「なんじゃ、クラウディア! 今は悠長に話してる余裕などないっ!」

 

『いやね? みんなを集め終えたからバイジュウがいる建物の敷地内に入らせようとしたら、レンちゃん以外はみんなグロッキー状態に……ってバイジュウの顔どうしたのっ!?』

 

 そんな緊張感が漂う中、突如として『鏡』からクラウディアが声をかけてきた。

 

「いえ、私は大丈夫です……」

 

『どう見ても大丈夫じゃないのよ。いったい何が起きてんのよ』

 

「……詳細は省きますが、一言で言えば異質物の力です。それで私もボロボロで、恐らくはレンさん達も……」

 

 そこでバイジュウは言い淀み、先程クラウディアが口にした言葉を思い返す。

 

 

 

《レンちゃん以外はみんなグロッキー状態に……》

 

 

 

 どうしてレンだけが『陰陽五行』の力を受けずにこっちに向かうことができる? と疑問に耽てしまう。

 麒麟がこうも言っていた。「これは『対人』ではなく『魔女』に特化している」と——。

 

 単純に考えるから『陰陽五行』は『魔女』以外には効かない設定にしているというのか。いや、その可能性はない。

 何故ならレンがまだしも、ギンは確実に分類的には『魔女』だ。ハインリッヒと同じ様に『守護者』となったということは一度は『外宇宙』の情報に触れて取り囲まれた証でもあるのだから。『魔女』だけが『陰陽五行』の影響を受けるようにしてるということは考えにくい。

 

 それにレン以外の皆も『敷地内に入らせようとしたら』グロッキー状態になってるともクラウディアは言っていた。

 バイジュウは案内されたからこの建物の間取りを把握している。庭園も含んだ広さとしては十数キロにも及ぶ。『入ろうとしたら』と言っていたのだから、まず間違いなくファビオラ達はその外にいるということになる。

 その分を考えれば今ファビオラ達がいるのは20キロほど離れた場所ということになる——。それだけの範囲にこれほど強力な異質物の効果を放つことができるのか。それはどうにも考えにくい。あまりにも価値が見合ってない。

 

 だとしたら厳しい制約か、それほどの範囲にも届くほどに『大雑把な条件』を当てはめていて、それから外れているのがレンとギンと使用している本人である麒麟ということになる。

 

 ならばこの3人は何かしらの『共通点』があるはずだ。

 この共通点らしい共通点がない3人から、その『大雑把な条件』を探し当てることができるはず。いや、しなければならない。

 

 だとしたら、きっと麒麟から出てきた言葉のどこかにヒントがあるはず——。

 

 

 

 …………

 ……

 

《……失礼。我々無形の扉は精神汚染の異質物対策として予め『精神を二つにする』ように処置されておりまして……》

 

《それが一番近い表現ですね、記憶は共有してますけど。ただ細かい経緯とかは省略させていただきますよ。『陰陽』の一環——とでも言えば納得していただけるでしょう》

 

《まあ結果としては、その効力は『ドール』よりも『魔女』を相手にするほうが向くように改修されてしまいましたが》

 

《ワクチンかセキュリティプログラムがないと対処不可能です。それはバイジュウ様みたいに超人であろうとも例外ではない》

 

《これは『対人』じゃなくて『魔女』に特化していると——》

 

《人体由来の『陰陽』とは即ち『身体と精神』のことです。そして『身体』か『精神』のどちらかを完全に破壊する。これが『陰陽五行』が目指した開発プロセスなんですよ》

 

《私たちが欲しいのは、あくまでバイジュウ様の特殊な『身体』だけ。その精神性も目を見張るものがありますが、最悪それは適当な輩の『精神』をバイジュウ様の『身体』に入れてから洗脳やら精神操作やらで矯正すればいいだけのこと。俗に言う『憑依』とか『入れ替わり』が一番近い表現ですかね》

 

 ……

 …………

 

 

 

 ——『精神を二つにする』

 ——それは『陰陽』の一環でもある。

 ——『陰陽』とは『身体と精神』のこと。

 

 ——『ドール』ではなく『魔女』に効く。

 ——しかし『対人』特化ではない。

 ——つまり『人』というカテゴリから影響を分別しているということ。

 

 ——ワクチンがないと対処不可能。それが超人であろうとも。

 ——逆に言えばワクチンがあれば対処可能。それが凡人であろうとも。

 

 

 

 ——そして『憑依』や『入れ替わり』などの『精神的な干渉』

 

 

 

 

 それらの情報をレン、ギン、麒麟に当てはめると浮かび上がる共通点とは——。

 

 

 

「そうか……。『陰陽』にもっと単純な対比があった……!」

 

『魂』を認識できるこそバイジュウは知っている。レンの内面がある程度どういう形を取っているかを。

 

 バイジュウは一連の騒動について知っている。ギンがどのようなことがあって『守護者』となり、どのような人生を送ってきたのかを。

 

 

 

 ——そして麒麟の統括者としての『陽』の一面と、暴力的な『陰』の一面。

 

 

 

 それらを繋ぐのに、これほど単純明快にして納得できる答えがなかった。

 

 

 

「『陰陽五行』の効果は『女性』だけに作用する様に仕向けてるんだ……っ!」

 

 

 

 それはつまり——『男性』には効かないことを意味していた。

 

 


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