魔女兵器 〜Another Real〜   作:かにみそスープ

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第8節 ~譛ェ遏・縺ェ繧九き繝?繧ケ(■■■■■■■)~

「はい、集合〜〜」

 

 というわけで体感時間としては半日分ぐらいだろうか。

 ここセレファイスで情報収集を終えた俺は、武器調達に行っていたソヤとファビオラと合流する。

 

 戦果については見るだけで分かった。

 ファビオラはなんか銃みたいな物を多種多様に背負っているし、特に目立つのは青色を基調に装飾された武器として何の価値もなさそうな『モップ』だ。

 果たしてそれにどんな戦術的な価値があるのか。些か疑問に思うところはあるが、ファビオラの表情は充実そのものだから信用するしよう。

 

 一方ソヤは……ソヤは……? なんだこれ? 

 なんだろう。一言で言えば『チェーンソー』だ。というかチェーンソーだ。それを持ってるのはソヤだから違和感はない。無事にそういう類が見つかったということで納得もできる。

 

 だけど一点だけ納得できない部分があるとすれば……素材が継ぎ接ぎということなのだ。まるで廃材を駆使して作ったような感じが納得を拒否する。

 

「ソヤさんや。その形だけならチェーンソーみたいな手作り感満載の塊はなんでしょうか?」

 

「ご覧の通りチェーンソーですわ〜〜。DIYチェーンソーですわ〜〜」

 

 DIY!? チェーンソーって自作できるもんなのっ!?

 

「詳しくはそういうサイトで検索検索ぅ♡ というやつですわね。この世界はそういう方面での技術ツリーは伸ばしておりませんが、雛形となる基礎はあったので、そこを拝借すればご覧の通りです」

 

「物騒な世の中だな……」

 

「今は調べればすぐに情報が出ますわ。パソコンもスパコンも包丁もゲームハードも色々自分で作れますわ。それこそ銃とかも……」

 

「それ以上は不謹慎だからやめた方がいいと思う」

 

 今のご時世的は色々と機敏な部分があるから。

 

「あら、そうですの」

 

「んなことはどうでもいいでしょう。それよりもガレー船……『空飛ぶ船』を入手する方法は掴めたの?」

 

「うん。というかノーデンスとフレイムが色々としてくれてね」

 

「色々と?」とソヤとファビオラは疑問符を浮かべる。

 

『まあ、この半日で謁見してきたのよ。セレファイスの管理者となる人物にね』

 

「そんな奴がいるのね……」

 

『交換条件はあったが許容できる範囲のことであった。それをレンに熟してもらい、無事に船を入手することができた』

 

「情報どころか船の入手を!? レンさん、いったいどんな如何わしい交渉をしたのですか!? できれば事細かく鮮明に!!」

 

「ソヤが考えるようなことは一切してないっ!!」

 

 

 

 …………

 ……

 

「ここが『セラニアン』を統治する者がいる場所……」

 

 時間は遡ること数時間前。セレファイスで集めれるだけ集められた情報を纏めると『『クラネス』という人物に会え』ということだった。

 天空に浮かぶ『セラニアン』と地上の都市『セレファイス』を収めてるのが、どうやらどのクラネスという者らしい。だからお高い金額をノーデンスさんに立て替えて貰い、正式にここに辿り着いたわけだ。

 

 しかし到着したのはいいものの、どうやってクラネスに会えばいいのか。情報収集ついでに知ったことだが、あのガレー船というのは交易を盛んする上で必須というらしい。そんな大事な物を「貸してください」と言ったところで「いいですよ」なんて返ってくるわけがない。

 

 こっちには交換条件に使えそうな物も情報もないし……どうすればいいのだろうか。

 

「ココカラ先ハ通サナイ。早急ニ立チ去レ」

 

「あれ? 片言だけど俺が知る言語だ」

 

 なんて考え事をしていたら門番らしき者に止められたが、同時に聞き覚えしかない言語を聞いて驚きを隠せない。今までここではスターダストやセラエノが発していた言語のように解読不能だったというのに……。

 

 だったら話し合えばワンチャン何とかなるかもしれない。言葉が伝わるか伝わらないかでコミュニケーションの幅は大きく違うのだ。

 

「あの〜〜、クラネスさんに会いたいのですが……」

 

「ムッ、ソノ言葉遣イハクラネス様ト同ジ世界ノ物……。貴様、地球ノ者カ?」

 

「えっ? いや、うん……そういうことになるのかな?」

 

 いきなりSF的な質問をされても返答に困る。地球の者と言われればそうだけど、それは犬や猫も地球の者ではあるし。そういう大雑把なカテゴライズは混乱を生みやすいからやめてほしい。

 

「チョット待ッテイロ。クラネス様ニ話ヲ聞イテクルトスル」

 

「どうもっす」

 

 幸先いい感じだな、これ? アポなしでも会えそうとか、セキュリティ意識とかコンプライアンスとかそういうのどうなってるの?

 

「いや、通してよい。彼女は私が招待した客人だ」

 

 呑気な考えをしていたら、年季を重ねた威厳のある声が届いた。さぞやノーデンスのような立派な髭を携えた叔父様が姿を見せるのだろうと視線を向けると、そこには想像とは何一つ噛み合わない男性の姿があった。

 

 若々しさ溢れる肌に艶やかさのある顔と手。髪も紳士的というか、若手実業家のような溌剌とした荒っぽくも清々しくを感じる。

 見た目だけの年齢なら二十代ほどだろうか。しかし先ほどの声と、目にした雰囲気からして実際は三十代かもしれない。そんな不思議な印象を受ける人物がそこにはいた。

 

「ソウデシタカ。ダッタラ通ルトイイ、オンナ」

 

 女呼びは若干嫌だが、慣れたことなので触れないでおこう。あと妙に下に見られるところも。いちいち気にしてたら精神衛生上よろしくない。今はただ老人のような雰囲気を纏うアラサーほどの男性の後ろについて行くだけだ。

 

「自己紹介が遅れたね。私はクラネス、この都市の管理者……ということは分かっているだろう」

 

「はい。色々と調べてましたから」

 

「それと先に無礼を謝罪する。君の横にいる『何か』に挨拶をし忘れてしまったことをね」

 

『あら? 私が見える感じ?』

 

「ええ。声と漠然としたシルエットだけですが。さぞかし美しく、綺麗な歌を口にするのでしょう」

 

『分かってるね〜〜、この色男。レンくんちゃん、付き合うからこういう男にしときなよ』

 

 野郎と付き合うことなんて絶対ないわっ!!

 

『それで色男さん? 私達が客人という嘘をついてでも招いた理由って何かしら?』

 

「単純な話だよ。君たち……というより黒髪の子は覚醒の世界から来た住人であろう」

 

「あっはい、そうです」

 

 初対面故のコミュ症みたいな反応しかできない。

 

「私も元は覚醒の世界の住人でね。久しぶりにそちらの世界の話を聞きたくなったのだよ」

 

「例えば」と一息おくと、クラネスは懐かしむように言葉を漏らした。

 

「私の故郷である『ロンドン』の話とかね」

 

 その首都名を聞き、俺は口を塞ぐことしかできない。だってそこはもう『七年戦争』の影響で、国家解体を余儀なくされたイギリスという『もう存在しない国の首都』なのだから。

 

 歴史とか苦手な俺でもロンドンくらいは分かる。かの極悪非道と悪名高い連続殺人鬼『ジャック・ザ・リッパー』が実在したとされる場所であり、また色々な創作物で舞台となる場所だ。代表的なのは『シャーロック・ホームズ』だろう。

 

 そんな名高い首都はもう存在しない。それを口にすることもできない。そして同時に思うこともあった。

 

 

 

 ——ロンドンを知るこの人は、いったいどれくらいの時間をここで過ごしてるんだろうと。

 

 

 

 この『ドリームライド』は感覚でわかる。『因果の狭間』と一緒で、現実とここでは時間の流れが異なることくらい。だから七年戦争が起こる以前よりドリームランドにいるのは絶対であろうクラネスはどれくらいなのだろうか。

 

 ……あまり考えたくない。残酷なことではあるが、こういう人物はきっと探せばいくらでもいるんだろう。いちいち思いを馳せて暗くなっていたら、とてもじゃないが精神的に保たない。割り切るも大事だと、きっとマリルやエミリオとヴィラは口にするだろう。

 

「……そうか。やはり我が故郷は無くなっているのか」

 

 俺のあまりにも長い沈黙で察したのだろう。クラネスは俺が思っていたことを意図も容易く見透かした。

 

「君は優しい子だ。私が傷つくから言わないでおこうと思ってくれたのだろう」

 

「ただ伝えられなかっただけです。戦争の傷跡なんて……誰だって口にしたくないから」

 

「そういうところが優しいのだよ。昔ここを訪れた君によく似た子のようにね」

 

「あっちの世界から来た人がいたんですね」

 

「ああ。だいぶ前にね」

 

「戦争で無くなったのか、我がロンドンは」と感慨深くクラネスは呟くと「そういうことなら君たちの本題に移るとしようか」と話を切り替える。

 

「君たちの事情は私も耳にしている。ガレー船をどうにかして手に入れたいのだろう」

 

「そうですね。作り方とかでもいいですけど、できれば借りたりとかは……」

 

 あっさりと俺の目的を言い当てられて、ちょっと照れ臭いような、申し訳ないような何とも言えない感情が湧いてしまう。

 今のところ、この人に何一つ口で先手が取れてない。そういう口勝負的な意味ではマリルより厄介かもしれない、この人は。

 

「その心配はしなくていいよ。問題なく借してあげるさ。ただ交換条件が一つだけある」

 

 交換条件がある、それは覚悟していたことだ。いつものことともいえる。

 

「……俺にできることであれば可能な限りしますよ」

 

 さあこい。限度はあるが、どんなことでも受けてたってやる。

 

「そう畏まる必要はない。別に卑しい意味などないさ。私からの交換条件はこれだ」

 

 そう言ってクラネスは俺をガラス越しから見渡せる広大なセラニアンとセレファストを一望できる場所へと手招きした。

 

「君はこの都市を見てどう思う? 率直な感想を述べてほしいんだ」

 

 その景色を見て、俺は二重の意味で驚いた。情報集めのために歩き渡っていて、ある程度は形を想像できていたはずなのに、こうして上空から見てみると、その街並みの一部にはとても見覚えのある光景があった。

 

 それは先ほど話した『ロンドン』だ——。

 歴史の授業とかで見たことあるロンドンの写真と、かなり酷似した街並みがそこには広がっていたのだ。

 

 時計塔もあれば橋もある。村も川も漁村も。今まで公益の中心として都市部の中心だけいたから、セレファイスの端の端のあんな人間的な文化が繁栄してそうな場所があることに驚きしか保たなかった。

 

「私は愛している。生まれ故郷であるロンドンを。だから時々故郷を思うと寂しくなってしまってね……ああして、私が記憶する思い出の地を可能な限り再現してるのだよ」

 

「けれど」とクラネスは一息置く。

 

「この都市には『時間』がない。概念的な時間でも、単純なタイムリミットとしても。ゆえに……」

 

「成長も、発展もない……」

 

「そうさ。ここは『文化の再現』はできても『文化の進化』というのができない。私が愛したロンドンは刺激を満ち溢れ、常に発展しようとするする意思があった。蒸気機関車が新しい物を運んできてくれていた」

 

「だけどここにはその新しい物がない」とクラネスは続ける。

 

「こんな歪な文化を見て、君はどう思う? 成長も発展もなく、ただただ毎日同じ日々を過ごし、同じ平穏を続けるだけの『私のロンドン』を……」

 

 それがクラネスが俺に対する交換条件ということか。俺は今一度心の淀みとかをフラットな視点になるように意識して、この街を眺めなおす。

 綺麗かどうかで言えば綺麗だ。美しいかどうかで言えば美しい。ここは交易が盛んで、町に住んでいる人々は活気と幸せに満ちている。この都市に不満なんか片手で数えるほどの些細な物しかないほどに。

 

 それは街を渡り歩いたから肌身で知っている。ここでの言語は俺のとは違うというのに、皆優しくジェスチャー交じりで教えてくれた。余所者であるはずの俺に『ガレー船』についてここまで情報提供してくれたのは、フレイムとノーデンスの助力の他に、住人たちの力によるものも大きいほどだ。それぐらいここの住人は『心に余裕がある』んだ。だって破滅なんて経験もしなければ、思ったこともないだろうから。

 

 

 

 俺は知ってる。世界が残酷になれば、人の心はどこまでも残酷になる。

 人の内面に潜む闇や負と言える部分が具象化したのが『七年戦争』だ。みんながみんな自分のことで手一杯であり、余裕なんて物はどこにもなかった。

 それは俺だってそうだ。七年戦争での被害は比較的軽微だったとはいえ、いつ空腹になるか、いつ食料が誰に取られるか分からないから、とにかく食料は詰め込めるだけ腹に詰め込んだ。それは今でも時々やってしまうほどに、心に負った傷や行動というのは直すことができない。

 

 

 

 だから住んでいる人からすれば、ここは理想的といえる。平和が確約されている世界。前進することはないが、後退することもないただただ当たり前の毎日を繰り返す『夢の都市』が、ここなんだ。

 

 そんな世界を……俺は否定することなんてできない。だから返す言葉は決まっている。

 

「いいと思います。この街の住人たちにとっては間違っていない選択だと思います」

 

「そうか……」

 

 そんな答えを、以前の俺だったら言っていただろう。それは今でも思ってしまう。

 けれど、そんな甘えた考えを『俺自身』が認められるかどうかは別だ。

 

「そのうえで、俺はこの都市を否定します。夢での安寧は間違っていない。だけど正しいはずもない。成長がない世界なんて、親離れを選んだ俺がしていい選択じゃないから。だから俺は否定します、この都市を」

 

「……そうか。君はそういう答えを出したのか」

 

 クラネスの声色に威圧感なんて物はない。ただ俺の返答を受け入れてくれた。

 

「君ならばガレー船を預けてもいい。正直に私の質問に答えてくれたのだからな」

 

「ありがとうございます」

 

「だとしても私はここの存続を続けるよ。ここに都市を築いた王としての責任として。住人の皆に最後まで幸せな夢を見させられるように」

 

 それに関しては俺が口を挟めることではない。この都市の感想を言うのは自由だが、どういう風に統治するかは王であるクラネスが決めることだ。クラネスがそうと決めている以上、俺の意見を尊重しろとかいうことはできない。元々部外者ということもあるし。

 

 だから、俺は「そうですか」と言ってガレー船を借りる段取りを淡々と進めていく。

 作業自体は無事に終わり、操舵方法とかを教えてもらうと、別れ際にクラネスは俺にこう言った。

 

「さあ、夢の果てを見てくるといい」

 

 

 ……

 …………

 

 

 

 

「そんな自分語りを聞くだけでイベント終えていいんですの……?」

 

「変にたらい回しにされて、人気漫画のように長期連載になって中弛みするよりかはいいんじゃない?」

 

「船はよ、乗り換えることにしたんですわね……。私のマネーで買った船は早くも破棄……」

 

「元々はエルガノの金だよ」

 

 というわけで現在、説明を終えて移動していた俺たちはその『ガレー船』へとたどり着いた。前に手に入れた船には世話になったけど、この船での航海はここまでだ。

 

「飛行船入手は一大イベントだというのに……こんなアッサリと……」

 

 クラネスさんが話を分かる人だと言ってくれないと。

 正直お使いイベントとかクエストとかをサブクエならともかく、メインストーリーでやられるのはゲーマーなら皆ダレる要因である。『二つの塔で苦労も二倍だな』が有名なゲームも、その問題の塔はコピペマップで右へ左へ行きながら上るという単調作業だし。

 

「ともかくスムーズに手に入れて万々歳。これでカダスに迎えるってことでいいじゃない」

 

「ファビオラさんもそういうのなら……」

 

『それじゃあ、レン高原北方にあるカダスに向けて全速全身っ!』

 

 そう言って、皆は飛行船に乗り込んで飛び立つ。

 未知なるカダスに想いを馳せて、上へ上へと飛んでいく。

 

 そうすると世界は見渡せた。

 本当に広大なレン高原の全貌を。その北方にそびえるカダス山を。

 

 

 

 

 

 だから、そうやって空に行ったことで俺は気づいた。クラネスの言葉の意味を。

 

 

 

 

 

「世界が……崩れている?」

 

 

 

 

 

 世界の果ての果て。カダスの向こう側を超えた夢の世界の端の端。

 そこは『奈落に続く滝』のように、世界というポリゴンを崩壊させていく様が広がっていた。

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