魔女兵器 〜Another Real〜   作:かにみそスープ

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第25節 〜月夜の華〜

「——おい。聞こえるか、レン」

 

 酷く懐かしい声が耳に入って目が覚める。

 起きあがろうとするが、今までのが軽傷に感じるぐらいの頭痛が響いてくる。脳神経すべてが弾け飛んだかのような痛みだ。

 

 

 

 ——そこで俺は思い出した。思い出してしまった。自分の頭部が弾け飛んだ時の悍ましい光景を。

 

 

 

「うっ……ぇっ!!」

 

「回復して早々にゲロとはな。これでも飲んで落ち着け」

 

 マリルは俺の背中を摩りながら白湯を渡す。白湯はホンノリと甘みを感じるがハチミツだろうか。

 なんであれ、すごいホッとしつつも優しくて甘い味付けで脳が多幸感を錯覚して冷静さを取り戻してくれる。

 

「その様子からして覚えてるみたいだな。自分に何があったか」

 

「ああ。俺はあの時——」

 

 自分の身にあったことを包み隠さずマリルに伝える。

 ニャルラトホテプが俺の中に寄生してきて、情報を植え付けてきたこと。情報の底にはアザトースという正体不明の生命か情報か概念なのかさえ判断がつかない存在があったこと。『虚無』と『無限』を名乗るシンチェンに似た女の子がいたこと。

 

 けれどもどれもマリルはどれも驚くことなく「なるほどな」とむしろ若干呆れ混じりで続きの言葉を紡いだ。

 

「バイジュウから聞いた話と差はないな。というかバイジュウの方がより詳しいか……」

 

「バイジュウのほうが……? って、そうだよ!? バイジュウ達はどうなったの!? 俺たち元々華雲宮城にいて……」

 

「順を追って説明するから待て」

 

 マリルは制服の上着だけを座椅子に掛けてネクタイを緩めると「どこから話そうか」と悩みながらその椅子に腰を置いて語り始めた。

 

「まずは結果から言おう。お前達は任務をこなし、ニャルラトホテプとヨグ=ソトースの完全討伐を果たすことには成功した」

 

 完全討伐——。その言葉は心から嬉しさが込み上げてくる。

 あの害悪を振り撒く二柱を倒し切ることに成功したんだ。これでもう霧吟やウリエルのような犠牲者を生むことも、アニーのように誰かが理不尽に『因果の狭間』に閉じ込められるようなこともないんだ。

 

「おかげで知りたくもない狂気と真実を垣間見ることになったがな。先ほど口にしていたが、お前は『奈落の底』で何を見た?」

 

「『無限』と『虚無』を名乗るシンチェンに似た女の子二人……」

 

「そうだ。そいつらはバイジュウが得た情報によれば『星尘Minus』と『星尘Infinity』という情報生命体だ」

 

 その情報は俺は知らないんだけど。バイジュウって、あそこにいなかったのに俺より詳しくなってるのってどういうこと? そんなに俺の頭ってポンコツなの?

 

 でも、それはそれとして今は置いておこう。なぜなら俺の思っていた通り、あの二人はシンチェン——正確には『星尘』と似てるという印象は名前からして間違ってはいなかったのだから。

 

「予めスターダストとオーシャン……それにお前が新しく出現させたフレイムにも愛衣とアニーが事情聴取したが、この二つの存在は管轄外だそうだ」

 

「そう、なのか……」

 

「だがそれに従属する『アザトース』についてなら、あの姉妹達は揃ってこう口にしていたよ。『私達の生みの親』——とな」

 

 ……言い方に少しだけ引っかかるな?

 

「それって『俺達』とかも含んでって意味か?」

 

「妙な言い方だったからな。『人類』と考えるより、もっと拡大解釈して『世界』や『宇宙』と考えた方がいいだろう」

 

「そして」とマリルは間髪入れずに話を続ける。

 

「そのアザトースは『死にかけ』であるとバイジュウは口にしていた。お前を経由したニャルラトホテプの情報で分かったことだ」

 

「死にかけ……」

 

「それを聞いて危機感を覚えた、という声があってな」

 

「いったいどんな危機感をバイジュウは感じたの?」

 

「いえ、それに関しては私です」

 

 これもひどく懐かしく感じる声だ。

 マリルとは反対方向にいる裸族兼錬金術師ことハインリッヒが「ごきげんよう」といつもの若干嫌味っぽさも感じる笑顔浮かべて俺に挨拶してきた。

 

「マスター。まず私は『守護者』……正確には『契約者』としてヨグ=ソトースに仕えた時の役割を覚えていますか?」

 

「前に『因果の狭間』で言ってたやつか。えっと……『セフィロトの樹』の10個の円環に準えた特定エリアを守ること、だよね?」

 

「流石はマスター、正解です」

 

 こう見えて褒められて伸びるタイプだから、素直に称賛されるとちょっと照れ臭いな。

 

「そういえばセフィロトで思い出したけど——」

 

「その点に関しては私は既に知ってるので大丈夫ですよ。『契約者』がダアトと属性に応じて10人いることくらいは」

 

もう俺の言葉の先読みについて驚くはない。もうそういうもんだと理解しておこう。納得はできないけど。

 

「バイジュウ、本当に全部知って教えてくれてるんだな……」

 

「これは私は最初から知ってましたよ?」

 

「じゃあ、なんで今の今まで言わなかったんだよ!?」

 

「言いたくても言えなかったのです。契約の都合上で言語規制されてましたから。ですがマスター達がヨグ=ソトースを打倒してくれたおかげで、その束縛からも解放されたのです」

 

「そういえば自然に『あの方』じゃなくてヨグ=ソトースって言ってる……!?」

 

「ちょっと前にも言えてましたけどね」

 

 意識してなかったから全然覚えてない……。

 

「話を戻しましょう。私の契約の役割はセフィロトのダアトを守護すること。ですがそもそもの話、セフィロトも『樹』である以上は『どこから生えてる』ということが気になりませんか?」

 

「スケールが壮大すぎて気にしたこともなかった……」

 

「ではここで学びましょう。セフィロトはユダヤ教カバラ思想にある『アイン・ソフ・オウル』から生じたと教えられています」

 

 ……名前だけなら聞いたことある。具体的には某カードゲームで。

 

「その『アイン・ソフ・オウル』は『無限光』という意味があり、旧約聖書における『天地創造の起源』であると言われています」

 

「ふーん」

 

「そしてこの『無限光』には段階がある。最初は『アイン』と呼ばれる状態から始まり、続いて『アイン・ソフ』を経由して『アイン・ソフ・オウル』へと至る。この前段階の二つが今回と関わりがあるのです」

 

 ダメだ。なんとかして話に食いつこうと思うが、難しい話なせいか耳から通り抜けて頭がインプットしてくれない。校長先生の眠い話を聞いてる気分だ。

 

「その『アイン』とはカバラ思想では数字の0や『虚無』を意味しています」

 

 そこでようやくは俺の脳は興味を覚えてくれた。ちょうど先ほど『虚無』を名乗る生命の話題が出たのだから。

 

「同様に『アイン・ソフ』はカバラ思想では『無限』を意味している——。果たしてこれは偶然と片付けることができるのでしょうか?」

 

 返答なんかできない。でもそれこそが返答。無言は肯定を意味することになる。

 偶然にしてはできすぎてる——。ならばこれは偶然ではないと。

 

「もしその二人が『アイン』と『アイン・ソフ』に値するなら、アザトースは『アイン・ソフ・オウル』に値すると仮定することができます。となればアザトースの正体は……」

 

「『天地創造の起源』——。つまり『世界そのもの』ってこと?」

 

「…………そう考えることになります。それは奈落の底にあった『樹の下』にいたのでしょう?」

 

 そうだ。あいつは樹の下に埋まっていた。眠るように、けれども死んでいるかのように不可解な音を軋ませながらそこにいた。

 

 本当にアザトースは『世界そのもの』だというのか? 今までの超常とは根本が違うじゃないか。『時間や空間に操る』ヨグ=ソトースや『誰でもある』ニャルラトホテプとは根底からして在り方が違う。超常なのに、次元が違う超常とスケールが違いすぎる。

 

「ですがここで致命的で壊滅的で根本的な疑問が生じます。これはあくまで『セフィロトの樹』であればの話。しかし実際にあったのは……」

 

「『桜の樹』……だった」

 

「そこが私でも理解不能なのです。桜はユダヤ教の基本的な考え方も、カバラ思想においても特別な意味も価値もない。もちろん他の文化思想でも同様です。七年戦争以前の日本では『出会いと別れの象徴』という資料もありましたが……その意味合いでは何も噛み合わない」

 

 そこから先はハインリッヒでも思想に耽って沈黙するしかなかった。それはマリルもそうだし、学がない俺からすればもっとだ。考えても答えに切り込む糸筋さえも見出せない。

 

「……とまあSIDが推測を重ねた末にここでドン詰まりだ。レンから何か分かることはあるか?」

 

「何も分からない……。ごめん」

 

「けど、今はそんなことはどうでもいいんだがな」

 

 なんて仮にもSID長官であるマリルの口から出たとは思えない言葉を吐く。

 それはこっちを心配させないための方便や見栄でもなく本心だ。マリルは心の底から、アザトースについては今はどうでもいいと言っている。

 

 

 

「その窓から下を見てみろ」

 

 

 

 なんでどうでもいいんだろう、という疑問が湧く前にマリルはそう言う。だから言われるがままに俺は病衣の姿でガラス窓の外を見下ろしてみる。

 でも見たところで特に変な点はない。なんてことないよくある風景が広がってるだけだ。

 

 

 

 アニーがラファエルの車椅子を持ちながら話してる。いつもの生意気で自己中な面が戻ってきてるから、その隣にいるニュクスがラファエルを揶揄う。

 そんな微笑ましい光景を他所にエミリオとヴィラは談笑中。シンチェンとハイイー、それに便乗してイルカもマサダ名物のザクロジュースを堪能している。

 ベアトリーチェは今回のソヤの奮闘を労うように微笑んでいる。

 霧夕とクラウディアはギンを心配そうに見つめている。だけどギンは片側の義手、義足が痛々しくはあるが、本人はそれを気にも留めてないように酒を飲んで余裕を見せつける。

 

 そしてスクルドとファビオラがいる。スクルドは俺と同様に目覚めたばかりなのか、寝癖がついた長い髪をファビオラに丁寧に解かされながら年相応の笑みと甘えを見せてくれる。

 

 そんないつもの光景——。

 だけど胸がギュッと込み上げてくる。嬉しさと喜びを心が噛み締めている。

 

 

 

 

 

 ただ『皆がそこにいる』だけの『日常』を——。

 

 

 

 

 

「っ……そっか……!」

 

「ああ、そうだ。お前はやりきった。ヨグ=ソトースを打倒したことで『因果の狭間』や『ドリームランド』に幽閉された魂は解放された。おかげでスクルドは脳死状態から復帰。おまけにお前がやろうと思えば、ベアトリーチェのようにエルガノを復活できる状態ときたもんだ」

 

 

 

 俺が今まで繋いで培ったきた人達の絆……というにはちょっと恥ずかしいけど、この際それでもいい。

 それらは確かに今俺の目の前で何一つ欠けることも、壊れることもなく存在してくれている。『スクルドの死』から始まってしまった俺達の日常が少しずつズレていくニャルラトホテプを中心とした一連の事件は、最終的には少しの犠牲で終えることになった。

 

 こんなに嬉しいことはない。喜びで涙が溢れてきそうだ。

 

 

 

 ——でも、それでも納得しきれない自分もいた。

 ——あの暗闇でドールから浴びせられた悪意。正当なる独善。

 

 

 

 ——救える力はあるはずなのに救えなかった自分。

 

 

 

 ——これを必要な犠牲と思っていいのかどうか。

 

 

 

 

 

「ほら、お前の元気な顔を見せてやれ。何せ1週間も眠ってたんだからな」

 

「本当っ!? 眠ってる場合じゃねぇっ!」

 

 

 

 

 

 けど、今はそんなことを考えるのは後でいいだろう。今だけはみんなが無事でいる現状を噛み締めよう。

 だって、超常との対決はひと段落したのだから。もう誰も『因果の狭間』なんて物に囚われることも『門』に誘惑されることもないのだから。

 

 

 

『おはよう、レンちゃん!』

 

「みんな、おはようっ!」

 

 

 

 …………

 ……

 

 

 

 華雲宮城でのお月見は、独特な風情を感じさせる——。

 そよ風が吹くと、蓮華の影が柔らかく揺らぐ——。

 清らかな光の下で、蝶が舞い踊る——。

 その美しさに触れようとするが、袖から飛び去ってしまう——。

 風の中に趣だけを残し、心から酔わせる——。

 

 

 

「バイジュウ様、お時間です」という伝達が届いて少女は「はい」と短く返答して月から目を離す。

 今まで一人で見上げるしかなかったまん丸のお月さま。夜風に当たるたびに一人思い耽るだけだった日々。月光なんて冷たい夜空を彩る孤独の象徴のように思えた時。

 

 だけど今は違う。心を通り抜ける風には温もりがある。貴方の確かな魂が私の心に宿っている。その温もりがあれば、私はどこまでも歩んでいける。暗闇の荒野に進むべき道を示すことができる。

 

 歩く。歩き続ける。

 華雲宮城が管理する五岳を越え、谷底を渡って人の足でないと到底辿り着けない辺境。そこにバイジュウが求める異質物がある。

 

 眼前にあるのは華雲宮城が保有するEX異質物『白緯度』——。

 空間が独立しており、世界を切り裂いて蠢いている。指を通すだけでその先の空気が一転して『冷たい』と理解できる宇宙空間が広がってるのが分かる。

 

 ここを渡るのが私の使命であり役割——。

 バイジュウは意を決する。ここから先は自分にしか果たせないもの。誰の代わりにもならない孤独の旅路。

 

 

 

「ここから先は時空間が歪曲しています。ここに残る私達からすれば、バイジュウ様が行って帰ってくるのが一瞬でも、バイジュウ様の体感する時間に関しては……恐らくは何年も経つことでしょう」

 

「交換条件ですから問題ありません。それよりも異質物の手続きについては?」

 

「もちろんバイジュウ様の言う通り、SIDに『地の隕石』を譲渡するように進めています」

 

 

 

 ならばよろしい、とバイジュウは尊大な態度を持って白緯度の中へと歩んでいく。

 今の彼女はもうただの小娘ではない。華雲宮城が代表する最高権力者の一人。『無形の扉』を管理する指揮官。言うなればSIDのマリル長官に位置する地位だ。もう泣き言や甘い事を言えるような立場ではいられない。

 

 だから示さないといけない。示し続けないといけない。

 私の在り方と立場というものを。人間が宇宙という神秘に挑むため、バイジュウは先陣に立って一歩を示さないといけない。

 

 

 

「うわぁ……こうして星々を歩けるなんて壮大なことですね」

 

『うん♪ てか振り返ってみ。地球って本当に丸くて青いんだね』

 

 

 

 だけど今のバイジュウは一人じゃない。一人ぼっちじゃない。二人ぼっちだ。

 心の中には、魂のそばには彼女がいるから、こんな旅路なんて苦でもなんでもない。

 

 彼女の肉体はここにはない。だけどそれがどうしたというのだ。

 肉体がなければ愛が証明できないのか。そんなことは断じてない。魂の繋がりでもあれば十分だ。凍てついた時間を溶かすのは、より良き思い出に色を灯すのは温かな記憶なのだから。

 

 

 

「あのね。今度はアニーさんの話になるんだけど……」

 

『あの青髪ツインテールの子だね。その子とはどんな関係が築けたの?』

 

 

 

 二人ぼっちの星間歩行。何光年先にある場所でも、二人ぼっちなら退屈はしない。20年間も離れ離れで積もりに積もった話が沢山あれば、土産話だってあるのだから。この程度の距離なんて足りないくらいだ。今の二人には時間という物がいくらあっても足りはしない。

 

 一歩進むたびに話は弾み、驚愕と考察が進む。

 異質物研究が齎す技術の終着点。同時に枝分かれして発展していく局所的な利用を求められるように進化する技術。それに伴うターニングポイントはいつくるのか。

 

 超常の情報を内包しきった今のバイジュウとミルクなら、少し先の未来予知なんて容易い事だ。それこそ天気予報のように。ほとんど確定した未来の話を話し合う事ができる。

 

 しかしそんなのは二人にとっては雑談の一つにしかすぎない。

 少し経てば話の方向性は一転。現代で変わった食べ物があることや、現代ではエネルギー問題を原子核を利用してないから、絶望的な世界の情勢の中でも意外と人類は環境破壊自体は行なっていないことを話したりもした。

 

 それでもまだ雑談の一つ。

 続いてのお話は古来の情報は異質物の発展とともにあったのではないかと、昔と今の考察が違う事を話したりもした。

 今は存在していない天皇が保有していた『三種の神器』だって、今ではsafe級として登録されて価値がないものとして扱われているが、本当は魔力を宿していた時代もあったのではないかと、といった話題だ。

 

 

 

 どんな話題でもミルクは優しく微笑んで頷いてくれる。時には呆れたり驚いたり、自分の視点を交えた独自の解釈を口にしたりもする。

 

 ちょっと意見が食い違ったりもするけど、それが人間という物だ。全く同じ意見、同じ意思なんて孤独と一緒だ。

 個性を排除して、思考を排除して、心を削ぎ落とすあり方なんて間違っている。こうして一緒にいて居心地が良くても、対等に意見をぶつけて言い合える時もあるのが理想というものだ。

 

 

 

 ああ、足りない。本当に足りない——。

 貴方と話す時間は、何光年先にある星に行くだけでは圧倒的に足りない——。

 

 それでも話が続けば喉を潤すために水を飲むように、ちょっと息を整えて話を止める時が来る。

 

 

 

 だからふと目に止まった。何となく目に止まった。理由なんてない。話の休題としてちょっと視線に入れただけの大きな大きな丸い月。

 自分たちの足で到着した回る月の側面。近くで見ると穴が意外とあって、人間の毛穴みたいだなとちょっと笑っちゃうくらいに不恰好だった。

 

 それでも間近で見る月には神秘に満ちていた。

 人類が月面着陸したのはかなり前の話だし、それ以降も度々行っているというのに、こうして自分で見てみると映像や写真とは違った迫力と星の力を感じてしまう。

 

 そういえば月を見て紡ぐ言葉の定番があったな——。

 

 そんな事を思いながらバイジュウはそれを無意識に溢した。

 

 

 

「月が綺麗ですね」

 

「うん。綺麗だよ」

 

 

 

 今宵の月は特別に感じた。なんて事ない月なはずなのに。大好きな貴方と一緒に見てるからだろうか。

 だったらこれからも特別な物を見に行こう。色付いた思い出を作りに行こう。

 

 月と地球のようにクルクルと。一緒に星と宇宙を回りましょう。

 

 

 

 さあ次は『あそこ』に行こう。

 二人ぼっちの宇宙旅行はまだまだ時間も余裕もあるのだから。

 

 

 

 ………………

 …………

 ……

 

 

 

 

 

 ——知的生命体の観測を検知。

 ——チャンネル照合。該当チャンネル『別次元』

 

 ——? ……ああ、そういうことか。レンちゃんだけど『レンちゃんじゃない』ということか。

 

 ——ちょっと待ってろ。今『お前たち』に姿を見せる。

 

 

 

『——私は『セラエノ』。プレアデス星団の観測者』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ノルマのくぅ疲wを最初に書いて後書きです。
 
 これにて第八章『夢幻世界』こと第一部でもある『クトゥルフ神話生物編』は終了です。
 
 レンちゃんは色々な人達の力を借り、時には貸しながら無事にニャルラトホテプとヨグ=ソトースを打倒することを果たしました。
 そしてそれはバイジュウもそうです。物語の進行と並行して、彼女だけの戦いがあった。言わずもがな『ミルクを取り戻す』話です。そういう意味では全体的な主役はレンちゃんでも、第一部の主役はバイジュウだったとも言えます。
 
 それはそれとして、やはり『クトゥルフ神話生物』というのはスケールの大きさが段違いです。それは友人達とクトゥルフ神話TRPGでプレイヤーやったりGMやったりして骨の髄まで理解してます。矮小な人間が拮抗するにはどうしても届かないし、尺度が違うので全貌を捉えることができません。
 
 ですが、それでも物語を書く以上はそのスケールを何としても文字に収めないといけない。となると『人間はどこまで神話生物に渡り合えるのか?』という命題が必要になり、そのテーマ性に沿うエッセンスとして『進化と成長』が必要であり、それを主軸とする形で第一部は構成されました。
 元々バイジュウの存在自体が『深潜症』の時点でも魔女でも何でもないのに人間離れした能力とかを持っていたので、それを重点にして話を展開し、そこにクトゥルフ神話生物を織り込んだというものですね。
 
 
 
 
 
 ……というのは建前の話。いや、確かに8割方はそんな気持ちで作ってました。
 ですが残りの2割は違います。この話を書いた理由は単純に『ニャルラトホテプをさっさと物語から排除しないと収集がつかなくなる』という面もあります。
 
 物語の連続性があるというのは、それだけ人の成長や中身を重ねることができます。ですが同時に裏の背景や事情も少しずつ透けてしまう。メタ視点というもので分かってしまうのです。
 それは時系列が続いてるTRPGのセッションと同様で、トリックスターで何でも屋と都合よく扱われるニャルラトホテプは特に代表例です。
 
 幾多のセッションを超えたプレイヤー側は絶対思ってしまうのです。「あっ、これニャルラトホテプの仕業だ」とか「これ裏にニャルラトホテプが絡んでるな」とか「この魔導書を渡したのニャルラトホテプじゃね?」といった感じに、あらゆる事態の収束に彼の影がチラついてしまう。
 
 そういう物語のノイズになり得る情報を極力削除、ならびにどうやって退場させるかのを苦悶したのが第一部でもあります。ニャルラトホテプがいなくなれば、読者は「裏に誰が関わってるんだ!?」とか「誰が元凶なんだ!?」という疑問を残すことができますから。
 
 時空間を超越しているヨグ=ソトースも同様です。
 彼はどの次元、どの時空でも存在する無尽なるもの。『因果の狭間』からハインリッヒが出てくるように、彼の存在がある限り時系列というものを極限にまで無視することができます。ただでさえ未来予知ができるスクルドがいたり、物語開始時にロス・ゴールドでタイムリープをしたレンちゃんがいるというのに。
 こんなことをヨグ=ソトースとニャルラトホテプに長いこと居座られたら収集がつかなくなります。常にアイツらの尖兵とかとぶつかり合ってマンネリ感にも繋がりますし。
 
 そんなこんなで事態の収束と成長を描いた第一部でした。
 個人的には満足ではありますが、読み返してみると「今ならこう描写した方が良かったなぁ」とか「ここ無駄に描写してるなぁ」という感じで拙さを感じてしまうのですが、まあとりあえず細かいことは一度見ないフリをしときます。
 
 
 
 というわけで第二部の始まりである『学園都市編』については、ちょいと長めに期間を空けてから開始となります。具体的には『4月1日』からスタートです。春の幕開けですしね。
 
 ただこの章に限っては、前にもお伝えした通り『戦争』と『侵略』を題材としたものとなります。題材とせざる終えませんでした。
 当初予定したものよりマイルドに仕上げようとテロップを再構成しましたが、やはり魔女兵器世界観における大事な『七年戦争』と『六大学園都市』を扱う以上は避けては通れない道であり、また順番を見送るということも難しいものとなりました。
 
 何がとは言いませんが、今でもニュースで続く情勢ですので、もしかしたら4月の段階であまりにも内容と被ってしまい、不謹慎なものになるようでしたら公開を延長する可能性もあることもご了承くださいませ。
 
 
 
 というわけで後書きは以上となります。
 
 第九章『殺戮警告』は題名の通りハードです。今までのが人類と神話生物の戦いなら、次は人類と人類の汚い部分の押し付け合い。麒麟が忌み嫌った物が表面化したものとなります。
 
 それでも最後までお付き合い頂ければ幸いです。
 
 それでは……ノシ
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