魔女兵器 〜Another Real〜   作:かにみそスープ

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第二章 【神統遊戯】
第1節 〜Now Loading〜


 囲碁とはいつから互戦の場合、先手は6目半というハンデを背負うルールができたのか。

 

 それにはゲームの歴史というものを紐解かねばならない。

 

 基本、囲碁だけでなく将棋、チェス、カードゲームなど様々なゲームにおいて先手というものは絶対的に有利な状況が多い。理由は多種多様あるが、共通して起きやすいのは『先手は後手を勝たせない』という戦法が通用しやすいからだ。

 

 先手必勝、早いもの勝ち、先んずれば人を制す——。様々な歴史で生まれた言葉が証明となる。

 

 そもそもゲームでは勝敗を決める以上、どうしても勝つ条件か負ける条件が定められてる。大抵は勝つ条件なのだが、この勝つ条件というシンプルなものが非常に難しいのだ。

 

 何故なら勝ちを決める時点で迎える結末は3つしか発生しない。

 

 どちらかが勝ち、どちらかが勝てない。

 どちらとも勝つ、という引き分け。

 どちらとも勝てない、という引き分け。

 

 これらのうち、自分相手問わずに『勝つ』のは二つしかない。先手はこの二つを潰せる絶対的な強みがあるのだ。まるで未来を見通しているように。

 

 実際この先手の強さからくるアドバンテージが高すぎるが故に、現代におけるゲームのほとんどには先手の圧倒的な有利に対して、先手にハンデを設けたりまた別のアドバンテージを後手に与えたりと試行錯誤している。

 

 囲碁なら先手6目半という、予め点差みたいなものを相手に与える。これも当初はなかったが、先手の優位性ががあまりにも高く『勝つのは確かに難しいが、負けるのはもっと難しい』というほどのものであり、時代を経るごとに戦術が研究による最適化によって4目半、5目半と増え続けて現在の6目半にまで到達することになる。

 

 カードゲームなら先手の手札枚数を減らしたり、攻撃などといった一部の行動を制限する、相手の行動中でも妨害ができるカードを製作したり、あるいは後手には一度だけ相手より早く動けるように使い切りのマナを渡したりと多種多様だ。カードゲームの種類によって、その差は大きく分けられる。

 

 将棋やチェスは実力の均衡を考慮して一戦ではなく二戦や三戦といった複数回行うことで勝敗の平均値を競うようにした。これは囲碁でもそうであるが、最初の打ち方が決まっていない囲碁においてこの平均値でさえあまりにも差がありすぎたために現在の形となって勝負は行われている。碁石を使う遊びに関して言えば、五目並べに対しても先手は禁じ手というものが存在しているほどだ。

 

 …………と、こんなゲームといっても探ろうとすれば深い歴史があるのである。

 だからこそ、互いの実力が均衡している時は先手が齎すアドバンテージというものは非常に大きい。

 

 ましてや自分より判断力、洞察力といった要素が劣っている相手がいたとしても先手、というだけで負けを擁することも多々にある。 

 

 囲碁、将棋、チェスに運の介入は有り得ない。だからこそ先手は思考を飛び越えることなく盤面を操作し続ける。まるで『未来』を予知して『確定』させるように。

 

 しかしそれは『勝負』と言えるのだろうか? 初めから『勝ち』が決まっているのなら、果たして『勝ち』と『負け』はあるのか?

 勝利には意味も価値もある。だが、定められたそれは枠組みの中での話。『ルール』があるからこそ成立するのものだ。

 

 その時点であなたの勝利は『ゲーム』の中の『ルール』によって得た『勝利』に過ぎない。

 

 もし本当の勝者がいるなら、その『ゲーム』さえを作り上げた創造者に他ならない。

 

 だが、その創造さえも一種の闘争によって生み出されたものだ。闘争である以上は『勝負』は付き纏う。

 

 だとしたら創造者がいる世界……言い方は数あれど『現実』での勝負とは何なのか? 勝利とは何なのか? 敗北とは何なのか? ルールは何なのか?

 

 だからこそ勝負というものは非常に面白い。あらゆる知略と、落ちている運さえ見つけて拾い上げる度胸。そして定められていない勝利条件。不確定要素の塊が多く、未来を予知することなど到底不可能な盤面。このハンデさえもハンデになり得ない混沌さ。

 

 それらが総合することで初めて現実における『勝負』というものは成立する。現実において、盤面この一手というものは安定なんて物はほとんどの場合は存在しないのだ。

 

 ある意味においては現実のありとあらゆる選択と努力は『勝利』を得る『ゲーム』にしか過ぎないのかもしれない。ハッピーエンドも、バッドエンドも、トゥルーエンドも……どんな結末になろうとも目指した志はその一点に尽きる。

 

 例え踏み出した一歩が間違っていようが、それまでの過程が間違っていようが、その果てにたどりつく答えが間違っていようが、その志ざした勝利へと踏み出した選択だけは間違っているとは誰にも言えず、普遍的で不変的な価値を持つ『勝負』と言えるだろう。

 

 

 

 

 

 さて…………そんな『勝負』というものに、貴方が相対する相手は果たして誰なのか。

 

 自分より劣る弱者か。

 溺愛する弟子か。

 目標となる師匠か。

 絆を紡ぐ親友か。

 愛を育む恋人か。

 競争する好敵手か。

 高みを目指す強者か。

 

 あるいは、見果てぬ未来の到達者か。

 あるいは、過ぎ去りし過去の亡霊か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もしくは……鏡合わせの『自分自身』か。

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