魔女兵器 〜Another Real〜   作:かにみそスープ

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どうしてCODE:SEEDもサ終するのよ〜〜っ!!

日本はどこでレンちゃんを見ればいいんだ〜〜っ!!


第2節 〜New Game〜

 いつからか、その子はずっと俺の視界にいた。

 

 第二学園都市【ニューモリダス】——。

 今現在、俺はある用事でここに来てから一週間も経つが、その子がいつも公園にいることに最近気づいた。

 

 最初に見たのはお昼時。公園のベンチで密かな楽しみであるブラックコーヒーと卵サンド、そして揚げたてのフライドチキンを食べていた時だ。

 

 やけに目立つ赤と白が作られたダイヤ柄の帽子に、これまたダイヤ柄で遇らう真紅の…………なんて言うんだ。雑誌で見たことある、ああいうのは……サロペットスカートって言うんだっけ? 女の子じゃないから詳しく分からん。

 

 ともかくそんな童話に出てきそうな不思議で奇抜な格好をした金髪の少女は、常にその公園で草むらにある何かを見つめていた。

 

 もちろん最初は「そういう趣味の子かなぁ」とか「何かの撮影か?」と思って気にも止めなかった。気にし始めたのは、その夜に飲み物でも買おうとホテルから出て公園近くの自動販売機に行った時だ。その子は瞬きさえもしてないのでは疑うほど微動だにせず、昼と変わらずに草むらを見つめ続けていた。

 

 そして次の日。用事が建てこんでしまい、夜遅くにホテルに戻った俺は公園を通りすがった時に、これまた微動だにせずに草むらを見つめる少女がいた。

 

 ……地縛霊か何かか? 気味が悪くなってすぐさま俺はホテルの寝室で、悪霊であれば退散するように思いながら就寝した。

 

 次の日。ハムカツサンドとサイダー、そしてこれまたフライドチキンを買って公園のベンチで束の間の日向ぼっこでもしようとした時、またまた少女は微動だにせずに草むらを見つめ続けていた。

 

 ……誰も補導してないし、本当に幽霊なのかな? と思うのは自分でも仕方がないと思う。

 

 次の日も少女は公園にいた。たまたま用事がない日だったこともあり、ホテルの一室から双眼鏡で一日中覗き込んで少女を見続けた。

 

 結果は俺が観察してから寝付くまでの16時間、飲み食いどころか本当に瞬き一つさえせずに少女は草むらを見つめ続けていた。

 

 ここまで来ると……何であろうと興味が湧いた。

 

 次の日、俺はあらゆる準備を整えて少女がいる公園へと向かった。

 

「おーい、そこのお嬢さーん」

 

「……………………」

 

 ガン無視である。とはいっても長期戦は覚悟の上だ。

 俺はゲン担ぎと長時間の戦闘に備えて、今のうちにブラックコーヒーを飲み、彼女の近くにビニールシートを引く。気分は一人で紅葉狩りを楽しむ観光客だ。この場合、見るには紅葉ではなくミステリアス少女になるんだけど。

 

「疲れない? ここに飲食物いっぱいあるから、気が変わったら一緒にお茶会でもしない?」

 

 ……自分でもアレだが下手なナンパ師みたいだな。

 

「…………………………」

 

 当然、俺の声は無視である。

 いったい何があるんだと俺も覗き込むが、別に何の変哲もない草むらだ。野球ボールさえも落ちてないし、あるとしたら虫や花ぐらいだ。

 

「…………こんにちは」

 

 そこで初めて彼女の声を聞いた。

 彼女の声は生まれて初めて声を出したと言わんばかりに、無機質で無感情だった。今のは人の言葉かと、つい疑ってしまうほどに。

 

「お、おう。こんにちは」

 

 これまた無機質な瞳で見つめるものだから、つい萎縮してしまう。

 ……女性と面と向かって会話をすることが少ないから萎縮することも確かにあるが、彼女との会話はそういう度を超えている。

 

「……………………………」

 

 再び流れる沈黙。彼女はそれ以上の会話は続かず、日が沈んだ後でさえも彼女はずっと草むらを見つめ続けていた。

 

 俺だっていつまでも居続けるわけにはいかない。

 開かずに残ってしまった缶コーヒーを一つ、彼女の空虚な手に握らせる。

 

 ……俺が握ったことさえ認識してない様子で、彼女は未だに草むらを見続けるとは流石に驚いたが、これ以上は明日に支障をきたす。俺は足早にその場を去った。

 

 …………自分の手を見つめる。

 

 ……彼女の手には温もりがあった。確かな人肌の温もりが。

 

 

 …………

 ……

 

 

 後日、本日の天気は雨と雷。悪天候様は絶好調だ。

 雷が落ちて、世界の景色は点滅する。遅れて届く轟音が耳を劈く。それが短い感覚で繰り返される。

 

 ……だというのにニューモリダスの電力供給は異常は発生することなき正常に動き続けている。やっぱり異質物研究が進んでからは、こういう設備などの電力面に関しては新豊州を筆頭に対策が講じられてることを改めて実感する。

 

 俺は流し見しているテレビの音声を耳にしながら、ホテルの窓からいつもの少女を探すように公園を見つめる。あの特徴的なダイヤ柄の赤い服と帽子が視界に即座に目に入った。

 

 …………流石にこんな悪天候では少女の姿は見えないと思っていたのになぁ。

 

 俺はすぐに傘を持ち出して、いつもの草むらから少し離れた木陰へと足を運んだ。そこには雨雲を見上げる彼女の姿があった。

 

 彼女の横顔はただ暗く覆う雨雲を見つめているだけだ。それは草むらを見ていると時と同じで、いつもの無機質で無感情で無表情だ。悪天候に対して悪態をつくような素振りさえ見せない。頬を伝う雨粒は、その異質さから涙と思うことさえない。

 

 ……世界に独りぼっちで佇んでいるみたいで、ひどく虚しさを感じてしまう。まるで見えない壁があるようだ。

 重苦しい隔たりは声をかけようとした俺の口を塞き止めて、見上げる少女への干渉を許さない。そんな時間が永久に続く…………。そう錯覚しそうなほど長い時間が経過する。

 

 やがて彼女は俺のことに気づき、顔だけをこちらに向けて抑揚のない声で言った。

 

「こんにちは。今日はいい天気だ」

 

「どこがっ!!?」

 

 今までの空気なんか本当に錯覚だと言わんばかりに、彼女は呑気に俺へと挨拶をしてきた。

 

 開口一番調子を崩された。マイペースな子だとは薄々思っていたが、こんな天気でも彼女に何か特別な変化が起こることはない。

 

「……ここ数日見てたけど、君は草むらで何を見ていたんだ?」

 

 出会ってから……というか知ってからずっと気になっていたことを、今が好機だと感じて思わず聞いてしまう。

 

 彼女は未だに表情を崩しはしない。こんな彼女からいったいどんな内容が聞けるのか……。もちろん黙秘された場合は潔く諦めるしか——。

 

「カマキリを見ていた」

 

 は?

「は?」

 は?

 

 カマキリを見ていただけ?

「カマキリを見ていただけ?」

 カマキリを見ていただけ?

 

「そうだ」

 

 無表情のまま彼女はそう言った。理解が追いつかない。

 

「そういうお前は何日も私を見てたと言っていたな。私が知る限り、それはストーカーというのだろう? お前はストーカーか?」

 

 理解する時間さえ与えずに彼女は会話を続ける。

 

「違う! というか何でカマキリを見てたんだ……?」

 

「観察していた。予めて情報を得ていたとはいえ、実際に見てみるとカマキリとは実に面白い」

 

「だが」と彼女は一息置く。

 

「私はまだカマキリの交尾を見ていない」

 

「こ、こここ、交尾っ!?」

 

 いきなりぶっ込んできたなっ!?

 

「聞き覚えないのか? ……種族の差異か? ならば言い換えるとSEX(セックス)だな」

 

「せっっっっっっっっ!!?!?」

 

 待て待て。彼女いない歴イコール年齢の俺には、その話題は刺激が強すぎる。

 

「これも知らないのか。ならば——」

 

「もういい言うな、それ以上言うな、頼む言わないでください」

 

「そうか。……ならば知っているだろう。観測した通りの年齢ならお前はすでに中等教育課程を終えている」

 

「知っていますけど……」

 

「ならば教えろ。私に交尾というものを」

 

「言い方ァ!」

 

「私にセッ——」

 

「カマキリの!! ……カマキリの交尾は8月の終わりから9月の初めにかけてなんだ。今は10月、すでに繁殖の時期は過ぎてる」

 

「そうだったのか……。それは残念だ」

 

 無表情で無機質な目で無頓着に言っても、全然残念そうに感じない。

 

 ……不思議でマイペースだとは思っていたが、まさかここまでだなんて。

 

 雨の滴が再び彼女の頬を伝う。気にもしない態度も継続だが、先ほどの隔たりなどもう感じない俺は、仕方なくハンカチを取り出して彼女の頬を拭う。

 

「…………寒いのか?」

 

 彼女の頬に触れた初めて気づいた。彼女の身体はひどく弱り切っている。そして…………人肌には温かったはずの彼女の温もりは、今にも倒れてしまうじゃないかと思えるほど熱を失っていた。

 

 そこで気付く。服はとうに湿気を吸い込んで水気を帯びている。それは帽子も靴もそうだ。かなり前からこの雨の中でいたのが窺える。

 

 …………帰る場所がない、そう考えてしまった。

 

「……寒いのかもしれない。私はあまりにも人間の体験を知らない。故に感情表現さえ乏しく、あらゆるものがどういうものか一から知る必要がある」

 

 彼女の言葉の節々から疑問が湧くが、今は言及するべきことはそこではない。

 

「じゃあ、聞くぞ。今どんな気持ちだ?」

 

「どんな……? 該当範囲が多すぎて絞り切れない。すべてを伝えればいいのか」

 

「言い直す。気持ち悪いとか、体調が優れないのは分かるか?」

 

「分かるぞ。私は体温33.9°と平均体温を大きく下回っている。あらゆる自律行動に支障が発生中だ。あと先日私を舐め回すように見続けて、今日は急に声をかけたお前は一般的に見て気持ち悪い」

 

 最後のは余計なお世話だっ!

 ……ともかく、そんな体温じゃ間違いなく低体温症の初期症状だ。このままだと意識さえままならない。

 

「カマキリの観測はいくらでもしていいけど、今だけは休ませるぞ。近くに俺が拠点にしてるホテルがあるから、そこに連れて行く」

 

 見た目以上に軽い彼女を身体を両腕で抱える。よくあるお姫様抱っこというやつだ。

 

「……ストーカーに身の自由を奪われるシチュエーション。こういう時に言うのか」

 

 ストーカーじゃないし、身の自由を奪った覚えはない。

 

「やめて、私に乱暴する気でしょう。エロ同人みたいに」

 

 全く情欲を滾らせない抑揚だった。

 ……何というか思ってたより百倍不思議な女の子だと感じてしまう。俺はすぐさまホテルへと連れ込んだ。

 

 ……同時に問題がいくつか起こる。

 

 身分も知らない彼女を無断でホテルに連れ込むのはまずいと感じ、身分証明できるものがないか確認を取ったが、彼女は一向に「持っていない」の一点張り。頭痛が痛いと言いたくなるほど、ダブルパンチであり目眩を引き起こす。

 

 とはいっても、ホテルのフロントで事情を説明しようにも赤の他人すぎて上手く説明はできないし、問題ごとをあまり起こしたくない立場だ。仕方なくホテルスタッフの目と監視カメラを可能な限り掻い潜って、俺が利用している一人用の宿泊部屋に彼女を連れ込むことになってしまう。

 

「…………」

 

 つまり室内にあるバスルームを貸すわけで…………ずぶ濡れだった衣服を脱ぎ捨て、バスタオル越しながらも霰もない彼女の姿を目にしてしまったのだ。

 

「……これはどうやって使う?」

 

 しかもどういうわけか『風呂』という概念を知らないという、凄まじい事態だ。もう頭を抱え込んで仕方ない。どこから説明すればいいのか…………。

 

「……ここを捻れば温かい水が出る。それで身体を暖めろ」

 

「これを捻るのか」

 

 そう言って初めて触る玩具を試すように、無機質で無表情なまま一心不乱にシャワーの蛇口を一方向に回し続ける。当然そんなことでは水の勢いは増す一方だ。飛散したシャワーが乱反射を起こして、俺と彼女の二人揃ってずぶ濡れになる。

 

「……こういう状況は濡れ場といえばいいのか?」

 

「言葉は文字通りの意味として機能しない時もある。その言葉は別の意味だ、くれぐれも今後は口にしないように」

 

「そうか、なるほどな」

 

 ……見知らぬ女性の裸体を見るわけにもいかない。

 

 俺は「逆に捻れば水は出なくなる」とだけ伝えて早急にバスルームから出て行き、服を脱ぎ捨ててフェイスタオルで身体中を水分を拭き取り、寝巻きへと着替える。本来一人利用だからホテル側もタオルなどの基本的な生活用品は一式しか用意してくれないのだ。彼女のことを考えると最低限のものは準備したほうがいい。

 

 とりあえずホテル系列で営業しているコインランドリーに彼女の服もろとも衣服をぶち込んでおいた。待つこと20分、乾燥機も併用していることもあり洗濯し終えた衣服からは柔軟剤の香りが仄かに花を擽る。

 

「面倒ごとが増えるな……」

 

 彼女を無断に連れ込んだのがバレたら色々と面倒なことになる。というかバレてる可能性の方が高い。どうすればいいのか……。

 

 思考を続けながら、そのままエントランスにある24時間経営のコンビニへと入店する。「貴方と家族になりたい」というフレーズが個性的で独特な入店音を耳にしながら、寝間着として取り扱ってる男女兼用のグレージャージ、歯磨き、タオルケットなどをある程度購入すると俺は彼女が待つ自室へと戻る。

 

「……おかえり」

 

 予期せぬ彼女の言葉に、俺も「た、ただいま」と吃りながら返答する。

 20分も過ぎてることもあり、彼女は既にシャワー浴び終えてバスタオル一枚という心許ない状態でベッドへと腰掛けていた。乾き切っていない彼女の髪と頬に吹き忘れた水滴が伝う。バスタオルも特別大きいものではないから、少し視点を変えれば上も下も見放題なほど無防備だ。

 

 ……シチュエーションがシチュエーションだから、彼女がいくら無機質なままでも男として少しはムラッとはくる。だが俺は紳士だ、急に野獣になるほど節度がない人間ではない。

 

「おかげで行動に支障は出ない。感謝を伝える、ありがとう」

 

「そ、それは良かったよ……。あと、これ君用に準備したジャージ……う、後ろ向くから着替え終わったら言ってっ!」

 

「わかった。着替え終わったら言えばいいんだな」

 

 ジャージの包装を破く音と、下着が皮膚を擦る音と息遣いという二重の艶かしい音が耳に残る。

 

 …………無心になれ。無心になるという時点で無心ではないが、それでも無心になっていると思い込め。

 

「着替え終わった」

 

 振り返ると一転して芋感全開の少女が爆誕していた。無機質で無表情。この世の善悪さえまだ把握できてない無垢な子供みたいだ。無だらけの顔でも垢抜けない純粋な印象を受けてしまい、そんな彼女を見ると…………どうしてか保護欲が駆り立てられる。

 

「じゃあ温かい飲み物を用意するよ。部屋に備え付けられてるのはインスタントだけど色々な茶葉からコーヒー、コーンスープ、味噌汁と結構あるよ」

 

「…………ならば昨日くれた飲み物が好ましい」

 

「コーヒーか。好きなのか?」

 

「いや不快になる味だった。焦げた砂糖水、甘い泥水……。なんとも形容し難い舌触りと香りで……マジ不味いってやつだ」

 

 時々言語センスがキャラと噛み合わなくなるな……。というか別に好きでもなんでもないのか。

 

「だけど……不快で不味いはずなのに、何故か満たされる味だった。これを理解するためにもう一度飲んでみたいのだ」

 

「なるほど、不思議な魅力を感じたってわけね」

 

 ……もしかしたらただのカフェイン中毒かもしれないが、その辺りを突っ込むのは野暮だろう。俺は電子ポッドからお湯を注いでコーヒー豆の粉末を蒸らし、再度お湯を注いでカップにコーヒーを抽出する。手早く角砂糖や粉ミルクの包装を準備すると、カップのソーサーに乗せて彼女へと差し出した。

 

「苦いとか香りが苦手だと感じたら、その二つを溶かせばある程度変わるよ」

 

「分かった、色々とすまないな」

 

 彼女は一口、また一口と舌で確認しながら角砂糖や粉ミルクを混ぜていく。……最終的には角砂糖三つに粉ミルク一袋で落ち着き、一息つくように俺と視線を合わせた。

 

「多少はマシになった。…………けど、満たされる味の理由が分からないままだ。何を入れてもこれだけは変わらない……何故だ?」

 

 やっぱカフェイン中毒じゃねぇの?

 

「……私個人の趣味嗜好はどうでもいいか。それよりも今はお前に礼を尽くさないといけない。こういう場合はどうすればいい?」

 

「どうすれば、いい…………だとっ!?」

 

「知識ではあるのだ。相手の好意に返上できる物がない場合は、自身の身を持って奉仕したほうが良いと。だが私は見ての通り人間初心者だ。知識で知っていても、実際の礼節とは違う可能性も十二分にある」

 

 …………人間初心者ねぇ。もうこの際、そういうことは追求しないでおくか。

 

 しかし……………どうすればいいか。知識と実際とは違う可能性を言及してる以上は、俺がこと細かく説明すれば鵜呑みにして何でもしてくれる可能性もある。それを利用すれば…………いやダメだ、やめておこう。卑しいことしか思い浮かばない。

 

 何より…………こんな無垢な子は守らないといけない。そうとも感じる自分がいた。

 

「じゃあさ、君のこと教えてよ」

 

「…………それが望みなら伝えてもいい。どうせ私にも協力者が欲しいとは思っていたとこだ」

 

 彼女は咳払いをして姿勢を正して話を始めようとする。……芋感あるジャージ姿なのが申し訳ないな。

 

「私は人間どころか地球の生命体ですらない。どうだ、驚いたか」

 

 ……いや驚けねぇよ。散々「人間を知らない」とか「人間初心者」とか四六時中草むらを観察したり、物を知らないのに知識は豊富とかいう超常染みたことをしていたら、むしろ宇宙人とかの類の方を思い浮かべる。

 

「私はある目的のために地球を観測していたが……ある時を境に、地球を見守る■■と■■が反応を途絶。その後は■■■■■■■■■■————」

 

 脳が壊れそうなほど厚みのある『言葉』が彼女の口から紡がれる。俺には完全に理解不能。この調子で聞き続けたら頭が割れて、女装好きの変態になりかねない。

 

「頼む……。人間に理解できる言葉にしてくれ」

 

「■■■■■——。…………すまなかった。まだ言葉さえも不自由でな。コミュニケーション以外の会話の時には思わずこの言語が出てしまう……。君に認識できる言葉っで出来るだけ説明する」

 

「いやいや! それよりも前にもっと大事なこと!」

 

「大事なこと……?」

 

 ああ……この子、ここまで無知なのか……。

 

「俺は君のことを知りたいと言った。……それは目的もそうだけど、一番は君の名前が知りたいんだ」

 

「…………自己紹介というやつか。確かにコミュニケーションにおいて自分の身分を明かすのは効果的だという知識はある。…………なるほど、こういう時のコミュニケーションは間違ってないのか」

 

「では」彼女は一息置くと「改めて自己紹介する」と宣言する。

 

「私は『セラエノ』。プレアデス星団の観測者」


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