「たくっ……!! 次から次へとッ!!」
ニューモリダス大使館前——。
そこではファビオラがスクルドを背に大型バイクに乗り、大使館から離れようと奮闘していた。時速は150キロに到達——だというのに、背後から迫る超小型自律兵器であるブルートゥースが振り切れることはない。依然として加速は続け、160キロ、170キロと世界が残像となっても迫り続ける。
「『ハーディ・デイトナ』の名は借り物じゃないってのに……!」
時速200キロ——。ついに世界が歪み、風が輪郭を帯びて視界を覆う。夜風は肌を突き刺し、血管を凍てつかせる。極度の緊張感と刃のように研ぎ澄まされた向かい風は一呼吸するたびに気管を貫き、急速にスクルドの意識を奪っていく。
片やファビオラの意識は鎮まることはない。むしろ昂り、荒ぶり、全てを燃やし尽くすように燃え盛る。彼女の腰に回している腕から伝わる体温が、少女の溶けかかる意識を鮮明にしてくれる。
「あっち行って下さいませ! 燃えるゴミと燃えないゴミも!」
それがファビオラの『魔女』としての力。非科学的に燃え盛る『炎』が、スクルドを守るように包み込み、同時に鞭のように撓って炎はブルートゥースを焼却しようと飲み込む。
これは世界の法則として燃える通常の炎とは違い、ファビオラの炎は『燃やし尽くす』という意思を持って非科学的に燃え盛る。そこに物理的防御や防火対策など意味を持たない。まるで炎自体が『生きている』ように、対象を燃やし尽くすまで、その生ける炎は消えることはない。
「溶けない……!?」
だが、ブルートゥースは炎の繭を物ともせずに突き破り、炎を纏いながら加速を続けるバイクへと少しずつだが迫りくる。バイクに追いついてくるのはファビオラにとっては想定内だ。レッドアラートの付属機として、短時間とはいえ限界速度は500キロに相当する危険物なのだから。
しかし『魔女の炎』で溶けないのがファビオラには理解できないのだ。超常的な理屈で燃ゆる炎に、通常の法則で対抗するなど不可能であるはず。だというのに、ブルートゥースには効果が見られない。
(耐火加工——? は、意味がない……。なら何故?)
ファビオラの疑問は解消されることはない。どれだけ思考を重ねても答えを得ることができない。
無理もない。この時ファビオラはまだ知らないのだから。
マサダブルクで製作されたレッドアラート並びにブルートゥースは、本来想定していた対象であるエミリオに対抗するため、彼女が持つ能力の片鱗によって発生する高温による『融解』や『灰塵』などを対策するために、ある特殊な加工を用いられてることを。それは生ける炎と同様に、超常的な理屈で成立されたものであることを。
それは『異質物』を素材として加工されているということ。
つまりブルートゥース自体が自律行動する『異質物武器』ということ——。いや、規模としてはそれ以上と言える。もはや『異質物兵器』と形容しても差し支えない。
「だったら機動力で振り切るッ!!」
時速250キロの世界は街と風が溶け合い、搭乗者の感情を如実に浮き上がらせる。世界が『恐れ』と『怖さ』によって構成され、ファビオラの思考にある凄惨な光景が鮮明に映らせる。
脳裏によぎる最悪の展開——。
ハンドルを切るタイミング、身体の傾き、スピードを落とすタイミング——。
どれか一つでも誤れば建物と正面衝突。刹那に二人は肉塊と化す。想像するだけで残虐極まりないオブジェクトだ。特に少女であるスクルドの顔さえ定まらない倒れる姿を想像するだけで、心臓が早まり焦りが生まれる。
だが、ファビオラの覚悟はその程度で止まることはない——。
あの日、決意したスクルドを守るという自分に課した使命。それは言われるがままにパランティアに所属した自分が初めて、誰かではなく自分でやりたいと思い背負った新たな使命。
それほどまでスクルドの少女という笑顔は、ファビオラにとって太陽のように眩しくて綺麗で尊いものだから。
それがあれば——ファビオラに恐れ慄くものだとありはしない——。
時速300キロ——。世界も感情も溶けて消える。浮かぶのは『記憶』の全て——。その中にあるニューモリダスの地理をファビオラは拾い上げ、ハンドルをこれでもかと全力で握り込み、思い浮かべた道を確実に駆ける。決して小綺麗に区分けされてはいないニューモリダス港湾部の複雑に入り組んだ道だというのに、ファビオラは一度たりとも減速らしい減速をせずに走り抜け、迫り来るブルートゥースを完全に振り切った。
だが安心するのはまだ早い——。ブルートゥースが追跡を止めるのは対象を見失うか、それとも『本体』へと対象が接近したからのどちらかだ——。
加速する世界の中、鏡のように輝く車体の装甲に『赤い光』が乱反射してるのをファビオラは視認する。考えるより早くサイドミラーを強引に上向きしに、鏡越しに赤い光の正体を写す。
夜空に浮かぶは『血の伯爵夫人』——。
それは確実にファビオラ達を捉えて、腕部に当たる部位に装着された2本の大剣を振り下ろそうと急接近していた。
「っ!」
即座にファビオラはブレーキとハンドルを同時に切り、急激に速度を下げながらレッドアラートの強襲を寸前のところで避けた。大袈裟に避けたこともあり、バイクのタイヤは摩擦によって擦り切れてしまい、走ることさえままならなくなる。
「失礼します、お嬢様ッ!!」
「きゃっ!」
しかし、そこで立ち止まることなんてファビオラがするはずなどない。スクルドを覆うように抱え上げて、続くレッドアラートの攻撃を回避しようと細心の注意を払う。
追撃の一閃——。
これもファビオラは大袈裟に回避し、レッドアラートの間合いに入らないように全力で走り続ける。
続く一閃——。
鋒さえ届くかどうかの浅い一撃。それもファビオラは、絶対に当たってはならないと危機感を抱いてるように、さらに歩みを早めて強引に避ける。
それには理由がある。レッドアラートが持つ大剣——それはブルートゥースと同様に『異質物武器』でもあるからだ。
その『異質物武器』とは、本来だったらエミリオが両断した砂嵐についてマサダブルクが一度きりの『異質物』として弁明するために処分される物であったが、SNSでエミリオが解決した事実を公開されたことで処分は取り消し。後日レッドアラートとの運用を前提として研究対象となり、その果てに生まれたのがレッドアラートが使用する武装となっているのだ。
異質物武器の名は『ニュークリアス』——。
文字通り『核』が由来となる異質物——。
意図的に小規模な『核反応』を起こすという埒外な奇跡と災害を孕んでおり、実験段階での運用時点で脅威として各学園都市で危険視されたもの。その武装はある特徴的な痕跡を残す。奇しくも、それは本来抹殺する対象となるエミリオの能力と似たものだ。
そもそもとして『核反応』とは色々な種類がある。代表的なのは、核吸収、核錯乱など多種多様で、厳密な種類に関しては異質物研究が進んだ現代科学でも明確には定めてはいない。
その中でも特に聞くのは『核分裂反応』であろう。
不安定元素が分裂して、軽い元素を二つ以上作る反応。それが連鎖してさらに軽い原子状態となり、物体の崩壊現象を引き起こす。その際に多大な『発熱』を起こし、側から見ればありとあらゆるものが『融解』していく様は地獄絵図に他ならない。
これは原子力を扱う技術で起こりうる原子力事故の一種でもあり、それによって発生する放射能問題から、絶対に引き起こしてはならないものとして常に細心の注意が払われる上に、仮に起きたとしても被害を最小限に抑えるために首都から隔離並びに厳重な管理された施設で人知れず行われるほどだ。それほどまでに『核反応』というものは絶大で危険な物であり、同時に生み出す資源は膨大なのだ。
…………といって小難しい理屈を捏ねたところで想像するのは難しいに違いない。
だからこれ以上の表現は濁し、非常に聞き覚えのある名称を一例だけあげよう。それこそが最も『核分裂反応』において轟く名称に違いない。
つまりは『炉心溶融』——。
あるいは『メルトダウン』——。
そう呼ばれる現象に近いものが発生する。
戦闘の最中、大剣の鋒が裏道のビル群の壁を一つ、ほん少し傷をつけた。
小石が当たった程度の削り痕。1ミリにも満たないであろう。だというのに、ビルのコンクリートはお湯に浸された氷のように、削り痕から円形に広がって溶け崩れていく。
これこそが『炉心溶融』が引き起こす現象だ。『核反応』を中心とした発熱で、周囲にある物体を融解させる。臨界状態に達すれば、ありとあらゆる物を融解させて周囲一帯を崩壊させる災害級の原子力事故。
もちろん眼前に起こるビルが溶ける現象については、理論的におかしいのは当然だろう。『核分裂反応』を発生させるには前提となる条件が成立していないのだから。
しかし、それは『常識』に過ぎない。独立した理論によって『超常』が成立するからこそ『異質物』だ。その現象を引き起こすには、人智では計り知れないのもまた当然だろう。
現代科学では把握しきれない埒外科学による『超常』で成立する対人抹殺兵器『レッドアラート』——。
『異質物』が生み出す人為的奇跡と人為的厄災——。
超常による『核反応』で生み出される『原子力』をエネルギーとして活動する半永久自律兵器——。
原子力エネルギーを使用する際の莫大な発熱に耐える『異質物』を使用した『耐熱装甲』——。
だからこそ『災害用非常警報(レッドアラート)』——。
そして一撃必殺の絶命の刃——。
それが『ニュークリアス』なのだ。
やがて切りつけられたビルの殆どが溶け切り、重心が支えきれなくなったビルが倒れ込んだ。幸いにも溶けたことで質量が少なくなり、連鎖的にビル群が倒壊することはなかったが、それによって発生する豪雨のように降り注ぐ瓦礫がファビオラ達を襲う。
もし『ニュークリアス』が対人特化ではなく、戦略用兵器として最大出力として運用されたら、ファビオラ達が今いるニューモリダスのビル群なんて3分もあれば平らになってしまうだろう。
「大丈夫ですか、スクルド様……」
「私は大丈夫だけど……っ!」
余裕がないのか、ファビオラは『お嬢様』という敬称をつけ忘れて身を挺してスクルドを守る。いくら着用しているメイド服の細部に防弾対策の金属プレートが入っているとはいえ、衝撃自体が無くなるわけではない。着実に、そして確実にファビオラに痛みと疲労が溜まっていく。
「こうなっては仕方ありません……。お嬢様は逃げてください」
「…………それしかないんだよね」
スクルドの訴えにファビオラは「はい」と答えるしかなかった。
言葉には出さないが、ファビオラにとってスクルドは守るためとはいえレッドアラートと対抗するには『邪魔』でしかないのだ。
確かにスクルドを横にしながら戦闘をする訓練をファビオラは今までしてきた。銃弾にも身を盾にして防ぐ手段も心構えもできている。
だけど、それは『普通』を相手にするときに限る。
普通の狙撃手、普通の拳法家、普通の暗殺者。どれも『非常識』という名の『普通』でしかない。
『超常』の力を持つレッドアラートを相手にするには、スクルドを守りながら戦うのは、流石のファビオラでも荷が重すぎるのだ。
その無力さをファビオラとスクルド、両者ともに感じているのだ。
あなたを守ることができずに、ごめんなさいと。
あなたに守られることができずに、ごめんなさいと。
「絶対に、死んじゃダメだよっ!」
「お互い様ですよ」
その言葉を最後に、スクルドはビル群の裏路地のさらに奥へと進み闇夜と共に紛れ込んだ。
ファビオラは振り向かえることなく、眼前に迫る敵へと意識を向ける。
相対するは『血の伯爵夫人』——。
対峙するは『炎上系バトルメイド』——。
「——では、こちらも本気を出すとしましょう」
迫り来るレッドアラートの一閃、その前に『炎の壁』が立ちはだかり、大剣は『炎の壁』によって堰き止められて、その鋒はファビオラに届くことはない。
同時に不可思議なことが起きる。『ニュークリアス』によって切られた『炎の壁』は、核反応を起こして『溶けた』のだ。
——本来『炎』というものは気体が反応することで発生する現象に過ぎない。そこに『質量』というものは本来存在しない。あるのは『熱量』という『エネルギー』にしか過ぎない。
故に『物体を溶かす現象』である『溶解』において『炎』という『熱と光を発する現象』が溶けるということは本来ありえないのだ。それは流れる水が昇らないとの同様、人間の科学が根本から覆らない限り絶対だ。
だがそれも『ニュークリアス』と同様、『常識』という名の括りであればの話だ。
ファビオラはメイドである同時に『魔女』でもある。
魔女の炎は生きており『常識』ではなく『超常』によって成立する。故に『質量を持つ炎』を作ることなど造作もない。
やがて溶解した炎は一つの物体となってファビオラの手に収まる。それは弩級の刃だ。刃に値する部位には熱が充満しており、発熱して火に曝される鉄鋼のように橙色に発光する。
さらにファビオラは、メイドスカートから桃色の謎の部品を取り出した。それは可変式の銃器であり、折り込んだ箇所を広げれば一転して持ち手が異様に短いアサルトライフルにも見える。
自分の足の長さに匹敵するそれを、ファビオラは顕現した炎を纏った弩級の刃をアサルトライフルと結合させ、斧を持つように構え直した。
得物の名は『火砕サージ』——。
ファビオラが自らの手で考案・設計をした全距離対応型の十徳武器——。
「久しぶりに本職を熟すとしますか! 不燃だろうが、粗大だろうが、燃やして燃やして、殺菌、消毒、大掃除ッ!!」
一撃必殺の刃——。
そこに戦闘が発生するというのなら、決着もまた数刻で終わる。
火砕サージの連結部から弾薬が一つ発射され、銃口から弾丸が放たれる。弾丸の大きさは一般兵士が使用する小銃よりも少し下回る程度。人間なら十分ではあるが、装甲を纏う相手には心許ない。
完全耐火装甲であっても銃弾ならどうか、という牽制目的の一手だ。はなから仕留められるとはファビオラは微塵も感じていない。
弾丸自体はレッドアラートに着弾し傷をつけたが、機能停止に追い込むにはあまりにも威力が乏しい一撃でしかなかった。
しかし狙いはそれだけではない。炎の刃は銃撃によって発生した熱量、衝撃波をすべて運動エネルギーとして加算して、より一層激しく炎を灯す。
これが火砕サージが持つ特性——。
システム『イグナイテッド』——。
ファビオラ自身が『なんで遠距離も近距離も熟る武器を作らないでしょうか?』という疑問と、それによって発生する致命的な問題点を無理矢理解消した末の運用方法。
それは端的に言えば、銃を打った際の衝撃を丸ごと斧に宿して近距離戦闘に利用するという絵空事だらけの愚策極まるものだ。
何せ根本的な問題として、近距離も遠距離も熟せる武器というものは矛盾の塊でしかなく、仮に成立したとしても互いの強みを潰した上に、機能拡張による武器の巨大化、巨大化による携帯性の低下、携帯性の低下による『武器』という個人で使用するには運用破綻といった問題が続々と発生するからだ。
他にも耐久性の問題、実用性の問題、何よりも運用難易度。色々と問題があり誰もが気にもかけなかった空想戦闘理論。
だが、ファビオラは見事にそれを形にした。『質量を持つ炎』は、携帯性の問題を解決し、銃器のフレーム自体を耐久特化にさせ、近距離武器として使用した際の衝撃による故障さえ解消させた。むしろその衝撃を『炎の刃』に充填させるというメリットに変換させたのだ。
それがシステム『イグナイテッド』。ファビオラが武器特性に基づいた新たな戦闘体系。
誰が呼んだか『ファイアー・ガン=カタ』——。
「————ッ!」
互いの攻撃が鍔迫り合う。一撃必殺の刃は、炎の刃を一方的に退けて溶解させる。だが変幻自在の魔女の炎は溶けた瞬間に、新たな刃となって続くニュークリアスの斬撃を受け切り、再び溶解させて再生するを繰り返す。
レッドアラートの亜音速に匹敵する剣劇は、ファビオラに攻撃する機会を一向に与えない。高速化する剣劇は、ファビオラの運動量で対応するには厳しく、また一発、さらに一発と火砕サージの弾丸を放出させて、その蓄積されたエネルギーを運動エネルギーとして利用することで強引に対応させる。
そんな無茶な戦闘が長く続くはずがない。ファビオラは筋繊維が引きちぎられるような激痛に耐えながらも、レッドアラートの猛攻を見つめ続ける。
勝負は一瞬で決めるしかない。攻撃を掻い潜り、僅かな隙を見つけるしかない。
その隙に『一撃』を与えることだけが、ファビオラができる唯一の反撃手段だ。
だが一撃さえあれば十分——。
火砕サージに充填された弾丸のエネルギーは合計8つ。連動され蓄積されたエネルギーが霧散して消え去るまで残り数秒。
刹那、ファビオラは見えた。
縫う隙間が見当たらない剣劇。そこに見える糸のように細い隙を——。
「こ、こ…………だぁあああああああ!!!」
今ここで倒す。例え相打ちになったとしても。
出掛りの一閃。レッドアラートの関節部が僅かに緩む瞬間。人型である以上、必ず発生する力が絶妙に抜ける刹那。そこをファビオラを見逃さなかった。
ニュークリアスの刃を、押し込むようにファビオラは火砕サージを叩きつけた。
正真正銘の鍔迫り合い。
銃撃による蓄積された運動エネルギーと、原子核反応を動力とする膨大なエネルギーのぶつかり合い。
結果は火を見るよりも明らかだ。災害を相手に人間は勝つことなど出来はしない。
ニュークリアスの刃が、火砕サージの連結部に到達した。そこは『炎』では形成されてない箇所。火砕サージが持つ脆弱点の一つ。ニュークリアスの刃は無慈悲にも、炎の刃もろとも火砕サージの連結部を容赦なく引き裂いた。
だが、人の叡智は災害をも乗り越える。
刃が壊されたことで連結部に伝わった『原子核反応』の衝撃という運動エネルギーを、ファビオラは火砕サージの銃器部分に蓄積させる。
吹き飛んだ刃の部分をファビオラは気にも止めず、そのままレッドアラートの懐に飛び込み、その胴体へと銃口を押し付けた。
火砕サージの運用は元より『全距離対応型の万能武器』だ。それは近距離も遠距離もそうだが、何よりも『零距離』という戦闘状況でも発揮する。
蓄積された運動エネルギーを斧の攻撃に回すだけ?
それでは『全距離対応』ではなく『近距離特化』だ。誰がいつ、蓄積された運動エネルギーが『炎の刃』だけにしか使えないと言った。
元より火砕サージとは、本体自体に蓄積されたエネルギーを斧や弾丸、それにファビオラの運動量増加としても利用できるよう開発されている。
斧だけで対応できない相手なら、その充填されたエネルギーを次なる『弾丸』に乗せることで、その威力を幾重にも重ねて放つという運用も火砕サージには備えられている。
これこそが『遠距離対応』であり、その威力を落とすことなく相手にぶつけることが『零距離対応』であり、それを使い熟すにはファビオラしかできない高等技術だからこそ皮肉めいた『ファイアー・ガン=カタ』と呼ばれるのだ。
たった一発。
その一発だけが全エネルギーを集約させて放てる。
だが、元より一撃さえあれば十分———。
防弾装甲が薄いことなんて『最初の一撃』で既に確認済みなのだから。
——ダァンッッ!!!!!
最後の一撃は、レッドアラートの動力となるメインコアを粉微塵に撃ち抜いた。
「…………清掃完了っと」
残存する災害は残り二機——。