魔女兵器 〜Another Real〜   作:かにみそスープ

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第13節 〜月下狂乱〜

「とまあ……そんな感じで霧吟を守ろうと決意してな……今もこうしておるわけよ」

 

 そこで話は終わり「酒で気分が上がったからか、少し喋りすぎたの」とか言いながらも更にギンは酒を煽って冬空の寒さを誤魔化していく。

 

 ……俺はその話に分かりやすい違和感を覚えた。だったら何故、今はギンしか表に出てこないのか。疲れているから出てこないとでも言うのか。

 

 それはあり得ない。これまでの鍛錬で俺だって『魂』がどこにあるかぐらいは分かる。霧吟の『魂』は今そこに……ギンの身体というよりは霧吟本人の『身体』にはないんだ。

 

「……霧吟は今でも君の中にいるの?」

 

 だから少し鎌をかけてみる。我ながら性根が悪いし、踏み込みすぎだとも思う。だけどここに後退りしてギンから何も聞けないのはもっと心地が悪い。

 

 だって、もう俺とギンは……アニーやラファエルと同じ『友達』なんだから。それが深刻なことだというのなら力になってあげたいんだ。今度こそ強さを見失わないために、無くさないために。

 

「……おるに、決まっておろう」

 

「…………だったら何で一度も霧吟は出てこないの?」

 

 それに今までの話はすべて『ギン』の視点から見た物で、一度たりとも『霧吟』から見た記憶の話ではない。ならば、そこには続きがあるはずなんだ。

 

 妖刀で見た記憶よりも前——。ある日俺が夢で見た景色——。

 

 

 

 …………

 ……

 

 

《神様……お願いしますっ。どうか、どうか……すべてを夢にしてくださいっ……!!》

 

 

 ……

 …………

 

 

 

 悲しいことにあの夢での出来事が起こるのは確実なんだ。そして俺の想像が間違ってなければ、この願いこそがきっと———。

 

「……それは儂が女の子になったこととは関係ないじゃろ」

 

「……じゃあ『守護者』になったことと関係あるの?」

 

 そこでギンは言い淀んでしまう。きっと事実だからだ。

 最初からずっと考えていた。どうしてギンは鎌倉時代の生まれなのに江戸時代に関して流暢で、しかも大正時代と世代を飛び越えた知識があるのかを。

 

 だけど昨日ハインリッヒが『守護者』の言葉を出したことで新たな点が生まれ、そこに霧守一族の『降霊術』という点を繋げれば答えは出る。

 

 ……きっと鎌倉時代で命が尽きて『魂』となったギンを、後の江戸時代で生まれた霧吟が降霊させた。そして、何かしらの理由があって……あの夢の出来事が起きて願った結果……『霧吟とギン諸共に守護者』の契約を結んでしまったに違いない。

 

 守護者となった者は『あの方』……もしくはギンの言う『魔物』の従者となって時間を超えて『セフィロス』という概念的な存在に降りかかる脅威を排除する。それはいついかなる場所や時間であろうと関係なく駆り出される。

 

 ハインリッヒならペルー副王領や南極のように、ギンは過去に大正時代の『何処か』に呼び出された。だから時代が飛び飛びなまま知識が繋がっている。そう考えるのが自然だ。

 

「……一本取られたか」

 

 とその事を伝えると、どこか安心したような息を吐いた。

 

「仕方ない。約束通り『守護者』となった経緯を教えるか」

 

「え? でも俺、ギンにまだ勝ってないよ?」

 

「言ったであろう。儂から一本取れれば教えてやると。別に勝負に勝てとは一言たりとも言っていない」

 

 ……いやいやいや。納得いかない。

 俺としては確かに話を聞けるのはありがたいが、それはそれでギン自身が納得できる事だろうか。

 

 それが顔に出ていたのだろう。ギンは見た目相応の可愛らしさ笑顔を一瞬だけ浮かべると、すぐに年季が籠った風体へと戻り告げる。

 

「儂が納得して折れた。それで十分じゃろう。別に今日は手合わせに来たのでもないのだろう?」

 

「そうだけど……本当にいいの?」

 

「男に二言なし、というじゃろ。今は玉なしだが、肝が据わっていないわけではない。伝える覚悟などとうに決めておる」

 

 ギンは再び月を見上げて語る。まるで誰かに懺悔をするように。そこには俺が想像もしていなかった出来事があった。

 

 

 

 

 

 

 …………

 ……

 

 

 

 

 

 それは災厄の序章だった。ある日、霧吟が住む村の近くで未知の感染症が起きたのだ。当時の医学では対処不能な病は、都で大きな脅威となり原因の究明と解決を最優先として治療に当たるように都付近の名医を可能な限り招集させた。

 

「……脈は落ち着いてます。このまま安静にしていれば大丈夫でしょう」

 

「すまない霧吟。私だけでは手が足りんのでな」

 

「いえ、この身が力になるのであればお貸しします」

 

 名医を降霊すれば一転して名医となる霧吟は、都にとって病の対処にあたるのにうってつけの人物だった。当世の医学では情報が足りずとも、過去の医者なら病の治療法を知っているのではないかという期待を込めて。

 

「……ダメだ。どの文献を見ても前例がない。霧吟はどうだ?」

 

「手のつく全ての魂から知識を会得しましたが病について思い当たる節がないとのことです。……信じてくれるかどうかまでは貴方次第ですが」

 

 しかし期待が実ることはなかった。霧吟は生まれてから触れ合った全ての魂と都にある魂から治療法について調べたが、今回の症状について思い当たる節がないという返答がきたのだ。

 

 疱瘡、麻疹、梅毒……それら全てに該当しない謎の奇病。感染した者の細胞から隅々まで食い尽くすという非常に危険な物であり、症状は頭痛、発熱、倦怠感からありとあらゆる全ての症例が気まぐれに患者に襲いかかるという事態には誰も知識を持っていなかったのだ。

 

 現代であれば『黒死病』『インフルエンザ』『コロナウイルス』と呼ばれる物に近いそれは、江戸時代においてはあまりにも感染力が高く対処法がない病だったのである。

 

「お前が言うのならそうであろうな。私は信じるよ」

 

「ありがとうございます……翼様」

 

 霧吟は翼という人物……後の世で『解体新書』を生み出した『杉田玄白』と共に懸命に民の看病に当たるものの、症状に関しては今までの前例がない以上は一から治療方法を模索するという後手に回る状態となっていた。

 

「違う……この文献も違う……。西欧からの医学書は他にないのですか!?」

 

「あるにはあるが、文字が違うのだから解読し切れていないのだ。せめて西欧からの医者がいれば良いもの……」

 

「……ギンから何か策は思いつきますか?」

 

『爺に流行病など分からん。ウズメはどうだ?』

 

『…………いや、思いつく事はないのぉ。妾もこのような奇病は初めて見る』

 

「…………っ!!!」

 

 自分の無力さに苛立ちが募り、霧吟は思わず無益な書物をすべて叩き落としてしまう。その顔には心の余裕などなく、彼女が本来持つ慈悲深さが裏返った悔しさが滲み出ており、かつてないほど余裕がないことが見て分かる。

 

「無辜なる民を救えずして何のための力か……。私には医療の知識を宿せるというのに……!!」

 

『前例がないのでは仕方がないであろう。お前も病にかかる前に一度村に戻っては……』

 

「それで私が感染源となってしまっては終わりですっ!! こうなってしまったら治すしかないんですっ!!!」

 

 苛立ちをさらにぶつけるように吐き出してしまい、ギンは思わず萎縮してしまった。それを察した霧吟は「……すいません」とより一層自分の不甲斐なさを噛み締めて、握り潰すような手つきで散乱した文献を手にもう一度役に立つ情報があるかを調べ直す。

 

「あまり死者の魂と交流しすぎると狂ってしまうぞ。一度落ち着け」

 

「民を守れない自責で狂いそうなんです。落ち着いていられる状況ではありません」

 

「……お前も難儀な性格だ。生き遅れになるのも頷ける」

 

 そう言いながら翼は茶を入れると座敷の上で一息入れた。まるで「自分は休むのだからお前も休んでいい」というように。

 それを察せぬ霧吟ではないはずなのに、彼女は翼を見ないことにして治療法の手がかりとなる物を探し続ける。

 

「何か……何か……っ!! 民を救い出す手段は……っ!!」

 

 希望の見えない心境は明かりのない夜道を彷徨う不安と似ている。一歩踏み込むたびに足音は一つ、また一つと大きく響くのと一緒で、焦燥も秒刻みで募るばかりだ。息をするのもさえ重くのしかかる重責に、霧吟の余裕を忽ちに喰らい尽くす。

 

「今すぐにでも文献を解読できれば、策は見いだせるかもしれないのに……」

 

『……霧吟。儂は妙案を一つ思いついたぞ』

 

 いても経ってもいられず、ギンは妙案という名の出来合いの案を思いついた。それが少しでも希望、あるいは気晴らしになればと願いながら「どんな手段でしょうか!?」と今にも刺し殺しそうな剣幕で問う霧吟に伝える。

 

『……簡単な話よ。お前は名医の魂に触れれば名医となり、剣聖の魂に触れれば剣聖となる。ならばお前も西欧人の魂に触れさえすれば……』

 

「……文献を解読することができる?」

 

『……西欧人の魂がありさえすればな』

 

 ここは江戸幕府だ。鎖国情勢である当世では外交貿易という形以外では西欧人が来ることはない。旅先で死亡して、さらには成仏せずに『魂』のまま彷徨っているという状況を掴むにはあまりにも絶対数が少なくて現実的な話ではない。だから、ギンにとってはこれは話にならない戯言でもあった。

 

「……そうか。……そうすれば解決まではいかないけど、手がかりが手に入る……っ!」

 

 だというのに、聡明であるはずの霧吟はそんな無謀な案に笑った。それは心境の裏返しであり、よほど余裕はなかったのだろう。藁どころか絹にさえ縋りたい気持ちに違いない。それほどまでに霧吟の笑みは疲れ果てた物だった。

 

『……無謀なのは分かりきってるであろう』

 

『お前に言われずとも分かっておる。笑い話にでもしてくれれば良いと思ったがの……』

 

 ウズメとギンは話し合うが、それにさえ霧吟は気づかないほどだ。心中察するに余りある。ギンは自分自身の身体を持たずに力にもなれないことに腹を立てながらも霧吟の動向を見守り続ける。

 

「…………この中で最も血が濃い文献は……っ!」

 

『おい、何故文献を漁り続ける?』

 

「西欧人の魂を探すのは夢物語過ぎます。あまりにも現実的じゃない。ならば少しでも可能性上げるために、九十九神に頼るんです。長年使われた文献なら、西欧人の魂まではいかずとも『知識』だけ宿した文献があっておかしくない……そこから少しずつ言語を理解していけばまだ間に合う…………っ!!」

 

 自分の案に単に乗っかっただけでなく、さらにその先を見据える霧吟の姿を見てギンは驚愕した。既に心は継ぎ接ぎだらけの傷だらけなのに、芯は折れることなく霧吟を動かし続けることに傷ましさを感じるほどに。

 

 しかし、それなら確かにまだ現実的だ。真に欲するのは治療法ではあるが、西欧の文献を読めればそれは分かることだ。『医療の知識』だけでなく『文字の知識』も会得する可能性も模索すれば解決策も見あたることだろう。

 

「これだ……この書物……これだけ『魂』が色濃く残ってる……」

 

 そしてその予測は的中した。数多く手にした文献の中に、霧吟が求める西欧文字を読むための『知識』がそこにあったのだ。

 霧吟は目の色を変えて次々と文献を手にし、一つまた一つと文献を読み込むたびに笑みを溢し、瞳には希望が満ちていく。

 

「読める……読めます……っ。すごい、すごい…………西欧ではこんな医学が……っ!! これなら民を救うことだって…………っ!!」

 

 よほど嬉しいのだろう。食い入るように霧吟は夢中になって文献を読み解いていく。ギンやアメノウズメは西欧の知識はないために、霧吟が口にする一部の単語に対しては理解はできないが、霧吟の反応からして相当に優れた物であることが察せられる。

 

「命を繋ぐ方法……。えっと……ふむふむ……これは芳香療法を使った医療術でしょうか?」

 

『どう言った物なのだ?』

 

「少し不思議な物ですが、陣を書いてある場所に薬膳を投じた粉末を燃やせば患者の身体が元気になるそうです」

 

『本当に意味あるのか〜? それで助かるのなら苦労せんぞ?』

 

「文献通りであれば。他にも……ええっと……『みいら』? と呼ばれる物を製造する時にも芳香療法は使うそうです」

 

『うさんくさ〜』

 

「物は試しです。一つずつ実践していき、最も効果がある治療法を探す…………これまでと変わりませんが、今はこれだけ参考となる物があるんです。きっと今回の感染症に適した処置があるに決まっています」

 

 どんな医療であろうと実行せねば正確な臨床結果が得られないのは事実だ。それが山のように試せるというのなら、時間はいくらあっても足りないだろう。霧吟は意気揚々と文献をいくつか手にし、翼の下へと向かう。

 

「翼様、この文献に載っている治療術を試してもよろしいでしょうか?」

 

「……どうせ八方塞がりだ。試してみる……しか、ないのだろうな」

 

 意外にも後の杉田玄白こと翼は不安そうに言い淀む。ギンにはそれが何を意味するのかよく分からなかった。

 民を救える可能性があるなら良いことではないのかと。前も後ろも真っ暗闇の感染症が蔓延る中、微かとはいえ見えた光が希望であるわけがないとでも言うのだろうか。

 

 だが、ギンは身体を持たぬ身。霧吟を通さねば翼には言葉一つ伝えることさえままならない。胸のしこりはそのまま心の奥底に置いておき、ギンは静観するアメノウズメと共に霧吟の行方をただ見守るだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………知っているだろうか。文献や書物という物は、中身はどうあれ外飾は『本』という形であることを。そして内容はどうあれ本に記載される情報は、本当も嘘もないただ『知識』を詰め込んだ物しか過ぎないことを。

 

 だからこそ、この場にいる全員が見誤っていた。霧吟が手に取った文献は決して『医学書』ではないということに。下手に文字を読む知識を得てしまったことで、『命を繋ぐ方法』という意味を履き違えてしまったことに。盲目的にこれは医学書であると思い込んでしまったことで、この先の悲劇を起こることを誰も想像していなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ——霧吟が手にしたのは『魔導書』であったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「違う……違う……っ! 私がしたかったのはこんなことじゃないのに…………っ!!」

 

 最初は順調だった。治療を施した側から体調が回復していく民を見て、霧吟は喜びに打ち震えて一刻でも早く助けようと三日三晩都を駆け巡った。

 

 しかし、それが最悪な結果を産んでしまった。何故なら霧吟が施した治療術とは、人間が死から回避するために生み出された芳香を使った儀式術——人々を『生きた屍』にする禁忌の魔術だったのだ。

 それも『生きた屍』が純粋なる人間を少しでも齧ることで、同様に『生きた屍』へと変貌させる極めて悪質な感染方法を持つ。

 

 一度産まれた災厄はネズミのように際限なく増え続ける。霧吟だけでも治療を……魔術を施したのは数百人にも及ぶ。それが全員揃って一人でも噛めばどうなる? 一転して規模は千人単位にも及び、その千人が全員揃って一人を噛んで二千人。また噛んで四千人、八千人、一万六千人…………と感染者は加速度的に増え続ける。

 

 そして質の悪いことに、この魔術を解除する方法などなかった。正確にはあるのだが、それは魔術を施されたすべての『生きた屍』を今度こそ本当に屍と化す手段。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな非常な手段が霧吟には取れるであろうか——?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 否、取れるわけがない。ならば『儂』が代わりに斬ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……何故殺した』

 

『これ以上苦しむ前に殺すのが慈悲というものじゃろう』

 

『まだ民を助ける手立てはあったかもしれん! 霧吟は諦めていなかったであろう!?』

 

『だからといって、このまま壊れる霧吟を黙って見ておられるか!? お前は何もせずにただ見ているだけのお飾りなだけであっただろうが!!』

 

 こういう時、魂同士であるギンとアメノウズメの会話は嘘偽りも言葉を優しく包みという遠慮はなくなる。お互いの剥き出しの怒りを向けて、互いを罵り合う。

 

 

 

 その怒りの矛先は果たして『相手』に向けている物だろうか。

 

 本当は何もできなかった『自分』に向けているのではないか。

 

 

 

 

「やめてくださいっ!! 全部……全部全部…………私のせいだったんです……っ!! 自分の力だけじゃ何もできない無力なのに……! こうして無闇に手を出したから…………っ!!!」

 

 しかしどうであれ霧吟はその喧騒を拒む。自分の中で怒号が響き合うのが嫌だからじゃない。自分のせいで、酒を楽しく飲み合うほど心を開いていた互いの関係に亀裂が走るのが我慢できなかったから。

 

 今更どうこうなる問題でもない。一度起きてしまったことは取り返しがつかない。時間は戻ることなく、進み続けるしかない。この悲劇を受け止めるなら罪を背負い、罰を求めて、時の傷跡を忘れないように生き続けるしかない。

 

 

 

 

 

 そんなことは、ただの少女である霧吟にはとてもできなかった。

 

 

 

 

 

 

 彼女は身の丈に合わない刀を弱々しく抱き続け、虚空へと泣きながら祈りを……切望を吐き出し続ける。

 

「神様……お願いしますっ。どうか、どうか……すべてを夢にしてくださいっ……!!」

 

 万能の神様なんているはずないのに。生まれて初めて心の底から、ただただ願い続ける。どうか全てが『夢』であったほしいと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「——なら、その願い叶えてあげましょうか?」

 

 絶望に押し潰される少女の前にある声が届く。その声は男性的や女性的ではない。だからといって中性的でもない。無機質なのだ。

 

 同じ人間が発したとは思えないほど無機質で異様な声。どこかこの事態をほくそ笑む下郎染みた声に、霧吟は項垂れながら首を精一杯上げて視線を合わす。

 

 

 

 

 

 その姿を霧吟は知っていた。何故なら、ある『記憶』で見た人物と瓜二つだったから。

 その姿をギンは知っていた。何故なら、自分が実際にあった人物と瓜二つだったから。

 

 

 

 

 

 ——それはギンが生前出会った刀の商人であった。


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