「攻撃が通らない『理由』じゃなくて『法則』と言ったか……。どうやら戯言ではなさそうだな」
「ええ、そもそもが間違っていました……。貴方が口にしていた通り『地球と人間のルール』に囚われていましたからね……」
その手にある銃剣『ラプラス』を構えながらバイジュウはセラエノにそう告げる。
それを見てセラエノは『笑った』——。
誇るような、慈しむような、蔑むような——。人間という存在を見定める事そのものを楽しむように笑ったのだ。
「来い。私に見せてみろ」
バイジュウは言葉ではなく行動で答えた。ボロボロな身体を強靭的な精神力で奮起させ、セラエノの眉間を切り裂くように振るった。
既にバイジュウは脳の混乱による部位の誤作動には慣れた。ゲームのキーコンフィグを変え始めたように、少々ぎこちない動きではあるが、セラエノ自身はそう動くことはなく、観察するようにゆっくりと動くだけだ。基本的に高速戦闘となることはないのだから、それだけでもバイジュウにとっては十分戦力となる。
しかし命中する事はない。セラエノが動くこともなく、その腕は自分の意思とは関係なくセラエノの顔から逸れて虚空を裂いた。
諦めずに続けてバイジュウは『量子弾幕』を数百個と放ち、360°すべてを囲いながら一斉に射出した。『量子弾幕』はその全ての弾が、バイジュウの中で独立した特殊なエネルギー理論によって放たれるものであり、推進力に火薬も使用していなければ、火力に爆薬を用いる事もない。
故に、その攻撃による結果に爆発などは発生せず、鮮明にバイジュウの目に映った。
それは不可思議以上に不可思議だった——。
逸れる、逸れる、逸れる——。
全弾がバイジュウの意思や思考あるいは計算と呼ぶべき物を宿してるはずなのに、その全てがセラエノには当たりはしない。
そして、重密度で放ったからこそ視認した。
当たっていないのはセラエノだけじゃない。『量子弾幕』同士も当たっていないのだ。
弾と弾同士の計算に間違いはない。途中で運動エネルギーなどが変化する様にバイジュウは施していない以上、弾と弾は確実に『直線』を描く。だというのに、弾はセラエノから明らかに離れた場所であるにも関わらず、互いが互いに干渉するのを逸れたのだ。
その結果を見て、バイジュウは思う。
——これじゃあ当たらないわけだ、と。
「おい、さっきから馬鹿の一つ覚え……。失望させる気か? 根暗女」
弾幕の雨を無傷で乗り切ったことが不服なのか、セラエノは失望でもしたように、いつもの無表情を浮かべてバイジュウを見下ろす。
それにバイジュウも何かしら不服な点があったのだろう。見下ろされながらもバイジュウは不満気に目つきを鋭くしつつも、銃剣の握る力を少し解いて世話話をするように言った。
「……自己紹介が遅れてました。私はバイジュウといいます。…………根暗じゃないです」
「バイジュウ? ……未成年飲酒は良くないぞ?」
「だからそれパイチュウ、もしくはパイチョウです! それ2度目ですよ!? あと、これでも生年月日的には30代ですから!」
「わかづくりー」とセラエノは淡白に言うと「それで終わりか?」と心底つまらなさそうに告げた。
「………今ので確信したんですよ。どういう『法則』で、貴方の世界が成り立っているのかを」
「だから」とバイジュウは前置きし——。
「こうするんです」
と、躊躇なく自分の『両眼』をその指で抉った——。
「————ッッ! ぁぁ……っ!!」
血涙が留めどなく溢れてくる。同時に眼球も零れ落ちるが、実の所そこまで深刻な問題ではない。極めて丁寧に取り出したから視神経のダメージは最低限に収めている。だから無事に帰還できればラファエルの回復魔法さえあればどうとでもなるのだ。長時間続いて視神経が腐敗して死滅しない限り、この目は何度でも蘇る。
だとしても人間が得られる情報のほとんどが視覚から来ている。いくら眼球が潰れようが爛れようが、自分から無くすことに意味はない。自殺行為でも余りにも度が過ぎている。
——しかし、バイジュウにとって今はその『視覚』が邪魔なのだ。
「それでは何も見えなくなるぞ」
「そうでしょうね……。ですが、私だけは違います……。私は五感以外でも外界の情報を得る手段があるんです……」
「直感や霊感といった『第六感』に値する物か?」
「いいえ……もっと確かな物……。私が持つ『魂を認識する能力』……。それは視覚、嗅覚、味覚、触覚、聴覚が例え腐ろうとも機能する能力です」
すかさずバイジュウは斬撃を放つ。視界が閉じる前と変わらずあり続けるセラエノに向けて、情けも容赦も躊躇もなく確信を持って。
しかし、そこまでなら先ほどと状況は同じ——。
セラエノを捉えた斬撃は、今まで通りにバイジュウの意思とは関係なく『逸れた』——。
そこでバイジュウは『視界』を閉じた事で分かる『魂』の流れを感知した————。
——『世界が重くなった』としか言いようがない情報がセラエノの『魂』から発せられていたのだ。情報過多による過負荷がセラエノを中心に『世界』を蝕んでいく。それが『量子弾幕』が持つエネルギー、性質といった要素を全て変質させて、最終的に『逸れる』という結果へと導く。
それは『OS事件』でハインリッヒが考案・開発した『フィオーナ・ペリ』が持つ『世界の概念に干渉する』という形で、意図的に『時空位相波動』を起こす武装と似た現象を起こしていたのだ——。
様々な疑問が募るが、そうであればとバイジュウが打つ手は一つ。なんであれ情報付与による結果を改竄したというのなら、起きた結果にさらに干渉すればいいだけのこと。
バイジュウが持つ銃剣の名は『ラプラス』——。
その銃剣が持つ特性とは『斥力』と『引力』を発生させて、この場にいるエネルギーの力場を干渉させるという物——。
相手が『逸れる』という結果を生み出すというのなら、その結果をさらに再計算して力場を発生させて『量子弾幕』を再操作すればいいだけのこと。
バイジュウは計算を瞬時に終え、セラエノの近くにあるいくつかの『量子弾幕』を力場を操作する事で『横に落とした』——。
「なるほど……冗談ではなさそうだな」
当たった——。
バイジュウの『量子弾幕』はセラエノが被るダイヤ柄の紅白帽子を撃ち抜いた——。
初めての、それもぶっつけ本番の計算ということもあって、バイジュウが予測していた弾道は大きくズレて腹部ではなく頭部に向かったが、それでも今までの完全に『逸れる』という結果を覆す事はできた。
——あとはセラエノが持つ情報の数値、性質などの諸々を見定め、計算を少しずつ合わせれば勝てる。そうバイジュウは確信した。
「……だが視界を潰すだけなら眼を瞑るだけ十分ではないか?」
撃ち抜かれた際に落ちてしまった帽子の埃を叩き落としながらセラエノは問う。編み下ろしていた橙色の長髪は世界を塗り潰すように解け広がり、目には見えないが一層深くなる彼女の異質感をバイジュウは感じ、思わず口に溜まった血と共に生唾を飲み込んだ。
「……眼を瞑るのは、決して『視覚』を失う事じゃない。『瞼の裏』を認識してるだけです。それでは貴方のエーテルを介した攻撃……『ビックバン現象』をまともに受けてしまいますよ。あれは『情報』を叩きつける物だから、視覚だけ封じても防ぐ事はできませんし、視神経はまだ生きてる以上、完全にはいきませんが……威力を軽減させることができる」
「そうでしょう?」とバイジュウが言うと、セラエノは帽子を被り、髪を編み込みながらも「そうだな」と認めるのではなく測るように言った。
「二十点ってところだ。エーテルの炸裂現象……『プラネットウィスパー』は別に視覚だけじゃない。五感すべてを強制進化させる作用だ。人間にとって麻薬よりも劇薬ではあるがな」
「プ、プラネットウィスパー?」
「私が命名した。こういう必殺技みたいなのには名前を付けるのが王道なのだろう? ……まあ、それでも人間は『視覚』が情報の八割を占めるというし、単純計算であれば威力は半減以上はしてるだろうな」
「とはいっても」とセラエノはその手を翳し、星を模っているはずなのに、不定形のまま変化し続ける杖を出現させた。
「『半減』される程度なら、そもそもの火力を『倍増』すればノープロブレムだ。別にあの程度の情報量なんか、空気と一緒でごく自然的にあり触れた物だからな」
「なら——!!」
セラエノが構えると同時に、バイジュウはラプラスの力場変化を利用してオリンピック選手を凌駕する速さで駆けた。
『視覚』は封じられているが、バイジュウには『完全記憶能力』があるおかげで、必要以上に精神力を使うが盲目でも部屋の形や、自分の位置、それに伴う歩幅などによる可変した際の場所などは感覚である程度は把握できる。
問題は『逸れる』というセラエノの世界にどう干渉するか——。
ラプラスを利用しても流石に限度がある。手を増やすには、それ以外の方法で攻撃する算段が必要になるのだ。
その答えは単純だった。バイジュウは目の前に転がっているであろう食事処に飾られる横長テーブルや椅子を思い出す。
「であれば……『逸れて』も無駄なほど超高質量をぶつければいいだけのこと——!!」
銃弾程度の小ささか、斬撃のような線が薄い攻撃が無理なのであれば、大きくて太い攻撃をぶつければ可能性は見出せる。
バイジュウは『量子弾幕』の展開と射出を繰り返しながらも、ラプラスを振るって斥力と引力の力場を乱立させる。その間に空間に干渉すれば、どんな物質であろうと運動エネルギーや地球の重力さえも歪ませ、実質的な無重力状態にも近い状態となる。
「なるほど。知恵を振り絞るな……だが、まだ足りない」
「だったら——!!」
バイジュウの力場と、セラエノの世界——。
それら二つの影響を受けたテーブルや椅子は無重力状態で乱舞する。ホラー映画にある『ポルターガイスト』のように物は上に落ちたり、下に飛んだり、形容し難い怪奇現象のオンパレード。それはもう物がではなく、世界そのものがおかしくなってるような異様さだ。
しかし、それでも足りないというのなら、今度はバイジュウはフロアの『壁』と『柱』の一部を切り裂いた。
バイジュウには様々な知恵がある。それはどんな分野であろうと関係なく、例えそれが建築業の知識だとしてもバイジュウは会得している。故にどれほどであれば建物が崩壊しないかの線引きを見分ける事はできる。リフォーム業者が躊躇なく壁を破壊し、張り替えるように。
バイジュウは四方を埋める壁の『四つ』と、そのフロアを支える柱の計八本の内である『三本』を切り裂いてセラエノへと叩き落とした。
だが、それさえもセラエノは逸らしながら避ける。柱は不自然に右や左に移動してセラエノを避ける余裕を生み出し、壁は絶妙なタイミングで襲来し、まるで彼女が歩く先こそが足場であるように踏み出す。
壁は崩落し、柱も折れ、しかし残骸はセラエノの世界とバイジュウの力場が周囲を侵食していくことで、地に着くことなく空中で踊り続ける。
二人の周囲は既に異次元同然の混沌を極めていた。ある意味ではバイジュウは視覚を失っていて正解だったかもしれない。
こんな世界そのものがズレにズレて、輪郭さえ定まらない異空間と化した物は見えないことが。
「まだまだァー!!」
バイジュウの手を止めずに猛攻を続ける。一度でも隙を見せて『ビックバン現象』改めて『プラネットウィスパー』を放たれたら、今度こそ再起不能となるダメージを負うからだ。簡単に威力を『倍増』できるのだから、それはきっと十倍にも百倍にも急激に跳ね上げることができるに違いないのだから。
だが、このままではジリ貧だ。
だけどバイジュウは既にそれも想定内でもある。
準備は完了した——。
既にこの空間自体に壁、柱、テーブルから椅子まで全てが空中で乱舞して、着実にバイジュウが真に狙う『目的』への布石となっている。
機は熟した——。
瞬間、セラエノの視界からバイジュウが消えた。漂い続ける障害物を身を隠した隙に、セラエノの視線から逃れたのだ。
セラエノはバイジュウやソヤと違って他者を感知するような能力もなければ、レンみたいに危機感もないため焦燥に駆られて突然の閃きなども思いつかない。ただ無人となった先を見つめることしかできない。
故に思考は常に冷静に——。
セラエノは可能性を一つずつ潰していく。
左を見る——。誰もいない。
右を見る——。姿は見えない。
後ろを見る——。女は見えない。
改めて前を見る——。いるはずがない。
「……まさか?」
前後左右でないとしら、残るは『上』のみ——。
セラエノは検討がついて上を見上げるが、その思考の冷静さ故の遅さが仇となる。その時には既にバイジュウは行動を終えているのだ。
眼前には既に——。
「ご存知……シャンデリアですッ!!」
絢爛豪華で装飾過多な超大型シャンデリアが、天井さえも巻き込んでセラエノの頭上に叩き落とされた。
フロアの天井は今まで漂わせていたテーブル、椅子、壁、柱、他にも燭台や鏡や銀食器などありとあらゆる物を巻き込んで下敷きにしたのだ。
「ぶっ潰れろォォオオオオ!!」
——これこそがバイジュウの真の狙い。
——『空間』そのものに『物体』を溜め込んで包囲網を作り、四方八方360°逃げ場なしの状況で、本命である天井落としで回避不可能な一撃を与えること。
相手が圧死する不安はあったが、ヴェルサイユ宮殿の建築材料というか古来よりの建築物は大体が大理石でできている。ピンキリではあるが、そのほとんどは従来通り『柔らかく割れやすい』のが特徴だ。
そのような材料なら、例え脳天直撃コースであろうとも打ち所さえ悪くなければ、瀕死とまで行かなくても建材の物量で身動きが取ることはできない。
バイジュウからすれば、形はどうあれ拘束できれば良いのだからこれ以上ないほどの成果なのだ。
対象となるアレンに近しく、謎多き人物であるセラエノを無力化できることは——。
———-そう思っていたのに。
「う、動かない……っ!?」
崩落による粉塵が晴れたところで、バイジュウは違和感に気づいた。
——動かない。身体が一ミリたりとも言う事を聞かない。
——動かない。周囲に柱や壁が『空中に固定された』状態のまま。
——動かない。バイジュウの内蔵器官すべてが停止している。
——しかし不思議なことに意識だけは健在だ。
バイジュウはその能力故に身体を動かすことなく、自分の背後に誰かがいることに気づいた。
そこにいたのは————。
「私が『時』を止めた——。潰される直前にな……それで脱出した」
「やれやれだぜ」と『無傷』で佇むセラエノの姿があった。服に付いた塵や埃をはたき落としながら、セラエノはその身動きできないバイジュウの首筋にある黒髪を撫でた。
「トリートメントはしているか? 安心しろ。慈悲で喋ることぐらいはできるようにしてる」
「…………何言ってるんですか?」
「身動きできない中でこんな事を言われるのは中々に辱めだろう。ここから先、私がその左手を切断してしゃぶろうと、頬を舐めて汗の味を確かめようと、ディ・モールトと叫びながら相手の性的嗜好を探ったとしても…………お前は抗うことはできない」
「まあ、私にそんな趣味はないがな」とセラエノが吐き捨てると、バイジュウの黒髪から手を離して話を再開させた。
「これは『エーテル』が起こす現象の一端だ。情報を与えて相手の脳をパンクさせるなんて、運搬トラックの積載量を超えたら壊れるのと一緒で当然のことさ。『エーテル』は世界に注ぐ事で、強制的にお前達が言う『時空位相波動』とかいう物を空気のように生み出せる。生み出された時空位相は世界の齟齬となり、お前を『こちらの世界』と『あちらの世界』で挟み込んで動きを時間諸共に止めたのさ」
「では……これは『私』ではなく『世界』そのものに与えた末の現象と……!? 貴方は今もこうして動いているのに……!?」
「私達にとって『時間』や『空間』や『物体』と言った物は有っても無くても一緒だからな。例え今この場で私が心臓、脳みそを摘出されても、この肉体がスクラップみたいにざっくばらんにされても、時を止めるどころか逆行させて赤ちゃん以前にさせようとも、私は確実に『情報』として存在し続ける。それが時止めの世界でも自由気ままに動ける理由さ」
「私…………達?」
「ああ。私はプレアデス星団の観測者……俗に言う『宇宙人』とかそんな存在だと思ってくれて結構だ。『セラエノ』なんて名前も、私の識別名称において人間が最も発音しやすいから名乗ってるだけだ。お前達の仲間にいるのも、私と同じでそういう存在だ」
——何を言っているのか、バイジュウには理解できなかった。
自分達の中に、セラエノと同様の存在がいる——?
「? ……?? ……気づいてないのか? お前達の仲間に、私と同じ『宇宙人』がいることを」
「それは……シンチェンやハイイー……それに星之海姉妹の事でしょうか……?」
思い当たる人物の名前をバイジュウは口にする。それに対してセラエノは相変わらず「?」としか言いようのない無表情ながらも疑問に満ちた顔を浮かべながら言った。
「シンチェン? ハイイー? …………ともかくあの姉妹か。あんなぐうたらは知らん。マジで知らん。ネットに動画あげとるパリピは知らん。あいつら本当に何やってるんのか……」
「で、では……いったい誰が……?」
バイジュウには皆目検討がつかない。なにせバイジュウはもうセラエノの『魂』という、ある種『宇宙人』の在り方を既に知っている。『人間』か『宇宙人』かの違いなんて、『魂』を見比べれば一目瞭然だ。
だが、思い返してもそんなセラエノと似た存在がいたなんて、シンチェン達の他に思い当たる節がない。それ以外の誰かを強いてあげるなら『守護者』という存在であったギンやハインリッヒくらいな物だ。
「無理もないか。あいつは『貌がない“故に”千の貌を持つ』存在……人間が口にする『神話』や『属性』に這い寄る事で、その存在を巧妙に擬態……あるいは一体化する奴だからな」
「……だとしたら、なんでそいつは私達と共にいるの……? 誰にも気づかれずに行動する以上、理由があるはず……っ!」
「動き出した理由は明確には分からんが……。ある日『門』の安息を脅かす存在が出たという情報を私が得てから、あいつは行動を始めた。きっとそれに起因しているだろう。何かしらの心当たりはあるか?」
『門』の安息を『脅かす存在』——。
それを聞いてバイジュウは戦慄した。何故ならバイジュウ達にとって『門』という存在は切っても切れない縁があるからだ。
それは2037年のクリスマス前のこと——。
レンがギンと共に『ヨグ=ソトース』という存在を切り裂いたことは記憶に新しいし、それは異形だけに偉業を成した瞬間だった。誰にも手を出せず、ハインリッヒでさえも抗い難い存在を、たった一度とはいえ退いたのだから。ハインリッヒも子供みたいに目を輝かせて「流石は私のマスター……!!」と惜しみない賞賛を送ったほどに。
しかし、それを成したからこそ『門の安息を脅かした』というのなら——。
あの『門』は再び襲来してきたのだ——。
恐らく今度は『門』以外の存在を連れて——。
それが本当の姿形を知らないまま、バイジュウ達に溶け込む『仲間』の一人としている————。
「……だ、誰なんですか……。いったい誰が……貴方が口にする『あいつ』なんですか……?」
何かが——。
何かが、着実に来ている——。
這い寄るように狂乱を、混乱を、騒乱を——。
それらをすべてを入り混ぜた『混沌』を招く存在が——。
「そいつの名は————」