今回は設定的に非常に重要な部分が多く、お話としては20節以上になり、また現在第11節まで毎日更新予定になりますので、しばらくお付き合いくださいませ。
第1節 〜荒野の果てから〜
——旧約聖書『創世記』第三章にて。
天地創造の後に唯一神である『ヤフウェ』によって最初の人間である『アダム』は創造された。
アダムが誕生した地である『エデンの園』の外は草木など一切生えてはいなかったが、アダムがいる『エデンの園』ではありとあらゆる種類の木や果実があり、そこには『生命の樹』と『知恵の樹』も存在していた記述されている。
アダムは主なる神にこう言われていた。「決して知恵の樹に宿る果実——『善悪の知識の実』という『禁断の果実』を口にしてはならない」と。
アダムは主なる神の御言葉に従い、決して『禁断の果実』は口にせずに過ごしていた。
やがて、その『エデンの園』にもう1人の人間が創造された。
その人間の名は『イヴ』。人類初の女性の名でもある。
『イヴ』の誕生について詳細に記した文献は少ない。『アダム』と同様に主なる神に創造されたという話もあれば、『生命の樹』に宿った果実が人の形になったという話もあれば、果てには『男性』であるアダム自身が産んだという説も出るぐらいには記述が少ない。
ともかく人類初の男女である『アダム』と『イヴ』はこうして誕生された。だが、それは始まりの始まり。しかも急転直下の悲劇への始まりだ。
女は楽園に突如として現れた『蛇』に唆されて『禁断の果実』を男と共に口にした。そうして初めて人間には『知恵』が芽生えた。同時に五感という物を意識し始め、そこで生まれて初めてアダムとイヴは自分達が『裸』であることに気づいたとも言われている。
だが『禁断の果実』を口に代償は重かった。
五感を得たことで女は『妊娠』と『出産』の痛さを知り、また『地』そのものでもあるアダムが口にしたことで、大地そのものが呪われて豊かな楽園は枯れ、汗を流して動かなければ飢えて死ぬほどに大地の実りは減少した。
それを知って怒り狂った神は、せめてもの慈悲に衣を与えて2人を楽園から追放した。
これが後にイギリスの17世紀の詩人『ジョン・ミルトン』氏によって書かれた『失楽園』の基にもなるが、これはまた別の楽園追放のお話だ。
さて、こうしてアダムとイヴは楽園から追放された。
だがここから先の2人の記述は非常に少なかったりする。2人の行く末を明確に書かれた物はほとんどないのだ。
では、2人はそのあとどうなったのか。
それは想像に任せるほかない。だが、単純な話として欲深き人間が果たしてその身一つで荒野に放り出された時、そのまま死を覚悟するだろうか。
否——。人間の生は執念深い。
きっと2人は新たな楽園を目指して足を進めるだろう。道の先に何もないというのなら、新しい道を作ろう。人はその底なしの欲望を時として『開拓』と呼ぶほどに生き汚いのだ。
少年少女は、果てなき荒野に足を進める。
その先には自分達が求める楽園があると信じて。
それこそが人間のしぶとさだ。
——神様如きが、人間の歩みを止められるはずがない。