クロス神座廻り

終焉神座（下）

「神座」

それは人類の文明が極限までに発達し、ある人工物を創った結果、顕現した神の領域である。

それは宇宙の中心。

それは全ての事象。

それは支配の領域。

魂の産まれる原初の混沌。

宇宙の総てを支配する領域であり力。

森羅万象の根源であり、神がいるべき頂上。

その神座は人間が辿り着ける場所。

人の祈り、願い、渇望……。

強い意思と己ではなく他を変えたいという方向が座へ繋がる切っ掛けとなる。

神座に至れば宇宙と合一する。

全は己であり、己は全である。

己の祈り、願い、渇望、気質を持って座を染め上げ、座の理を支配し、理を決める。

その感情が神座の法則と人間の在り方を決定してしまう。

その神座を終わらせるには違う人間の違う渇望による神座の交代以外は存在しない。

それを永延に永遠と繰り返す。

さて、ここはどこだか分かるだろうか？

ここはどこでもないどこか。

神の座とは違う別の領域。

神座が全てを支配する領域ならば、

ここは全てを観測できる領域。

すべての神座を記録している。

どういう訳か、その領域に干渉し見ているものが存在する。

その記録を見て、歴代の神座の神の像を彫り、信仰している。

さぁ、歴代の神の座を廻ってみよう。

善の法則も悪の法則も、

善の神座も悪の神座も、

善の渇望も悪の渇望も、

その理、その座、その真実の総てを知ろう。

その者、神座の歴史において最悪の存在であるが同時に慈悲深い存在である。

神座の最悪、それは、宇宙の終焉、生命の終わり。

今代の座はそこに至った。

しかし、それはその者の責任ではない。

火を継いだ初代による呪いのせいだ。

初代から今代まで那由他の年月を同じ渇望と理を流出させ、座の力を破綻させる。

人を消耗品として使い、消耗させるだけの座、そのような座に未来などない。

故に火の無い灰は渇望した。終焉を……

この神座を終わらせたいと……

幾度かあった「生きたい」「延命したい」以外の稀な覇道。

それは同じ渇望が座を交代させ、座の深度だけをより最奥に沈める今代の座により交代を阻止される。

しかし、その者の渇望は違った。

願いが、祈りが、執念が―――。

歴代の座の神と比べても化物としか形容できない神域の念を超えた渇望。

「死にたい」という求道の祈りは廃絶の色を帯びた覇道へと化す。

即ち、「神座を終わらせたい」

それは王の化身を殺して具現化する。

その疲弊した世界はその瞬間に初めて安堵しただろう。

しかし、その者は信じていた。

廃絶の祈りを具現化したその者は、いつの日か、また火は灯るだろうと信じていた。

火が灯り、新しい命が芽生え、神座などない世界を創生するだろうと。

信じて、神座に終焉をもたらした。

これぞ、その者の理、その者の座、その者が背負った真実の総てである。

「我が太極の名において歴代の天を凌駕せん」

その宣誓と同時に求道神は特異点へ潜っていく。

魂を同調させ、強大な存在の元に奥へ奥へと掘削していく。

その求道神はただ、歴代の神々へ興味だけで座へと潜行した。

求道神は空白地帯に足を踏み入れた。

無色透明、限りない白、もしくは、限りない黒。

これはまさに極限まで透き通った真水。もしくは無菌の空間。

人の考える無という概念体現した空間、されど何もないが故に如何なる様にも発展する多様性を有する。

底の見えないこの世界は常人には耐えきれない。

砂漠における一粒の砂。

大海における一滴の雨水。

森林における一枚の葉。

人間における一つの細胞。

常人がこの空間にいても何も為しえない。それどころか全体における一部となり、自我を失うだろう。

だが、それはあくまで凡夫の都合。ある一線を超えた場合、この場は神世界の芽へと転身する。

すなわち、太極の保有。

現世界を丸ごと塗りつぶすほどの覇道を得たものに限り、この空間に活動を赦され、理を流出―――流れ出すことが出来るのだ。

されど色は一色のみ。神座の席は一つ。座るのは一人。両雄は並び立つことはできない。

今、歴代の神座を見ることが出来るのはその者が永久不変の求道神であるからだ。

自らの外殻をかつてないほど強固に編み上げ、変わらない不変となり、絶対の揺るがない己の自我を持って神座へと深く沈んでいく。

自己を保ち続け、やがて行き着いた先に―――瞬間、旧世界の残照が―――私という求道神を歓迎した。

「これは―――」

よくぞ来た。これが救いだと唸りを上げる。

それは歴代の神たちの渇望。

それは旧き神々の祈り。

それは人々が求める変わらない不変。

これはかつて世界を席巻した太極が流出した姿だった。

「そういう仕組みか、理解した。これが座にいた者の達した深度か」

求道神は深い敬意と共に理解する。相手の人格ではない。善悪ではなく座を手にした者たちの純粋なまでの祈りの強さにだ。

「交代か、闘争か、歴代の神々によるが、その残照、残滓というわけか」

覇道の流出による座の交代は戦い、次代が勝てば基本的にはより強大になる。

されど、只交代すれば、その限りではない。

ただ、どちらでもその残照、残滓は残り、次代へと託される。

「おもしろい」

求道神は笑う。歴代の神々を知りたい。その思いは不変。

強大な渇望の覇道の攻撃に対し、強大な不変の求道の防御で対抗する。

歴代の神々の座の理の在処、如何なる渇望によって流出したか、己を保ちながら解析する。

「まず、強く感じたの想いは〈終焉〉」

「本来ならば想定されない、神座の交代が永延に同じ祈り」

「それは神座の想定されない摩耗という概念が起きた」

「あらゆる神座には末期の時代には交代がおきて、神世界が創造されるが、これは違う」

「同じ世界が那由他の年月をかけて永延に摩耗する苦痛の世界」

「人が死なない。生き返る。特殊な方法で傷を癒すことは可能であるが、そんなもの何の意味がある？」

「斬られ、焼かれ、微塵となっても死なない。老いて病にもかかる。記憶は摩耗し、心が壊れる」

「己が何者か忘れ、只々、感覚だけが残る。骨となっても感覚は残る」

「終わりたい」

「この世界の全ての者が願う祈り」

「その祈りの集結が、最悪の覇道神を生み出した」

静かな言葉と共に理解が溢れる。強大な想いに屈さずとも遥かに、求道神である私を凌駕している歴代の座。

しかし、それはこれまで理解していなく、分からなかったからだ。

ならば、無理矢理にでも型にはめ、理解する。それが解釈違いだとしても、とりあえず名をつける。

ゆえに―――

「この神、この座の名をつけるならば―――火継」

「火継の英雄―――火継終焉地平」

「真の姿、ここに得たり」

姿を捉えることによりこの座を眺めることが出来る。

これが座の潜行方法である。

求道神は―――私は目をつむる。

優しい闇が全てを包む。

「始まりの火が消えていきます」

「すぐに暗闇が訪れるでしょう」

「そしていつかきっと暗闇に、小さな火が現れます」

〈まだ、私の声が聞こえていますか？〉

原作 ダークソウル

神の名は「終焉」 本名は「火の無い灰」

元となった願望は「神座を終わらせたい」

座の名は「火継終焉地平」

座の理は「神座の終焉」

座の治世　なし

座の風景　薪に座る火の無い灰

解説

これにて神座の歴史は終わりました。

しかし、ダークソウル３のエンディングでいつか火がまた灯ることを示唆しているので、神座と関連付けてこの作品を作りました。

また、小さな火が現れたら、それは神座とは関係ない新しい世界でしょう。

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感想、お気に入り、評価、活動報告があれば幸いです。






長い間、読んで頂きありがとうございます。

これにて、この作品は一旦完結しますが、おそらく、視聴者様からの神座にふさわしい存在を紹介してもらっていると思うので、暇なときに書いて続けると思います。

では、またいつか会う日まで。