完全にラブコメになりましたわ。
《第3部隊》
それは、クレイの所属する、軍のひとつの部隊の名前である。
そこは、軍の中でも《異端》として扱われてきた。
と言うのも、国法の第12条・銃使用禁止を彼らは
それだけ上層部からの信頼も厚いのだ。
「信頼ねえ…」
「どったの、隊長?」
クレイの呟きに、隣にいた少女が首を傾げる。クレイはため息をついた。
「いや、何でもねェ。…で、ミゼル。目標についたが、情報頼む。」
『了解です。』
クレイの声に、メンバー全員の耳の無線から声が出る。
『ひとまず、相手組織の人数は34人。根城の建物は二階建てのコンクリ作り。部屋自体は多くないですが、中の部屋7つに大部屋が2つ。』
「副長。武器の情報はありましたか?」
『ちょっと待って。…武器は旧式の猟銃とナイフ。情報だけならそれだけらしいけど…』
「まあ、他の物も持ってるでしょうねえ。」
「だな。そこは各自対応ってことでいいなァ?」
「はーい」
「了解です」
「了解。」
遅れた。ここで人物紹介と行こう。
まず最初にクレイに反応した少女。
黒髪を右側でとめた、青い目をした少女。
名前はユキナ・アズマ
出身は東洋。
次にミゼルへ武器の情報を求めた青年。
藍色の髪に、黒く細い縁の眼鏡男子。
名前はシン・アンドリュー
超真面目。
そして、最後。
長い赤色の髪に、少し暗い赤い目の女性。
名前はカレン・キャンベル
いわゆる大人の女性。
「さて、おめェら、武器の調整はちゃんと終わってるか?」
「もっちろん」
「愚問ですね。」
「ええ。」
三者三様の、しかし同一な答えに、クレイはニヤリと笑う。
「じゃ、こっからは分かるな?」
それには、3人とも笑みで答える。
「掃除の時間だ。」
「おじゃましまーす」
「おいユキナ、あまり大声を出しては近所迷惑だろう。」
「どこに配慮してんだテメェは。」
「真面目ねー♡」
まるで緊張感のない突入。
それと同時に、最初の横の部屋で声がする。
「おい、誰だテメェら…」
ダァンッ!!
クレイの、引き抜かれた銃口から発射される弾丸。
それは見事に男の頭を貫く。
横にいたもう1人も慌てて銃を構えるが、その時には既にカレンの弾丸が発射されていた。
「がはっ…」
「あ、ずるいよ2人共!抜け駆け禁止!」
「早い者勝ちよぉー」
「こういうのは後出しの方が強ェんだよ。」
そう言いながら、進む足はとめない。
「大丈夫だユキナ。どうせさっきの銃声でゴキブリ共は寄ってくる。」
「それもそっか。よーし!みんなで競争だね!」
「する気もねェし、するメリットもねェだろ。」
「一応戦果は上がって金は貰えますね。」
「あら、私はお金好きよぉ。イケメン君にあげるお金が増えるわあ。」
「ボクも隊長とのお出かけで使うお金増えるなら大歓迎!」
「お前と出かける予定はねェよ。」
そう言いながら階段を上る4人。
その上に3人の男が立ちはだかる。
「止まれ!止まらんと撃つ…」
ダァンッ!ダァンッ!ダァンッ!
「それ言う前に撃ったら?」
脳天を撃ち抜き、笑顔で告げるユキナ。
屍をなんの動揺もなく飛び越える。
「未だにあんな脅しが効くと思ってるんですかね?」
「この組織下っ端だから俺らのこと知らねェんだろ。にしても不用心だがな。」
「ていうかこいつら殺していいの?」
「情報取るために1人2人は生かしとけ。あとは始末しろ。」
「りょーかいっ!」
「分かりました」
「分かったわぁ」
4人の前に2つに分かれた通路が現れる。どうやらこの先に2つある大部屋があるらしい。
「右か左か。2択ですか…」
「多分どっちかにボスがいるんだろうねー…いた方が給料アップ?」
「まあ、戦果としては上がるんじゃない?」
「どうでもいいだろンなこたァ。…俺は右に行く」
「じゃ、ボクも。わーい隊長と一緒〜」
「やめろ暑苦しい。」
「なら、俺とカレンさんは左に…」
「あら、シン君にエスコートされるの?良いわねー。」
「いえ、一本道ですが…一生懸命やらせてもらいます。」
「うへぇ、相変わらずクソ真面目。」
「君はもう少し真面目にしろ。ユキナ。」
「いいから行くぞォ。いいか、ボスは白髪でくせっ毛跳ねててグラサンのやつだ。そいつとその横にいるやつは殺すな。」
「「「了解」」」
彼らは、人を殺すことに、躊躇しない。
というか、躊躇するような人材はその部隊ではやっていけないのだ。
彼らがこなす任務の標的は、その全てが《薬》の売人や過激な組織などの《裏組織》。つまり、人を殺すことをなんとも思ってないヤツら。
そう、躊躇ったら、《殺られる》。
だから、躊躇うものはいられない。
この部隊には、先の戦乱で一定以上の功績をあげたものが配属される。
だが、その者達の中には、人を殺すことで錯乱した者や、人を殺しすぎて兵役を退いた者達もいる。
だからこそ、自然とこの隊は少数になり、今のこのメンバー達に落ち着いているわけだ。
ガヤガヤガヤガヤ
街中の酒場。
賑わうそこで席に座る、4人の男女。その中で、赤髪の女性がグラスを傾けた。
「ブハー!!」
「ちょ、カレンさん…飲み過ぎですって…!」
「やー!仕事の後の1杯は最高だねー!!」
「でーたよ、この酔っぱらい。」
「あんまり飲みすぎて、明日に持ち越さないでくださいよ、カレンさん」
「もー、ミゼル君も真面目ねー。良いじゃない、こんな日くらい。」
「いつもそう言ってるじゃん。」
「今日思いっきり平日だしな。」
「明日普通に仕事もありますからね。」
「んもう!釣れないわね三人とも!」
「あーあー…こんなおばさんとじゃなくて、隊長と飲みたかったなー…」
「誰がオバサンよ、このガキンチョ!!」
「ムカッ!ボクはもう20歳だよ!!三十路の呑んだくれ!!」
「なんですってキィー!!」
「騒がしいなぁ…」
避難した2人の片方。ミゼルはそう言って笑う。
「だいたい飲みに来た時はあんな感じですけどね、カレンさんは。」
それにもう一度笑うと、ミゼルはポケットから棒付き飴を取り出して、口に咥える。
「…副長、いつもそれ口に入れてますよね。好きなんですか?」
「んあぁ?いや、タバコの代わり、かな。禁煙してから、どうも口が寂しくてな。」
「結婚してから、やめたんでしたね。」
「ああ。嫁さんも妊娠してたし、いいヤメ時かなって。」
「子供、何歳でしたっけ。」
「7歳。俺が18の時にはもう妊娠してたからな。俺の誕生日の前の月に産まれたんだ。」
そう言って夜空を見上げるミゼルの横顔は、何処か大人びたものがあった。それこそ、シンと5つしか違わないのに。
「どした?」
「…いえ、なんでも。…そういえば、隊長は相変わらず飲みに来ませんね。」
「ま、あいつはあいつなりに気ぃ使ってんだよ。」
「それは…俺たちにですか?」
「それもあるし、国民にもだよ。」
ミゼルは、まるで煙を吐くように、飴を取り出して息を吐いた。
「あいつの大戦での功績は、それこそ他と比べても圧倒的だった。兵士としての役割は十二分に果たしてる。…ただ、軍はそれを利用した。」
「圧倒的な戦果を上げ…凄まじい数の人間を殺したことを国民に晒すことで、《軍》への恐怖を、《人》への恐怖に急転換させたんだ。」
「それによって、軍部は未だ讃えられているのに、《1番の功労者》は未だに日の目を見ていないわけですね。…発想がクズすぎる。」
「同感だ。…ただまあ、クレイ自体はあんまり注目されんのはいやらしいから、あいつにとっちゃ結果オーライなのかもな。」
「…だといいですけどね。」
11月の秋空の下。
もはや秋から冬へと変わるこの季節。
クレイはゆっくりと道を歩く。
「さっむ…」
ポツリと呟き、周りに誰もいないまま、上着にくるまって、しかし急ぎもせず歩を進める。
今や時刻は8時過ぎ。
いつもは活気づいている通りも、露店はしまっているためいつものような活気はない。ただ、酒場の前を通るとかなりの音量のどんちゃん騒ぎが聞こえる。
「…」
ああいうのは、2回だけ経験したことがある。
軍部に入りたてのころ。まだ軍の奴らが俺のことをあまり知らなかったころ。
絡みがウザかったのもあるが、そこそこ楽しかったのは、今も覚えてる。
ただ、その後は、誘われる事どころか近寄られすら無くなったが…
「だァー、やめだやめだ!」
そう言って自身に出てきたよく分からない感情を切り捨てる。
この道を選び、あの戦場に赴いたのは、誰でもない彼の決断なのだ。なら、後悔することほど惨めなことはない。
やがて、彼の住まう家に着く。
その家の電気は、点いておらず。
そしてその光景に、クレイは小さくため息をついた。
玄関の電気をつけて、鍵を閉める。
やがて、近くの扉から1人の少女が姿を現す。
パタパタとスリッパを鳴らして、少女は近づく。
「おかえりなさい、クレイ…」
「あァ。悪ィ、遅くなった。」
「ん…ご飯、出来てるよ?」
「おう。」
そう言って、クレイは腰を下ろして靴紐を解いて靴を脱ぐ。
「ああ、そうだ。
「…?なに?」
「お前、また電気付けてなかったじゃねェか。それに、ドアの鍵も閉めてなかったし。」
「あ…ごめん。忘れてた…。」
「ったく、気ィつけろよな。俺だっていつも助けに行けるとは限らねェんだからな。」
「ん…」
そして、サフィはゆっくりとクレイの持つ手提げカバンを持ってリビングに戻りかけるが、ピタリと足を止めて、クレイを見た。
「アァ、どうした?」
「…助けてくれるの?」
「何が?」
「…私が困ってたら…クレイは、助けてくれるの?」
キョトンと。
首を傾げて、聞く彼女に。何処か羨望の眼差しにも似たそれを向けてくる彼女に。
クレイは少し黙って、軽くため息をついた。
腰を上げて彼女に近づいて、ポンと頭を軽く叩いて、言う。
「俺ら軍人ってのはな、相手がどんな野郎であろうと《善良な一般市民》を守らなきゃなんねェ。そこに血縁関係なんてもんは関係ねェし、老若男女なんてもんも勿論関係ねェ。」
そしてわしわしとサフィの頭を乱暴に撫でる。
「お前が《善良な一般市民》で居続けるなら、俺らはいつだって助けてやるよ。」
クレイの言葉に、一瞬驚いた顔をしたが、やがてサフィは少しだけ笑う。
「…うん。」
「…ようやく笑ったな。」
「…ぇ?」
「お前と会ってから2週間。クスリともしなかったくせによ。まあ、相変わらず目は死んでるけどな。」
「…そう?」
「まあいい。とりあえず飯頼む。腹減ってしょうがねェからよ。」
「ん。分かった。」
頭を掻きながら歩くクレイをパタパタとサフィは追いかけた。
すみません、少し路線変更してしまいましたが、出来るだけお付き合いお願いします。
もうしないんで。絶対。