「データですって?それはどういう意味……?」
「あんたがここへ来た事は監視カメラで認識していたからな。すぐに配下の者に調べさせたのさ。スカウターを使ってあんたの戦闘値をな」
「!」
彼女は思い出す。
紫鏡の城に到着して早々パンテオンエース達と遭遇した事を。
「まさか、あいつらが私の事をサーチか何かで調べていたってわけ?」
「そうだ。まあすぐに気付いたあんたにやられちまったのは誤算だったがな。まさか強化版パンテオンであるエース達があそこまで早く倒されるとは思わなかった。女とはいえ流石は四天王だ。だが、ちゃんとデータは取れたぜ。うちの組織のスカウターは超速で対象のパラメータを解析・サーチ出来るからな」
やっぱりあれはただの望遠レンズではなく、何か特殊な機具だったんだ、と内心でレヴィアタンは口惜しむ。
あの機具にはおそらく通信機能が付いていたと思われるため、あの時いち早く壊しておくべきだった。
だが彼女はさして気にとめずそのまま放置して立ち去ってしまった。
「あれがスカウターだったとは思わなかったわ。って事は、あいつらは私のパラメータを勝手にサーチしてたってわけね」
「それで合っている。既にあんた、妖将レヴィアタンのデータは取得済みだ」
「よくも無断でそんな事をしてくれたもんだわ」
キッと彼女は男を睨む。
「くく、そんなに怒る事か?俺達は敵だぜ。こちらが有利になる事ならするに決まっているだろう」
「そうだったわね。あんた達は私の敵だったわ」
今更ながらそれを明確に認識し、彼女はため息をついた。
そう、ここの連中はギラテアイトを無断で保有し密売などをしている者達なのだ。
正々堂々、などというやり方をするわけがない。
「あなた、何か戦闘馬鹿に似てる気がしたけど違ったみたい」
「あん?戦闘馬鹿?」
「こっちの同僚の話よ。そいつは馬鹿だけどこんな卑怯な真似はしない奴だったわ」
彼女は戦闘馬鹿ことファーブニルの事を思い出す。
彼は暑苦しい漢だが、戦う際に決して卑怯な真似はしない。
それと目の前の男を比べると、両者には明確な違いがあると彼女は思ったのだ。
「ああ、そりゃもしかして“闘将ファーブニル”の事か?」
「さあ、どうかしら」
「確かに奴は戦闘スキルに秀でているな。何せ戦闘値があんたより10000近く多い78000もあるんだから」
くく、と笑って男が言った。
ピクリと妖将が反応する。
「何ですって…?」
「あいつは強いよ。パワーと火力には目を見張るものがある。流石に奴を相手にするにはこっちのキャパじゃしんどい」
「私より1万近く多い…?何でそんな事があなたにわかるのよ」
何故かファーブニルの戦闘値まで知っている男に彼女は怪訝な顔を浮かべた。
「ああ、言っていなかったな。他の拠点にやってきた四天王達も同様にしてスカウターでデータを取らせてもらったのさ」
「……!まさか、」
「信じられないか?まあお前はその目で見たわけではないから仕方あるまい。俺がでまかせの嘘を言っている可能性もあるからな」
「…………」
レヴィアタンは無言で彼を見やる。
確かに彼のでまかせな可能性もある。
だが多分そうではないと彼女は感じていた。
何故なら、彼が言ったファーブニルの戦闘値、そしてそれより1万近く低いと言われた自分の戦闘値が正しく一致していたからである。
彼女は自分自身はもちろん、他の四天王の戦闘値もよく把握しているからだ。
「……それが事実だったとして、何なのよ?」
「確かに四天王は皆化け物級に強い。あんたもその例に漏れずな。だが」
こちらを薄笑いで見て男は言った。
「あんたは他の3人に比べれば、まだつけいる隙がある」
「……は?」
カチン、と彼女は彼を睨む。
「どうやらあんたはファーブニル達と比べると戦闘値が一段落ちるようだ。まあその辺りは男女の性差といったところだろう」
「私が他の連中より弱いって言いたいわけ?」
「データでそう明示されているからな。女という点を鑑みれば他の男達より劣るのも自然な理だ」
「……フフ」
彼の発言にレヴィアタンの口元が三日月に曲がった。
「女だからって舐めない方がいいわよ?」
ヒュン
一陣の、風切り音が響いた。
タイミングを外して、彼女が男に飛びかかったのだ。
鋭い突きが手先から伸び、男の喉元を襲う。
しかし槍は空を切った。
男は不意打ちにも動じず、反射的に身体を捻って上手く避けていたのだ。
「あら」
「不意打ちするなんて、やってくれるじゃねえか」
男は避けた動きからそのまま流れるように攻撃に転じる。
身体を反転させて彼女の足下目がけて回し蹴りを放った。足払いだ。
だが、レヴィアタンはその動きを予期しており、ジャンプしてかわす。
「マリンスノー!」
彼女は空中で小さな氷の塊を発生させて男へと打ち放った。
綺麗な氷に見えるが、それらは機雷だ。当たれば威力を持って爆発する。レヴィアタンの得意技である。
「こんな子供だましが通じるかよ!」
彼は口を大きく開けて、何かを吐き出した。
それは両手大の火球だった。
口の中から射出された火の玉が氷の機雷と接触する。
シャリリィ!
小気味いい音を立ててマリンスノーが飛散した。
危険な氷の機雷も炎とは相性が悪いため、当たれば溶けて破壊されてしまう。
「へえ、あなた炎使いなのかしら」
少し驚いたような目をしてレヴィアタンが男に目を向ける。
彼はどうやら炎属性らしく、火の玉を放って彼女の氷技を迎撃したのだ。
「そうさ。俺の通り名は“炎鬼”ズィール。その名の通り炎の鬼だ。だから氷使いのあんたには負ける気がしない」
余裕気に男がそうのたまった。
炎属性を彼女は苦手としている。
敵側もそれを踏まえての人選のようだ。
「フフ、私を相手にそれは楽しみな文句だわ」
彼の言葉に、しかし妖将の顔が楽し気に微笑む。
「確かに炎は嫌いよ。でも炎使いだからってだけじゃ私には勝てない」
レヴィアタンは再度眼前に氷の機雷を発現させる。今度はさっきより数が多い。
こちらはマリンスノーの応用版だ。
「行きなさい」
彼女の発令と共に、幾多の氷機雷が男の周囲を包み込む。
逃げ場が一瞬でなくなった彼だが、しかし慌てずに対処した。
「ファイアブーメラン!」
炎の刃をブーメランとして飛ばし、機雷が爆破射程に入る前に撃ち落として破壊する。
さすが氷をカモとする炎使いだけあって、氷技への正確な対処方法がわかっているようだ。
「今度はこっちの番だぞ」
不敵に笑うと彼は全身を炎で包み始めた。
彼の周囲から炎の柱が現れ、彼に向けて放たれていく。
炎の照射を身に受けた彼は、ダメージを受ける事はない。
逆に炎のオーラを体に纏って鎧を形成していく。
「キルフレイム・コート」
殺傷力の高い炎の鎧を身に纏った彼は、大きな火の塊りとなりレヴィアタンに攻撃を開始する。
彼はドドドとその身のまま直接突撃してきた。
「やっ、やっ、やっ!」
レヴィアタンはホーミング弾3発でこれに対処。
追尾弾はその内2発が男の体躯を捉えた。
しかし、走ってきた男にはクリーンヒットはせず、かすった程度だ。強烈な炎のオーラが鎧の役割も果たし、彼の被弾ダメージを抑える。
「おっと」
間近に迫った男の突進を彼女は横っ飛びでかわした。
攻撃が少々外れても彼女は簡単には慌てない。
「ちっ、かわしたか。ちょこまかとすばしっこい奴だ」
「あなたのパワーだけで頭の悪そうな攻撃なんて喰らわないわ」
「頭が悪いだと……?ならばこれはどうだ」
彼は軽く上空にジャンプした。
次の瞬間、壁を蹴って高速移動を開始する。
「っ……!」
意外な俊敏な動きにレヴィアタンは虚を突かれた。
頭上をかなりの速さで炎の塊りと男が通り過ぎる。
一瞬のうちに彼女の背後を取った彼は、炎の巨躯を振るった。
レヴィアタンは剛腕の薙ぎ払いを身に受けて吹っ飛ばされ――――
いや、砕け散った。
パリィィン
氷の破片が粉々に砕かれ、妖将の形をとっていたものが崩れ去る。
彼が攻撃したのは氷で造られたレヴィアタンの偽物だった。
「な、なにィ!?ハリボテだっただと…!」
攻撃を外してしまい、彼は慌ててレヴィアタンの本体を探す。
しかしどこにも見当たらない。
「ど、どこだ…!」
「ここよ」
すぐ傍で彼女の声がし、男はそちらへ目を向ける。
すると、”真後ろに”彼女はいた。
「フフっ」
「なっ、に……!?」
彼は再び薙ぎ払おうと腕を振るおうとした。
しかし遅かった。
既に鋭い刃が突き刺されていたからだ。
ザシュリっ!
フロストジャベリンの槍部分が的確に男の急所を刺していた。
首元の、炎のオーラの薄い箇所を。
彼女はあの短い動き合いの中で彼の纏う炎の各部位を正確に分析把握していた。
その弱点が首元だという事も。
「ぐ……な、、、そ、そんな、。この俺が負けるなど、、、」
「私に勝とうだなんて、100年早かったわね」
彼女は口元を三日月に歪めて言った。
「じゃあ、サヨウナラ」
「あ、、、ぐ、ぁああああ!!!」
彼の断末魔と共に、炎の鎧が爆発霧散した。
身に纏っていたキルフレイム・コートが爆発で四散していく。
だが、レヴィアタンは寸前で飛びすさって退避しており、爆発に巻き込まれる事はなかった。
「フぅ、ひとまず片がついたわね」
敵の男との一戦を終え、彼女は軽く息をついた。
相性的に苦手なはずの炎タイプの敵との対戦だったが、それでも彼女は勝ってしまう。
妖将と言われる彼女の強さは伊達ではない。
「ほほ、ズィールがやられたか。炎使いじゃから奴1人でも何とかなるかと思ったが。この辺りは流石に四天王の1人と言えるかのう」
「!」
不意にまた声がし、彼女ははっとなった。
声のした方に彼女は目を向ける。
声は上の方角からしたようだ。
「なかなか良い動きじゃった。これが四天王の力か」
「誰……!」
天井の光のホールから顔だけがのぞいていた。
老人と思しき男が、こちらを見ている。
「お初にお目にかかる。ワシはゾルベームグ。さっきの男、ズィールの仲間じゃ」
「………」
名乗った老人、ゾルベームグは彼女に薄く笑んでみせる。
「仲間って事は、敵ね?」
「さよう。今しばらくお主を観察させてもらった」
「観察…?ずっとそこから見ていたっていうの?」
「うむ。どうやらお主は奴との戦いに夢中で気付かんかったようじゃがの」
彼は天井の光のホールからこちらを伺って見ていたらしい。
それもしばらくの間。
翁に指摘された通り、彼女はそれに気付いていなかった。
「……無断でのぞき見なんて、気持ち悪い事をするのね」
「ふぉふぉ、戦略的偵察といってほしいの」
ふがふがと笑って、翁は言った。
「じゃがおかげでお主のデータの精度は上がった。ズィールの犠牲も無駄にはならなかろう」
「……?データの精度?」
気が付くと、彼は目に眼鏡のような物をはめている。
まさか、と彼女ははっとした。
「それ、もしかしてスカウター……?」
「そうじゃ。今のバトル中ずっとこれを通して見せてもらったぞい。数分足らずとはいえ、配下のエース達の初期サーチよりも詳細なデータが取れたわい」
くく、と不気味に笑んで翁が目を細める。
「お主はネオアルカディア四天王の紅一点だそうじゃの。こんな華奢な小娘がと思っておったが、今のバトルは珠玉じゃった。流石に戦闘値が69000あるだけはある」
「……!あなたも私の戦闘値を知っているのね」
「ふぉふぉ、これは部下の初期サーチの時点でわかっていた事じゃよ。そして今の戦闘でさらに詳しい事がわかった」
「………」
「知力値、スピード値、パワー値、そしてキュート値がな」
妖将を不敵に見やるゾルベームグ。
彼女は怪訝な顔で聞き返した。
「キュート値…?」
「くつくつ。キュート値はそのままの意味じゃよ。ワシの目では推定100000はあるかのう」
「………」
「……クスっ」
「いいわ、お礼にあなたは盛大に殺してあげる」
これまで投稿された話で好きな話はどれですか?※アンケートの結果で今後の話の展開やキャラの偏りなどに影響が出る事はありません。あくまで皆さんの感想を知りたいために実施するアンケートですので^_^
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第1章:稀少資源ギラテアイトを奪取せよ
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第2章:敵本拠地を急襲せよ
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第3章:エネルゲン水晶発掘所を攻略せよ
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第4章:水没した図書館を攻略せよ
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第5章:スカイビルでの戦い
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第6章:四天王VS暴雪月花
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その他個別に好きな箇所があればこちらへ