四天王の重要任務   作:プレイズ

12 / 33
妖将の任務④--妖将VS老練ゾルベームグ--

「ふぉふぉ。いいのう。強い女子と戦うのは楽しみじゃ」

不敵に笑って翁、ゾルベームグは彼女へ見やる。

「そうじゃ、戦う前に一つ教えてやるとするかの。お主は“稀少資源”を探しに来たそうじゃな」

「……?それがどうかしたかしら」

「ここにそれがあるのは知っておるかの?」

「ええ。既にレーダー反応で存在は確認しているわよ」

「うむ。ではさらにいい事を教えてやろう。お主が探知した物の他にもまだここには別のギラテアイトがある」

「え…?」

翁の発言に彼女は小首を傾げる。

「他にもある?」

「ワシらが他の地点から持ってきた物があるでな。少し前にこの鏡空間のどこかに隠しておいた」

「………」

「お主がワシに勝てれば、それもお主の物となろう」

「へえ、ゲームのつもりかしら?」

「ふぉふぉ、そうじゃな。妖将とのお遊戯と言ったところかの」

「ジジイのふざけた遊びに付き合う気はないわ。さっさと殺して冥土へ行かせてあげる」

レヴィアタンは彼を蔑称を用いて卑下した。

「ほーっほっほっ、女の子がそんな汚い言葉遣いをしない方がいいぞい?折角の美少女が台無しじゃて」

にたり、と笑って彼は光のホールに身を沈めた。

顔だけ出ていた彼の姿は完全に見えなくなる。

(……!どこに行ったの)

姿だけでなく気配も消え、彼女は翁の姿を探した。

だがどこにも彼の姿は見当たらない。

(あの光はどこか亜空間に通じてるって、さっき倒した奴が言ってたわね)

今翁が消えた事を考えると、あの光のホールはどこか別の場所に通じていると思ってよさそうだ。

彼女は辺りを見回してみる。

光のホールと思しき物はそこそこの数で点在しており、キラキラと魅惑的に光っている。

このどこかのホールから彼が出てくるのかもしれない。

 

「はっ…!」

ピクンと反応して、レヴィアタンは身をかがめた。

そのすぐ上を細い針が過ぎ去る。

それはそのまま奥にある紫水晶の壁へと突き刺さった。

「っ……!」

驚いた彼女は後方を振り返った。

すると、地面の光のホールから翁が顔をのぞかせていた。

彼の口には吹き矢のような道具がある。

「ふぉふぉ。よくよけたの。流石の察知力と反応スピードじゃ」

「後ろから不意打ちってわけ…?出てきて正々堂々と戦いなさいよ」

「生憎それをする気はないのう。お主ほどの実力者を相手にするにはそれでは分が悪い。こうして有利な環境設定をして陥れるのが1番効果的じゃ」

「ふん……悪知恵が働くじゃない。その辺は年配者の功って所かしら」

「お主じゃて立場が違えば同じじゃと思うがのう。強敵とやり合う時は無策で正面からぶつかるかの?」

「………」

確かに、と彼女は思った。

もし自分がやっかいな相手と戦うとしたらどうするか。

少しでも有利な状況を作って戦おうとするだろう。

例えば、足場に大量のトゲを配置したり、水を投入して得意の水中戦闘を相手に強いたりである。

それと同じ事を敵もやっているだけなのだ。

「ウザいジジイだわ」

吐き捨てるように彼女は言った。

「ふぉふぉ、酷い言い草じゃの。油断して鏡に取り込まれたお主が悪いのじゃぞ?」

「黙りなさい」

彼女はホーミング弾を1発飛ばした。

だがすぐに翁は顔をホールに沈める。

攻撃は敵には当たらず、その光ホールの中に弾は消えてしまった。

「くっ、また隠れんぼってわけ?」

不満を顔に出して彼女は辺りを見渡す。

すると、視界の端に何かが見えた。

ホーミング弾だ。

「えっ…?」

彼女は意表を突かれる。

さっき自分が撃った物が、全く別の場所から出てきたのである。

弾は彼女へ向かってくる事はなく、そのまま目標物を失ったように漂って、そして壁に命中した。

飛散音がして、壁の一部が損壊する。

(今のは……どういう事?)

不可思議な現象に彼女は怪訝に思った。

まるで別の場所の光のホールと繋がっていたかのようである。

 

「くつくつ」

「!」

端から出てきたホーミング弾に一瞬気を取られた瞬間、彼女の足下から気味の悪い笑みが聞こえた。

気が付くと、すぐ傍の地面にも光のホールが出現していた。

翁の不気味な顔と、手が出ている。

彼女は片足を掴まれていた。

「あっ…!」

「ふぉふぉ、集中を欠いてはいかんのう。そいっ!!」

間髪入れず、ゾルベームグは腕を大きく上へと振り上げた。

同時に、掴まれていた彼女の脚も一緒に持ち上げられる。

バランスを崩された彼女はたまらず転倒した。

 

【挿絵表示】

【挿絵提供モメ男様】

 

「キャアッ!」

ドスン!と尻餅をつく形でレヴィアタンは地面へ倒れ込む。

翁に足を大きく取られてしまい、重心を崩されたのだ。

しかし、彼女は倒れつつも反撃していた。

投げを喰らうと同時にホーミング弾を一発放っていたのである。

「ぐむぉ…!」

ゾルベームグが呻き声を挙げる。

翁の肩口にそれは命中し、小爆発が起こっていた。

痛みに顔を顰め、彼はすぐさま足下の光ホールへと退避する。

 

 

「……フフ、どうやらあなたの方も気を緩めていたようね」

体勢を立て直した彼女は起き上がりながら微笑んだ。

だが幾分か機嫌は損ねている。

「よくもやってくれたじゃない。私を乱暴に転ばせた罪は、今の傷程度じゃ釣り合わないわよ」

手荒く転倒させられた所行に、彼女は静かに青い炎を燃やしていた。

妖将は氷属性だが、内心にはちゃんと燃える炎を宿している。

ただ、今彼女の心に灯っているのは青い炎だった。

これは卑劣な手を使ってくる相手に抱く軽蔑の感情である。

(苛つくわ。でも、厄介。これじゃどこの光ホールから出てくるかわかったもんじゃないもの)

周囲に点在するホールを見回して考え込むレヴィアタン。

これらの光は全てどこか別のホールへと続いているらしかった。

どのホールから翁が出現し、攻撃を仕掛けてくるかわからない。

さっきのようにわざと別のポイントから陽動して隙を狙ってくる場合もある。

(とりあえず足下のホールには注意しないと。さっきみたいにすっ転ばされちゃたまらないわ)

彼女は眼下からの不意打ちに警戒した。

対処策として、足下にあまりホールがない場所へと歩いて移動する。

だが、ホールとホールとの間は2~3mほどしかあいていないため、この程度の距離なら相手の攻撃が届く危険があった。

(これじゃ敵の攻撃を完全には無効化出来ないわね。何か効果的な打開策は――)

思考を巡らせている彼女の、そんな隙を狙って敵は動き出した。

頭上の死角から、ハンマーが投げ込まれたのだ。

ブウン、と回転を帯びてそれは妖将の頭へと飛ぶ。

しかし、彼女はそれを避けた。

軽く体を裁くと、回転ハンマーがその脇を通り抜けていく。

「!」

そのハンマーが落下点にあった光ホールに吸い込まれて消えた。

そして今度は地面のホールから出現する。

彼女は床のホールからは距離を取っていたため、ハンマーの出現をすぐに感知出来た。

「たあっ!」

フロストジャベリンを薙いで彼女はそれを跳ね飛ばす。

ただし、ホールのない壁に向かってだ。

ドグシャ!という衝突音と共にハンマーが壁に当たって止まった。

こうすれば、厄介なランダム攻撃を止める事が出来る。

しかし、敵の攻撃はこれで終わりではなかった。

頭上の光ホールから今度は“腕”が伸びてくる。

眼下のハンマーに意識が行った妖将の隙を狙って、ゾルベームグが死角から不意を打ったのだ。

「むう…!」

だが、その腕は障害物によって阻まれた。

綺麗な氷の固形物が翁の目に映る。

「これは、機雷か――!」

「フフ、残念。予想済みでした」

レヴィアタンが楽し気な微笑みを翁に向けた。

次の瞬間、マリンスノーが爆発する。

ドカドカドカ!と連続して機雷が破裂した。

彼女は上からのハンマーを避けると同時に、死角となる天井側の光ホール先に複数のマリンスノーを放って置いたのだ。

もし敵がこちらの隙を狙って死角から出てきたとしても、迎撃するために。

その思惑は見事に的中していた。

「ぐ、ううう――!」

腕にもろに爆発を受け、ゾルベームグが呻き声を挙げてホール内に引っ込んだ。

今のはかなりのダメージが入ったようだ。

「さあ、あと一押しかしら」

痛んだ相手にほくそ笑むレヴィアタン。

おそらく敵はまた隙を狙ってくるだろう。

だがもう怖くない。

種が割れてしまえば、対処にも余裕が生まれる。

 

 

レヴィアタンはそのまま再び翁が仕掛けてくるのを待つ事にした。

こちらからわざわざ何かをする必要は無い。

相手が出たところを対処し、カウンターをお見舞いすればそれでトドメを刺せる。

「………」

シン……と静まり返った空間は静寂に包まれる。

神経を研ぎ澄ませている彼女は、今ならどこから不意を打たれようとすぐに反応できる自信がある。

「………」

30秒経っても何も変化はない。

ゾルベームグはなかなか次の攻撃をしてこなかった。

さっきまでの調子に乗った先手必勝は鳴りを潜める。

「………」

さらに30秒経った。

しかし攻撃の気配はない。

周囲に煌めく紫水晶が、まるで時間がゆっくり流れているかのように魅惑の光をキラキラと放っている。

「………ウザい」

さらに1分が経過した辺りで、レヴィアタンがぼそりと吐いた。

数分間相手はだんまりを決め込んだらしい。

こちらがカウンター狙いな事に気付き、闇雲に攻撃するのを控えたのだろう。

(ウザったいわね。折角対処法を思いついたのに)

内心で彼女は苛立つ。

こちらが自分を打破するやり方を意図したのを把握した敵は、そうはさせじとそれにまた対処してきた。

時間稼ぎをして状況を好転させる事を目論んでいるようだ。

(倒されたくなくて隠れてやり過ごす気?ジジイのくせに臆病な奴だわ)

年の功、もとい老害の頭を持つ敵に彼女はイライラする。

しびれを切らしたレヴィアタンは、戦法を変える事にした。

チャキ、と彼女は前方にフロストジャベリンを構える。

そして、くるんと回してそれを回転させ始めた。

高速に速めて武具を回し、新たな技を発動する。

「はぁっ!」

回転されたフロストジャベリンから氷の輪が放たれた。

白水色の氷の機雷が輪っか状になって拡散する。

それは綺麗な氷の煌めきを周囲に振りまくように、広がった。

そして、それらは個々に光りホールの元へ送られる。

レヴィアタンは光ホールそれぞれに氷の機雷を打ち放ったのである。

氷の輪は本来防御型の技だ。敵からの攻撃を盾の役割を果たして防ぎ、そしてカウンターとして相手に氷の輪をぶつけるもの。

しかし、彼女はそれを応用して進化させ、氷の輪を広げて打てるようになっていた。

機雷を拡散させる事でターゲットへの標的範囲を増やす事が出来る。

今彼女はそれを先手を取る形で使用し、空間に散在している光ホールそれぞれに氷機雷を送ったのだ。

「さあ、結果はどうかしら?」

周囲に散らばる氷のあられを見ながら妖将が呟く。

もちろん、全ての光ホールはカバーし切れないので、確実に決まるわけではない。

撃ち漏らした光ホールに翁がいれば外れに終わってしまう攻撃だ。

だが、もし奴がこちらに攻撃を当てようと思っているなら、こちらの近くに通じているホールに潜んでいるはず、と彼女は見当をつけていた。

ならば、この氷の輪の機雷量なら当てられる可能性が高い――。

そして、その予測は的中した。

「ぐげえ!」

呻き声がして、後方の上から何かが落ちてきた。

ドサっと重い音を響かせて敵が地面にぶち当たる。

振り返った彼女の口元が三日月に笑った。

「ウフフ。ビーンゴ♪」

可愛く笑んで、妖将はフロストジャベリンを翁の頭に向けた。

彼女が眼前に居る事に気付いた彼は、うっとしてそちらを見上げる。

「や、やめぬか…!今のは不意打ちじゃて」

「あら?あなたがそれを言うの?」

不思議そうに彼女は首を傾げる。

「さっきは散々私の不意を打とうとしていたじゃない」

「そ、それは……ワ、ワシが悪かった!見逃してくれえ!」

翁は頭をついて彼女に土下座した。

もはや勝機無しと見て、降伏したのだ。

「フゥ……負けるとみたら即降参ってわけ?」

「お主がまさかここまで強いとは思っとらんかった。これ以上戦ってもワシがやられるだけじゃ」

「私の戦闘値が69000とわかって、他の四天王男3人より勝てそうだとか言ってなかったかしら?」

「そ、それは思い上がりじゃった…!こちらの有利な環境で戦えば勝てると踏んでおったんじゃ。じゃが、お主は不利にも関わらずすぐにカラクリに対応してみせた。さらにこちらのアドバンテージを逆手に取った戦法で攻撃を決めてくるなど……全てがワシの想像以上じゃった」

「今頃気付いたのね」

「お主は数値での強さはもちろんじゃが……数値だけでは測れぬ強さがあった。不利にも即座に対応する知力、こちらの攻撃を瞬時に察知して回避する洞察力、そして技に応用を利かせるアレンジスキル……お主の力量評価を誤った」

「四天王を舐めるとどうなるか、これでわかってくれたかしら?」

「は、ははあ…!」

情けなく諸手を上げる爺に、彼女はため息をつく。

「呆気ない事。まあ、いいわ。大人しく負けを認めて投降するなら命だけは見逃してあげる」

「ほ、ほんとうかの……!」

彼女はゾルベームグの命までは奪おうとは思わない。

何故なら、彼にはギラテアイトの隠し場所を吐かせないといけないからだ。

この鏡世界のどこかにブツを隠しているらしいが、このまま倒してしまうと後で探す手間がかかってしまう。

それを防ぐためのとりあえずの保険である。

「あ、ありがとうございまする……!」

「その代わり、隠してあるギラテアイトの在りかを全て吐いてもらうわよ?」

「は、ははあ…!そのくらいお安いご用で御座います…!」

完全に土下座する形で平伏するゾルベームグ。

それを見てレヴィアタンは呆れつつも軽く肩の力を抜いた。

拍子抜けするくらい抵抗なく白旗を上げられたので、少し気が抜けたのだ。

 

しかし、その瞬間、伏せられた翁の顔が僅かに笑っていた。

妖将が戦闘から意識を逸らすのを、彼は待っていたのだ。

張り詰めた空気が一瞬緩んだその刹那、彼はレヴィアタンに向けて飛びかかる。

鋭い爪をサーベルのように伸ばして、彼は豹のごとくジャンプして切りかかった。

「!」

だが彼の切りつけは空を切る。

レヴィアタンが身体をさばいてかわしていたからだ。

少し気を抜いても、彼女は万が一の敵の不意打ちをちゃんと考慮に入れていたのである。

「やってくれるじゃない」

不服さを隠さない目つきで妖将が反転する。

そして、間髪入れずに今度は翁の眼前に切っ先が迫った。

彼女がカウンターの突きを放っていたためだ。

ヒュ!と風切り音がし、彼の頭部を槍の矛が貫く。

しかしズブリという感触はしなかった。

彼が咄嗟に首を折って躱したからだ。

「ほほ…!これはすこぶるお速い」

寸手の所で危険な突きを回避し、彼は肝を冷やす。

妖将は想像以上に俊敏な動きだった。

一撃目が躱されても、しかし彼女のキレは止まらない。

続けざまにジャベリンを薙ぎ、連続切りつけを見舞う。

「はあ!や!はっ!」

流れるような多段乱れ薙ぎ。

キレのある美しきまでの流麗舞がゾルベームグの身体に振るわれた。

彼は両の腕をクロスして薙ぎの連打を受ける。

盾となった腕を妖将のジャベリンが削っていく。

攻撃を受け切ったものの、翁の腕は相当に傷ついてしまった。

「ぎぃっ……!ぐ、なんと隙のない連突きよ、、!」

「今のでもう白旗?これはほんの“慣らし”よ」

痛むゾルベームグに軽く笑う妖将。

さすがに翁と彼女では強さの格に差があるようだ。

初手こそ隙を突かれた不覚から鏡の中へ捕らわれてしまった彼女だが、本来はネオアルカディア四天王の1人に数えられるだけの精鋭である。

いくら相手が不可思議な鏡能力の使い手であろうとその実力に遅れは全く見えないばかりか完全に上回っていた。

「フフ、お次はこれよ。マリンスノー!」

彼女の声と共に氷の機雷がジャベリンの先に発生する。

そして妖将が一笑を見せたのを合図に、機雷は真っ直ぐゾルベームグの元へ向かって流れた。

「むっ……!これは、」

彼が不穏な物体の接近に気付いた時には既に起爆圏内。

白い綺麗な氷片を弾けさせて機雷は派手に爆発した。

 

「ぐ、ぐむう……ッ」

氷片の爆風煙が止み、晴れた靄から翁の姿が現れた。

その身体は氷の破片で所々傷ついており、既に彼は息を乱している。

「くあ……!こ、これは想定外……本当に、とてもお強いですな……」

「このくらい普通よ。まだ初歩の技しか出していないのにもうバテちゃうわけ?」

戦闘が始まってまだ3分と経過していないが、既に勝負は見え始めていた。

予想よりあっけなく、逆に妖将の方は拍子抜けだ。

隙を突かれたからとはいえ、自分を鏡の中に捕らえてしまった者達が相手だけに、彼女は相当警戒してこのバトルに臨んでいた。しかしいざ戦ってみると、気に病んでいたのが馬鹿らしく思えるほど力に差があったようだ。

これでは自分が必要以上に警戒していたのが独り相撲のようで逆に恥ずかしくなる。

「なーんだ、その程度なの?てっきりもっと歯応えがあると思っていたんだけど」

「ぐう……そ、そこまで言われると、さすがに黙っていられませんなぁ、、!」

なじられた彼は顔を紅潮させると、地面を蹴って妖将に向けて飛びかかった。

今度は両方の手からサーベルを生やし、クロスさせる事で彼女の身体を切り裂くつもりだ。

「フフ、全然遅いわよ」

彼女は鼻で笑って笑顔を向ける。

彼女の身体は向かってきたゾルベームグの頭上を蝶のように舞っていた。

彼の突進は見切られていたのだ。

「なにィ……!」

「やあッ!!」

完全に背中を見せた翁に向けて妖将の強烈なスピアが炸裂する。

真上から急降下で槍を立てて突き刺し降ろす技だ。

 

ジュグゥ!!!と肉に刃が刺さる感触が響く。

翁の背中は妖将の振り下ろした鋭い切っ先に貫かれていた。

「う゛っ、、が、、グギャァアーーー!!!!」

体内の中枢肉を串刺しにされ、ゾルベームグの凄まじい悲鳴が鏡の中をつんざく。

まるで遠方にまで響き渡る雷鳴のように翁の叫びが轟きうなっていた。

 

 

ゾルベームグが致命的なダメージを受けたことで、鏡内世界が揺らぐ。

鏡の波紋がぶれるように動き出した。

「フフ、どうやら効いたみたいね」

鏡の中に明らかな異変が起き始め、レヴィアタンは手応えを得る。

 

 

「ぐっxx、、、うォ、オ゛、、!」

背中から腹まで槍でつんざかれ、翁は苦悶の声を上げる。

完全に急所を討たれており、致命傷であった。

「くフフ、痛いかしら?ど、う、?」

「ごっ、、がッギャアアアアアッ!!!!」

遊ぶように微笑むと彼女は刺した槍をねじ回した。

傷口をえぐられ、翁の口から今度こそ本当の叫び声が上がる。

痛み、などではない甚だしい痛覚が爆発していた。

「あはっ、いい悲鳴だわ。私を好き勝手してくれた報いはちゃんと受けてもらわないとね」

彼女は風貌の少女らしい見た目とは裏腹に残酷な愉悦の感情を持って微笑んだ。

自分を鏡に閉じ込め、鏡世界に幽閉したこの翁を彼女はただ倒すだけではなくズィール同様に末梢する気でいた。

本当ならギラテアイトの場所を聞き出すために翁は生かそうかと思っていたのだが、先程の不意打ちは彼女の心境を変えさせるに十分な無礼だった。

「折角さっきは見逃してあげようかと思ったのに、平気で攻撃されちゃね。私の手心を無為にしたあんたにはもう一切容赦しないわ」

もはやゾルベームグを殺さないという選択肢は彼女の中にない。

反動で最初に鏡に引き釣り込まれた一見も思い起こされ、彼女は内心ふつふつと怒りを抱いていた。

あの醜態のけじめはただこらしめるだけでは足りず、やはり壊滅的に壊して滅しなければ清算が取れない。

それほどまでに彼女は根に持っていたし、翁を忌み嫌っていた。

「フフ、女の恨みは怖いのよ。調子に乗った愚かな愚行を懺悔しながら醜く死になさい」

「グウ……ご、、フゥッ……!!」

レヴィアタンの挑発めいた言葉にももはや翁は返答できない。

口から血に相当するエネルギー燃料が吹き出し、喋る事もままならない。

彼の命はもう幾ばくもなく尽きようとしていた。

 

 

 

「おろっ、何だ取り込み中かよ」

 

不意に後方から、切迫感のない声が聞こえた。

喧嘩中のところにたまたま通りかかった通行人のような雰囲気の声が。

若い男の声とおぼしきそれは心なしかどこかで聞いた事のあるような音色をしている。

レヴィアタンは声のした方を振り向いた。

すると、そこには見知った顔があった。

「……えっ?」

赤い体軀に暑苦しいまでの熱気。

筋肉質の装甲を誇る、闘いの猛者。

身体とは裏腹に頭の方は馬鹿で、事務仕事は一切駄目な困った男でもある。

目の前に表われたのは、よく見知った同僚の将仲間、闘将であった。

これまで投稿された話で好きな話はどれですか?※アンケートの結果で今後の話の展開やキャラの偏りなどに影響が出る事はありません。あくまで皆さんの感想を知りたいために実施するアンケートですので^_^

  • 第1章:稀少資源ギラテアイトを奪取せよ
  • 第2章:敵本拠地を急襲せよ
  • 第3章:エネルゲン水晶発掘所を攻略せよ
  • 第4章:水没した図書館を攻略せよ
  • 第5章:スカイビルでの戦い
  • 第6章:四天王VS暴雪月花
  • その他個別に好きな箇所があればこちらへ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。