四天王の重要任務   作:プレイズ

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急襲②

『ALERT!ALERT!侵入者デス!』

 

緊急事態を伝えるブザー音と共に、スピーカーを通して警告音声が流れる。

突然の事態に、男達は騒然となった。

「警告アラート…!?」

「何事だ!?」

「どうやらこのアジトに正体不明の何者かが侵入したようですね」

『敵のお出ましというわけか』

奥のメインモニターに外の様子が映し出される。

カメラの設置ポイントの1つである2階廊下において、複数の球体が稲光っていた。

おそらく誰かがランチャーを乱射しているようだ。

その砲弾が光となってカメラに映っているらしい。

「これは……」

「誰だ……!」

砲弾の主は煙幕の奥で影になっており、容姿がはっきりと見えない。

シルエットはがたいのいい男であり、ランチャーを片手で軽々扱っていた。

徐々に靄が薄れ、その姿が露わになる。

赤い装甲が、男達の目に映った。

「あれは……」

「まさか……!」

「と、闘将…!?」

明らかになった全容に、彼らは驚愕する。

そこに立っていたのは彼らが恐れている強者だったからだ。

ネオアルカディア四天王が1人、闘将ファーブニル。

戦いを生き甲斐にする、燃える闘魂の漢である。

 

+++++++

 

--数時間前--

 

ネオアルカディア本部にて、再び円卓を囲んで四天王達が会合を開いていた。

議題は新たなミッションについてである。

「では今回の敵本拠地急襲任務についてだが」

ハルピュイアが指し棒を持ってモニター画面を示した。

「ここが今回“判明”した敵のアジトだ」

モニターには敵の本拠地と思われる場所の地図が表示されている。

この結果はとある情報によってもたらされたものである。

「へへっ、これが敵さんの本拠地ってわけか」

「これも私のおかげよ。ね、ファントム?」

「そうだなレヴィ。お主の尽力の賜物であろう」

微笑む妖将が隠将に同意を求めた。

ファントムは彼女の要求に応えるように賛意を示す。

成果を評価されてレヴィアタンは上機嫌になった。

「で、今回は誰が行くんだ?」

「もちろん配下の者には任せられん。また我ら四天王が直々に行く必要があるだろう」

言って賢将が円卓の皆を見回す。

彼は各々の様子をうかがって誰に頼むか決めるつもりだ。

ただ、前回のように全員で乗り込むというわけではない。

今回は候補地が1ヶ所にしぼられているからだ。

敵本拠地への襲撃ミッションだが“1名”の派遣で十分に事足りると彼は見なしていた。

場所がしぼられているからだけではなく、前回の全員参加ミッションでのレポートを鑑みて、敵幹部格の力量を考慮に入れての判断である。

だが配下の者に任せるには厳しいレベルの実力は持っている相手なため、今回も四天王が直々に向かう事になった。

「私は今回はパス。敵を倒すだけのミッションなんて気が乗らないもの」

早々と妖将が棄権の意思を見せた。

彼女は戦いにはそれほど興味が無いため、今回は乗り気ではないようだ。

前回のミッションでは幹部2名を連続で撃破したが、あれも本来の彼女からすれば本質的ではない行為である。

女性なのもあるが、彼女は元来戦闘にはそれほど興味が無い。

……ただし、自分を熱くさせる特定の者に対しては除くが。

「お主はこの手の荒事が主目的の案件は好まぬでござるからな。それに前回1人で頑張ったのもあるし、今回は休むとよかろう」

「フフ、ありがと」

「そうか。ならばお前はどうだ、ファントム?」

「拙者でもよいが、もっと気乗りしている者が隣に居るでござろう」

是非を問われたファントムは、彼の隣にいる男を視線で示した。

そこには見るからにやる気が漲った闘将が鎮座している。

「そうだぜハルピュイア。俺が行かないで誰が行くってんだ?」

「まあわかってはいたがな」

皆まで言うな、と言いたげに賢将が頷く。

彼も荒事ミッションで闘将が立候補する事は予測済みだ。

「では今回はファーブニル、お前に任せるぞ」

「あたぼうよ!」

待ってました、とばかりにファーブニルが応じた。

 

+++++++

 

「へへ、やっぱ俺にはこういう任務の方が性に合ってんだよな」

瞳にやりがいの炎を灯して闘将ファーブニルがアジト内を邁進する。

敵地に乗り込んだ彼は、階を上がりつつ廊下の雑魚敵を一掃していた。

前回の探索ミッションが不発に終わっただけに、今回の“討伐”ミッションは彼にとってモチベーションが高い。

頭を使うちまちました任務よりも身体を動かして敵を倒す方が彼は得意としている。

その手のミッションを今回任された彼は、まさに本来の野生を取り戻したハンターのように活き活きしていた。

「おらぁ!雑魚は引っ込んでろよな!」

ランチャーを打ちまくり、彼は通路から襲ってくるパンテオン達を次々と片付けていく。

彼の前では雑兵など無力であり、時間稼ぎにすらなっていなかった。

手早く敵を倒しながら、進撃する闘将の勢いは増していく。

 

+++++++

 

「し、四天王だと!?」

「な、何故奴がここに…!」

「わかりません…!だが、どういうわけか我らのアジトがあちらにバレてしまったようですね」

まさかの四天王来襲に、幹部達がざわめき立つ。

階下で部下達が応戦しているようだが、映像を見る限りまるで相手になっていない。

部下達の戦闘力はせいぜい1000以下なため、四天王級相手に歯が立たないのは当然である。

このままでは程なくして敵は本部フロアに到達するだろう。

そうなればこの部屋に突入され、強制戦闘となる。

だが迎え撃って迎撃しようにも、相手はあの闘将だ。

先日お手並みを拝見した妖将相手でも、幹部2人がやられてしまったのは記憶に新しい。

まして、今やって来ている闘将は彼女より戦闘力において上回る存在である。

幹部クラスの彼らがかかっても倒せる可能性は高くなかった。

「どうする…?」

「まずいな……奴と戦って勝てるか?」

「いや、無理でしょう。ここはひとまず逃げるのが吉」

男の一人が壁に立てかけてある鏡を指さした。

「あそこの“ゲート”を通って外へ脱出しましょう」

「おお、そうだ鏡を使う手があったか…!」

「あれを通って移動すれば闘将が来る前に逃げおおせれるな」

彼らは“鏡”を自在に操る能力に長けたレプリロイド達だ。

鏡の中を自由に行き来出来たり、鏡を通って別の鏡から外へ抜け出たりする事が出来る。

これは組織の中でも幹部格以上の者にしか備わっていない特殊能力で、故に鏡を自在に扱える彼らはミラージュ5と呼ばれている(前回倒された2名と今回の3名を合わせた5名)。

鏡の中を行き来するなど普通では考えられない事象だが、高い科学技術によって鏡面の素子を操る事により、彼らはそれを実現するのである。

そしてその能力を応用すれば、他にも色々とやれる事もある。

例えば、対象者を鏡に引き入れて閉じ込めたりする事も可能なのだ。

先日妖将に対してゾルベームグ達がやったのもその能力による物である。

「奴を鏡に引き入れて袋にしてもいいが、それで倒せる保証がない」

「映像で見てもわかるが、強さのオーラが違うものな」

「例え我らの鏡に取り込めても、中で激しく暴れられて鏡世界自体を壊されかねない。ここは無理にやり合わず、逃げるのが得策でしょう」

男は立てかけられた鏡に指を向けて詠唱を始めた。

この詠唱で鏡に異次元穴を開ける事で、鏡の中へダイブする事が可能になる。

「む……?」

だが、男の顔色が変わった。

意図せず詠唱が途切れる。

「ん、どうした?」

「おかしい……」

「何がだ?」

「鏡に、介入が出来ない、、」

困惑した様子で男が言った。

「何だと?」

「詠唱の効果が妨害されている……」

「おい、どうなってる」

「何者かが妨害効果のある電磁波を放っている……!」

ギリ、と歯ぎしりして男が叫んだ。

「これでは鏡の中に入れません…!」

「何ぃ…!?」

「じゃ、じゃあどうするんだよ。早くしないとあいつが来るぞ…!」

何故かいつもは使えるはずの鏡能力が使えない。

異常事態に幹部達3人は途方に暮れる。

ふと、男の1人が思い出したようにサブモニターを見た。

「そ、そうだ。ライオヌル殿!あなたならこの事態に何とか出来るのでは…!」

「あ、ああそうだ、あんたならこっちに来て助けてくれるよな…!」

『………』

救援の要請に、しかしモニターの向こうの男は無言で答えない。

「我らミラージュ5よりも位が高い暴雪月花の1人であるあんたなら、闘将相手でもある程度戦えるだろ」

「是非、救援に来てください…!」

「頼む、ライオヌルさん!」

懇願する彼らに対し、モニター越しの男はこう言った。

『断る』

「は……!?」

「な、何だと」

「何故ッ!?」

無下に拒否され、追い詰められている彼らは破顔した。

『俺は厄介事にわざわざ首を突っ込みたくはないんでね。自分達の後始末は自分達でつけな』

「な、何を言うのです!今見捨てられれば我々は……!」

「3人でかかってもやられるかもしれない相手なんだぞ!?」

「お、おい早くしないと奴が――」

 

ドガああああン!!!

 

抗議の叫びをかき消すような形で、後方から轟音が鳴り響いた。

慌てて彼らが振り返ると、ルームドアが扉ごと吹き飛んで大破していた。

「へっへえ、ようやく最奥まで着いたぜ」

ジャキリ、とランチャーを構えて男が悠然と立っている。

ドアがあった部分は長方形の穴になっており、そこから闘将の姿がのぞいていた。

その顔は獲物を見つけたハンターのようににやついている。

「ぐ……間に合わなかったか」

「敵さんが追いついちまったぞ、どうすんだおい」

「仕方あるまい。我ら3人でまとめてかかるしかないでしょう」

逃げ場がなくなった男達は、目の前の闘将相手に戦いをしかける決断を下した。

各々が戦闘態勢を作り、四天王に向けて威嚇の気を向ける。

「ガぁッッ!!」

「!!?」

「!!?」

「!!?」

突然、ファーブニルが雄叫びを上げた。

気圧するような凄まじい威勢が大気を震わせて振動する。

彼らは折角作った構えを乱さざるを得なかった。

「おいおい、やけに弱気じゃねえか。ええ?」

畏怖した男達に対し、闘将は興を削がれたような顔をする。

「てめえらって幹部なんだよな?」

「…!」

「あ、ああ。そうだが?」

「へっ、そんな腰が引けてる連中でよく務まるもんだぜ」

軽蔑、とまでもいかない嘲笑に近い様子でファーブニルが吐き捨てる。

「何だと…?」

「んだよ、折角まあまあ遊べる奴がいるかもなって期待してたのによ」

「ちっ、随分と余裕なようだ」

がっかりした感情を隠さない漢に、幹部達は苛立ちを覚えた。

「どうしてここがわかった?」

「ん?」

「我らのアジトを何故知っているのかと聞いている…!」

ああ、そんな事かよ、と彼は笑って答えた。

「こないだレヴィアタンが捕まえた爺さん、何て言ったっけな」

「!」

「ま、まさか…」

「ゾル……ゲーゲル?だっけ?」

名前が思い出せないといった感じで彼は首を捻った。

闘将はいつも戦いに精を出しているので、記憶力の方はあまりよろしくない。

自分自身が戦った中で骨のある相手の名前ならちゃんと覚えているが、そうでない場合はすぐに忘れてしまう。

まして自分が戦ってもいない、他人からの情報となれば尚更だ。

「ゾルベームグがこの場所を吐いたというのか!?」

「そっ!それだよ、ゾルベームグ」

「ちぃ…何てことだ。まさか奴がそんな機密事項をゲロるとは…!」

「何かよ、殺されたくなければ何でも知っている事を吐けって脅されたらしいぜ?」

あいつもああ見えて怖ええからなー、と身震いして言うファーブニル。

「妖将に敗れて捕虜にされたあげく、無抵抗で味方の情報を話すなど。見損ないましたよ!ゾルベームグ……!」

「ちなみによ、その爺さん科学関係にも長けてるらしくて色々教えてくれたぜ」

ファーブニルが壁に立てかけられている鏡を指して言う。

「お前らって鏡の中に出入り出来るんだってな」

「!」

「な、何故それを――」

「それもゾルベームグが――!」

「そ。洗いざらい話してくれたぜ」

へへっと笑うと彼は続ける。

「んで、お前らがその不思議な能力を使えねえように、ちょっと事前に手配させてもらったわけよ」

「何だと……!」

「だ、だからさっき鏡に詠唱が効かなかったのか――!」

「爺さん鏡の能力をコントロールする電子素子の配列を色々と把握してるみたいでよ。そこでその配列を乱す電磁波を飛ばす装置を開発してもらった」

今、このビルの上空にヘリが飛んでるぜ?と彼は天井を指して告げた。

驚く幹部達。

「そんでヘリから装置を使って下方の広範囲に乱電磁波を分布。そうすりゃてめえらは得意な能力を使えねえってわけだ」

「く、くそ…!何たることだ」

「まさかこちらが対策されていようとはな」

「レヴィアタンが言ってたぜ。私を相手に好きに遊んだ借りは返させてもらうってよ」

「ぐ……まさか妖将の発案ですか。女性の恨みは怖いという事ですかねえ……!」

舌打ちして、男が前方に飛んだ。爪を鉤爪のように伸ばしてファーブニルに襲いかかる。

ガシり、とその爪は受け止められた。

闘将の大きな手によって掴まれたのだ。

だが爪の刃が彼の手の隙間を切り刻む。

「くく…!素手で止めれば肉が切れますよ?」

「あー、確かに切れてんな」

ポリポリ、と空いている手で頬をかいて彼は何ともないように言う。

動揺の見られない闘将に、男は逆に動揺した。

「な、何故平然としている?」

「ん?だってよ、こんなの全然――」

痛くも痒くもねーんだよ!!と叫んで彼は強烈なパンチを男の顔に見舞った。

ゴキュ!というめり込んだ音がして、彼の体が吹っ飛ぶ。

そのまま奥の壁に叩きつけられ、男は気絶した。

 

 

「な、ゼレアード…!」

「一撃だと……!」

恐るべきパワーで幹部の1人を打ち倒してしまったファーブニルに残った2人は戦慄する。

闘将の戦闘力は先の妖将をも上回るレベルだが、今のパンチ一発で彼らはそれを実感させられた。

「くそ……まずい、このままじゃ勝てねえぜ。おい、ボコラルス」

「ああ、デコメンド…!」

1人ずつ臨んでは到底勝てないと判断した彼らは、搦め手に打って出た。

2人が散り、異なる動きを開始したのだ。

「トーテムソイルポール!」

先に動いたボコラルスが技を放つ。

地面に向けて能力を行使し、“土のトーテムポール”を発現したのだ。

1つではなく、複数の高いポールが床から湧き上がり、ファーブニルを襲う。

これは鏡能力ではなく、別の属性を用いた固有能力のようだ。

「へえ、こりゃ面白れえ!アヌビステップみてえな技だな」

ようやく目新しい攻撃に彼の目が輝きを取り戻す。

彼の配下であるアヌビステップ・ネクロマンセスの技に近しい技を敵が放ってきたため、彼はおおっとなった。

地面から突き出てくるポールを興味ありげに観察しつつ、彼は体をさばいて横によける。

と、そのよけた彼の足場がぐらついた。

「お!?」

踏みしめた床が不意に崩れたのだ。

いや、崩れたのではなく、コンクリートに穴が空いていたのである。

まるでその部分だけ切り取られたかのように、地面に穴が出来ていた。

「うおっ!?おああああッ……!?」

足場がなくなり、ファーブニルはそのまま階下へと落下していく。

闘将には飛行能力がないため、重力には逆らえない。

降下を止められず、赤い装甲が為す術無く落ちていく。

そのまま彼は暗闇に消えて姿が見えなくなった。

これまで投稿された話で好きな話はどれですか?※アンケートの結果で今後の話の展開やキャラの偏りなどに影響が出る事はありません。あくまで皆さんの感想を知りたいために実施するアンケートですので^_^

  • 第1章:稀少資源ギラテアイトを奪取せよ
  • 第2章:敵本拠地を急襲せよ
  • 第3章:エネルゲン水晶発掘所を攻略せよ
  • 第4章:水没した図書館を攻略せよ
  • 第5章:スカイビルでの戦い
  • 第6章:四天王VS暴雪月花
  • その他個別に好きな箇所があればこちらへ
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