「ぁ、ぁぁ、、!」
「ひぃ……!」
無惨に刻まれたマリンの身体が地面に転がっている。
もはや彼女には動力が通っておらず、機能停止していた。
つまり、死んだのと同じだ。
すぐ目と鼻の先で起こった残酷な光景に、他の者達は皆固まっていた。
「これは見せしめだ」
絶望に染まった労働者達に向けてクロウペリオンが言い放つ。
「くだらぬ反逆を意図した愚か者へのな」
嘲笑を内包した顔を見せ、彼は近くに居た労働者を指さした。
「おい、そこのお前」
「………」
「おい!!!」
「――っ、は、はい!!」
大声でどやされて初めてルチャブは我に返った。
彼女は倒れたマリンの姿に衝撃を受けており、すぐに反応出来なかったのだ。
「ったくどこに耳をつけていやがるんだ。これだから低級レプリロイドは…!」
「………」
クロウペリオンはミュートスレプリロイドであり、並のレプリロイドよりも上位の存在だ。
ルチャブ達労働要員はあくまで普通の一般レプリロイドにすぎないので、当然彼とは強さに明確な差がある。
その分彼は自分の優位さを誇示しており、常日頃から労働者達を見下す発言をしていた。
「おい、そこの“ゴミ”をダストスペースに片付けておけ」
「…わ、わかり…ました」
彼は今殺したところのマリンをさっさと捨ててくるように命じる。
ダストスペースとはようするにゴミ捨て場の事だ。
ただし、そこに捨てられているのはただのゴミだけではない。
これまでに死んでいった仲間達も、そこに捨て置かれているのである。
機能停止した死体は放置すると邪魔になるため、普段使わない場所に集める事になっている。
ゴミ捨て場と同時に死体置き場も兼ねているのだ。
+++++++
それから彼女はマリンを背負ってダストスペースに向かった。
普段の採掘場からは少し離れた場所にあるため、彼女はそこまでしばらく歩いていく事になる。
「………」
仲間の理不尽な死。
これでもう何回目だろうか。
その度に彼女は同じように死んだ仲間をおぶってこの道を歩いてきた。
ここでは命があまりにも軽い。
(マリン……あたいをいつも励ましてくれていた優しい子だったのに)
先程自分が投げやりになった時もそうだった。
彼女の優しさにルチャブはいつも救われていたのだ。
それが、こんな突然に、まるで塵でも払うかのように殺された――。
(もう、やっていられないよ……あたい)
絶望を通り越し、虚無感が彼女を支配していた。
寂しさなどとうの昔に無くしている。
それだけ、命の尊厳がない環境で長期間働かされてきたのだ。
しばらく歩いて、彼女はダストスペースにたどり着いた。
辺りには腐敗臭が漂っている。
既に何人もの“屍”が穴の中に捨て置かれており、その周りを小蠅が飛び回っていた。
「ごめんよ、、マリン」
既に魂がない彼女に耳元で呟くと、ルチャブは遺体を穴の中に倒して寝かせた。
本当はもっと綺麗な形で葬ってやりたい。
だがこの採掘場には他に適した場所がなく、この置き場を綺麗に整備する事も許されていなかった。
以前何人かが交渉を試みたが、“口答え”と見なしたクロウペリオンによって全員惨殺されてしまったのだ。
「……ぅ、ぅぅ」
目を閉じたまま開かないマリンの姿に、今になってルチャブの目に涙が溢れてきた。
これまでずっと共に苦難を耐えてきた仲間だ。
まして同じ女性同士で普段から話もしやすい間柄だった。
寂しさはとうに捨ててきたと思っていた彼女にも、やはり情というものがある。
やり場のないやるせなさ、怒りがルチャブの心を埋め尽くしていた。
「もう、たくさんだ」
拳を地面に叩きつけて彼女は嗚咽を漏らした。
その目から涙がこぼれ落ちる。
「こんなところ、すぐにでも出て行きたい」
何度も何度も、拳を地面に殴りつける。
「でも、あたい達の力じゃ奴には敵わない……!」
怒りの矛先がひたすら土砂に向けられる。
だが、僅かに砂地が沈むだけで何の気休めにもならなかった。
いくら土砂を殴っても状況が変わりはしないからだ。
この苦境を打破するには、障害となっている張本人を何とかするしか方法はない。
「どうにかして、クロウペリオンを倒せれば……!」
忌避すべき対象の顔を思い浮かべて彼女は叫んだ。
だが、その行為は少々浅はかだった。
声に出した事で、他の者に聞かれてしまったからだ。
「キサマ、今クロウペリオンサマをブジョクシタナ!」
「!」
不意に背後から言われ、ルチャブは肩を震わせた。
まずい。もしや奴の部下に聞かれてしまったか――。
振り返ると、危惧した通りパンテオンが銃を構えて立っていた。
クロウペリオンは配下に多くのパンテオン兵を従えており、彼らは採掘場の各場所に配置されている。
先程のショックでつい普段の警戒を怠ってしまったが、監視のため1人パンテオンがつけられていたようだ。
その監視役に今の愚痴を聞かれてしまった。
「テキタイコウイトミナシ、ハイジョスル」
「くっ…!」
クロウペリオンに刃向かう者は容赦なく強制排除する。
この命令は配下のパンテオン達にもプログラムとして組み込まれており、今の些細な愚痴も例外ではない。
彼は上官の尊厳を傷つけられたと判断し、ルチャブを“排除”しにかかった。
(ど、どうすれば……!)
敵は銃を構えている。
応戦しようにもこちらには飛び道具がない。
手元にあるのは腰に下げたツルハシだけだ。
これではリーチに差がありすぎて対処できない。
「ショブン――」
「……!」
咄嗟に目をつぶったルチャブは、打たれる事を覚悟した。
だが、銃弾が放たれる事はなかった。
「………」
恐る恐る目を開けた彼女の前に、1人の男が立っていた。
その後ろ姿はまるで漆黒の影。
「危ないところだったでござるな」
振り返った彼は淡々と言ってルチャブの目を見つめた。
奥にいたパンテオンはいつの間にか床に倒れ伏している。
眼前の彼は手元にクナイのような物を持っているようだ。もしやこれで倒したのだろうか。
「あ、あ、」
「ん?」
呂律が回らず、ルチャブはまともな発音が出来ない。
「あ、あ、あなたは……?」
ようやく絞り出すように彼女は訊いた。
「拙者か?我は――」
これまで投稿された話で好きな話はどれですか?※アンケートの結果で今後の話の展開やキャラの偏りなどに影響が出る事はありません。あくまで皆さんの感想を知りたいために実施するアンケートですので^_^
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第1章:稀少資源ギラテアイトを奪取せよ
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第2章:敵本拠地を急襲せよ
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第3章:エネルゲン水晶発掘所を攻略せよ
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第4章:水没した図書館を攻略せよ
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第5章:スカイビルでの戦い
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第6章:四天王VS暴雪月花
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その他個別に好きな箇所があればこちらへ