四天王の重要任務   作:プレイズ

21 / 33
in the dark③

「いつまでちんたら掘ってんだ!もっとペース上げろオラア!!」

採掘スペースに怒号が鳴り響く。

労働者達に向けてクロウペリオンがまた怒鳴り散らしていた。

だが別段彼らの採掘ペースが遅いわけではない。

疲労を考えれば労働者達はさして遅延せずに頑張って労働作業をしていると言えた。

だが、クロウペリオンはそれでも良しとしない。

採掘自体は出来ていても肝心のギラテアイトの産出量がかんばしくないからだ。

ただでさえ稀少な鉱石である故、産出量は採掘量に比例しない。

しかも、ここで採掘を開始してから半年以上が経過しているため、当初の産出量に比べて地中の堆積量が減ってきている。

既に一定量のギラテアイトを発掘した影響で残存量が残り少なくなっているのである。

そのため、いくら労働者達が頑張って掘っても最近はなかなか産出量が増えないでいた。

「オラア!もっと気合い入れて掘れ!ゴミども!!」

苛立ちを露わにしてクロウペリオンが叫び散らす。

だが労働者達はうんざりしていた。

(いくらてめえがどやそうとそうそう出てこねえに決まってんだろ……もうこの辺りのギラテアイトはあらかた掘り尽くしたんだぞ)

(思うようにいかないからって当たり散らすんじゃないわよ。ブサイクな虎男の分際で)

内心で睥睨の目を向けつつも彼らは黙って採掘に勤しむ。

ちなみにこのクロウペリオンは虎をモチーフにして作られたミュートスレプリロイドだ。

山吹色の体躯を身に纏い、鋭い爪を保持している。

その一撃は強力で、並のレプリロイドならば一振り喰らっただけでも致命傷となってしまうほどだ。

虎をモチーフにしてはいるものの、彼は普段は普通に直立して二足歩行で行動している。

だが本気の戦闘態勢に入ると四足歩行になりスピード重視で動けるように変化させる事が可能。

「ちっ、折角の俺様のヒゲが曲がってやがる」

ふと、彼は自分の手鏡を見てぼやいた。

見た目に気を使っている彼はヒゲのセットに毎日手間をかけているため、少しの乱れが気になるのだ。

「これじゃイケメンのご尊顔が台無しだ。おい、専用クリームを持ってこい」

部下に命令し、早速彼はヒゲのセット用品を取ってこさせる。

そして手鏡を見ながら自分でトリートメントをし始めた。

(また始まったぜ。こいつのきめえ毛づくろいが)

(自分をイケメンだと思ってるのが痛すぎるわね。あんたなんか容姿の醜い中年のおっさんでしかないのよ)

ヒゲの手入れをするクロウペリオンを見て労働者達は内心で嘲笑っていた。

彼の容姿はお世辞にも美しいとはいえず、逆に醜い方に属する。

だが自らは顔面偏差値にプライドがあるらしく熱心にヒゲのセットにこだわるのだ。

そして、この毛づくろいが始まると少しの間彼の怒り散らしは鳴りを潜める。

セットに集中している間は、労働者達への意識が散漫になるらしい。

(ふう、これでようやく少し休めるな)

(容姿を勘違いしてるこいつは痛いけど、おかげでこの時間は私達も手を抜けるのよね)

ボスの気勢が削がれたのを確認した彼らは自分達も少々手を緩めて休息する。

もちろん体面上はバレないようにしっかり身体を動かしてはいるが。

掘る力の加減はかなり緩めてパワーダウンしている。

上手く手を抜きながらやらないと、いくら彼らがレプリロイドといえども身体が持たないからだ。

「うーむ、ここのヒゲだけがくせっ毛で曲がってやがる」

なかなか整わないヒゲにクロウペリオンは首を捻りつつ苦戦している。

この分だとしばらくはそちらに夢中になってくれそうだ。

 

バチっ

 

「ん?」

不意に、何かが弾けるような異音がした。

電気がショートするような、不自然な音が。

場違いな異音に気付いたクロウペリオンが立ち上がった。

「おい、何だ今の音は!」

毛づくろいから意識を戻した彼は労働者達に向けて叫ぶ。

だが労働者達は皆困惑した顔をしていた。

突然の事で誰も状況が把握出来ていなかったのだ。

そして、次の瞬間、異変が起こった。

室内の電灯が全て消えたのだ。

「えっ?」

「な、ま、真っ暗…!?」

急に辺りの明かりが消え、周囲を暗闇が包んだ。

「きゃあ!?な、なにっ!?」

「あ、明かりが消えた!?」

「おい、何だこれは!すぐに明かりをつけろ!!」

クロウペリオンが大声で叫ぶ。

いきなり電灯が消えて停電状態になったのだ。

今は夜なため外からの光も入らない。

この状態では視界がはっきりしなかった。

 

ザシュ

 

ドシュ

 

ザンッ

 

「!?」

「な、何だ…!?」

暗闇の中、どこかから斬撃のような物音がした。

突然の異常事態に労働者達を恐怖が襲う。

 

カカカカッ

 

ドン

 

ザシュリ

 

「ひっ!?」

「な、何が起き…」

「伏せろ!!」

不意に、誰かの叫び声が轟いた。

クロウペリオンのものではない。

これまで聞いた事のない男の声だった。

言葉を聞いて彼らは咄嗟に頭を伏せる。

 

ヒュン

 

その頭上を何かが通り抜けた。

同時に呻き声が聞こえる。

どうやら傍にいたパンテオン達の呻き声らしい。

何者かに攻撃を喰らったようだ。

そして、その数秒後にようやく明かりがついた。

「……!!」

「な、、!」

「う、嘘でしょ」

視界が戻った彼らが一斉に驚きの声を上げた。

そこには大量のパンテオン達が倒れ伏していたからである。

他の労働者達は皆怪我も無く無事であった。

ただ敵のパンテオン達だけが倒されていた。

「こ、これはいったい…!?」

「ふふ、どうやら上手くいったようだねえ」

奥の方からした声に彼らが振り返ると、そこにはルチャブが立っていた。

どうやら彼女がブレーカーのスイッチを上げたらしい。

「ル、ルチャブ…!」

「今何が起こったんだ…!?」

「なーに、ちょっと闇討ちさせてもらっただけさ」

彼女はしてやったりという笑みで言った。

「お前、まさか何かやったのか?」

「ええ。ちょいとブレーカーを落とさせてもらってね。暗がりで敵が慌てている所を襲撃させてもらったよ」

「す、凄い…!ルチャブ1人で…!?」

「いや、私は手下のパンテオンを数人殺っただけさ。だから私はほとんど敵を倒してないんだけどね」

「え?じゃ、じゃあ誰が……」

「彼さ」

問いに対して彼女は奥を目線で示す。

そこには一人の男が立っていた。

「あの人は……?」

「凄腕のお役人様だよ」

「ルチャブ、あまり詳しく語るでない」

振り返ったファントムが彼女に釘を刺す。

その顔を見た皆はどよめいた。

「あ、あのお方は……もしや!?」

「ま、まさか、ファントム様!?」

「かの隠将様……!?」

仮面のようなフェイスメットをつけた黒衣の忍。

まるで忍者のような出で立ちの寡黙な男。

その見た目は静かながら、しかしその威光はこの辺境の地まで轟いていた。

皆、当然のように彼の事を知っていたのである。

「ほう、拙者の事を知っているのか」

「と、当然です…!!貴方の事を知らない者なんていませんよ」

「あなた様の評判は田舎の奥地まで行き届いております…!」

「かのネオアルカディア四天王の1人で影を自在に操る凄腕の忍!そしてイケメンでかっこいい殿方!!キャー!」

「………」

女性労働者から黄色い声援が飛び、ファントムはリアクションに困った。

「あまり騒ぐでない。まだ確実に息の根を止めた確認をしておらぬからな」

冷静に言って彼は奥へと歩いていく。

隠将の視線の先には倒れ伏したクロウペリオンの姿があった。

首元にはクナイが突き刺さっている。

「女に褒められてものろけず寡黙な男……素敵」

声援にも意に介さないファントムに女性労働者が鼓動を高鳴らせる。

続けて男性の労働者が言った。

「いやーありゃもう倒したっしょ。あそこにあれが刺さってりゃ致命傷ですよ」

「!いや、、」

ぴたりとファントムが足を止めた。

眼前の“虎”が動いたからだ。

「まだ奴は生きている」

「えっ!?」

「い、いや流石にもう死んでるでしょ」

「全員拙者の後ろに下がれ!」

気が緩んだ者達に向けて隠将が叫ぶ。

彼が叫ぶと同時、クロウペリオンがゆっくりと上体を起こした。

これまで投稿された話で好きな話はどれですか?※アンケートの結果で今後の話の展開やキャラの偏りなどに影響が出る事はありません。あくまで皆さんの感想を知りたいために実施するアンケートですので^_^

  • 第1章:稀少資源ギラテアイトを奪取せよ
  • 第2章:敵本拠地を急襲せよ
  • 第3章:エネルゲン水晶発掘所を攻略せよ
  • 第4章:水没した図書館を攻略せよ
  • 第5章:スカイビルでの戦い
  • 第6章:四天王VS暴雪月花
  • その他個別に好きな箇所があればこちらへ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。